私たちにとって身近なテーマ・ファッション。
しかし、ファッション業界は二酸化炭素の排出量が特に多い業界として知られており、近年ではファストファッションからスローファッションへの切り替えなどが支持されています。
そんなファッションの環境負荷を低減すべく、オーストラリアではGive Your Clothes A Second Lifeと呼ばれるリサイクルシステムが導入されました。
今回は、Give Your Clothes A Second Lifeの詳細やサービスの種類についてチェックしていきましょう。
ファッションが与える環境負荷とは?
ファッション業界は、製造や廃棄における環境負荷が高い業界です。
世界規模で排出される二酸化炭素の約10%はファッション業界が由来とされており、オーストラリアは世界で2番目に繊維製品の消費が多い国です。
1人あたり年間27kg分の繊維製品を購入する一方で、排気量は実に23kg分にも及ぶと言われています。
2023年11月に発表されたデータによると、オーストラリアでは毎年約21万トンもの衣類が廃棄されています。
ファッション業界の環境負荷低減を目指すためにも、消費量と廃棄量が多いオーストラリアの国民一人ひとりが衣類品のリサイクルについて考えることが必要不可欠だと考えられてきました。
SDGsを意識して始まったのがGive Your Clothes A Second Life!
Give Your Clothes A Second Lifeとは、不要になった衣類品を回収するシステムのことです。
メルボルンに本社を構える企業・SCRgroupがはじめたエコ活動であり、オーストラリアの至る場所で衣類のリサイクルが行える画期的な取り組みとして注目されています。
Give Your Clothes a Second Lifeは衣類品を入れるためのハブと呼ばれる大型ボックスを設置し、人々が衣類品を投げ込める仕組みになっています。
ハブが満杯になるとSCRgroupが回収を行い、衣類品の種類や状態に応じて慈善事業への寄贈やバイオ燃料への転換などに仕分けされるという流れです。
ハブはオーストラリア全土に約1,600か所あり、ショッピングセンターの駐車場、市営駐車場、地下鉄の鉄道沿い、学校などに設けられています。
不要な衣類品を抱える家庭はたくさんあるものの、「わざわざリサイクルショップに持ち込むのは面倒くさい」「どうやってリサイクルしたらいいか分からないから捨ててしまおう」と考える層も数多く存在していました。
しかし、Give Your Clothes A Second Lifeでは、ハブに衣類品を投げ込むだけで手軽に不用品をリサイクルできる環境を整えています。
衣類品をリサイクルする際のハードルを大きく下げており、買い物のついでや通勤・通学の途中でハブを利用する人々も多くなっています。
尚、Give Your Clothes A Second Lifeによってリサイクルされた衣類品の数は、年間3,000万キロ以上です。
繊維の94%がバイオ燃料となっているほか、7,200万枚の洋服が衣類を必要とする人々の所へ届けられ、ファッションの環境負荷を大きく低減しています。
ハブに投入できるものは衣服だけ?
Give Your Clothes A Second Lifeのハブでは、シャツ、セーター、ワンピース、ズボン、コート、ジャケット、スカート、靴下、ネクタイ、スカーフ、インナー、水着といった幅広い種類の衣類が投入可能です。
また、ハンドバッグ、サングラス、メガネ、靴なども回収の対象となっているため、家庭で不要になったさまざまな衣類品のリサイクルに適しています。
自転車、マットレス、おもちゃ、ベビーカー、本、スーツケース、家具などは回収不可となっていますが、ビクトリア州のみ電子廃棄物用のハブが導入されています。
HomeCycle
オーストラリアのさまざまなエリアにハブを設置しているGive Your Clothes A Second Lifeシステムですが、居住エリアによってはハブが近くにないケースも考えられます。
そんなときに利用されているのが、SCRgroupが提供する自宅での衣類回収サービス・HomeCycleです。
HomeCycleは無料で行っているサービスで、以下の手順に沿うことで自宅にいながら簡単に衣類品をリサイクルできます。
①予約
HomeCycleを利用するにあたって、オンラインでの予約が必須です。
氏名、電話番号、メールアドレス、居住する自治体などを登録します。
②梱包
予約が完了したら、リサイクルしたい衣類を梱包します。
衣類品はアイテムごとにさまざまな場所に搬送されるため、1つずつ袋や箱に分けて入れることが推奨されています。
梱包した衣類は、収集日前夜に玄関近くに置いておけばOKです。
③回収
衣類品は予約した日に収集され、完了次第SMSの通知が届きます。
尚、回収されずに取り残されていた場合は受け取り不可なものを入れていた可能性が考えられるため、衣類品の仕分けや梱包のし直しを行ってからの再利用となります。
Thread: collect
SCRgroupでは、衣類品以外のリサイクルを行いたい人向けにThread: collectと呼ばれる有料サービスを提供しています。
通常のハブやHomeCycleで回収できる衣類品のほかにも、おもちゃ、スポーツ用品、ベビーカー、電子廃棄物、リネン、軟質プラスチック製の家庭用品などをリサイクルできます。
ベビーカーは経済的理由でベビーカーを購入できない家庭に送られる仕組みになっており、その他の製品については状態ごとにリサイクルもしくは他の製品への転換となるのが特徴です。
尚、Thread: collectは有料サービスですが、料金のうち1ドルが慈善事業に寄付されます。
ポップアップトレーラーの貸し出し
Give Your Clothes A Second Lifeのハブは、人口が多い都市部やショッピングセンター周辺に多い傾向にあります。
田舎の郊外はハブの場所や数が限定されていますが、自治体の中にはエコ意識の高い住民が集まっているエリアも存在します。
そういった自治体に対して行っているのが、移動式ハブ・ポップアップトレーラーの貸し出しです。
SCRgroupは希望する自治体に対して3~12か月間にわたってポップアップトレーラーを貸し出し、郊外エリアの自治体のリサイクル率の向上を手助けしています。
尚、トレーラーには内蔵センサーが搭載されており、衣類品で中身がいっぱいになるとドライバーへの通知が届く仕組みです。
ポップアップトレーラーの開発と貸し出しによって、「ハブまでの距離が遠くて気軽に利用できない」「リサイクルしたいという住民の需要が高まっている」といった自治体の悩みを解決し、国全体でのリサイクル率アップに貢献しています。
ポップアップドライブスルーリサイクルデー
SCRgroupは、衣類品以外にも大型製品のリサイクルサービスを実施している企業です。
マットレス、家具、その他の家庭用品をリサイクルしたい住民が多い場合、自治体はSCRgroupに依頼してポップアップドライブスルーリサイクルデーを開催できます。
ポップアップドライブスルーリサイクルデーは土曜日のみ行っており、SCRgroupは市議会が選定した広い公共スペースにて大型製品を無料で回収します。
小売業者へのサービス提供
SCRgroupは一般市民だけでなく、小売業者に対してもリサイクルサービスを提供しています。
小売業者が店舗及びオンラインショップで抱える在庫や不良品などを有効活用すべく、小売業者の店舗や施設内に回収ボックスを設置しています。
集まった衣類品は小売業者の配送センターに送られ、SCRgroupが回収した後でリサイクルやバイオ燃料への転換に役立てられる仕組みです。
小売業者が廃棄する衣類品の数は、一般市民の廃棄量よりも膨大です。
SCRgroupは小売業者と協力することで衣類品の廃棄量を大幅に削減しており、環境負荷低減を実現しています。
まとめ
Give Your Clothes A Second Lifeは、人々が手軽に衣類品をリサイクルできるように作られたシステムです。
ハブの設置、家庭への訪問回収、自治体への貸し出し、小売業者へのサービス提供といった多彩な方法で衣類品のリサイクルを促進し、SDGsとファッションが両立した未来を目指しています。