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マクロビオティック(マクロビ)とは?ビーガンとの違い・基本食と得られる効果

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健康的な食事法として知っている人も多い「マクロビオティック」

しかしマクロビオティックを深く学ぶと、実は食べ物だけでなく、生き方の本質にまで関わる興味深い存在であることに気がつくでしょう。さらに、近年よく耳にするSDGsとの関連性も理解できるようになるはずです。

今回は、マクロビオティックの基本的な知識から実践法、SDGsとの関わりまでをご紹介します!

マクロビオティック(マクロビ)とは

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マクロビオティックとは、伝統的な日本の食べ方に沿って、肉や魚などの動物性タンパク質をなるべく避けて旬の食材を残さず無駄にせず食べるのが特徴だと一般的に言われています。
マクロビオティックはこのような食事も含む「健康で幸せに生きるための理論」です。

よくレシピ本や飲食店で「マクロビ」という言葉を目にすることが多いため、食事法のことだと思っている人もいるかもしれません。しかし、マクロビオティックは思想そのものを指すため、食事だけでなく暮らしの中のあらゆる場面に活用することができます。

言葉の意味と語源

マクロビオティック(Macrobiotic)の語源には諸説ありますが、もとは古代ギリシャ語の「マクロビオス(Macrobios)」と「ティック(Tique)」から来ている合成語であると言われています。

《マクロビオス:寿命、生命、生気 》+《ティック:知識、学術》

この2つの言葉から、理論を通して料理だけでなく、生活の知恵と哲学を学び、よりよい人生を目指すものがマクロビオティックなのです。

マクロビオティックとヴィーガンとの違い

マクロビオティックと混同されやすい言葉にヴィーガンがあります。ヴィーガンは完全菜食主義者を意味し、「動物由来の食品を摂取しない」ことに加えて、「動物由来の衣類なども身につけない」などを実践している人もいます。

対してマクロビオティックは、明確に「食べてはいけないもの」は存在しません。実践する人の暮らし方や健康状態・お財布事情など、さまざまな条件を加味しながら、フレキシブルに食材を取り入れる点が特徴です。

マクロビオティック歴史

では、マクロビオティックの歴史を簡単に見ていきましょう。

マクロビオティックは、1930年代の日本で誕生しました。提唱者の桜井如一(さくらいゆきかず)は、生まれつき身体が弱く、何度も病気にかかってきた過去を持つ人物です。

そんな桜井氏がある日出会ったのは、石塚左玄(いしづかさげん)の「食養学」。桜井氏は21歳のときに石塚氏主宰の「食養会」に入会します。そこで学んだのが、「食べるものが身体を作り、バランスよく栄養を摂ることで病気になりにくい身体を手に入れられる」ということでした。

つまり、病気になる原因は偏った食事であり、正しい食生活を心がければ、病気の原因を取り除くことができると考えたのです。

ただし食養学は、ナトリウムとカリウムを軸とした化学的観点で物事を見るものでした。そこで桜井氏は「陰陽」をものさしに用い、宇宙秩序や法則を加えた思想を体系化して「マクロビオティック」と名付けたのです。

その後、桜井氏は1930年にパリへ渡り、翌年以降は「ジョージ・オーサワ」という名義のもと、東洋の文化や思想を世界に向けて発信しました。

日本へ戻った後は自分の弟子を海外へ派遣し、やがて欧米を中心にマクロビオティックが普及していきます。日本へ本格的に広まったのはその後の話です。

この背景から、マクロビオティックは「海外発祥の食事法」と勘違いされることがよくありますが、実は、日本で古くから親しまれている食事と考え方を、誰にでもわかりやすくまとめ直した理論なのです。

もう少し踏み込んでマクロビオティックの考え方を確認しましょう。

マクロビオティックの考え方

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マクロビオティックは、実践する人や推奨機関によって細かい方式・考え方が異なります。それでも、根本となる思想は共通し、同じコンセプトを持って実践しているのです。

ここでは、特に大切と思われる

  • 穀物菜食
  • 身土不二
  • 一物全体
  • 陰陽調和

について、それぞれ解説していきます。

食材や調理の基本|穀物菜食

マクロビオティックを食事に取り入れる際、最も基本となるポイントは「穀物菜食」です。

マクロビオティックの普及に努めるCI協会では、以下の図を「食事法ガイドライン」として示しています。

玄米や全粒粉パンのような穀物類が半分以上を占めていることから、精製されていないお米や粉を使用した食品を中心に摂るよう勧めていることがわかります。野菜や海藻・汁物は添える程度にし、あまりたくさん食べ過ぎないことが大切です。

マクロビオティックの特徴として、「調理法」も詳しく言及されている点が挙げられます。上の図からもわかるように、同じ野菜・果物でも生の場合は頻度を減らすことを推奨しています。

また、この図には掲載されていないものの、塩分・水分の量にも気を遣い、身体のバランスを整えるように留意するのがポイントです。

なおこのガイドラインは、日本を含む温暖気候に当てはまるものです。国や地域が違えば、採れる作物の種類・気候による暮らしの習性が変わってきます。そのため、必ずしも世界共通ではないという点には注意が必要です。

食材の選択方法|身土不二

次のポイントは「身土不二(しんどふじ)」です。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、一口で言うと地産地消と同じような意味を持っています。

マクロビオティックでは、できるだけ暮らしの場から近い地域で採れたもの(または国産)を選び、野菜や果物は特に旬を大切にします。

今でこそ、スーパーや食料品店に行けば、季節に関係なく世界中の食べ物を手に入れられます。しかし、古くから続いた農民の暮らしでは、旬の食べ物を中心に食べていました。冬は長期間保存するために乾燥・発酵といった工夫を凝らしながら、その地で採れた自然の恵みを、シンプルにおいしく頂いていたのです。

古くからの知恵を継承する観点以外にも、多様なつくり方によって流通している現代において、食品を選ぶ際に気を付けるべきポイントがあります。

  • 基本は国産とし、やむを得ない場合は輸入品を選択することもOK
  • 輸入品の際は、ポストハーベスト(輸入時の作物にかける農薬)に注意し、原産・製造地に気を付ける
  • できるだけオーガニック(有機)、無農薬の食品を選ぶ

こうしたポイントは、自身の健康への影響はもちろん、まわりの自然、ひいては世界中の生き物との調和を目指すマクロビオティックならではの考え方からきています。

無駄にしない食べ方|一物全体

一物全体(いちぶつぜんたい)とは「食べ物の命を丸ごといただく」という考え方です。

野菜や穀物をはじめ、すべての生き物は全体をもってバランスを取っています。よって、皮が剥かれている野菜・果物を食べたり、肉や魚を部分的に食べたりすることは、エネルギーの調和を崩してしまうと考えられています。

この考え方については、後ほど「陰陽調和」で詳しく述べますが、ほかにも栄養の面で「一物全体」は大切なのです。

ここで、マクロビティック クッキングスクール リマがまとめた、玄米と白米の栄養価を比較した図を見てみましょう。赤い部分が玄米、黄色い部分が白米です。

白米の栄養価が著しく偏っているのに対し、玄米はきれいにバランスが取れているのがわかります。

このように、丸ごと食べるほうが栄養価のバランスが取れるという意味でも「食べられる部分は出来るだけ丸ごといただく」のが、一物全体の基本です。

また、お米の収穫・加工時に出る「もみ殻」や「稲わら」は、かつての暮らしの中で、道具や衣服づくり・農耕といった、さまざまな場面に活用されてきました。日本語の「もったいない」は、自然の恵みを余すことなく使い、命に感謝する文化から生まれた考え方ともいえます。

つまり、マクロビオティックの「一物全体」は、食べる行為だけでなく暮らし全体で考えるべき理論であり、私たち人間の生き方そのものに適用できるのです。

陰陽調和

マクロビオティックの根本のひとつともいえるのが、陰陽調和の考え方です。

提唱者の桜井如一は「すべての事象は陰と陽から成り立っている」とし、料理の材料となる動植物にも陰と陽を当てはめて、食事法の基礎をつくり上げました。

この「陰」と「陽」を組みあわせ、できるだけ中庸な状態に近づけるためのメソッドがマクロビオティックです。

中庸は「調和された状態」のこと。しかし、その人の性質や住んでいる環境・習慣のような複雑な要素が組み合わさり、中庸のポイントは常に変化しています。

また食材も、季節によって変化しているため、常に同じ食材・調理法を使うのが正解とも限りません。

つまり、同じ人がマクロビオティックを実践しても、常にひとつの正解が存在するわけではないのです。

だからこそ、マクロビオティックは「難しそう」と思われてしまうのでしょう。しかし逆を言えば、陰陽の理論をもとにすべての事象を判断できるので、考え方・生き方の幅がぐっと広がる可能性を持っています。

そこで陰陽調和について理解するために、さらに深堀りしていきましょう。

陰陽調和とは

陰陽の調和について説明する前に、前提として頭に入れておきたい大切なポイントがあります。

陰と陽は必ず何かと比べて、初めて「陰」か「陽」かを判断できるものです。そのため、比較対象や観点によっては、どちらにもなり得るのです。

ここでは、できるだけ分かりやすい比較をしながら陰陽を説明していきますが、比較対象や見方によっては、必ずしもそれが正解ではないということを覚えておきましょう。

マクロビオティックにおける陰と陽の性質を表した理論を「無双原理」といいます。ここでは、特に料理の分野で知っておきたい無双原理の一部を紹介します。

  • すべての事象は、陰陽のさまざまな配合によって成り立っている
  • 陰と陽のバランスが均衡な状態を「中庸」という
  • 絶対的な「中庸」「陰」「陽」は存在しない。何事も陰と陽のバランスによるもの
  • 陽は陰を、陰は陽を引き付ける
  • 磁石のように、陰と陰、陽と陽は反発しあう
  • 陰陽は常に変化している

つまり、それぞれの食材には陰と陽の性質が存在し、比べる対象や調理法によって性質が変化するということです。

少しややこしいかもしれませんが、陰と陽の性質と法則が分かると、料理だけでなく暮らしの中で上手に活用できるようになります。

では次に、陰と陽それぞれの性質について見ていきましょう。

陰とは

陰陽の「陰」の性質は、以下のとおりです。

  • 遠心・拡散
  • 静か
  • 軽い
  • 寒い
  • 暗さ
  • 上昇性
  • 不安定性

陰は、熱を逃がす性質が特徴。食材のチョイスはもちろん、野菜や果実を生でいただくのも「陰」を取り入れることにつながります。

陰ときくとネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、身体を冷やす性質を利用して、夏は陰の食材を多く取り入れると、体内の熱を逃がして快適な状態に持っていくことができます

住んでいる地域の気候や季節によって、フレキシブルに性質を活用することが大切です。

陽とは

陽の性質は、以下のとおりです。

  • 求心・圧縮
  • にぎやか
  • 重い
  • 熱い
  • 明るさ
  • 下降性
  • 安定性

陽は陰と反対で、身体に熱を溜め、温める性質があります。私たちが寒い場所で、身体を丸めて体熱を守ろうとするのも、陽の性質を表す一例として説明できます。

身体を温めるためには、陽の食材を多く取り入れ、加熱していただくのがおすすめです。

とはいえ、これだけ見てもよく分からないという人も多いでしょう。

そこで次では図を用いながら、もう少し詳しく見ていきます。

マクロビオティックの基本食

まずは、下の図をご覧ください。マクロビオティックwebがまとめた、性質別の食材表です。

真ん中を中庸とし、左に行けば行くほど陰、右へ行くほど陽の性質が強いといわれる食材を表しています。

マクロビオティックの基本食は中庸である玄米を中心とし、陰と陽を組みあわせて全体を中庸に近づけていきます。

繰り返しになりますが、陰陽の性質は比べる対象によって変化します。そのため、この表はあくまでも参考程度にしておきましょう。

ここからは、自分で陰陽を判断するためのポイントをお伝えします。

陰陽を決める食材の比べ方

食材の陰陽を考えるとき、必ず2つ以上の対象を比べるのが鉄則です。ひとつの食材は比べる対象や見方によって変化するため、一概にどちらかの性質だけを持つとは言い切れないからです。

その上で、食材の陰陽の比べ方として、次のような例が挙げられます。

生き物や事象の状態

・植物は陰性、動物は陽性(例:豆乳と牛乳、昆布出汁とカツオ出汁など)

・上に伸びるつる性植物や樹にできるものは陰性、根を深く張るもの・根っこに出できるものは陽性(例:なすとごぼう、トマトとかぼちゃなど)

・上に伸びるものは陰性、下向きに垂れるものは陽性(例:麦と米、トウモロコシとひえなど)

色や形

・大きなものは陰性、小さなものは陽性(例:りんごとみかん、大豆と小豆など)

・青に近い色は陰性、赤に近い色は陽性(例:大根と人参、米味噌と豆味噌など)

・細長く不安定な形は陰性、丸く安定した形は陽性(例:インディカ米と日本米など)

辛いもの・酸っぱいものは陰性、苦いもの・塩辛いものは陽性(例:ビールと番茶など)

※自然なでんぷんの甘味は中庸だが、人工的な甘味・精製砂糖による甘味は陰性となる

以上に挙げたものは、あくまでも一例です。それぞれが味や形・生態のような複合的な要素を持っているからこそ、比べる対象によって性質が変化します。

また、先に述べた「一物全体」が大切なのも、この陰陽の考え方に基づくもの。皮付きのまま野菜を食べたり、魚を丸ごといただくのも、陰陽が複雑に絡み合うひとつの命を取り入れるほうがバランスを保ちやすいからです。

反対に、精製された穀物や皮を厚くむいた野菜・果物、魚や肉の切り身だけを食べることは、その命がもつエネルギーの一部分だけを食べていることになります。長期間続けてしまうと、陰陽のエネルギーが偏ってしまい、病気やトラブルの元となる、ということです。

食材が持つ陰陽の性質は、比べる対象に加え、旬や生産・加工方法によっても異なります。

住んでいる場所にできるだけ近い地域から、シンプルな方法でつくられた恵みをいただくことがすすめられる理由は、陰陽の調和を乱さないためでもあるのです。

調理法の陰陽バランス

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続いては、調理法による陰陽の考え方についてです。

マクロビオティックは、全ての事象を陰陽で判断できるため、調理法や味付けの仕方にも陰陽を適用し、バランスのとれた食事を心がけるようにします。

たとえば調理の仕方には焼く、蒸す、揚げる、茹でるなど、さまざまな方法があります。

これを陽から陰へ順番に並べると、

  • 揚げる
  • 焼く
  • 蒸す
  • 茹でる

となります。なぜでしょうか?

ここで考えるひとつのポイントは「熱を逃がすかどうか」です。

「蒸す」「茹でる」といった調理法の場合、油を使わず水分だけでさっぱりと仕上げます。出来上がった食材からは蒸気が出て水分が逃げるため、陰性の調理法なのです。

対する「焼く」「揚げる」は、陽性の調理法。陰性の食材と言われる油を使って食材の熱を閉じ込めるためです。

また、陰性の食材といわれる油を使用しているのもポイント。食材と火が持つ陽の性質を強めるために、接着剤のような役割をしているのです。

同じ調理法でも、使う道具によって変わる

今度は、同じ調理方法で陰陽を比べてみましょう。

お米を炊くときに代表的な道具である

  • 土鍋
  • 炊飯器
  • 圧力鍋

この3つを比べると、どうなるでしょうか。

答えは、陽性から順番に①圧力鍋→②土鍋→③炊飯器となります。

比べるポイントのひとつは、工程と仕上がりの具合です。炊飯器は電気を使って素早く炊き上げ、あっさりしたお米ができます。土鍋は炊飯器ほど早くありませんが、やはりさっぱりした炊きあがりに。圧力鍋で炊く場合、じっくりと時間をかけて圧を加えるため、もちもちとした食感を楽しめます。

このように、同じ調理方法をとっても、使う道具や時間のかけ方・仕上がりによって陰陽を考えることが可能です。

マクロビオティックでは、夏はさっぱりした食感を楽しめる土鍋を、冬は陽性が強くもっちりしたお米を食べるために圧力鍋を使うことが多くあります。

マクロビオティックの食事法や調理法のポイント

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ここまで、マクロビオティックの考え方や理論についてお話ししてきましたが、食材選びや料理の際、頭で考えすぎてしまうと続けられない人もいるでしょう。

あくまでもマクロビオティックは「こうしなければならない」という明確なルールはありません。自分と家族の生活スタイルや住んでいる環境・健康状態を含めて、フレキシブルに実践することが可能です。

ここでは、食事にまつわるポイントを中心に、気軽にできるマクロビオティック実践のヒントをお伝えします。

地域で採れた、旬のものを選ぼう

スーパーや食料品店で買い物をする際、ぜひ「どこで採れたものか」「旬の時期かどうか」に着目してみてください。

この際、マクロビオティックの「身土不二」に基づいて、できるだけ住んでいる場所から近い産地の商品を選ぶのがおすすめです。

作り手と買い手の距離が近いほど新鮮なものが多く、より自然からのエネルギーが蓄えられた状態でいただくことができます。

また、輸送の際に燃料を削減できる点では環境面に大きく貢献でき、自然との調和に近い状態を目指せるのもポイントです。

そして、該当する商品がオーガニック・無農薬であればなお良いでしょう。

マクロビ料理の基本「穀物の扱い方」を知れば、レシピの幅が広がる!

マクロビオティックを本格的に学ぼうとすると、細かいポイントがたくさんありますが、ここではまず基本となる「玄米の炊き方」を紹介します。

使う調理器具によって時間は多少異なりますが、基本的な流れは以下の通りです。

  1. 水を張ったボウルや鍋に玄米を入れ、両手で優しくすり合わせるように洗う。
  2. 2〜3度水を替え、水が濁らなくなるまで繰り返す。ここでもみ殻などが浮いてくるので、できるだけ取り除く。
  3. 最後はざるに移して水気を切る。
  4. 鍋(炊飯器)に玄米を入れ、水を張る。分量の目安は、玄米を手のひらで垂直に押し他とき、手首の高さになるくらいまで。
  5. 玄米1カップにつき塩をひとつまみ入れ、蓋をする。
  6. やや強めの中火で沸騰させる。
  7. 蒸気が上がってきたら数分間そのままの状態にし、その後弱火でしばらく置く。
  8. 火を消し、数分間蒸らす。
  9. 蓋を開け、濡らしたしゃもじでごはんに十字を入れ、鍋底からひっくり返すように混ぜる(天地返し)。

ほかにも、マクロビオティックでは小麦やきびといった穀物類のほか、小豆や大豆のような豆類もよく使います。

こうした穀物・豆類の基本的な調理の仕方を学べば、料理レパートリーの幅がぐっと広がります。どんな料理にも使えるので、ぜひ習得しましょう。

マクロビオティックで得られる効果

ここまでマクロビオティックについて詳しく見てきましたが、実践することでどのような効果があるのかも確認しておきましょう。

たくさん噛むことを意識するため素材が持つ本来の味わいを感じられる

マクロビオティックは、できるだけ丸ごと食べることに加えて、一口入れたら出来るだけたくさん噛むこともポイントです。

マクロビオティックで中心となる玄米は、栄養たっぷりの胚芽がついている分、なかなか消化されにくいデメリットもあります。そこで、たくさん噛むことで消化しやすく、体内で吸収されやすい状態にするのです。

噛む回数と健康状態の関係については、科学的な研究が進んでいます。例えば農林水産省がまとめた報告によると、近年の疫学調査によって「噛む回数が少なく食べるスピードが速い人ほど肥満傾向にある」ことが明らかになりました。

また、食べるスピードが速く噛む回数が少ないと、食べるもののバランスにも偏りが生まれます。これによりミネラルやビタミン・食物繊維といった栄養素の摂取が乏しくなり、思わぬ病気や不調のリスクが高まってしまうのです。

また、玄米をたくさん噛むことで、

  • でんぷんの甘みを感じられ、おかずがなくても十分美味しい
  • 少量でも満腹感を得られる→自然と食べる量が減るので、身体が軽い

といったメリットもあります。

筆者は以前、玄米200回噛みに挑戦したことがあります。たくさん噛んでいるうちに甘酒のような甘さを感じられ、とても感動したものです。また、噛んでいる瞬間に集中することで味覚が研ぎ澄まされ、より自然の恵みに感謝の気持ちを持てるようになりました。

ほかの食べ物に関しても同じで、たくさん噛むと素材が持つ本来の味わいを感じられます。

そのため、マクロビオティックの料理は味付けが薄めです。塩分を抑えることは、健康面のメリットにもつながります。自然の甘さを感じられるようになれば、白く精製された砂糖を使わず、お米や野菜をおやつに活用することも可能です。

なお、丸ごと食べるといっても、硬い皮や種のように、中にはどうしても食べられないものもあります。そんな時はコンポストに入れて土に還すのがおすすめです。

土から生まれた食材を土へ還すことは、自然との調和や循環を大切にするマクロビオティックの考え方に則していると言えます。

料理だけじゃない!マクロビで暮らしが豊かになる

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これまで、主に食事の観点からマクロビオティックを紹介してきましたが、はじめに述べた通り「生き方そのものに通じる理論」を持っています。

例えば、身土不二の観点から、自宅で野菜やハーブを育ててみるのはひとつの方法です。

自分の住んでいる場所で育てられる植物は、その土地の気候に適しているということ。収穫時期に合わせて新鮮な食べ物を手にできるということは、その植物が持つエネルギーや栄養がたっぷり詰まった状態でいただけます。

ほかにも、料理の際に出た野菜の皮や、育ちすぎたハーブを使って、草木染めをしてみるのもおすすめです。食べ物に限らず、植物の持つエネルギーを布に浸していただくという考え方は、直接マクロビオティックとは関係ないものの、古くから日本の民間医療で行われてきた手法のひとつです。

植物そのものが持つ性質や効能のほか、色で陰陽を判断できるため、普段の暮らしで衣服や日用品に取り入れると面白いかもしれません。

このように、生活のあらゆる場面でマクロビオティックの考え方を広げていくことで、より自然に寄り添った暮らしに近づけるのも面白いポイントです。

マクロビオティックとSDGsとの関係

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これまで説明したマクロビオティックは、近年よく耳にするSDGsにも関連する部分がたくさんあります。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連で採択され、2030年を期限とした17の目標から成り立つ「持続可能な開発目標」のことです。

それぞれの目標は

  • 環境
  • 社会
  • 経済

の3つを軸としています。

では、このSDGsとマクロビオティックには、どのような関係があるのでしょうか。

SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」と関係

SDGs目標12は、ものづくりの生産〜廃棄の過程において、環境・人権に配慮するように定められた目標です。

原材料の作り方はもちろん、加工や流通・販売といったさまざまな過程で無駄なエネルギーを使用せず、廃棄までを「ものづくり」と捉えて環境への配慮を呼びかけています。

また、全ての工程に関わる労働者の人権へ配慮し、誰もが気持ちよくあれる社会づくりを目指しているのもポイントです。

マクロビオティックは初期の段階から、産業革命~1920年代の社会を次のように批判してきました。

  • 動物性を食べすぎるのは、あらゆる病を引き起こす
  • 動物を養うためにエネルギー消費の増加、環境・飢餓問題、最終的にはそれらが原因で経済の損失にまでつながる

特に、動物性食品を気軽に食べられるようになった時代から現在にかけて問題視されているのは、近現代の畜産業が抱えるさまざまな課題にあります。

たとえば家畜動物を飼うことで、牧場だけでなく飼料生産の農地が必要なため、無計画な森林伐採が広がるといった問題があるのです。

提唱者の桜井如一は、当時いち早く家畜産業の問題に気づき、少なくともこれまでほとんど肉を食べてこなかった日本人は、動物性食品を避ける方がいいと主張したのです。

マクロビオティックの実践は、自分が口にする食べ物がどこで・どのように作られたか?を吟味する機会につながります。

少しでも地元産・オーガニックの食材を選ぶことは、自分の健康はもちろん、作り手の環境や自然を守ることもできるのです。

環境に関連する目標とも関連!

マクロビオティックの実践は「できるだけ自分に近いところから旬の食材をいただく」という考え方に則ることを意味します。

また口にする食べ物は植物性食品が中心です。生態系との調和を保つ努力をするために、環境に関連する目標

の達成に大きく貢献できるといえます。

まとめ

今回は、マクロビオティックの基本的な知識と実践のヒント、SDGsとの関連性まで幅広く見ていきました。

一見すると「難しそう」と思われがちなマクロビオティックですが、考え方がわかると実はとてもシンプルで、古くから私たち人間が営んできた暮らしの本質が見えてくるメソッドです。

ここで紹介した思想はごく一部ですが、マクロビオティックを学んでいくと、私たちの健康はもちろん、まわりの人や自然との調和を目指す世界が見えてきます

みなさんも、まずは美味しく炊いた玄米を、ゆっくり噛むところからはじめてみてはいかがでしょうか。

参考資料リスト
『桜沢如一のマクロビと無双原理』Macrobiotics & PU | カルナ編集部
マクロビオティック日本CI協会サイト|マクロビオティックとは
マクロビオティック料理の考え方とレシピ | 日本安全食料料理協会
マクロビオティックの食事ガイドライン|CHAYA Macrobiotics
食事法ガイドライン | マクロビオティッククッキングスクール リマ|マクロビオティック料理の発祥校
身土不二 | マクロビオティッククッキングスクール リマ|マクロビオティック料理の発祥校
一物全体 | マクロビオティッククッキングスクール リマ|マクロビオティック料理の発祥校
「陰陽調和」 | マクロビオティックとは? | マクロビオティックWeb
国連広報センター

この記事の監修者
阪口 竜也 監修者:フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)