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遺伝的多様性はなぜ必要?原因やメリット、身近な事例を解説!

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環境への意識の高まりから、「生物多様性」の大切さが認知されるようになってきました。それでは、研究者が重要さを訴える「遺伝的多様性」とは何でしょうか?

遺伝的多様性は、見た目でその多様性が確認できるものもありますが、正確には研究者による遺伝子の調査が行われなければ確認することができません。

そのような目に見えない面も多い遺伝的多様性ですが、実は生物多様性を考える上で非常に重要です。博物館員の筆者とともに、まだあまり知られていない生物の「遺伝的多様性」の神秘に迫ってみましょう!

遺伝的多様性とは

【ニシキウズガイ科イボキサゴの多様な色と模様】

ニシキウズガイ科イボキサゴの多様な色と模様
出典:九州大学総合研究博物館『佐藤勝義コレクション イボキサゴ』(筆者撮影)

遺伝的多様性(遺伝子の多様性)とは、 同じ種でも形・色・模様・性格・生態などに多様な個性(個体差)があるように、遺伝子に違いがあることです。また生物多様性を構成する要素のひとつでもあります。人間をはじめ、ほとんどの生き物が同じ種の中でも遺伝的多様性から、さまざまな個性をもって生まれます。

生物多様性とは

生物多様性とは、その場所において生命の循環が継続していくために、生き物の種類、種類の中でも遺伝子の違い、さらには森・湿原・海などの環境が多様に存在し、互いに影響し合って成される個性のつながりです。

【遺伝的多様性の例:アサリの殻の多様な模様】

アサリの殻は目で見てわかりやすい例と言えます。それぞれ個性的な色・模様が観察でき、この違いも遺伝的多様性によるものです。

生物多様性を構成する3つの多様性

生物多様性は

  • 生態系※の多様性
  • 種多様性※
  • 遺伝的多様性

で構成されています。さらに遺伝的多様性は

  • 遺伝子型※の多様性(固体の遺伝子構成の多様性)
  • 遺伝子プール※の多様性(個体群※の遺伝子構成の多様性)

この2つの多様性を合わせたものです。

生態系

生き物と自然環境がお互いに影響しあいながら作る仕組み。エコシステム。生態系の多様性とは陸域・水域に始まり森・川・里山・湿地・海などが多様に生態系レベルでもつながり合い影響し合うこと。

種多様性

同じ地域・場所などに生息する生物の中にさまざまな生物種が共存していること。

遺伝子型

生物の遺伝子を構成する分子構造。

遺伝子プール

互いに繁殖可能な固体で構成された集団が持つ遺伝子の総体。個体群の選び方によって、さまざまな遺伝子プールを考えることができる。人の場合例えば、ヒト全体・日本人・特定の都道府県の人など。

【日本の自然環境と生き物のつながり】

つまり、地球上の生き物は皆、

  • 多様な環境と環境とのつながり
  • 環境に応じた多様な生物種のつながり
  • 生物種の中の多様な遺伝子をもつ個体同士のつながり

という複雑で壮大な生命のつながりの中で生きているのです。*1)

なんとなく理解できましたか?よりイメージをはっきり持てるように、次では遺伝的多様性の身近な例を紹介します。

遺伝的多様性の身近な事例

さきほどアサリの殻から見える遺伝的多様性を紹介しましたが、他にも目で見てわかりやすい遺伝的多様性の代表がナミテントウです。しかし、多くの遺伝的多様性は、実は多くの個体を詳しく観察し、遺伝子の調査をしなければその全体像や、そこに隠された真実を知ることができません。

ここでは目で見てわかりやすい例としてナミテントウと、目で見てわかりにくい例として、レッドリストで1999年に絶滅危惧種Ⅱ類に指定されたメダカの例を紹介します。

ナミテントウの同じ種間でも個性的な色・模様

ナミテントウは、日本で確認されている約180種ほどのテントウムシの中でも、最も普通に見かけるテントウムシの種です。ナミテントウは同じ種の中でも遺伝的に決まったさまざまな色・模様を持つ個体が存在し、そのバリエーションは200を超えると言われています。

【遺伝的多様性の例:ナミテントウ】

ナミテントウの色・模様を形成する遺伝子は特定されていて、「パニア(Pannier)」と呼ばれる遺伝子です。このパニア遺伝子の働きをなくすと、ナミテントウは翅(はね)全体が赤い個体が生まれます。

【ナミテントウの多様な翅の斑紋】

身近でよく見るナナホシテントウはナミテントウとは別種です。ナミテントウほどではありませんが、よく見るとナナホシテントウの間でも色や模様から遺伝的多様性を観察することができます。

【ナナホシテントウ】

上の写真より、下の写真のナナホシテントウは黒い模様が大きいことがわかります。

【遺伝子攪拌】日本のメダカが大変なことに?!

童謡「めだかの学校」にも歌われるように、メダカは日本ではとても身近な生き物でした。しかし近年では絶滅危惧種Ⅱ類※に指定されるほどの危機に直面しています。

絶滅危惧種Ⅱ類

絶滅の危険が増大している種。

【キタノメダカ】

【ミナミメダカ】

同種ではなかったキタノメダカとミナミメダカ

日本のメダカは、19世紀半ばにシーボルト※が海外に発表してから近年まで1種(Oryzias latipes)のみだと考えられていました。しかし、1980年代の研究で「北日本集団」と「南日本集団」に分かれることが解明されました。

【キタノメダカ( Oryzias sakaizumii)とミナミメダカ( Oryzias latipes)】

よく観察するとキタノメダカはミナミメダカに比べ

  • オスの背びれの切れ込みが小さい
  • ウロコが網目状に黒っぽい
  • 体の後ろの方に不規則な黒い斑点がある

など特徴に違いがあります。

シーボルト

フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト。1823年8月に来日したドイツの医師・博物学者で長崎出島の三学者の一人。

【シーボルト】

遺伝子攪拌(いでんしかくはん)とは

メダカは日本列島に広く分布していますが、実は地域集団ごとに遺伝子的に分かれていることが明らかになりました。しかし、この事実が解明される以前、「絶滅危惧種Ⅱ類」に指定されたことから、誤った形での保全活動が行われていたのです。

例えば地域の川にメダカを取り戻そうと、各地でメダカの放流が行われました。その際、他の地域のメダカや商業用に繁殖されたメダカが使われることがあったのです。この結果、その地域に本来生息しているはずのない地域のメダカが、各地の地域在来のメダカと交雑してしまいました。

このような主に人為的な要因により、外来種が侵入するなどが原因で、本来そこに生息する個体群が形成していた遺伝的多様性を失ってしまうことを「遺伝子攪拌」と呼びます。

このメダカの例では、地域集団ごとに何万年もかけて形成された、その集団特有の遺伝的多様性を、本来いるはずのないメダカが放流されたことにより乱されてしまいました。

【メダカの遺伝子解析による分布図】

このように、一見同じ種の生き物でも、その個体の地域ごとに特有の遺伝的多様性が形成されていることがあります。これを乱さないためには専門的な知識と調査のもと、慎重に保全活動の方法を選ぶ必要があります。*2)

それでは遺伝的多様性はなぜ重要なのでしょうか?次の章からは遺伝的多様性にさらに踏み込んで、その重要性を確認していきます。

遺伝的多様性の重要性

私たち人間の社会性を例に考えてみましょう。全く同じ遺伝子で、同じ見た目・同じ性格・同じ能力…と全く同じ人々からなる集団は、どのように生活するでしょうか?

多様な個性の人々からなる集団に比べて、何か問題が起きても解決の選択肢が少なくなるでしょう。手に入れたい物が同じ故に争いも起こりやすいかもしれません。

しかし実際の私たちの社会は、活動的な人・控えめな人・好奇心が強い人・保守的な人…など、さまざまな個性の人から成り立っています。このおかげで、私たちは多様な考え方から意見を出し合うことができ、それぞれの短所・長所を補いあうこともできます。

つまり、遺伝子多様性は生き物のあらゆる可能性を広げ、同時にリスク対策を厚くしているのです。

遺伝的多様性が存在するメリット

遺伝的多様性は、より良い遺伝子を子孫に残すために、さまざまな個性の異性の中からパートナーを選んだり、トラブルに遭遇してもそれぞれの個体が多様な反応で対処したりすることにより、一様に死に絶えてしまうリスクを低減しています。

また、遺伝的多様性は生き物の進化やその多様性を支えるものでもあります。たくさんの個性の中から、より環境に適した個体が生き残り、子孫を残すことが繰り返されることによって、その特徴が固定化され新たな種を生み出すなど、種多様性の豊かさにも深く関係しています。

その環境により適合した子孫を残す

遺伝的多様性が豊かな個体群の中では、その生き物の中でもよりその環境に適合した個体が子孫を残しやすくなります。より豊かなパートナーの選択肢の中から子孫を残すことができ、結果としてその環境で淘汰されるリスクを個体群全体として低減することができます。

遺伝的多様性の減少は絶滅のリスクを上げる

つまり遺伝的多様性は、その環境に生息する生き物の種全体としての適応力とも直結します。遺伝的多様性が豊かでたくさんの個性の異なる同種が存在すれば、環境の変化や突発的なトラブルが起こっても、それに適応できる個性を持った個体が生き残り絶滅から免れる確率を上げることができるのです。

環境の多様性・種多様性・遺伝的多様性は直結している

【世界の生き物の絶滅のリスク】

世界ではこの瞬間にも絶滅の危機に瀕しているとされる種が37,000種以上あると言われています。その原因は、

など様々ですが、そこに至るまでに

  1. 環境の変化や人間による開発・汚染・外来種侵入がおこる
  2. その場所の在来の生き物の種数・種の全体数が減少
  3. 個体数減少により、その場所の種ごとの遺伝的多様性も失われる
  4. その場所の種ごとの環境への適応力が低下する
  5. その場所で極めて少なくなる、またはいなくなってしまう種が出る
  6. 種多様性が失われる
  7. その場所に形成されていた循環が崩れ他種の生き物にも影響を与える
  8. その場所の環境変化が他の場所の環境にも影響を与える
  9. 生態系の多様性が失われ、生物多様性全体が失われる

といった連鎖が起こっていると考えることができます。

【人間の活動による生物多様性の危機】

遺伝的多様性はそもそも、その種の個体数が十分でないとさまざまな個性を豊富に維持できません。生息環境の変化や乱獲などで個体数が急激に減少することは、その種の遺伝的多様性に深刻なダメージを与え、さらなる個体数減少や最悪の場合その場所からその種が消えてしまうなど、負のスパイラルに陥ってしまう危険があるのです。*3)

続いては、遺伝的多様性が、私たち生命体の進化との関わりを探っていきます。

遺伝的多様性と進化の関係

地球上の生き物は生命が誕生して以来、さまざまな環境に適応しながら生き抜く確率を上げるために進化してきました。現在の地球の環境・生物多様性はそのころから長い時間をかけて形成されたものです。

39.5億年前の生命

東京大学の研究では地球最古の生命の痕跡を発見し、およそ39.5億年前から生命が活動していたことを明らかにしました。発見されたのは海に住んでいたと考えられる微生物です。

まだ太古の生命の活動は多くが謎に包まれていますが、遺伝的多様性が豊かになるにつれて、種多様性も豊かになっていったと考えられます。

【確認された地球最古の生命の痕跡】

※上の写真で黒く見えるものが生命由来の炭質物で、39.5億年〜33億年前に海洋に生息していた微生物の痕跡です。

生命誕生より遺伝子誕生が先だった

地球上にいつ最初の生命が誕生したかはまだ定かではありません。しかし、最初の生命が誕生する前に、当時の環境でRNA※とDNA※が形成され、その共存が生命誕生につながったと考えられています。

RNA

リボ核酸。一部のウイルスや動植物細胞の核と細胞質に存在する。

DNA

デオキシリボ核酸。遺伝子の本体で一部のウイルスや生命体の全ての細胞の中に存在する。配列順序に遺伝情報が含まれている。

【生き物の進化と生物多様性】

つまり、現在の豊かな生物多様性の起源は、非生命体(この場合タンパク質)からRNAやDNAが形成され、そこから「自然な進化」によって生命が誕生して起こったと考えられています。RNAもDNAも多様な進化をしたことがわかっており、遺伝的多様性は生き物が多様に進化するために不可欠な要素です。

生命誕生以前のRNAやDNAの姿はまだはっきりとはわかっていませんが、北海道大学が、これらの材料となるものを隕石から検出したと発表しています。私たちは生命誕生の謎にも、どんどん迫っています。

【マーチソン隕石】

※マーチソン隕石は1969年にオーストラリアに落下した隕石です。RNAやDNAの形成に必要なアミノ酸(タンパク質の成分)や塩基(酸と反応して塩ができる物質)などが検出され、これらの物質が地球外からもたらされたことが示唆されました。*4)

次の章では、人間と環境が「良い関係」を築くスタイルの1つとも言える、伝統的な農業と遺伝的多様性の関係を考えていきます。

遺伝的多様性と農業

【自然の恵み】

遺伝的多様性は農業システムの回復力を高め、近年深刻化している気候変動による影響への適応方法を模索する上で重要だと言われています。実は伝統的な農業によって何千年もの間、多くの栽培植物や家畜の品種の遺伝的多様性が保全されていた例もあるのです。

遺伝的多様性から見る農業と自然の関わり

伝統的な農業で作物の遺伝的多様性が維持され続けているという事実は、意外に感じるかもしれません。現代の大規模農業とは違い、伝統的な農業は自然の恵みを受け取りながら、上手く生命と資源を循環させているのです。

しかし産業革命以降、工業でも起きた「大量生産・大量消費・大量廃棄」の流れのように、農業でもより収穫量の多く・病気に強く・見た目や味の良い作物の追求が行われました。これは大規模に商品として農作物を生産するためには必要な努力でしたが、その結果それまで伝統的な農業により保全されてきた作物の遺伝的多様性はその多くが失われてしまいました。

遺伝的多様性を守る里地里山の重要性

【飛騨市の地域との交流と支えあい活動の様子】

里地里山とは、原生的な自然と都市の中間に位置する、人の集落と林・農地・ため池・水路・草原などからなる地域です。農業林業人が自然に働きかけて形成された環境ですが、里地里山では豊かな生物多様性が維持され、遺伝的多様性も保全されてきました。

しかし、現在の日本においての里地里山は人口の減少や高齢化産業や人々の生活スタイルの変化によって失われつつあります。それまで人間の活動により行われていた自然資源の循環がなくなると、それが大きな環境の変化となり、形成されていた生物多様性が質・量ともに失われるおそれがあります。*5)

このような生物多様性の危機ともいえる状況を、良い循環に戻すことは可能なのでしょうか?次の章では、遺伝的多様性を含む生物多様性の保全のために私たちができることを考えていきましょう!

遺伝的多様性を保つために私たちが理解すべきこと

生物多様性の保全が大切なことが認知され始めたのは、まだ最近のことと言えます。そして、生物多様性が生態系の多様性・種多様性・遺伝的多様性から成り立っていて、複雑に影響し合って生命が循環していることは、まだよく認知されていないのが現状です。

まず何より先に、生命の循環システムの仕組みを全ての人々が常識的な知識として身につけることが重要です。実際に学校など教育の場でしっかりと教える取り組みが求められています。

まだ未解明の領域が多いことを知る

遺伝的多様性の存在・重要性は確認されていますが、この分野はまだ未解明の部分が多く残っています。遺伝的多様性の調査・研究には非常に多くの標本(サンプル)や専門的な知識と技術を持つ人の参加、そして国や地域、土地の住民などの理解・協力も必要です。

私たちは、このような研究が環境保全の適切なあり方を考える上で必要なことと理解しましょう。例えば貴重な自然の残された地域などを、研究者も含めて立ち入り禁止にして保護するのではなく、適時有識者が調査や管理をし、そのデータを蓄積していくべきです。

伝統技術と最先端技術の融合

遺伝的多様性と農業の関係の章で、伝都的農業では私たち人間は環境の循環システムと上手く共生していたことに触れました。そして産業革命以降、急速に私たちの生活のスタイルや産業の構造は変化し、日本は便利で豊かな暮らしを手に入れたと言えます。

しかし、この便利で豊かな暮らしは、環境破壊や目先の利益目的だけの資源利用を経て、このままでは長く持続することが困難なことがわかりました。そこで、今後は自然と共生できる伝統的な技術を大切にするとともに、さらなる技術開発によって、不便な生活に戻ることなく自然と共生していくことを目指しています。

【自然と共生する世界の実現に向けて】

国や企業・研究機関の努力も必要ですが、このような展望を理解して私たちも生活のスタイルを少しづつ変えて行くことも必要です。

遺伝的多様性を保つために私たちにできること

それでは遺伝的多様性を守るために、実際私たちができることを考えてみましょう。遺伝的多様性を守るためには十分なその種の個体数が必要ですから、

  1. 個体数を確保するためその種の生息する環境を保全する
  2. 多様な種が相互に影響し合って生きているので種多様性も保全する
  3. 結局は生物多様性全体を保全する

という点にたどり着きます。

生物多様性全体とそれを構成する要素は密接につながっているのです。もちろん私たちの生活もつながっていますから、私たちが正しい知識に基づいて行動することを積み重ねれば、ひとつひとつは小さなアクションでも、生物多様性に良い影響を与えることも可能です。

より多くの小さな良い行動を、負担なく

【生物多様性のために私たちができること】

環境省は、私たちが日常で取り組める生物多様性を守るためにできることとして、

  1. 地元で採れたものを食べ、旬のものを味わう
  2. 生の自然を体験し、動物園・植物園などを訪ね、自然や生き物に触れる
  3. 自然の素晴らしさや季節の移ろいを感じて写真や絵、文章で伝える
  4. 生き物や自然、人や文化との「つながり」を守るため、地域や全国の活動に参加する
  5. エコマークなどが付いた環境にやさしい商品を選んで買う

などの行動を推奨しています。そのほか

  • ゴミを減らし、分別、リサイクルを習慣化する
  • エネルギー利用を見直し省エネや再エネ導入する
  • 常に新しい情報を知っておく

などのCO2を削減地球温暖化対策になる行動も、生き物の生息環境を急激な気候の変化から守ることにつながり、結果的に生物多様性を守ることになります。このように、私たちは全ての生き物とどこかで影響し合い、つながりを持っているのです。

ペットや植物など、生き物を捨てない

ひとつ特筆しておきたいことが、動物・植物問わず、ペットとして飼ったり園芸として栽培したりする生き物を捨てないことの重要性です。このように人の管理下にあった生き物が本来あるべきでない環境に放たれると、そこに元々あった生物多様性のバランスを崩してしまう恐れがあるのです。

私たちはどこであっても、生物多様性の循環の流れの中にいます。その詳細から全体像は段々と解明されていますが、未知の部分が多く残されています。

これをふまえると、私たちがこのような生物同士のつながりや生命循環の流れを崩さない最善の方法は、自然には起こり得ないような影響を人為的に与えないよう細心の注意を払うことです。また、捨てていなくても、ネコを放し飼いすることなども、本来の生態系のバランスを崩し、生物多様性の損失につながります。

あなたも遺伝的多様性を支えています

人間として遺伝的多様性を見ると、あなたのその持って生まれた個性は唯一無二で、人間全体として存続の可能性を高めるために役に立っています。それが、一見どんなに無益な能力や仮に自分にとってネガティブなものに感じても、あなたの個性は遺伝的多様性を豊かにするうえでかけがえのないもので、いつどこで何に作用して輝くかは予測ができません。

あなた自身をさまざまな多様性の一端を担う貴重な存在として大切にするとともに、あなたの周りの多様性を観察してみましょう。その多様性は、あなたが支えているものでもあり、あなたが支えられているものでもあります。*6)

まとめ:学び・体験して適切に生き物を守る!

【生物多様性を守るために】

遺伝的多様性の世界はいかがでしたか?遺伝的多様性を守るための環境保全・環境保護、どちらをするにしても科学的知識に則った、適切な方法が必要です。

遺伝的多様性は目で見てその違いがわかるものから、遺伝子を分析しなければわからないものまでさまざまですが、どちらも生命の循環がさまざまなリスクに強く豊かであるために必要なものです。このような科学の知識で、あなたの生活がより豊かになることを実感でき、生涯学習の励みになれば幸いです。

〈参考・引用文献〉
*1)遺伝子多様性とは
九州大学総合研究博物館『佐藤勝義コレクション イボキサゴ』
環境DNA調査 | 生物多様性センター(環境省 自然環境局) (biodic.go.jp)
WIKIMEDIA COMONS『Ruditapes philippinarum』
生物多様性とはなにか | 生物多様性 -Biodiversity- (biodic.go.jp)
環境省『みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性 – Biodiversity』
*2)遺伝的多様性の身近な事例
WIKIMEDIA COMMONS『Harmonia axyridis』
akademist Jounal『テントウムシの斑紋パターンはどう決まる? – ひとつの遺伝子が多様な斑紋をつくる仕組み 新美輝幸, 安藤俊哉』(2018年11月)
WIKIMEDIA COMMONS『BIEDRONA』
環境省『いきものログ 個別データ ナナホシテントウ』
環境省『いきものログ キタノメダカ』
環境省『いきものログ ミナミメダカ』
西郷隆『メダカのDNA分析実験』p.1(2020年)
WIKIMEDIA COMMONS『シーボルト 川原慶賀筆』
環境省『絶滅のおそれのある野生動植物の生体域外保全 メダカ』
*3)遺伝的多様性の重要性
環境省『生物多様性に係る企業活動に関する国際動向について』p.22(2022年3月)
生物多様性と経済活動に関する情報提供 (biodic.go.jp)
環境省『令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損』(2020年6月)
環境省『みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性 – Biodiversity』
WWF『この生きものたちと共生できる世界を目指して』
*4)遺伝的多様性と進化の関係
東京大学『地球最古の生命の痕跡を発見!小宮剛』(2021年2月)
Nature Japan『進化学:地球誕生の時期に迫る最古の生命の証拠』(2017年9月)
理化学研究所『タンパク質の進化から生命誕生の謎に挑む 田上俊輔』
環境省『みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性 – Biodiversity』
WIKIMEDIA COMMONS『Murchison-meteorite-ANL』
北海道大学『炭素質隕石から遺伝子の主要核酸塩基5種すべてを検出~地球上での生命の起源・遺伝機能の前生物的な発現に迫る~(低温科学研究所 准教授 大場康弘)』(2022年4月)
*5)遺伝的多様性と農業
環境省『みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性 – Biodiversity』
環境省『遺伝的多様性の保護』
環境省『第9回グッドライフアワード 取組紹介 岐阜県飛騨市』
環境省『里地里山の保全・活用』
*6)遺伝的多様性を保つためにできること
環境省『みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性 – Biodiversity』