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食料自給率とは?日本の自給率を上げる方法と世界の現状・計算方法を簡単に説明

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「日本は食料自給率が低い」と言われますが、なぜ食料自給率が低いと問題なのでしょうか?知っているようで意外に知らない「食料自給率」について解説するとともに、世界の現状や日本の課題、食料自給率を上げるための対策についても紹介します。

生きるのに欠かせない食料。そして日本の豊かな食料事情はどのように支えられているのでしょうか?

あなたも毎日食べる食料について、知識を深めましょう!

食料自給率とは

食料自給率とは「1つの国で消費される食料のうち、その国で生産されているものの割合」です。食料自給率には、「品目別自給率」「総合食料自給率」の2種類があり、それぞれ異なる計算方法で算出されます。

それぞれの内容と計算方法を確認しましょう。

品目別自給率

品目別自給率は、各品目を単純な重量で計算します。また、品目自給率では、私たち人間が口にする一般的な食品だけでなく、食品を作るために必要な、飼料や種子などに使われた重量も含んでいます。

また、品目別自給率の算出には国内消費仕向量の算出が必要です。国内消費仕向量とは、1年間に国内で消費に回された食料の量(国内市場に出回った食料の量)です。

国内消費仕向量と品目別自給率は、

  • 国内消費仕向量=国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(または+在庫の減少量)
  • 品目別自給率=国内生産量÷国内消費仕向量

という計算方法で求められます。国内消費仕向量の式は少し項が多いですが、ここでは各用語の意味を理解しておきましょう。

令和3年度の「小麦」を例に実際に計算してみると、小麦の国内生産量は109.7万トンで、小麦の国内消費仕向量は642.1万トンのため、

 109.7万トン÷642.1万トン=17%

 よって、令和2年度の小麦の品目別自給率は17%です。

総合食料自給率

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総合食料自給率は、食料全体に共通の基準を用いて、単位を揃えて計算します。また、総合食料自給率は

  • カロリーベース総合自給率
  • 生産額ベース総合自給率

の2種類があり、それぞれ計算方法が違います。

カロリーベース総合食料自給率

カロリーベース総合食料自給率は、消費される食料をエネルギー(カロリー)に換算し、その全体のうち国内生産でまかなっている割合です。 

カロリーベース総合食料自給率は、

  • 1人1日当たり国産供給熱量÷1人1日当たり供給熱量

 という計算式で求められます。

令和3年度を例に実際に計算してみると、1人1日当たり国産供給熱量は860kcalで、1人1日当たり供給熱量は2.265 kcalなので、

860kcal÷2,265kcal=38%

よって、カロリーベース総合食料自給率は38%です。

生産額ベース総合食料自給率

生産額ベース総合食料自給率は、食料全体を生産額に置き換え、そのうち国内生産でまかなわれている額の割合です。  

生産額ベース総合食料自給率は、

  • 食料の国内生産額÷国内消費仕向額

の計算式で求められます。

令和3年度を例に実際に計算してみると、食料の国内生産額が9.9兆円で、食料の国内消費仕向額が15.7兆円なので、 

9.9兆円÷15.7兆円=63%

よって、令和3年度の生産額ベース総合食料自給率は63%です。

出典:農林水産省『食料自給率とは』

食料国産率と飼料自給率

次は、畜産のために用いられる飼料に注目した「食料国産率」「飼料自給率」についても見ていきましょう。

食料国産率とは

食料国産率とは、1つの国で畜産に用いられる飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産業の活動を反映して国内生産の状況を評価した値です。先述の総合食料自給率は、畜産業で使用される飼料自給率を反映した値なのに対し、食料国産率では飼料自給率を反映させずに計算されます。

令和3年度の食料国産率をカロリーベース・生産額ベースそれぞれで見てみましょう。

カロリーベース食料国産率

1人1日あたりの国産供給熱量(1,071kcal)÷1人1日あたりの供給熱量(2,265kcal)=47%

生産額ベース食料国産率

 食料の国内生産額(10.8兆円)÷食料の国内消費仕向額(15.7兆円)=69%

下の図は牛肉の食料自給率と食料国産率をカロリーベースで表したものです。食料自給率(図左)の12%は国産飼料を用いて生産された国産牛肉の割合です。食料国産率(図右)の45%は飼料の国産・輸入にかかわらず、国内の畜産農家が生産した国産牛肉全体の値です。

この2つの値の差から、国産牛肉全体のうち33%相当が輸入飼料を用いて生産された国産牛肉であることがわかります。

【食料自給率と食料国産率】

飼料自給率とは

飼料自給率とは、畜産で用いられる飼料のうち、国産飼料の占める割合です。飼料自給率は、

  • 純国内産飼料生産量÷飼料需要量

で求められます。令和3年度の飼料自給率は、純国内産飼料生産量が645万TDNトン、飼料需要量が25,299万TDNトンなので、

645万TDNトン÷25,299万TDNトン=25%

となります。

TDN

Total Digestible Nutrientsの略称。日本語では可消化養分総量。畜産における飼料の量は「日本標準飼料成分表等」に基づいてTDNに換算され計算される。

日本の食料自給率の現状

続いて、日本の食料自給率の現状を見ていきましょう。

日本の食料自給率は低い

現在の日本は狭い国土に人口が多いにもかかわらず、世界でもトップレベルの豊かな食生活が実現されています。この豊かな食生活は国内で生産された食料だけでなく、輸入された食料により支えられています。

国内で生産できないものは輸入に頼るほかありません。加えて、輸入品の方が安いために国内で生産するより輸入した方が利益が大きくなるという理由で輸入量が増えている食品も少なくありません。

また、豊かな食生活の反面、食品ロスなどの問題も深刻になっています。

【日本の食料自給率の推移】

食料自給率が低いと何が問題なの?

食料はだれもが毎日生きるために食べていかなくてはなりません。植物・動物関係なく、ほかの生き物の命を栄養として摂取する必要があるのです。

野菜・木の実・穀物を食べても、命をいただいていることに変わりはありません。その食料を国内で生産できる割合が低いほど、外国に命をゆだねている状態にあるということです。

輸入に頼るリスク

日本はたくさんの食品を輸入に頼っていますが、このサプライチェーンはこの先もずっと安定して続くのでしょうか?現在の世界情勢はすでに戦争・異常気象・災害などにより不安な要素が多く、「もしも」の時への備えは欠かせません。

食料をいつでも・いつまでも輸入できる保証がない以上、できる限り国内での生産力を伸ばし、いざという時のための備蓄もしておかなければなりません。このため農林水産省では、

  • 需要が減少する米から、自給率が低い麦や大豆等へ生産を転換する
  • 品目毎に、将来にわたって農業が続ける
  • 効率的・省コストで生産するための新しい技術の導入
  • 生産基盤である農地や担い手の確保
  • 輸出の拡大にむけ、海外で日本の農産物をPRする

など、さまざまな支援を行っています。

出典:農林水産省『その2:食料自給率って低いと良くないの?』

世界の食料自給率の現状

続いて、世界の食料自給率の現状について見ていきましょう。

2022年版|世界の食料自給率ランキング

農林水産省が試算した資料によると、世界の主な国々9カ国の食料自給率ランキングは、

カロリーベース

1位 カナダ(233%)
2位 オーストラリア(169%)
3位 アメリカ(121%)
…9位 日本(38%)

生産額ベース
1位 オーストラリア(126%)
2位 カナダ(118%)
3位 アメリカ(90%)
…7位 日本(63%)

という結果でした。下のグラフはその結果を表したものです。

【世界の食料自給率】

この結果からも、日本の食料自給率はカロリーベース・生産額ベースともに低いことがわかります。生産額ベースでは日本は63%と「それほど低くないのではないか?」とも見える値ですが、国民全体が必要とするエネルギー量であるカロリーベースで見ると38%と低くなっています。

食料に使われているお金の63%は国産の食品に使われているのに、カロリーで見ると38%しかまかなえていません。このカロリーベースと生産額ベースの自給率の差からも、いかに安くてカロリーの高い輸入食品が日本の食料事情を支えているかがわかります。

日本の食料自給率が低い理由を課題や問題点から考える

日本の食料自給率が低い主な理由は「国土が狭いこと」「食生活の変化」です。

狭い国土で生産に限界がある

日本の国土は山が多く、平地が少ないのが特徴です。そのため、農地面積を増やすことが難しく、限られた農地面積で収穫量を増やす努力を重ねてきました。

穀物や家畜の飼料を生産するには、広い平地の方が条件的に有利です。日本はこの点で広い平地を有する国に比べて、農地面積に限界があると言えます。

下のグラフからもわかるように、日本の耕地面積と農業生産額はほぼ横ばいに推移しつつも、ゆっくりと減少傾向です。農業技術の向上という背景がありながら、このような推移を示しているのは、近年の異常気象の多発に加え、農業従事者の減少などの深刻な問題が影響しています。

【日本の耕地面積と農業生産額の推移】

食生活の変化で輸入に頼らざるをえない

次に、食生活の変化について考えてみましょう。食生活が洋風化してきたことや外食の頻度の増加、冷凍食品の使用率が高まったなど、日本の食生活は変化し続けています。

【日本の平均的な食事の内容と食料の消費量の変化】

日本が90%以上の高い自給率を誇る米も、ファストフードの普及などの影響から、消費量そのものが減っています。食生活の国際化により、肉類やその加工品の消費量が増えましたが、平地面積の狭い日本では広い牧場の確保や大量の飼料の生産が難しいため、それらの食品や飼料は輸入に頼らざるをえないのが現状です。

このような理由から、日本の食料自給率は低くなっているのです。

参考:毎日新聞「難問氷解

日本が食料自給率を上げるには

それでは、日本の食料自給率を上げるためにはどうすればいいのでしょうか?

解決策①旬のものを食べる

国内で作られた旬のものを食べることは、食料自給率を上げるきっかけになります。旬の食べ物は、その季節の気候で余分な手間やコストをかけず、美味しいものを作ることが可能です。

その季節ごとに作りやすい食べ物の需要が高まることで、生産者側の負担が減ります。また、味がいいことに加えて栄養価も高く、旬のものを食べることは健康面でも良い効果が得られます。

さらに、地元で作られたものを地元で消費する地産地消の実践も推奨されています。

解決策②バランスのよい食事を心がける

バランスのよい食事を心がけることは、国内生産の食べ物の需要を高めることにつながります。近年では冷凍食品・加工食品など脂肪分の多い食べ物の摂取量が増えており、これらの原料のほとんどが輸入によるものです。

つまり、冷凍食品や加工食品の需要が高まると、国内で生産できる食材の需要が低くなってしまうのです。国内で採れる米や野菜を中心とした、身体に優しい食事をとるようにしましょう。

解決策③国産の食べ物に興味を持つ

国産の食べ物に興味を持って、意識的に摂取することも大切です。先述の「旬のものを食べる」ことも国産の食べ物や地域の特産品などに目を向ける良い機会になります。

そのほかにも、その食材の産地・その食材の栽培方法・おいしい調理の方法・伝統的な食べ方など、食べ物に興味をもって知ろうとすることは、あなたの生活の豊かさにもつながります。

出典:農林水産省『その2:食料自給率って低いと良くないの?』

まとめ:食料自給率を増やす努力は必要!

食料自給率が低いと、国際情勢などの影響で輸入ができなくなったときに困ってしまうことが一番の問題です。しかし日本の食料自給率はゆっくりと低下しています。

私たちは、この現状や理由をしっかりと理解し、困る前に対策をとることが大切です。あなたも食料自給率を上げるためにできることから行動して、万がいち輸入に問題が起きた時にも、食料に困らない日本になるよう貢献しましょう!