第四次産業革命は、インダストリー4.0とも呼ばれ、現在進行中の社会や経済の大きな変革の時代を意味します。近年の急速な科学やテクノロジーの進歩により、私たちの日常を含め、社会のあり方も急速に変化しています。
第四次産業革命では、実際に何が起こっているのでしょうか?今後も続く、この変革の時代を生きるために、第四次産業革命について正しく理解しておきましょう。
本記事では、第四次産業革命の特徴や生活に及ぼす影響、具体例、課題などをわかりやすく解説していきます。
目次
第四次産次革命とは
第四次産業革命とは、「人工知能(AI)」「ロボット工学」「ナノテクノロジー」「バイオテクノロジー」「量子コンピューター」などの技術が急速に進歩し、社会・経済の構造が大きく変革する時代のことです。第四次産業革命は、これまでの産業革命とは異なり、技術革新が急速に加速しながら進んでいます。その影響はあらゆる分野に及び、私たちの生活の「当たり前」もどんどん変化しています。
そもそも産業革命とは?
そもそも産業革命とは、産業のあり方や経済の構造に大きな変革をもたらす出来事や時期のことです。単に「産業革命」といった場合は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、イギリスを中心に起こった工業生産の大幅な変革を指します。
蒸気機関の登場
舞台は18世紀後半、イギリスです。当時のイギリスは、農業や手工業が主力でした。
しかし、蒸気機関の発明が産業界に大きな変革をもたらすことになります。蒸気機関による産業の機械化が始まり、それまで人力や動物の力だけでは限界があった生産力が大幅に向上しました。
産業革命が起こった背景
産業革命が起こった背景には、多くの要因がありますが、中でも重要なのは科学技術の進歩や、農業革命によって人口が増えたことによる需要の増加です。また、イギリスの海外領土や植民地からの原材料や市場の拡大も、産業革命の推進力となりました。
加えて、イギリスでは勤勉さと節約を重んじる価値観が強く根付いていたことも、産業革命に必要な労働力と資本を供給した背景と考えることができます。イギリスでは、宗教的な背景もあり、「人は自分の努力によって救われる」と信じており、そのために、勤勉に働き、節約することが重要であると考える傾向があります。
一方、同じように宗教的な背景から、「人は神によってのみ救われる」と信じるドイツ、フランス、イタリアでは、必要な労働力と資本を供給するのに苦労し、イギリスに比べると産業革命が遅れたと言われています。
産業革命による影響
産業革命によって、生産性が飛躍的に向上し、商品の供給量が増加しました。これによって、商品価格は下がり、さまざまな工業製品が一般庶民も手の届くものになりました。また、機械化によって労働力も大幅に削減され、労働時間も短縮されました。
現代においても、産業革命は私たちの生活に大きな影響を与えています。自動車や電化製品などの製造技術は、産業革命以降の工業生産の発展によって生まれたものです。また、現代でも機械化や自動化が進み、生産性向上や労働時間短縮につながっています。
次の章で、これまで起こった産業革命の歴史を簡単に確認しておきましょう。*1)
これまでの産業革命の歴史
産業革命の歴史は、人類の生活を根底から変えた大舞台です。機械化と技術革新の連鎖がもたらした進化の物語を、この章で紐解いていきましょう。
第一次産業革命(18世紀後半〜19世紀初頭)
第一次産業革命は、蒸気機関の発明や機械化の進展によって始まりました。これにより、農業や手工業から機械工業への移行が進み、労働力や生産性が大幅に向上しました。
また、交通や通信の発展もあり、産業の拡大と都市化が進みました。
第二次産業革命(19世紀末〜20世紀初頭)
第二次産業革命は、電気の普及や内燃機関※の発明などによって始まりました。これにより、さらに大量生産が可能になり、工業製品の供給が増えました。また、交通手段の発展や通信技術のさらなる進歩により、市場の拡大とグローバルな経済の発展が促進されました。
第三次産業革命(20世紀後半〜21世紀初頭)
第三次産業革命は、情報技術の発展やインターネットの普及によって始まりました。これにより、情報のデジタル化やネットワーク化が進み、情報の取得や共有が容易になりました。また、サービス業やソフトウェア産業が急速に成長し、経済の中心が製造業からサービス業へとシフトしました。
【各産業革命の特徴】
第一次産業革命から第三次産業革命がどんなものだったか理解した次は、第四次産業革命の特徴や具体的な技術の進展、ビジネスへの影響などについて解説します。*2)
第四次産業革命の特徴
第四次産業革命は、デジタル技術の進化によって人と機械がより密接に連携し、生産性が向上する時代です。これらの技術の進化によって、新しいビジネスモデルが生まれることが期待されています。
これまでの産業革命と比べて、第四次産業革命の特徴と言えるポイントを確認しましょう。
技術の進化と統合
第四次産業革命は、デジタル技術、人工知能、ロボティクス、インターネット・オブ・シングス(IoT)などの先端技術が統合されることで生まれます。これにより、物理的なシステムとデジタルの世界が融合し、新たなビジネスモデルや価値創造が可能になります。
インターネットの普及とデータの重要性
インターネットの普及により、膨大なデータが生成されるようになりました。第四次産業革命では、このデータを活用し、ビジネスの意思決定や効率化、顧客サービスの向上などに活かすことが求められます。
このことから、国や企業の持つデータの質や量が、あらゆる面で競争力に影響するようになりました。また、このようなデータを処理し、活用するためにデータサイエンス※などの知識が重要性を増しています。
【関連記事】データサイエンスとは?身近な事例やデータサイエンティストになるための方法も
自動化とロボット技術
第四次産業革命では、自動化やロボット技術の進歩が注目されています。これにより、労働力の削減や生産性の向上が期待されています。
また、人間とロボットの共働きや協力関係も重要なテーマとなっています。少子高齢化の影響で将来的に労働者の不足が予想される日本では、自動化とロボット技術を駆使した産業の効率化が成長を続ける鍵と考えられています。
スマートファクトリーとIoT
第四次産業革命では、スマートファクトリーと呼ばれる工場のデジタル化が進んでいます。IoTデバイスが製造ラインや設備とつながり、リアルタイムのデータ収集や遠隔監視、自己診断などを可能にします。
デジタルプラットフォームとエコシステム
第四次産業革命では、デジタルプラットフォーム※が重要な役割を果たします。これにより、企業や個人がデータやサービスを共有し、新たなビジネスモデルやコラボレーションが生まれます。エコシステムの構築やパートナーシップも重要な要素です。
【関連記事】エコシステムとは?ビジネスにおける意味や取組事例などをわかりやすく解説
ブロックチェーンの登場
ブロックチェーン※とは、分散型台帳技術です。ブロックチェーンは、データの改ざんを防ぐことができるため、金融、医療、物流など、あらゆる分野で信頼性の高い取引を可能にします。
ブロックチェーンは、第四次産業革命において重要な技術です。ブロックチェーンの登場により、これまでインターネット上では困難だった分野でビジネスモデルの変革や新しいサービスの創出につながると期待されています。
次からは具体的な例を通じて、第四次産業革命が私たちの生活や社会にどのような影響を与えるのかを探求します。*3)
具体例をもとに第四次産業革命が及ぼす影響を確認
第四次産業革命がもたらす主な変化としては、
- 生産性の向上
- 新しい産業の創出
- 労働力の変化
などが挙げられます。第四次産業革命は、急激な速さで社会全体を大きく変革していきます。
しかし、一方で、新しい技術によって失われる仕事も出てくることが予想されます。そのため、第四次産業革命に対応するためには、新しい技術を学び、新しいスキルを身につけることが重要です。
インターネット・オブ・シングス(IoT)
【IoTとは】
インターネット・オブ・シングス(IoT)は、
- スマートホーム:家庭内の照明、温度、セキュリティシステムなどをリモートで制御
- スマートシティ:公共のインフラやサービスを効率的に管理
- 農業:農作物の生育状況や環境条件を監視し、適切な時期に水やりや肥料供給
- 製造業:製造ラインや機械の稼働状況を監視し、効率化やトラブルの早期発見
- ヘルスケア:患者の健康状態や医療機器の使用状況を監視し、リアルタイムでデータを医療スタッフと共有
など、さまざまな分野で活用されています。これらは一部の代表的な例ですが、実際にはさまざまな分野でIoTが活用されています。
IoTの普及により、生活やビジネスの効率化、省エネルギー、快適さ、安全性の向上など、さまざまな利点がもたらされています。
自動運転車
【自動運転車の実証実験】
自動運転車とは、人間の運転手の代わりに車を制御する革新的な技術です。自動運転車の普及により、交通事故のリスクが大幅に減少し、安全な移動が実現します。
また、運転の負担が軽減されることで、移動時間を有効活用したり、新たなビジネスモデルが生まれたりする可能性もあります。さらには、高齢者や障がい者など、運転が難しい人々の自立や社会参加の促進になることも期待されています。
3Dプリンティング
3Dプリンティングは、3Dプリンタを用いてデジタルデータから実際の物体を作り出す技術です。これにより、製造業や医療分野での生産性向上やカスタマイズが可能になります。例えば、3Dプリンティングを用いて人工関節や義肢を作成することができ、個々のニーズに合わせた医療ソリューションを提供することができます。
ChatAI
ChatAIは自然言語処理や機械学習を活用して、人間のように対話を行うことができるAIです。ChatAIの普及により、さまざまな業界での効率化や顧客サービスの向上が期待されます。
例えば、カスタマーサポートの自動化により、24時間体制での迅速な対応が可能になります。また、ChatAIを活用したチャットボットは、オンラインショッピングや予約サービスなどで人々との対話を代行し、利便性を高めることができます。
さらに、ChatAIは教育やトレーニングの分野でも活用されています。言語学習やスキルの習得において、個別の指導やフィードバックを提供することができます。
【関連記事】ChatAIとは?仕組みやメリット・デメリット、種類、今後の課題も
どれも、すでに知っている技術だったかもしれませんね!次の章では、これらの第四次産業革命による変革が、私たちの生活に与える影響を考えていきましょう。*4)
第四次産業革命で私たちの生活はどう変わる?
第四次産業革命は、どんどん加速しています。この変化は、今後、継続的に私たちの生活に大きな影響を与えると予想できます。私たちは第四次産業革命に関する知識や情報を身につけ、この急速で今後もまだ続く変化に対応していくことが重要です。
第四次産業革命によって、すでに変わったもの
第四次産業革命は、一般的に2010年代に始まったとされています。つまり、近年私たちが経験してきた変化の中には、第四次産業革命の影響によるものも多くあります。
例えば、スマートフォンやタブレット端末の普及により、情報の取得やコミュニケーションがより手軽になりました。これに伴い、ソーシャルメディアが普及し、人々はインターネットを通じてより多くの情報を共有するようになりました。そして、ビデオ通話やChatAIなどのテクノロジーにより、リモートワークが可能になり、これまでより多くの分野で地理的な制約にとらわれずに仕事をすることができるようになりました。
また、スマートホームやスマート家電などのように、音声アシスタント技術の進化により、スマートフォンを使わずに音声で操作することが可能になりました。
今後数年以内に予想される変化
近い将来、実用化が予想されている自動運転技術により、交通事故の減少や交通渋滞の緩和が期待されます。また、自動運転技術を活用したモビリティサービス※が普及し、車を所有することが必要なくなる人も増加するでしょう。
他にも、AI(人工知能技術)を活用したデジタルアシスタントが普及し、人々はよりスムーズに日常生活をこなすことができるようになります。例えば、家電製品の制御やスケジュール管理などが自動化され、より効率的な生活が実現されます。
また、センサー技術を活用した健康管理が進化し、健康状態のモニタリングや医療サービスの提供が改善されるでしょう。
さらには、すでに実用化されているAR技術※やVR技術※が進化し、より身近な存在となります。例えば、AR技術を活用したスマートグラスが普及し、情報の取得やコミュニケーションがよりスムーズになります。
第四次産業革命によって最終的にどのような姿になるか
第四次産業革命によって、最終的には5G通信技術※の普及により、高速で安定した通信環境が整備され、IoT技術によるスマートシティが実現するでしょう。例えば、
- 交通やエネルギーの最適化
- セキュリティの強化
- 公共サービスの効率化
などが期待されます。
また、IoT技術やAR技術、VR技術が融合し、よりリアルな体験が可能になるでしょう。例えば、AR技術を活用した仮想ショッピングやVR技術を活用したリモートツアーなどが実現すると言われています。
その他にも、AIを活用して、様々な場面でよりパーソナライズされたサービスが提供されるようになると予想されます。
私たちはすでに第四次産業革命による変化の中にいます。しかし、日本の第四次産業革命は世界と比較して遅れている点などもあります。次の章では、第四次産業革命の課題を確認しましょう。*5)
日本における第四次産業革命の課題
日本における第四次産業革命の課題として、以下のようなものが挙げられます。
デジタル化への遅れ
【世界的企業と日本企業のデータ保有量の比較】
近年のデジタル技術の進化が早いため、企業や労働者が追いつくことができない場合があります。これにより、競争力や生産性の低下が懸念されます。
このデジタル化の遅れを解決するためには、教育や研修などを通じて、技術の習得や情報の共有を進めることが必要です。また、政策的な支援や助成金の活用なども有効な手段です。
セキュリティの脅威
デジタル技術を活用した社会においては、常にセキュリティの脅威が生じる可能性があります。例えば、サイバー攻撃によって機密情報が漏洩するなどのリスクがあります。
このリスクに備えて、デジタル技術の導入と、人材の育成を急ぐとともに、セキュリティ対策を徹底することが必要です。
- パスワードの強化
- 二段階認証の導入
- ソフトウェアのアップデート
- マルウェア対策ソフトの導入
- セキュリティポリシーの策定
などの手段で、セキュリティ対策を徹底しましょう。
人材不足
日本では少子高齢化により、労働力不足が深刻化しています。これにより、産業においても人手不足が生じ、生産性の低下や生産量の減少が懸念されています。
そのため、今後は自動化技術やロボット技術を活用し、人手不足を補うことが必要です。また、教育や研修などを通じて、人材の育成を進めることも重要です。
第四次産業革命での日本の課題は多い
日本の第四次革命は、世界と比較して技術力や製品力は高いものの、人手不足やセキュリティの脅威などの課題が残っています。その中で、アジア地域においては中国や韓国などが強い競合相手となっています。
しかし、日本は高度な技術力や製品力を活かし、新たなビジネスモデルの創造やグローバル市場での展開などを進めることで、将来の経済成長につなげることができます。次の章では日本政府が第四次産業革命を推進するための具体的な取り組みの事例を紹介します。*6)
第四次産業革命を推進するための取り組み
日本政府は、第四次産業革命を推進するために、
- デジタル社会の実現
- スタートアップ支援
- 人材育成の支援
- イノベーション創出支援
など、様々な取り組みを行なっています。その中でも代表的な取り組みを見ていきましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業や組織がデジタル技術を活用して、業務プロセスやビジネスモデルを変革することや、デジタル社会への移行を意味します。具体的には、
- ビッグデータやIoTなどデータの活用
- ロボットや人工知能などの技術を活用したプロセスの自動化
- デジタル技術を活用したカスタマーエクスペリエンスの向上
などにより、効率的な業務運営や新たなビジネスチャンスの創出を目指す取り組みです。第四次産業革命において、DXによる産業や社会のデジタル化は、革新的な技術を導入するための土台とも言える取り組みです。
クールジャパン戦略
クールジャパン戦略とは、日本が持つ文化や技術、製品などを海外に紹介し、海外での需要拡大を目指す政策です。特に、
- アニメ
- マンガ
- ゲーム
- ファッション
- 食品
などの分野で海外展開を進めることで、日本の国際競争力の向上や新たなビジネスチャンスの創出が期待されています。また、クールジャパン戦略は、デジタル技術を活用した新しいコンテンツの開発や、デジタルマーケティングの推進など、第四次産業革命の中でも重要な役割を担っています。
【文化産業と経済産業の発展】
出典:経済産業省『第4回クールジャパン戦略会議経済産業省の取組について~アート、デザイン、ファッション、コンテンツ~』p.2(2023年4月)
Society5.0
【Society5.0とは】
Society 5.0とは、人工知能やロボット、IoTなどのデジタル技術を活用し、社会全体を変革することを目指す政策です。具体的には、
- IoT技術を活用したスマートシティ
- 人工知能やセンサー技術を活用したヘルスケア
- クリーンで高効率なエネルギー
などの最新技術を活用することで、社会課題の解決や人々の生活の質の向上の実現を目指します。
【関連記事】Society 5.0とは?わかりやすくSDGs・DX・IoTとの関係を取り組み事例を交えて説明!
第四次産業革命スキル習得講座認定制度
第四次産業革命スキル習得講座認定制度とは、経済産業省が主導する、第四次産業革命の時代に対応した人材を育成するための制度です。この制度では、第四次産業革命に関連するスキルを習得するための講座が認定され、受講者は認定証を取得することができます。
認定証は就職活動や転職活動において、自分のスキルを証明する材料として役立ちます。
第四次産業革命スキル習得講座認定制度の対象講座には、
- 人工知能(AI)
- ロボット工学
- サイバーセキュリティ
- データサイエンス
- ビッグデータ
- ブロックチェーン
- 自動運転技術
- ドローン
- 3Dプリンター
- バーチャルリアリティ(VR)
- 拡張現実(AR)
などがあり、民間企業や大学、専門学校など、様々な団体によって提供されています。この制度を利用することで、第四次産業革命に関連するスキルを身につけ、就職や転職に有利な条件を獲得することができます。
講座一覧はこちら→経済産業省『第四次産業革命スキル習得講座一覧』
また、第四次産業革命スキル習得講座認定制度には、支援金や優遇措置があります。例えば、認定を受けた講座修了者に対して、
- 大学や企業の採用選考での優遇措置
- 奨学金の対象となる
などの特典や優遇措置が提供されることがあります。また、一部の講座では実習やインターンシップの機会が提供されるケースも見受けられます。
給付金と助成金については以下のようなものが挙げられます。
専門実践教育訓練給付金
経済産業大臣が認定した教育訓練講座のうち、厚生労働省が定める一定の要件を満たし、専門実践教育訓練として指定された講座を受講・修了した場合に支給されます。
人材開発支援助成金
企業内での人材育成に利用する場合に、一定の要件を満たすと助成金を受けられる場合があります。
第四次産業革命スキル習得講座認定制度の対象講座を受講することにより、就職や転職に有利な条件を獲得することができます。
このように、様々な取り組みが進められていますが、第四次産業革命を支える人材は現在も不足しています。次の章では、第四次産業革命に適応するためにどうすればいいかを解説します。*7)
第四次産業革命に備えて私たちは何をすればいいのか
これからの時代を生き抜くためには、新しい技術やスキルを身につけ、柔軟に変化に対応することが求められます。第四次産業革命においては、以下のような行動やスキルの習得が重要です。
デジタルリテラシーの向上
今後の社会では、デジタル技術を理解し使いこなす能力が求められます。デジタルリテラシー※を向上させるためには
- パソコンやスマートフォンの基本操作の習得
- インターネットの利用方法の習得
- セキュリティに関する知識の習得
- データの扱い方の習得
- プログラミングやコーディングの習得
- SNSやメディアリテラシーの習得
などが必要です。第四次産業革命では、デジタルの活用が非常に重要な鍵となっているため、積極的にスキルを磨きましょう。
クリティカルシンキングの養成
クリティカルシンキングとは、情報や意見を客観的に評価し、論理的な判断を下すスキルや能力のことです。複雑な情報や問題に対して、客観的に考え、分析する能力がますます必要になります。以下にクリティカルシンキングを鍛えるための、具体的な方法をいくつかご紹介します。
- 常に疑問を持つ
- 自分の意見を形成する前に、あらゆる情報を集める
- 情報の真偽を判断する
- 自分の意見を論理的に説明する
- 自分の意見を批判的に検討する
などを日常的に心がけることで、クリティカルシンキングを身につけることができます。情報の信頼性を判断し、効果的な意思決定ができるようになりましょう。
コミュニケーションスキルの向上
チームでの仕事やプロジェクトへの参加が増えるため、今後も引き続き、効果的なコミュニケーション能力が求められます。明確に伝える能力や他者との協力能力を養いましょう。具体的には、
- 相手の話に耳を傾ける
- 相手の意見を尊重する
- 自分の意見を明確に伝える
- 自分の感情をコントロールする
- 身振り手振りや表情を交えて話す
- 質問をする
- フィードバックを受ける
などをを意識すると良いでしょう。良いコミュニケーションスキルを持つことで、人間関係の円滑化や協力関係の構築がしやすくなります。
また、自分の意見や思いを相手に伝えることができ、自己表現力が向上します。さらに、他人の意見や感情を理解し共感することで、より良い人間関係を築くことができるでしょう。
クリエイティビティの発揮
今後の社会では、新たなアイデアや解決策を生み出す能力が求められます。柔軟な思考や創造性を育て、変化する環境に適応できるようにしましょう。
クリエイティビティの発揮のためには、以下のような方法を試してみることがおすすめです。
- 自由な発想をする
制約や規則にとらわれず、自由にアイデアを思いつく。
アイデアをメモする習慣をつける。 - 多様な視点を取り入れる
異なる文化やバックグラウンドを持つ人々と交流する。
異なる分野の情報や知識を取り入れる。 - リスクを恐れない
失敗を恐れず、チャレンジすることを意識する。
失敗から学び、改善する姿勢を持つ。 - 創造的な環境を作る
創造性を刺激するための環境を整える。
アートや音楽など、創造的な活動に参加する。
AIが人間の仕事をどんどん自動化していく中で、人間はAIにできないことを担い、人間らしい能力を発揮することが、より重要になると言われています。クリエイティビティが発揮できれば、AIに代替されにくい仕事やアイデアを生み出すことができるはずです。
継続的な学習の習慣化
第四次産業革命の最中では、技術や業界の変化が速いため、自己啓発や学習の継続が重要です。新しい知識やスキルを学ぶ意欲を持ち、自己成長に努めましょう。
継続的な学習の習慣化のためには、以下のようなことを意識すると良いでしょう。
- 目標を設定する
- スケジュールを作成する
- 自分に合った学習方法を見つける
- モチベーションを維持する
- 学習を楽しむ
現代の社会は急速に変化しており、新しい技術や知識が日々進歩しています。継続的な学習を通じて自己成長を図ることで、将来の仕事や社会での競争力を高めることができます。
また、これからもさらに平均寿命は延び、「人生100年」の時代が来ると言われています。私たちの多くが前の世代よりも長く生きるようになる中で、自分自身の可能性を広げるためには、終身学習の姿勢を持つことが大切です。
以上のことを意識し、積極的に取り組むことで、第四次産業革命の時代に求められる人材となり、将来の成功につなげることができます。
最後に、第四次産業革命とSDGsがどのように関わっているのかを考えてみましょう。
第四次産業革命とSDGs
第四次産業革命は、新たな価値を創造し、社会課題の解決に貢献することが期待されています。SDGsの達成に向けても、第四次産業革命の技術革新を活用することで、より効率的かつ持続可能な社会の実現につながることが期待されます。
第四次産業革命と特に関連の強いSDGs目標には、以下のようなものがあります。
SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
第四次産業革命の技術は、
- 産業構造の転換
- 新たな産業やビジネスモデルの創出
などを促進することができます。これにより、雇用創出、経済成長、貧困削減につながることが期待されています。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
第四次産業革命によって、省エネルギー技術や再生可能エネルギー技術が発展し、エネルギー問題の解決につながることが期待されています。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」
第四次産業革命によって、スマートシティ技術が発展し、持続可能な都市やコミュニティの実現につながることが期待されています。
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
第四次産業革命によって、省エネルギー技術や再生可能エネルギー技術が発展することで、温室効果ガスの削減が進むことが期待されています。
第四次産業革命とSDGsは、密接に関連しています。第四次産業革命の技術を積極的に活用することで、持続可能な社会の実現に近づくことができると考えられています。
>>各目標について詳しくまとめた記事はこちらから
まとめ:第四次産業革命でも「学び」が大切
第四次産業革命は、私たちの生活をより便利で快適なものにしますが、次第に多くの仕事が機械に置き換わってしまう可能性もあることに注意しなければなりません。
しかし、その変化を恐れるのではなく、適応できるスキルを身につけ、積極的に活用することで、より良い未来を創造することができます。人間の持つ創造性や感性、そして人間同士のコミュニケーション能力は、まだまだしばらくはAIなどの機械には代替できないと考えられています。
第四次産業革命によって生活や仕事が変わることは避けられない以上、誰もが
- 自分の強みを見つける
- 技術に興味を持つ
- デジタルリテラシーを身につける
- コミュニケーション能力を磨く
- 生涯学習の習慣
などを心がけ、第四次産業革命による変化に対して柔軟に対応し、自身の成長やキャリアにつなげましょう。また、これまでの学び方、働き方などの枠に囚われずに、より効率的で自分に合ったスタイルを見つけることも大切です。
第四次産業革命に対応するために、あなたも何か新しい知識やスキルの習得に挑戦しましょう。さらにはそのような学びを無理なく継続的に続け、生涯学習の習慣を身につけましょう!
〈参考・引用文献〉
*1)第四次産次革命とは
経済産業省『第4次産業革命について「産業構造部会 新産業構造部会」における検討内容』(2017年4月)
内閣府『第2章 新たな産業変化への対応(第1節)第4次産業革命のインパクト』
経済産業省『第四次産業革命の進展と産業・就労構造の変化』(2017年10月)
経済産業省『「新産業構造ビジョン」~第4次産業革命をリードする日本の戦略~』(2016年4月)
総務省『第4次産業革命がもたらす変革』
総務省『人口減少時代のICTによる持続的成長 インダストリー4.0』
経済産業省『産業タイプ別の第四次産業革命への対応』
*2)これまでの産業革命の歴史
総務省『第4次産業革命がもたらす変革』
総務省『第1部 特集 データ主導経済と社会変革 第4次産業革命を巡る世界的な動き』
総務省『第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究 』(2017年3月)
*3)第四次産業革命の特徴
経済産業省『ブロックチェーンのイノベーションに対する価値とグローバルな視点で推進のための注力すべきこと』(2022年12月)
経済産業省『第4次産業革命下の人材・雇用政策』
経済産業省『第四次産業革命に向けた産業構造の変化と方向性に関する基礎資料』(2019年5月)
*4)具体例をもとに第四次産業革命が及ぼす影響を確認
総務省『IoTセキュリティ対策として留意すべきルール』
総務省『ICTが拓く未来社会 ユビキタスからIoTへ』
総務省『デジタルで支える暮らしと経済 IoTデバイスの急速な普及』
経済産業省『自動運転に関する取組』
経済産業省『自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究』(2021年3月)
経済産業省『国内初!自動運転車に対するレベル4の認可を取得しました』(2023年3月)
経済産業省『「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」について』
経済産業省 近畿経済産業局『日本初「3D積層造形によるモノづくり革新拠点化構想(Kansai-3D実用化プロジェクト)」について~関西を中心に2025年国際博覧会に繋がる未来の技術開発に挑戦~』(2022年3月)
経済産業省『3Dプリンタが生み出す付加価値と2つのものづくり~「データ統合力」と「ものづくりネットワーク」~』
経済産業省『ChatGPT時代に企業はAIとどう向き合うべきか- AIアシスタントConnectAI活用実績と今後の戦略』(2023年7月)
経済産業省『中小企業のAI活用促進について』
産経新聞『総務省もチャットGPT 松本総務相「試験的に利用」』(2023年4月)
ChatAIとは?仕組みやメリット・デメリット、種類、今後の課題も
*5)第四次産業革命で私たちの生活はどう変わる?
日経ビジネス『「第4次・第5次産業革命」 技術革新がもたらす社会構造の大変化』(2022年6月)
国土交通省『第四次産業革命の進展と産業・就労構造の変化』(2017年10月)
参議院『第4次産業革命が経済社会に与える影響をめぐる議論』
三菱総合研究所『第四次産業革命⑤ -AI・ロボット・IoEが生み出す5つの変革- 人と技術は共進化』(2017年5月)
中小企業庁『第四次産業革命と中小企業について』(2017年5月)
*6)日本における第四次産業革命の課題
経済産業省『第4次産業革命 -日本がリードする戦略-』
経済産業省『第四次産業革命に向けた産業構造の現状と課題について』(2021年4月)
経済産業省『第 4 次産業革命下の人材・雇用政策』
総務省『データ主導経済と社会変革 第4次産業革命実現に向けた課題』
経済産業省『第4次産業⾰命による産業構造の転換と⼈材育成』(2016年12月)
独立行政法人経済産業研究所『第4次産業革命と日本経済の展望(議事概要)』(2020年2月)
*7)第四次産業革命を推進するための取り組み
経済産業省『産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)』
総務省『デジタルで支える暮らしと経済 あらためて注目されるデジタル・トランスフォーメーション』
経済産業省『文化経済政策(クールジャパン/クリエイティブ産業)』
経済産業省『第4回クールジャパン戦略会議経済産業省の取組について~アート、デザイン、ファッション、コンテンツ~』(2023年4月)
経済産業省『Society5.0』(2019年1月)
経済産業省『Society 5.0の実現に向けた教育・ものづくり人材の育成』
経済産業省『第四次産業革命スキル習得講座一覧』
経済産業省『第四次産業革命スキル習得講座認定制度』
*8)第四次産業革命とSDGs
経済産業省『SDGs』