#インタビュー

株式会社manaby | どんな人も自分らしく働き、生きられる多様性を生かした社会を目指して

株式会社manaby

株式会社manaby 執行役員 社長室室長 諸留 勇輔さん インタビュー

諸留 勇輔

1993年4月2日、大阪府生まれ。関西大学在学中に職種・業種問わず5社以上の会社でインターンシップに参加。大学卒業後はEC事業会社に入社し、新規出店の責任者として、オペレーションの構築、在庫管理の半自動化をはじめとした徹底的な効率化・仕組化を行い、立ち上げ半年で月商1,000万円を達成。その後、内部監査室の立ち上げ責任者として内部監査体制を構築しながら全社のDXに取り組む。仙台への移住を機に転職し、DX、広報、採用をはじめとした様々な職種においてマネジメントを経験。現在は株式会社manabyで執行役員、社長室室長を担う他、経営企画、サービス企画、人事制度の策定など会社の基盤づくりに多面的に携わりつつ、”自分らしく働ける社会”を目指して奮闘中。

introduction

株式会社manabyは、ITスキルと自分らしさを学ぶ就労支援事業を中心に事業展開をしています。

障害のある方のみならず、生きづらさを感じている人達が、自分らしく働ける社会を目指して真摯に取り組んでいる会社です。

今回は、社長室室長の諸留さんに、いかに利用者に寄り添う取り組みをしているのか、事業内容や課題などをお聞きしました。

障害のある方の就職活動に伴走する就労支援サービス

–初めに、株式会社manabyについてご紹介をお願いいたします。

諸留さん:

株式会社manabyでは、「就労移行支援manaby」「就労継続支援B型manaby CREATORS」の就労支援事業所の運営と、「オンライン学習manaby WORKS」「対話重視型SESサービスmanaby TECHNO」の4つを主な事業として取り組んでいます。

–まず、御社の事業の中心である「就労支援事業」について教えていただけますか。

諸留さん:

manabyでは、国から認可を受けて運営を行う障害福祉サービスのうち、就労移行支援事業所、就労継続支援B型事業所を運営しています。

就労移行支援は、企業などへ就職を希望する65歳未満の障害のある方や難病の方へ、就労に関する相談や支援を行うサービスです。

具体的には、職場体験などの機会提供・知識やスキルのトレーニング・適性に合った職場探しのサポートや就職後の職場への定着支援を実施しています。

障害福祉サービスなので、利用料金は自治体の負担で利用できることが多いのですが、世帯所得により自己負担が発生する場合があります。利用には原則として24か月の期限が設けられています。

就労継続支援は、障害や難病のために一般の企業で働くのが難しい方のため、就労や訓練の機会を提供するサービスです。

就労継続支援A型(雇用型)とB型(非雇用型)があり、A型は雇用契約を結び、支援を受けながら働き、給料を受け取ります。

B型は、就労に必要な訓練・支援を受けながら、提供された生産活動などに取り組み、報酬として「工賃」が支払われます。雇用契約はなく、心身の状態に合わせて自分のペースで働くことができます。

参照:厚生労働省 就労移行支援事業

自分らしい働き方を見つけるために惜しみないサポートを

–では、就労移行支援事業所、就労継続支援B型事業所として事業運営するにあたり、大切にされている思いなどはありますか。

諸留さん:

弊社は、学生時代から起業を志していた代表の岡﨑が、就労移行支援を行う企業でインターンとして働いたことがきっかけで創業されました。現場での経験から「障害のある方々が生きづらさを抱えているのではないか」「もっと自分らしく働き、生きていくためにできることがあるのではないか」と考えた岡﨑が、オリジナルのeラーニングを軸に起業した会社です。

2016年の創業当初から、MISSION「一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」を掲げ、3つの価値観「VALUE」を大切に事業に取り組んでいます。

VALUEの1つである「Crew first(クルーファースト)」は特に大事にしている価値観です。

私たちは、就労支援サービスを利用している方々をクルーと呼んでいます。

クルーの皆さんがどのように働き生きていきたいか、心の奥底の思いに寄り添い、一緒に考えていくことを、どの事業でも何より大事にしています。

さらに、「Think deep」私たちの支援には正解はないから、よりよくなるように考え抜く。「Do now」考えたらあとはやるだけ、考えてやり続ける。

以上3つのVALUEとすべての行動の原点には思いやりの精神があるという考え「…always with love」を加えて3VALUE+1とし、すべての事業の基本としています。

–自分らしい働き方を見つける就労支援が特徴ということですね。

諸留さん:

はい。苦手なことを克服し、できるだけ社会の働き方に合わせて訓練を行い、社会に合わせて働けるように頑張ることも必要なことかもしれません。

しかし自分に合った環境であれば力を発揮できる人もいる、体調を崩すほど苦手なことに向き合わなくても、自分の強みを生かせる働き方、自分らしい生き方を見つけることができたらと考えています。

そこでmanabyでは、自分らしさとは何かを考えるために「ダイアローグ(対話)」を組織文化として学びながら実践しています。

「自分らしさ」を見つけるのは難しいことです。その中で、いろいろな人との対話を通して、他者との違いの中で客観的に自分を見つめることで、見つけられるものではないかと思います。

支援員とクルーとの対話、支援員同士、社員同士、どんなコミュニケーションでも対話的な姿勢で聴き合うことを大事にしようとしています。

一人ひとりに寄り添い、本当の思いを実現する就労支援

–それでは、「就労移行支援manaby」について事業内容をお聞かせいただけますか。

諸留さん:

就労移行支援manabyは、ITスキルを学び、自分らしい働き方を見つけるお手伝いをする就労移行支援事業所です。

基本的には事業所に通っていただきますが、障害の特性から外出が困難な方や、大勢の人の中に入るのが苦手な方などには、在宅支援も提供しています。

ダイアローグを大切に一人ひとりに合わせた支援を行っており、支援員との面談やレクリエーションを通し自分らしい働き方について考えていきます。

提供する基本的なサービスは、以下の6つです。

1、相談・目標づくり

現在の状況や希望に合わせ、支援員と相談しながら計画を立てます。

2、就職するための基盤づくり

まずは就職するための土台作りとして、自分の得意・不得意や自分の考え方、自分の置かれている環境、自分の障害の特性や状態など自分を知るということを支援員と共に考えていきます。そのうえで、自分のやりたいことやどんな生活を送りたいかを具体的にして、そのためにどういった生活を送る必要があるか、どういったスキルが必要か共に考えていきます。

3、就職への準備

将来の希望や目指す働き方に合わせ、スキルを学びます。

通所以外にも弊社が独自開発したeラーニング「マナe」を自宅でも各々のペースで学ぶことができます。「デザイン・WEB制作」「プログラミング」「事務」のスキルのほか、ビジネスマナーや行動整理のためのセルフコーチングなど、豊富なコンテンツが特徴です。

4、仕事体験

実際の仕事を想定した実践訓練として事業所や企業での職場体験や実習も取り入れています。

5、就職活動

情報収集・履歴書作成・面接の練習など支援員のサポートを受けながら進めます。面接の同行や企業との連絡も行います。

6、定着サポート

就労から6か月間、実際に働いてみて感じた問題などを支援員に相談できます。クルーさんも企業も安心して働き続けるためのサポートです。

現在の利用者数は3,106名(2024年2月時点)で、職場での6か月定着の実績は85.7%と、多くの方が就職し働き続けることができています。

–就労移行支援事業所を運営していて、難しいと感じることは何かありますか。

諸留さん:

事業を展開する上での課題は、クルーの方々を受け入れてもらう企業や働き方の選択肢をいかに増やすかです。

企業の障害者雇用に関する考え方は、一定の理解が深まっていますし、法定雇用率(企業は障害者雇用促進法により、法定雇用率以上の割合で、障害者を雇用する義務が生じる)を達成する企業も増えてきています。しかし、選択肢がたくさんあるかというと、まだまだ足りていない状態です。障害者雇用をどう促進していけばよいかと悩む企業もまだまだいらっしゃると思います。

弊社でも、クルーだけでなく企業にも寄り添って連携を強化して、選択肢をもっと増やせるようにしたいと考えています。

–次に「就労継続支援B型manaby CREATORS」についてお聞かせください。

諸留さん:

manaby CREATORSは、得意なことを生かして活動する就労継続支援B型事業所として生産活動の機会を提供しています。

一般的な就労継続支援B型事業所は、お菓子やパンを作ったり、包装したりという軽作業が中心であることも多いのですが、manaby CREATORSではITスキルを学んで、クリエイティブな活動もできるのが特徴です。

実際に事業所ではクルーさんがITスキルを学びながら、Webメディア「novalue」で作品を発表し、いろいろな企業から依頼されたデザインや、動画編集・サイト制作などの仕事を担当しています。

《novalue掲載作品》

イラストを描くのが大好きな方がillustratorのソフトを学び、「novalue」に投稿したり、展覧会に出展したりするうちに、仕事としてイラスト制作を任されるようになっている方などもいます。

Excelなどのスキルを学びたいと入所した方は、「novalue」に記事を投稿するなどの生産活動の傍ら、支援員と自己分析を深め「自分には事務よりも軽作業や清掃業務などが合うのではないか」と考え、最終的に病院の清掃員として就職されました。

このように、自分に合った学びや働き方を見つけられるように支援員たちが寄り添ってサポートしています。

–この事業では、何か課題はありますか。

諸留さん:

現在も、企業や自治体などから仕事の依頼をいただいていますが、クルーへお支払いする工賃を考えるとまだまだ足りていない状況です。

B型事業所全般の課題でもありますが、工賃だけで生活していけるような金額をお渡しできていないのが現状です。これからもっと工賃を上げること、そのためにもクリエイティブな仕事を増やしていくことに挑戦していきたいと考えています。

仕事だけでなく、自分らしさに気づきより良い人生を

–では、「オンライン学習manaby WORKS」はどのようなサービスでしょうか。

諸留さん:

manaby WORKSは、eラーニング「マナe」を定額で使うことができるサービスです。

ITスキルを学びながらオンラインで働き方について相談ができるのが特徴で、manaby の事業所でも支援を経験したキャリアコンサルタントが学習計画の設定や自己理解を深めるサポートをします。

また、弊社は有料職業紹介の免許も取得しているので、企業とのマッチングもサポートしています。

–このサービスは、どのような方が受けられているのでしょうか。

諸留さん:

どなたでもご利用いただけます。

manabyの事業所が近くになく通えない方や、制度上の問題で、就労移行支援が利用できない方からのお問い合わせがきっかけで始めたサービスなんです。

実際に、筋ジストロフィーで入院中の方が利用してくださったことがあります。その方は療養しながらeラーニングで学び、在宅勤務を実現されました。

また、社員教育のために導入いただいている企業や福祉事業所でご利用いただくケースも増えています。

–では、「対話重視型SES manaby TECHNO」についてお聞かせください。

諸留さん:

manaby TECHNOは、SES(システムエンジニアリングサービス)としてITエンジニアを企業に派遣する事業で、立ち上がってからまだ1年程です。

ITエンジニアは働き方の問題も多く、適応障害やうつ病などになりやすい職種の一つであるといわれています。実際に弊社の就労支援サービスを受ける方にも、元ITエンジニアの方が多くいらっしゃいました。

これを解決できないかという思いで立ち上げたのが、manabyTECHNOです。障害福祉の現場で培ったノウハウやダイアローグ(対話)を活かして、「自分らしく働くITエンジニアが、よりよい社会をつくっていく」そんな未来を目指して、一人ひとりが力を発揮できるようにしたいと思っています。

–最後に、今後の展望をお聞かせください。

諸留さん:

まずは、もっと事業所を増やしたいですね。仙台で1つの事業所からスタートした私たちですが、東北、関東、関西と少しずつ事業所を増やして、いまでは30を超える拠点で支援を提供できるようになりました。これからまだ拠点がない地域も含めて、一人でも多くの方の自分らしい働き方を応援していきたいです。

それに加え、少しずつ事業の領域も広げていきたいと考えています。

現在、新しい挑戦として放課後等デイサービスの運営に向けて準備中です。

放課後等デイサービスとは、障害のある小学生から高校生までが対象で、放課後に生活スキルや社会に適応するためのソーシャルスキルを身につける福祉サービスです。将来社会に出て働くことを見据え、お子さん達をサポートします。

いまmanabyは「自分らしく働ける社会」を目指して事業展開をしていますが、ゆくゆくは「自分らしく生きられる社会」となるようにサービスの幅を広げていきたいと思います。

–本日は、貴重なお話をありがとうございました。

関連サイト

株式会社manaby公式サイト: https://manaby.co.jp/

就労継続支援B型manabyメディアサイト「novalue」: https://no-value.jp/