難波 遥
2000年1月3日生まれ静岡県菊川市出身。フェリス女学院大学国際交流学部在学。高校時代陸上・七種競技にてインターハイ出場を果たす。それまで社会貢献に全く興味がなかったが、大学1年生で行ったフィリピン留学で、初めて物乞いをされ「地球人として生きている」という感覚に触れ、貧困を解決したいと心から思う。大学2年生の時に学生団体HANDSUPを立ち上げSDGs×オシャレの領域で企業や行政とのコラボイベントを多く実施。大学1年生から出場してきたミスユニバーシティを始めとするミスコンテストでは4冠を達成。MCやモデル業、企業研修など様々な経験を通して積み上げた人間力を武器に多角的な視点から、誰も実行しえなかったビジネスモデルをいくつも考案。一人でも多くの人の、個の幸せと可能性の最大化を目指し、昨年12月に株式会社Hands UPを法人登記。社会貢献性と経済性が両立する事業作りを展開している。
introduction
社会貢献と経済を両立したビジネスモデル・仕組み・サービスを提供している株式会社Hands UP。現在、TikTok就活・割り箸を利用した超アナログ型広告事業である「はしわたしプロジェクト」・お弁当事業「竹パフェ」・企業の研修にも使われるSDGsすごろくの開発など、幅広い事業を展開しています。
今回、株式会社Hands UP代表の難波遥さんにお話を伺いました。
フィリピンでの出来事が、SDGsを知るきっかけに
–事業内容を拝見しましたが、サステナブル、SDGsを意識したものですよね。
難波さん:
私たちの事業の根本には「貧困の解決」があります。これは留学先のフィリピンで物乞いをされたことがきっかけです。
私はそれまで、「難波家の難波遥」「静岡県民の難波遥」というように、限定されたコミュニティの中での役割を果たしてきましたが、留学して初めて「あ、私は地球の中の1人としての難波遥なんだ」と感じたんです。コミュニティや役割に縛られない「個」としての自分を実感した出来事ですね。
この経験から「個」として「貧困を解決したい」と強く思うようになりました。
–そこからどのようにして今の事業にたどり着いたのでしょうか。
難波さん:
この経験から、私は貧困について調べるようになりました。その中で解決するためには、貧困だけではなく海や森・人権など、さまざまな問題に取り組む必要があることを知ったんです。そして、そのすべての解決策を網羅していたものがSDGsでした。そこから本格的に活動を始めるために、大学2年生の時に学生団体Hands UPを立ち上げました。ただ、活動していく中で課題を感じていて。
–どのような課題でしょう?
難波さん:
Hands UPでは主に、企業さんとタイアップをしてイベントを開催していました。立ち上げ当初は、経済性を求めていなかったため、運営スタッフもボランティアで。そのため、報酬はもちろん、交通費もお渡しできていなかったんです。この時、「良いことをしている人が、それ相応の対価を受けられないのははおかしいのでは?」と思うようになりました。
–確かに今の社会は、「社会貢献は無償で行うもの」という認識が広まっているように感じます。
難波さん:
そうですね。この経験から「社会貢献と経済は両立されるべき」と考え、私たちが、そのロールモデルになろうと。
–そこで法人化されたんですね。
経済性と社会貢献の両立を目指し「海ヨガ」を開始
–法人化して、すぐに今の事業をスタートさせたのでしょうか?
難波さん:
いえ、まずはこれまで開催していたイベントを、有料チケット制にするところから始めました。
–無料と有料とで変化はありましたか?
難波さん:
無料イベントの際も、皆さん積極的に活動していただいていましたが、お金を払って参加することによって、よりその時間に集中してもらえるようになったと思います。
–具体的にはどのようなイベントを開催していたのでしょうか?
難波さん:
「社会貢献してくださいね」と押し付けではなく、楽しみながら「地球を好きになってほしいな」という思いから、浜辺でヨガを行う「海ヨガ」とビーチクリーンをセットにしたイベントを開催していました。
海でヨガを行うことで地球の力をダイレクトに感じられて気持ちが良いことに加えて、地球の素晴らしさや荘厳さにも気づけます。
その後のビーチクリーンでは、浜辺に大量に落ちているマイクロプラスチックを目の当たりにすることで、より環境への意識を高め、地球を守っていこうと感じてもらえるかなと。
最後に振り返りとして、マイクロプラスチックが魚に及ぼす影響などについて知識の共有も行いました。
–参加された方々の反応はいかがでしたか?
難波さん:
純粋に海ヨガにハマる人もいますし、落ちているゴミを通して、地球で起きている問題が「自分ごと」になったと仰る方もいましたね。
–実際に行ってみないと分からないことって、たくさんありますよね。
難波さん:
そうですね。そしてこのイベントを通して、多くの方々にアプローチすれば貧困も解決できると考え、今の事業に辿り着きました。
「物を介した寄付文化」の定着を目的とした、 はしわたしプロジェクト
–現在の事業内容の中でも「はしわたしプロジェクト」に力を入れていると伺いましたが、どのようなプロジェクトでしょうか。
難波さん:
これは、間伐材を使用した割り箸を障がいがある方々が作り、その箸袋に、企業のSDGsオリジナルデザインを入れるプロジェクトで、現在、実現に向けてクラウドファンディングを行っています。
–割り箸を使う方々に向けて、企業は宣伝できるんですね。
難波さん:
そうですね。この割り箸は主に飲食店に卸す予定なので、企業は、使うお客様に向けてSDGsに取り組んでいることを発信できるようになります。
–割り箸にはこだわりがありますか?
難波さん:
色々な思いを持って企画していますね。例えば間伐材の利用。
今回の割り箸は、東京都八王子の間伐材を使っています。活用される機会が少ない間伐材にスポットを当てることで、林業や地域活性化につなげたいんです。
今回のクラウドファンディングが成功したら、割り箸を使用する地域の間伐材を活用することも検討しています。
–また、割り箸の製造には障がい者の方々も携わっているということで、障がい者雇用の面でも大きな意義を持ちますね。
難波さん:
はい。このプロジェクトを通して、障がい者の雇用を促進したいという思いもありました。障がい者の方々には、製造された箸が規定の大きさになっているかの確認作業や、箸袋への封入作業をお願いしています。
–2022年2月からクラウドファンディングがスタートするそうですが、成功を祈っています。
難波さん:
ありがとうございます。このプロジェクトでは、「物を介した寄付文化」の定着を目指しています。通常のクラウドファンディングでは、支援者にはリターンとして商品が届きます。一方で私たちの場合、支援者の方々のもとに商品をお届けする以外にも、こちらが用意した寄付先に割り箸を送るという選択も可能です。成功させて、多くの方に「こういう社会貢献の形もあるよ」と知っていただきたいですね。
橋渡しプロジェクトを通して感じた、Z世代と大人世代の2つの変化
–このような取り組みを進めてきて感じた変化はありますか?
難波さん:
2つあります。1つは「何かしたいと思っていても、何から始めれば良いのか分からない」と思っている同世代の人たちが多いことです。SDGsが壮大すぎて「一個人として自分に何ができるのだろう」と考え込んでしまい、結局行動に移せない人が多いと感じました。
そのため、まずは私たちが開催するイベントに参加してもらいたいです。実際に、イベント参加後に「何かできるかも」と感じてHANDS UPのメンバーになった人もいます。インスタなどで情報を発信しているので、ぜひ目を通していただいて興味があるイベントに参加してもらえたらうれしいですね。
–2つ目に感じた変化は何ですか?
難波さん:
「はしわたしプロジェクト」では多くの企業と連携しているため、50〜60代の方と話す機会が多くあります。そこで、よく「22、23歳で、何でそんなことを考えているの?」と驚かれるんです。そして、私たちの活動をきっかけに「学生がやっているのなら、ちょっとやらなきゃ」「考えてみよう」と言ってくださる方々も増えてきました。若い世代でも、社会にインパクトを与えられると実感しましたね。
–では最後に株式会社Hands UPの、今後の展望を教えてください。
多くの人が救われるサービスや仕組みを考え続けられる会社や人でありたい
難波さん:
私たちは、「1人でも多くの人の、個の幸せと可能性の最大化をはかるきっかけを作り続ける」ことを目指しています。とはいえ、達成するためのビジョンはまだ明確ではない現状があります。
そのため、今後多くの方々と連携し、コミュニケーションをとるなかで、自分たちの目指すべき方向について考えていきたいです。
また、「ワクワクするプロジェクト」もどんどん企画していきたい。そのプロジェクトに多くの人が参加することで、「ワクワク」が伝播して、「人のために生きる」方々も増えていくのかなと。
ただ、そのためには資金面でも持続可能でなければなりません。「社会貢献と経済の両立」、これをキーワードにこれからも頑張っていきたいですね。
–ありがとうございました。