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ジェンダーレスとは男子・女子にとらわれない考え方|問題点とLGBTとの違い

ジェンダーレスとは?世界・日本の現状や問題点とSDGsとの関連性

近年、世界では価値観の多様化が進み、個を尊重する時代へと変化しつつあります。

そのような流れの中、最近ではジェンダーレスという言葉をよく耳にするようになりました!

しかし、ジェンダーレスは比較的新しく生まれた言葉でもあるため、具体的には何を指しているのか分からない方もいるのではないでしょうか?

そこでこの記事では、

などを詳しく説明していきます。

目次

ジェンダーレスとは

ジェンダーレス(genderless)とは、髪型やファッション、言葉遣いや家庭での役割、職業選択、心のあり方などあらゆる場面にて男性らしさ・女性らしさといった境界線を取り払う考え方を意味しています。

ちなみに、ジェンダー(gender)とは、男性・女性という生物学的な性差(sex)に対して、社会的・文化的につくられた性差のことであり「女性だから料理をしなければならない」「男性は外で働くべき」など、男女で区別された役割や考え方を表す言葉になります。

ジェンダーレスとジェンダーフリーとの違い

ジェンダーレスと似ている言葉にジェンダーフリーがあります。ジェンダーレスが社会的・文化的性差をなくそうという考え方に対して、ジェンダーフリーは「性別にとらわれず、それぞれの個性や資質にあった生き方を自分で決定できるようにする」という考え方を言います。※2

例えば、

  • 女性は家事、男性は仕事といった固定観念を押し付けられることなく、自由な選択ができること
  • 「男性は育児休暇をとるべきではない」などといった偏見がなく、性別関係なしに育児休暇がとれること
  • 女性も男性も自由な職業選択ができ、男女格差なく平等にリーダー職や管理職になれること

などが該当します!

つまりジェンダーフリーはジェンダーレスが達成された上で成り立つ考え方とも言えるでしょう。

なぜ近年ジェンダーレスが重視されているのか

では何故、近年、ジェンダーレスが重視されているのでしょうか?

まずは、ジェンダーレスという考え方がいつどのように生まれたのかを確認していきましょう。

「ジェンダーレス」の概念が世界中に広まったのは戦後

世界では長年、政治・経済は男性が担うものであり、女性が第一線で活躍することは良しとされませんでした。そのような男女格差に一石を投じたのは、1945年に設立された国際連合(国連)の基本文書国際連合憲章(国連憲章)です。

当時、世界では2度に渡る世界大戦によって多くの命と人権が奪われた実態があり、そのような悲劇を繰り返さず、世界平和を実現するためにも人権を守ることが重要であるとされました。

国連憲章には基本的人権のほかに男女や大小各国の同権が明記されています。これにより、世界は協力して性別や人種などによる差別をなくすことが求められるようになり、ジェンダーレスの概念が認識され始めたのです

国連の取り組み

国連は男女格差を改善するために様々な取り組みを行ってきました。1946年には女性の地位向上を図る目的で、「国連女性の地位委員会(CSW)」を設置しています。さらには、1948年に世界の自由・正義・平和の基礎は人々の基本的人権の尊重であるとする「人権に関する世界宣言(世界人権宣言)」を、1967年に男女格差をなくすための「女性に対する差別撤廃宣言」を採択しています。

その後、国連憲章や上記の宣言を受け、1985年に男女の完全な平等の達成を目的とする「女性差別撤廃条約」を締結しました。これ以降、新聞や雑誌にも「ジェンダー」という言葉が取り上げられるようになり、市民に普及していったのです。※3※4

「多様性を認める」価値観の広がり

男女平等の法制化は、雇用や働き方の変化や、性意識や考え方の違いを認める教育や政策の普及へと繋がりました。例えば、国連関係機関が繰り返し呼びかけているLGBTQ(性的マイノリティの人を示す総称)の保護に対する法律化が進んだ国もあります。※5

さらに世界では、異年齢の児童を1つのクラスにして教育する学校や、教育方針に合う小学校を自由に選択できる制度も誕生しています。※6

このように多様性を認め、一人一人の人権が尊重される世の中に変化したことでジェンダーレスも注目され、重要視されるようになりました!

新型コロナウイルスによってジェンダーの壁が浮き彫りに

世界でジェンダーレスが重視されるようになった要因の1つに、新型コロナウイルス感染症の流行も挙げられます。

コロナ禍において、世界各地で

  • 女性のコロナ感染リスクの増加(最前線で働く医療従事者の7割が女性)
  • 女性は男性よりも低収入・不安定な職の割合が多く、経済打撃を受けやすい
  • 家事・育児・介護の需要が増加し、男女間の不平等がさらに拡大
  • 女性・女児への暴力が増加

といったジェンダーの壁が浮き彫りとなり、ジェンダーレスの重要性が改めて認識されるようになったのです。※7

ジェンダーレスに関する世界の現状と問題点

ここからは、世界におけるジェンダーレスの現状を確認していきましょう。

世界国際フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2022」を公表(内閣府男女共同参画局)

世界各国でジェンダーレスがどのくらい進んでいるか把握する指標の1つにジェンダーギャップ指数(男女平等格差指数)があります。

これは、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が発表しているもので、2022年度は146ヵ国のデータが公開されています。

こちらは昨年のデータですが、2023年のジェンダーギャップ指数が2023年6月に発表されました。

各国が自国の男女のギャップの差をしっかり把握し解消していくことを目的とするこの指数は、

  1. 経済
  2. 政治
  3. 教育
  4. 健康

の4つの分野のデータから作成されており、0は完全不平等1は完全平等を示しています。つまり、このデータは値が0に近いほど男女格差が大きく、1に近いほどジェンダーレスが進んでいることを表すものとなっているのです。※8

次では、ジェンダーギャップ指数第1位のアイスランドと、最下位のアフガニスタンの現状を詳しく見ていきましょう。

ジェンダーギャップ指数第1位のアイスランドの現状

Global Gender  Gap Report  2023をもとに筆者作成

アイスランドは、ジェンダーギャップ指数ランキングで12年連続1位を獲得しています。アイスランドは4つの分野全てが世界の平均スコアを上回っていますが、特に「政治」「経済」において、世界の平均指数が低い中で高い数値を示しています。

その理由として、アイスランドでは女性が政治や仕事において活躍するために

  • 2009年に初の女性首相が誕生。その後も2017年~2022年現在に至るまで女性首相が就任
  • 議員や会社役員の約4割を女性とする※9クオータ制度*の導入
  • 育児休暇を男女どちらも必ず取得しなければならない法律を制定
  • 2018年、性別で賃金差が生じることを禁止する法律を制定
  • 企業の女性比率が4割以上※10
  • 大学卒業生の66%が女性
  • 女性の就業率80%以上※11

といった、ジェンダーレスの法律が整備がされている事が挙げられます。

そんなアイスランドは、元々ジェンダーギャップが大きい男性優位の社会でした。しかし1975年に2万5000人の女性市民(5人に1人)が男女平等を求める大規模なストライキとデモを行った歴史があります。男女平等を実現するために国民が動き、現在のジェンダーギャップ指数1位の国を作り上げていったのです。

クオータ制度とは

議員や企業の管理職などの女性の割合を定め、積極的に起用する制度。女性の社会進出推進やジェンダー格差是正の目的で取り入れられる。

ジェンダーギャップ指数最下位のアフガニスタンの現状

続いて、ジェンダーギャップ指数が最下位であるアフガニスタンの現状を見ていきましょう。

Global Gender  Gap Report  2023をもとに筆者作成

アフガニスタンのスコアを詳しく見ていくと、「健康」以外の3分野が、世界平均値より大きく下回っていることが分かります。

これは、アフガニスタンでは宗教上の理由や紛争に伴う政治混乱などにより、女性は

  • 女性の労就労・教育を規制する慣習や規範がある※10
  • 女性就労率22.7%(男性76.4%)
  • 識字率 女性29.8%(男性55.5%)※8
  • 戦争で配偶者を失った女性や貧困女性には生計を立てる手段がない※13

といった環境の中で生活しなくてはならない現状が根付いていることが関係しています。

そのような中、2021年8月にタリバン政権がアフガニスタンの実権を握ったことで政治状況が更に変化しました。これ以降、世界各国はアフガニスタン女性への人権侵害が加速することを懸念し、アメリカやEUなどの計18ヵ国が女性の保護を呼びかける共同声明を発表したり、駐日アフガニスタン大使がタリバン幹部に女性の人権保護を呼びかけたりしている状況が生じています。※14

ジェンダーレスに関する日本の現状と問題点

続いては、日本の現状を見ていきましょう。

日本はジェンダーギャップ指数が低い

2023年の日本のジェンダーギャップ指数は146ヵ国中125位であり、昨年に引き続き先進国の中では最下位です。※10

スコアを確認すると、「教育」「健康」の分野では限りなく1に近い値であり、ジェンダーギャップは非常に少ないことが、一方で「経済」や「政治」は世界平均値に届いておらず、ジェンダーギャップが大きいことが分かります。

ここからは各分野の現状を掘り下げて見ていきましょう。

教育・健康分野ではジェンダーレスが進んでいる

日本は性別に関係なく教育や医療を受けられる国であり、教育・健康分野におけるジェンダーレスは進んでいると言えるでしょう。特に教育の分野では、学校での男女の区別がなくなりつつあり、今後さらにジェンダーレスが進むと予測されます。

実際、筆者が行った学校関係者へのヒアリングによると、一部の学校では

  • 男女混合の名簿を使用
  • トイレの表記の色をに統一
  • 当番・グループ・係活動で男女の区別をなくす(例:男の子は5人まで、など)
  • 生徒や児童の呼び方を「さん」に統一

といった取り組みが行われていることが分かりました。

この他にも、日本各地において「制服のジェンダーレス化」も広がっており、スカートやスラックス、リボンやネクタイなども自由に選べる学校が増えています。※15

ジェンダーレス制服の導入例

ここでは、ジェンダーレス制服を採用した東京都江戸川区立瑞江第二中学校の例を見ていきましょう。

<東京都江戸川区立瑞江第二中学校の制服>

瑞江第二中学校は、「生徒・保護者自らが選択できる標準服に」というコンセプトのもと、令和3年度より従来の学ランやセーラー服を廃止し、ブレザーやポロシャツに統一しました。制服の表記も女子・男子で区別せず、A・B・C型へと変更しています。「生徒・保護者自らが選択できる標準服に」というコンセプトのもと、生徒自身の意思や個性を尊重したジェンダーレス制服となっています。

▶︎関連記事:「株式会社トンボ |「ジェンダーレス制服」から生まれる新しい選択肢

政治・経済分野でのジェンダーギャップが大きい

続いては、政治・経済分野の現状を確認していきましょう。

政治分野のジェンダーギャップ指数が低い原因

<主要各国の国会議員に占める女性の割合>

政治分野における日本のジェンダーギャップ指数は0.061(156ヵ国中147位)であり、世界に大きく遅れをとっていることが分かります。これは、

  • 日本の国会議員の女性割合が9.9%と、諸外国に対し非常に低い値であること
  • 大臣の女性割合が10%であること
  • 過去50年間に女性首相がいないこと

といった、女性の政治参加割合が非常に低いことが要因となっています。

経済分野のジェンダーギャップ指数が低い原因

<令和2年度 性別にみる賃金の差>

続いて、経済分野における背景を見ていきましょう。日本の経済のジェンダーギャップ指数は0.604であり世界平均値(0.583)とほぼ同等の値ですが、決して高い値ではありません。

かつての日本は、女性の参政権がないことや家制度の施行といった、男尊女卑の考え方がまかり通っていました。戦後、徐々に女性の社会進出が進むものの、依然として男女格差は残り続けており、現代においても

  • 就労割合や形態、賃金に男女差が大きい
  • 女性の非正規雇用は5割以上
  • 管理職の女性の割合が14.7%と低い
  • 男女間の賃金格差は22.5%※10

というような就労格差が生じています。日本でジェンダーレスを進めていくにはこれらの問題を解決していく必要があるのです。

日本が政治分野でジェンダーレス化が進んでいない社会的背景

日本は、制服の自由化など少しずつジェンダーレスが進みつつあるものの、政治・経済の男女格差によって諸外国よりもジェンダーレス化が遅れていることが分かりました。

この章では、政治分野でジェンダーレス化が進まない背景を確認していきましょう。

<議員活動や選挙活動中に受けたハラスメント行為の内容と男女の割合>

2021年に行われた内閣府の調査によると、議員として活動している人のうち、57.6%の女性がハラスメント行為を受けたと報告されています。※16

さらに地方議会議員選挙立候補を断念した方のその理由として、

  • 仕事や家庭生活のため選挙運動にかける時間が少ない 女性48.9%(男性36.5%)
  • 当選した場合、議員生活と家庭生活との両立が難しい 女性30.4%(男性18.5%)
  • 性別による差別や、セクシャルハラスメントを受けた 女性24.9%(男性0.9%)

などが報告されました。※16いずれの数値も女性>男性となっており、女性は家事や育児の負担が大きいことやセクシャルハラスメント被害に遭いやすい、といった現状が伺えます。

ジェンダーレス化するための国・自治体の取り組み

ここからは、国や自治体がどのようにジェンダーレスを推進しているのか、その取り組みを見てみましょう。

法制化

日本には「男女雇用機会均等法」「男女共同参画社会基本法」といった男女平等に関する法律が存在します。この2つの法律は一見似ているようで、それぞれ内容や目的が異なるものとなっています。

男女雇用機会均等法

1985年に制定された男女雇用機会均等法は、「雇用に関する男女平等」を定めた法律です。※15制定当初は求人募集や採用、昇進などの取り扱いを性差なく平等にすることを事業主の「努力義務」とする法律でしたが、1997年の法改正にて女性に対する差別の禁止が規定され、法的拘束力を有するようになります。同法はその後も改正を重ね、

  • 妊娠や出産、産前産後休業の不利益取扱いの禁止
  • 男女双方に対してあらゆる労働場面における差別的取り扱い禁止
  • 男女双方に対するセクシュアルハラスメントの配慮義務

といった規定を定めており※17、就労に関するジェンダーレスを支えています。

男女共同参画社会基本法

1999年に制定された男女共同参画社会基本法は、社会生活でのジェンダーをなくすことを目的とした法律であり、※18

  • 男女の人権が尊重されること
  • 政策の取り決めに男女が対等にかかわること
  • 育児や介護、その他の家庭生活における男女の役割が平等であること

といった理念や方針を掲げています。

同法は国や地方公共団体、国民の責務についても定めており、行政に対しては男女共同参画社会形成を推進する施策を策定するよう求めています。

次項では、実際に政府が行っている取り組みを確認していきましょう。

育MEN(イクメン)プロジェクト

育MENプロジェクトは、育児する男性を増やすことを目的とした政府主体の取り組みです。

日本では、子育ては女性がするものという固定観念が根強いています。実際、令和2年度における育児休暇取得率は女性が81.6%、男性が12.6%と、まだまだ男女差が大きい現状があります。※19

こういった格差を解消するため、育MENプロジェクトは

  • 企業向けに育児休暇導入に役立つコンテンツを発信
  • イクメン企業アワード(男性の育児と仕事の両立を推進する企業を表彰)」の設置
  • イクボス(育児と仕事の両立を推進する管理職)アワード」での表彰
  • 育児休暇を取得した男性が体験談を伝える「スピーチ甲子園」を実施

などの取り組みを行い、男性が当たり前に育児休暇を取得できる環境や風土の普及に努めています。

ジェンダーフリーのイラスト集の配布

男女平等実現への方針を示す第5次男女共同参画基本計画は、“無意識の思い込みが男女どちらかに不利に働かないよう、メディアとも連携しながら幼少期から大人までを対象に広報啓発等に取り組む必要がある。”を掲げています。

男女共同参画局(あらゆる場面での男女平等を推進する内閣府の組織)はその取り組みの一環として、ジェンダーフリーのイラスト集を無料配布しています。

性別によって固定化されやすい職業生活役割のイメージを払拭する目的で作成されたこのイラスト集は、25種の職業と料理や乳児の世話などといった生活のシーン15種が描かれており、その全てに男女どちらものイラストが載っているのが特徴です。

>>固定的役割にとらわれないイラスト集はこちら

固定的役割分担にとらわれないイラストデザイン集|男女共同参画局

ジェンダーレス化のための企業の取り組み

続いては、企業の取り組みを見ていきましょう!

【男性の育休取得を推進】積水ハウス株式会社

大手ハウスメーカーである積水ハウス株式会社は、2018年度より男性社員の1ヶ月以上の育児休業完全取得(特別育児休業制度)を推進しており、先述した内閣府のイクMEMプロジェクトの「イクメン企業アワード」にて2020年にグランプリを受賞しています。

イクメン休業と呼ばれるこの制度は、スウェーデン視察にて男性の育児参加率の高さに感心した仲井嘉浩社長自らが取り入れたものであり、取得率はほぼ100%となっています。※20

育休取得者からは

  • 夫婦お互いが尊重し、認め合えるようになった
  • 女性の気持ちや苦労が分かった
  • 顧客からも好意的な声が多い
  • 本部主導で、支店を超えた協力体制を構築してもらえた

などといった声も上がっており、社員の満足度向上に繋がっていることが伺えます。※21 育児休暇の充実は家庭と仕事のどちらにも良い影響が生じることが分かります。

【性別にとらわれない幸せのかたち】プリモ・ジャパン株式会社

プリモ・ジャパン株式会社は、アイプリモ、ラザールダイヤモンドブディックといったブランドを展開するブライダルジュエリー専門店です。

結婚や恋愛のかたちも多様化する中、同社は積極的にジェンダーレスに取り組み、性別に捉われない幸せのかたちを追及しています。実際に、

顧客に対して

  • 指輪のメンズ・レディース表記をやめる※22
  • 顧客情報登録の際の性別が「男・女・その他」から選べる
  • 社員に対して
  • 通称名(ビジネスネーム)が使える
  • LGBTQガイドラインの新設
  • 性的指向や性自認に関連した相談窓口の設置
  • LGBTQ全社員研修の実施
  • 制服がスカートがスラックスか全社員が自由に選べる

といった取り組みが行われており、企業のLGBTQ(性的マイノリティの人を示す総称)に関する取り組みを評価する「PRIDE(プライド)指標2021 」ではゴールドを受賞しています。

【女性リーダーの登用推進】ちばぎん証券株式会社

ちばぎん証券株式会社は、「プラチナえるぼし(女性の活躍を推進する企業の認定制度)」に認定されている企業であり、女性のキャリア形成の支援や性的マイノリティに対する理解推進など、様々なジェンダーレスの取り組みを行っています。※23

同社は女性リーダーの登用にも力を入れており、「2026年7月1日までにリーダー職(部下を持つ立場)以上に占める女性比率を30%以上とする。」※24という目標のもと、金融業界では国内初となる女性支店長を登用しています。2021年現在、リーダー職以上の女性の登用は25.5%であり、目標の30%に向けた今後の取り組みも期待されます。

SDGsとの関わり

最後に、SDGsとジェンダーとの関わりについて見ていきましょう。

SDGsとは

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、人類が地球に住み続けていくために定められた、環境・社会・経済に関する17の世界共通目標です。SDGsは国際連合加盟国の全会一致で採択されたものであり、2030年までの達成が目指されています。

SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」

17の目標のうち、SDGs目標5はジェンダーを取り上げています。

世界では女性の権利が軽視され、差別が起こっている現状があります。それ故にこの目標は「男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げること」を掲げた、女性にフォーカスされたものとなっています。

ジェンダー平等を実現するために、目標5では次の9個の具体的な方法(ターゲット)が設定されています。

  • 【5.1】あらゆる場所におけるすべての女性および女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
  • 【5.2】人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女子に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
  • 【5.3】未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
  • 【5.4】公共のサービス、インフラ、および社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
  • 【5.5】政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する。
  • 【5.6】国際人口開発会議(ICPD)の行動計画および北京行動綱領、ならびにこれらの検討会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを確保する。
  • 【5.a】女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ、および土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
  • 【5.b】女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
  • 【5.c】ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性および女子のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する。

つまり、これらのターゲットは女性への暴力や差別をなくすことや、社会的に男女が同じ機会や権利を持つことを目指した内容となっています。

全ての人々があらゆるジェンダー問題に脅かされることないよう、世界は一丸となってジェンダーレスを進めていくことが求められます。

まとめ

ジェンダーレスは、男だから、女だから、というような社会的な性差をなくしていくことです。

世界のジェンダーレス化は社会的背景や慣習などの影響により各国のギャップが大きいのが現状であり、特に日本はジェンダーレス化が遅れている国の1つと言えるでしょう。しかし、国や企業・教育現場による積極的な取り組みで、徐々にジェンダー問題は改善されてきているのも事実です。

SDGsにもジェンダー平等を実現することが目標に掲げられています。性別にとらわれず誰もが過ごしやすい社会を目指して、世界全体でジェンダーレス化が進んでいくことが望まれます!

<参考文献>
※1)「ジェンダー」の定義について(使用例) [PDF形式:179KB]
※2)小学館 大辞泉編集部著 松村明監修『大辞泉」小学館
※3)4 「ジェンダー」という外来語,見聞きする機会が急に増えたのはなぜでしょうか – ことばの疑問 – ことば研究館
※4)第2章 計画策定の背景
※5)LGBT | 国連広報センター
※6)教育における『多様性』の保障とその対応の国際比較
※7)第1部 基本的な方針
※8)6)Global Gender Gap Report 2023
※9)3)澤田 季江著『ジェンダー視点で学ぶ女性史』
※10)日本経済新聞 第48782 号
※11)男女平等先進国|在アイスランド日本国大使館
※12)アフガニスタンの現状と問題
※13)【技術協力】アフガニスタン・女性の貧困削減プロジェクト|独立行政法人 国際協力機構
※14)アフガニスタン情勢(タリバーンとの会談)|外務省
※15)標準服・体育着・バッグ
※16)女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告|内閣府男女共同参画局
※17)Ⅲ 男女雇用機会均等法成立 30 年を迎えて
※18)男女共同参画社会基本法|男女共同参画局
※19)令和 2年度雇用均等基本調査
※20)「男性の育休取得100%」の積水ハウス。 仲井嘉浩社長とスウェーデン大使が語る
※21)積水ハウスグループの取り組み | IKUKYU.PJT
※22)結婚指輪の商品表記を、順次「ジェンダーフリー」に | ニュースリリース | プリモグローバルホールディングス株式会社
※23)「えるぼし」認定企業一覧
※24)ダイバーシティ推進の取組みについて 多様な人材の活躍推進