#SDGsに取り組む

【銀行×SDGs】サスティナブルな経済と環境の両立を目指すオーストラリアの大手銀行・NABとは?

オーストラリアには、通称Big 4 と呼ばれる主要銀行が4つあります。

その中のひとつ・NABは銀行の世界ランキングにも入っている大手銀行であり、サスティナブルで自然に優しいビジネス運営を目指しています。

この記事では、NABが掲げている目標や実践している取り組みなどに着目していきましょう。

NABはオーストラリアを代表する銀行のひとつ

黒字に赤い星が目印のNAB(National Australia Bank Limited)は、メルボルンに本社を置くオーストラリアの大手銀行です。

1982年に合併によって発足した銀行で、オーストラリアの主要銀行であるCommonwealth Bank of Australia、Australia and New Zealand Banking Group、Westpac Banking Corporationと並ぶ4大銀行のひとつとして高い知名度を誇ります。

2019年には時価総額で世界第21位、総資産で第52位の銀行としてランクインしており、3万8000人近い従業員と約3500もの店舗を有しています。

NABが目指す2050年までの計画とは?

NABは、オーストラリアの大手銀行という立場から持続可能な未来への貢献を目指しています。

特に気候変動対策に力を入れており、温室効果ガスの排出量削減に向けて以下のような計画が挙がっています。

  • 2025年までに100%再生可能電力の導入
  • 2030年までに2022 年と比べて72%の温室効果ガス排出量の削減
  • 2050年までに自社でのネットゼロを達成

2025年、2030年、2050年と段階的な目標を立てており、最終的な目的であるネットゼロ到達をより確実にクリアできるように工夫しています。

脱炭素化と気候変動への取り組み事例

ここでは、気候変動を改善するためにNABが行っているエコ活動について具体的に見ていきましょう。

脱炭素化への経済的サポート

脱炭素化を目指すNABは、環境問題改善を目的としたグリーンプロジェクト事業に対するグリーン融資やグリーンCRE(REIT)などの活動への出資を行ってきました。

グリーンプロジェクト事業への総出資額は2015年から2022年までで日本円で約7兆円に匹敵し、2023年には新たに4300億円分を追加で投資しています。

尚、オーストラリアの温室効果ガス排出量の約 10%は、商業ビルの運営が原因であると言われています。

NABは建物の環境負荷を低減させることが重要であると考えていることから、特に不動産関連のグリーン融資やグリーンCRE(REIT)に力を入れているのが特徴です。

再生可能電力に対する取り組み

気候変動対策のためにNABが挙げている目標のひとつに、2025年までの100%再生可能電力の導入が挙げられます。

2023年には自社の消費電力のうち88%を再生可能エネルギーでまかなっており、2025年までに残りの12%をカバーする予定です。

また、自社だけでなく、顧客がより手軽に再生可能エネルギーを取り入れられる工夫も行っています。

再生可能エネルギーの設備投資を対象とした特別ローンプランを提供しており、顧客は日本円で最大約530万円の借入が可能です。

ローン期間は1~7年で、返済頻度についても顧客のニーズに合わせて細かく設定できる仕組みになっています。

「自宅の消費電力を再生可能エネルギーでまかないたいけど金銭面の余裕がない」「経済的な負担を減らしながらエコな設備を導入できたらいいのに」といった悩みを持つ顧客が数多く利用しており、国全体の各家庭での再生可能エネルギー率アップに貢献しています。

NAB Ready Togetherプログラム

NAB Ready Togetherは、自然災害への被害に対してNABが行っている投資活動です。

オーストラリアは、自然災害が比較的多い国として知られています。

2019年から2020年にかけて発生した大規模森林火災では、東京ドーム300万個以上に匹敵する土地と30億頭もの動物が消失しました。

また、2022年には長期的な大雨による洪水が起きており、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、ビクトリア州、タスマニア州に渡る広域にて被害が及びました。

こういった自然災害からの復興をサポートするために、NABでは資金出資によるコミュニティのサポートを毎年行っています。

日本円で1億2000万円弱のコミュニティ助成金を提供しており、失われたコアラやカンガルーの生息地再建のほか、子どもたちへの火災安全教育といった啓発活動にも役立てられています。

カーボンニュートラルへの取り組み

NABは2010年以来、カーボンフットプリントの削減を目指してきました。

また、足りない分はカーボンオフセットによる相殺を実施し、2010年7月1日からは「カーボンニュートラル認証」を受けています。

災害救援パートナーシップへの支援

NABは以下のような災害救助団体とも提携し、自然災害への迅速な復興を支援しています。

①The Rural Fire Service (RFS) 

The Rural Fire Service は、火災による災害リスクを軽減するための組織です。

先住民族・アボリジニの人々は、伝統的な野焼きによって農作物の成長促進を行ってきました。

しかし、気温の上昇や燃えやすい外来植物などの繁殖に伴い、従来通りの野焼きによって森林火災に発展してしまうケースも多くなっています。

The Rural Fire Serviceは野焼きに関する訓練プログラムの開発と実施に取り組んでおり、野焼きによる災害リスクを回避すると同時に、正しい土地管理の実践を教育することで自然環境やエコシステムの不必要な消失を防いでいます。

②Disaster Relief Australia(DRA)

Disaster Relief Australiaは、オーストラリア全土に 3000 人以上のボランティアと災害救援チームを持つ社会支援団体です。

地方自治体の災害復旧センターと連携しており、災害の発生時にスタッフを派遣します。

森林火災、洪水、干ばつ、サイクロン、熱波といったさまざまな災害が発生するオーストラリアの自然を守るためには、適切なマネジメントを行う団体への投資が必須となっています。

③ガールズオンファイア

NAB は、災害分野での女性の活躍に焦点を当てた非営利団体・ガールズオンファイア(Girls on Fire)への支援も行っています。

救急や消防の仕事は、依然として男性労働者が多い業界です。

ガールズオンファイアは業界の多様性を推進している団体で、主に14~19歳の女性に対して消防プログラムを提供しています。

日帰りや泊りがけでのキャンプに参加できるほか、学校を対象としたプログラムも実施しており、災害分野に実際に関わることで10代の女性が自身のキャリアについて広く考えるきっかけとなっています。

興味がある場合はボランティア活動などにも参加可能で、より実践的な知識とスキルを身に付けられる点が特徴です。

尚、救急分野についても学びますが、ガールズオンファイアという名称からも分かるように、災害分野に特化した内容をしっかりと学習できます。

森林火災が頻繁に発生しているオーストラリアにとって、災害に対して適切かつ迅速に対処できる人材を育てることは必要不可欠です。

ガールズオンファイアはオーストラリアの災害分野で幅広い層が活躍できる未来を作ろうと考えており、自然保護と多様性の促進に貢献しています。

トレーニングの実施

企業全体のエコ意識を高めるためには、従業員の教育が欠かせません。

そこでNABはメルボルン大学のビジネス大学院であるメルボルン・ビジネス・スクール(Melbourne Business School)と提携し、気候変動トレーニングをスタートさせました。

気候リスクや解決策などに焦点を当てたプログラムとなっており、スタッフ一人ひとりの気候変動に対する知識の向上を目的としています。

2022年には約350名の従業員がトレーニングに参加し、2023年にはさらに数を増やして1200人にプログラムが提供されました。

まとめ

あまりエコなイメージが強くない銀行ですが、エコ大国オーストラリアの銀行・NABは環境保全に率先して取り組んでいます。

自社での活動はもちろん、顧客が再生可能エネルギーに転換しやすい状態や、環境負荷低減に繋がる団体への投資なども行うことで、サスティナブルな未来を作ろうとしているのです。