趣味のひとつとして挙げられることも多い旅行ですが、実は環境への負荷が多いアクティビティのひとつとされています。
温室効果ガスの排出量、生態系への影響、水の消費、廃棄物の発生、環境汚染といったさまざまな問題が懸念されており、地球と共存していくためにも持続可能性の高い旅行を意識することが大切です。
この記事では、オーストラリアの旅行代理店・フライトセンターが実践するエコな取り組みについて解説していきます。
フライトセンターの基本情報
フライトセンター(Flight Center Travel Group)は、1982 年に設立されたオーストラリアの旅行代理店です。
本社はオーストラリアのブリスベンにあり、国内に450の店舗を構えているほか、ニュージーランド、アメリカ、イギリス、香港、メキシコ、シンガポール、インドをはじめとする24か国でも展開しています。
フライト、ホテル、ツアーなどのさまざまな旅行プランを取り扱っており、1,500万人以上が利用している主要な旅行代理店のひとつです。
フライトセンターが取り組むエコ活動
観光業=自然や資源に依存している業界だと捉えているフライトセンターは、自然環境が崩れると観光業が成り立たなくなるという懸念を抱えています。
また、観光業が自然環境へ悪影響を及ぼす可能性についても考えており、フライトセンターは環境の保護、野生動物、植物、生物多様性、生態系、文化の多様性を尊重する持続可能な旅行を目指して以下のような取り組みを実施しています。
グローバル本社でのエコ戦略
ブリスベンにあるグローバル本社は、リサイクル可能な有機廃棄物、使い捨てコーヒーカップ、電子廃棄物を埋め立て地から転用するための新しい廃棄物削減戦略を設定しました。
グローバル本社には17人のグリーンアンバサダーが在籍しており、2018年から2019年にかけて以下のような取り組みを行いました。
- 41,000個の使い捨てコーヒーカップを他の建材に転用
- 1,450kgの電子廃棄物をリサイクルもしくは慈善活動へ提供
- 5トンを超える有機廃棄物をリサイクル
- 600kgの紙製ハンドタオルを有機廃棄物に変換
- 会議室でのスクリーン使用による紙類の使用減少
- 印刷物の80%に再生紙を調達
また、グローバル本社は全国オーストラリア建築環境評価システム(NABERS)におけるエネルギー評価で5つ星を獲得しており、具体的には以下のような取り組みが評価されています。
- ブラインドを設置して冷暖房費を最小限に抑える
- 多目的装置を設置して使用する電化製品の数を減らす
- エネルギー効率の高い機器を使用する
いずれもシンプルな対策ではあるものの、取り組みの徹底によって本社のエネルギー消費量は5~10%削減されています。
店舗でのエコ活動
グローバル本社でのエコ活動に力を入れているフライトセンターですが、各店舗におけるエコ活動も促進しています。
備品の材料、廃棄物管理、照明と電光掲示板、水道設備や付属品などの設備に関するガイドラインを定めるなど、持続可能なデザインプログラムを導入している点が特徴です。
備品や付属品には木材なども多く含まれており、エコ意識の高いサプライヤーから適切な材料を購入することで環境メリットの大きな店舗の設置に役立っています。
また、電子パンフレットやアプリの導入によって、販売員や顧客が紙ベースの書類を使用する機会を減らしています。
20万枚の紙を製造するのに約24本の木が消費されるため、フライトセンターでは紙の使用率を下げることで木々の保護に貢献しているのです。
持続可能性の高いパートナー提携の検討
フライトセンターは、持続可能性基準に基づいてパートナーとなる航空会社、ホテル、ツアーの選択を行っています。
特に飛行機は温室効果ガスの排出量が多いため、エコ意識の高い航空会社を選ぶことで環境負荷の軽減に役立つと考えられています。
オーストラリアのフラッグキャリアであるカンタス航空は、2030年までにバイオ燃料と再生可能エネルギーの比率を10%にすることを目標に掲げている航空会社です。
サスティナブルなフライトを実現できる可能性が高いため、フライトセンターはカンタス航空を航空会社のパートナー提携先の有力候補としています。
また、環境団体との連携によって、将来的に顧客に対して排出量オフセットのオプションを提供することも検討しています。
観光客が正しい行動ができるように啓発する
観光客がもたらす経済効果は非常に大きく、貧しい地域社会の生活水準向上に繋がる可能性が高いです。
しかし、それと同時に環境汚染などの問題が発生するとも考えられており、フライトセンターは「責任ある観光、天然資源の保護、持続可能性全般のサポート」を目指した取り組みを行っています。
環境意識の高い現地サプライヤーやツアーオペレーターを選出し、観光客が環境保全を意識しながら休暇を過ごせるように工夫しているほか、フライトセンターも観光客に対して以下のような注意点を直接伝えています。
①水の節約
世界有数の観光地には、発展途上国も多く含まれます。
しかし、発展途上国の中には水不足に悩まされている国も珍しくないため、旅行中は滞在国の資源を不必要に消費しないように注意しなければなりません。
誰でも手軽に取り入れられる方法としては、シャワーを浴びる時間を抑えたり、こまめに蛇口を止めたりといったものが挙げられ、現地の水不足の間接的な支援に繋がります。
また、ホテルのタオルを1日ごとに交換せずに再利用することで、洗濯で消費される水の量を大幅に節約できます。
②廃棄物の削減
不必要な梱包を断る、ゴミのポイ捨てをしない、リサイクルするといった小さなことでも、現地での不必要な廃棄物の発生を防げます。
③野生動物とのふれあい方
オーストラリアをはじめとする大自然が魅力の国では、野生動物関連のアクティビティを提供しているケースも多くなっています。
フライトセンターでは「野生動物を見るのはOKだけど触れてはいけない」というアプローチ方法を推奨しており、適切な距離感の維持を啓発しています。
また、国によっては野生動物を捕まえて商業動物として使っている場合もあるため、動物を使用したアトラクションや野生動物と密接に関わるイベントを避けることで動物福祉の向上に貢献できる点もポイントです。
ビジネス客にもエコを推奨
国土が広いオーストラリアでは、出張などの移動手段として飛行機が使われやすい傾向にあります。
新型コロナウイルス流行前の2017年には200万人以上のオーストラリア人がビジネス目的で飛行機を利用しており、州を跨ぐ場合では81%が飛行機を移動手段に選んでいます。
しかし、ビジネス客は業務を遂行するために旅行しているため、観光客のように自分自身で旅の詳細やプランを決められるわけではありません。
結果としてエコ意識が低い旅行になりやすいことを受けて、フライトセンターはビジネス客向けに環境への影響を軽減する方法を紹介しています。
①フライトのチョイス
もし選択肢がある場合は、より優れた排出削減実績を持つ航空会社を選択するように提唱しています。
また、飛行機の排気ガスの大多数が離着陸時に発生していることから、乗り換えのない直行便を予約するのがおすすめです。
②アメニティを持参する
ホテルなどに備え付けてあることも多いアメニティですが、使い捨てアメニティの使用により廃棄物の量が増えます。
毎年推定800万トンのプラスチックが海に放棄されており、そのうちの主な廃棄物に使い捨てボトルが含まれます。
自身のアメニティを持参するだけで廃棄されるボトルの量を減らせるため、環境負荷の軽減に貢献します。
③水筒の持参
オーストラリア人は毎年推定 10 億個の使い捨てコーヒーカップを使用しており、その大多数が廃棄物として処理されています。
プラスチック問題が深刻化している現代社会において、ビジネス旅行先でも不必要なプラスチックごみを出さないように注意することが大切です。
代替え案として水筒の持参が提唱されており、現地滞在中にコーヒーや水をマイボトルに入れて飲むことを勧めています。
まとめ
オーストラリアの旅行代理店・フライトセンターは、観光客やビジネス旅行客に対する啓発はもちろん、自社内でも多方面における環境対策を行っています。
着実に環境への影響を減らしていくためにも、私たちも小さなことから少しずつエコなアイデアを取り入れていきたいですね。