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ファームステイとは?仕事内容や費用、日本・海外のおすすめステイ先を紹介

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ストレスに溢れた現代の生活において、時には自然豊かな環境に身を置き、のびのびと過ごす時間を求める人も多いことでしょう。

そんな中、ただ休息をとるだけでなく、実際に食べ物がどのように出来ているのかを見たり体験できたりする「ファームステイ」に、近年は特に注目が集まっています。

今回はファームステイについて、目的やタイプ別に分け、滞在先の探し方やおすすめのエリアまで幅広くお伝えします。

ファームステイとは

ファームステイとは農家や農園(ファーム)を持つ人の家に泊まり込みをすることを指します。

一緒に作業を手伝うことで実際の暮らしを経験できる場合もあり、どのように農作物ができているのかを知る、よい機会になります。

近年は、農園のオーナーが宿泊施設を経営したり、観光農園を持つ宿泊施設がサービスを提供したりなど、自然に近い環境でのアクティビティとしても人気があります。

ここで、同じように誰かの家に泊まる「ホームステイ」との違いにピンとこない人もいるかもしれません。本題に入る前に、簡単にファームステイとホームステイの違いをおさらいしておきましょう。

ファームステイとホームステイとの違い

ホームステイとは、留学・ビジネスなどの目的で海外に滞在する際、渡航先の国で家庭(ホストファミリー)に受け入れてもらい、数日~数か月の間ステイすることを言います。

この際、各家庭に農園があるかどうかは関係なく、目的も農業体験ではなく、「その地の文化や言葉を知ること」です。

一方、ファームステイは一般的に農園や酪農など、1次産業に関わるような場所に滞在し、国内・国外問わず楽しめるものです。

では実際に、ファームステイにはどのような特徴があるのでしょうか。まずはファームステイの種類について見ていきましょう。

ファームステイの種類

ファームステイには、主に3つの種類が挙げられます。

  1. 農業体験(観光者として)
  2. 無償労働(ボランティアとして)
  3. 有償労働(労働者として)

ひとつずつ、詳しくご紹介します

①農業体験:観光者として

ひとつめは、観光者として宿に滞在し、隣接・周辺の田畑で農業体験をするというタイプです。

実際に農業を体験しなくても、農園や田園のある家・施設に泊まることで、自然を満喫しリフレッシュできることから、「農泊」と呼ばれ近年は人気が高まっています。

長期で滞在できなくても、野菜や果物がどのように育てられているのか見てみたい人、農業だけでなくリフレッシュを目的に泊まってみたいという人におすすめです。

②無償労働:ボランティア活動として

次にご紹介するのは、農家の家に泊まり込み、ボランティアとして手伝いをするという無償労働です。

このタイプはほとんどの場合、農作業自体はボランティアとなるものの、労働と引き換えに食事や宿を提供してもらいます。

大規模な農園というよりは、個人や家族で経営する小規模な農園に多く見られ、手伝う内容も農作業だけでなく、施設の手入れや家事まで多岐にわたることもあります。

こうした背景から、その地の文化や習慣を学びに遠くから訪れる人も多く、ボランティア同士での異文化交流を楽しめる場合もあり、若者の間で人気を博しています。

ボランティア活動としてのファームステイは、国内・海外問わず長期にわたって農のある暮らしを肌で体験してみたい人、その地でどのような文化・農が行われているのかをより深く知りたい人におすすめします。

③有償労働:労働者として

最後は、作物の収穫期など、農業の繁忙期にあわせて短期間の労働者を募る有償労働のタイプです。

収穫や梱包・販売といった作業には、普段のスタッフだけでは手が足りないことも多く、一時的に人を募ることがあります。農園によっては、時給制・歩合制と給与の換算の仕方はさまざまです。

海外では、ワーキングホリデーや留学先の長期休暇などを利用して田舎に滞在し、こうした有償労働をしてお小遣い稼ぎをする人もいます。

有償労働でのファームステイは、農業を体験したいけどお金もほしい人、短期間で集中的に農業に関わってみたい人におすすめです。

ファームステイの仕事内容

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次に、実際にファームステイで行われている仕事内容について確認します。

農作物の種類や時期・家畜の有無などによって内容が大きく変わるため、ファームによって仕事内容は実にさまざまです。

その上で、代表的なファームステイの仕事には以下のようなものがあります。

  • 畑仕事全般:畑の整備、播種、苗の植え替え、除草、剪定や摘果、収穫など
  • 家畜やペットの世話。家畜小屋の掃除、搾乳の補助など
  • 販売を行っている場合、収穫後の検品、梱包、配達、マーケットでの販売など
  • ステイ先の清掃やスタッフ分のごはん調理など。

筆者が過去に滞在したファームでは、上記の仕事に加え、週末に開催されるファーマーズマーケットへの同行や、家のリフォーム手伝いなどもありました。

具体的な内容が分かったところで、ファームステイを行うメリットとデメリットについてチェックしてみましょう。

ファームステイのメリット

まずはファームステイにおけるメリットからご紹介します。今回は3つの要素を取り上げました。

メリット①農業を通して、その地の暮らし・文化を体験できる

1つ目のメリットは、農業を通して、その地の暮らしや文化を体験できることです。

ひと口に農業といっても、さまざまなスタイルがあります。規模や農法・育てる作物(家畜)など、農家ごとに違いがあるといっても過言ではありません。

また、地域によっても特色があり、生活習慣やスタイルにも違いが見られます。例えば日本国内でも、東北と九州では、食べているものや文化も異なります。

ファームステイをすることによって、実際にその土地の人が生活している様子を見るだけでなく、一定期間の滞在を通して文化や習慣を体験できる点が、ひとつの大きなメリットといえます。

メリット②自然が近い環境で暮らせる

2つ目のメリットは、ファームステイを通して自然に近い環境に滞在できる点です。

多くのファームは自然が豊かなエリアにあります。自然のある場所に一定期間滞在することで、心も身体もリフレッシュできるでしょう。

メリット③人との出会いも!

3つ目のメリットは、ファームステイを通して人との出会いがある点です。

ホストとして迎えてくれる農園や宿泊施設のオーナー・スタッフはもちろん、一緒にステイする人との出会いも期待できます。

さまざまなバックグラウンドを持った人の話を聞くだけでも、自分にはない経験や視点を知ることができ、よい刺激を受けられるかもしれません。

中には海外からのゲストに出会えることもあり、語学や異文化交流のよい機会にもなります。

ファームステイのデメリット

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次に、ファームステイのデメリットについても確認しておきましょう。

ファームのあるエリアは、公共交通機関の通らない場所や山間地といったことが多く、あまり交通の便がよくない点がデメリットといえます。

そのため、自分で車を持っていない場合は、送迎や休日の買い物・レジャーに困ることがあるかもしれません。

ただしファーム・宿泊施設によっては、最寄りの駅から送迎してくれることもあるため、車がなくてもアクセスできる場合もあります。農園や施設によって対応が異なるので、事前に確認しておきましょう。

ここまで読んで、実際にファームステイに行ってみたい!と思った人もいるでしょう。

そこで次からは、より具体的にファームステイに関する情報をお届けします。

まずは、ファームステイにかかる費用についてチェックしてみましょう。

ファームステイにかかる費用

ファームステイにかかる費用は、目的や場所によって異なりますが、多くは以下のパターンに分けられます。

  1. 交通費
  2. 宿泊費(リゾートとして滞在する場合。稀にボランティア・有償労働でも支払うことがある。場所によって異なるが、1泊3,000円~5,000円程度)
  3. 食費(リゾートとして滞在する場合。稀にボランティア・有償労働でも支払うことがある。場所によって異なるが、1食500円~1,000円程度)
  4. リゾートとしての農作業体験プログラムの参加費
  5. プラットフォームを利用する場合、会員費

①の交通費に関しては、どの目的でも共通で発生します。自分の住んでいる場所から目的地まで、どのくらいの交通費がかかるのかをざっくりと計算しておくとよいでしょう。国内か国外かによっても、大きく異なります。

リゾートとしてファームステイをする場合、交通費に加えて宿泊費と食費が発生します。また、オプションで農作業体験などのアクティビティを希望する場合、追加料金が発生することがありますので、事前に滞在する宿泊施設に問い合わせておきましょう。

⑤の会員費については、ボランティアもしくは有償労働でファームを探す場合に発生することがあります。特定のプラットフォームを利用することで、信頼できる農園を見つけることができ、やり取りもスムーズになります。

こちらについては、次の章で詳しく説明します。

ファームステイに参加する方法

次にファームステイに参加する方法を確認します。こちらも目的別に紹介します。

ホリデー滞在なら宿泊施設を探してみよう

リゾートでの滞在なら、気になるエリアや目的を絞って探してみましょう。

宿泊メインなら、農園や宿泊施設が直接募集をしていることもありますが、ブッキングサイト(Booking.comなど)を経由すると便利です。

(出典:Booking.com

農業体験はオプションであることも多いので、料金や参加の可否は事前に問い合わせて確認してください。

ボランティア・海外ファームステイならWWOOFを使うのも手!

(出典:WWOOF

農作業を中心に、語学や文化を含めて深い交流を重視するなら、ボランティアを募集している海外発のプラットフォームを使うのがおすすめです。

代表的なものに、WWOOFとWorkawayが挙げられます。

WWOOF(ウーフ:Worldwide Opportunities on Organic Farms)は、1971年にイギリスで設立された団体です。オーガニック農法を実践する農園と、そこでボランティアをしたい人をつなげるプラットフォームを提供しています。

現在、130の国と地域で展開しているため、海外でファームステイを体験してみたい人におすすめの手段のひとつです。

実際、筆者もこのプラットフォームを利用して、ヨーロッパのオーガニックファームで2カ月の滞在を経験しました。普段と違った環境で、日本では見ることの少ない作物を含めた多様な野菜・ハーブを育てながら、ホストとの暮らしを通して現地の文化や生活習慣を知ることができ、とても有意義な時間を過ごせたと思っています。

もうひとつのWorkaway(ワークアウェイ)は、ボランティア活動を通して旅行者と現地の人をつなげるコミュニティの役割も果たしているプラットフォームです。こちらは目的別に多様なボランティアを募集しており、その中にファームステイが含まれます。

筆者が滞在したファームには、WWOOFではなく、こちらのプラットフォームを通して来たという人もいました。

どちらの場合も、国内外問わず好みのエリア・目的を絞ってファームステイ先を探せます。ただしどちらも英語がメインなので、海外の文化にも触れたいと考えている人に、特におすすめです。

WWOOFはこちら

Workawayはこちら

次では、おすすめのファームステイ先について、簡単にご紹介します。

おすすめのファームステイ先

今回は、以下のエリアに絞って、特に人気の高いファームステイ先を挙げてみました。

オーストラリア&ニュージーランド

オーストラリア・NZが位置するオセアニアは、手つかずの自然が残るエリアも多く、海・山ともに楽しめます。

季節によって、高給での有償労働を募集しているファームがあり、ビザなしの渡航またはワーキングホリデービザを利用して、短期~長期で出稼ぎに行く若者も多くいます。

ただし、簡単な収穫作業などは、言葉が堪能でなくてもゲットしやすい仕事ではあるため、倍率は高めです。あらかじめ目星を付けておき、ピークの時期が来る前に情報をゲットするようにしましょう。

ヨーロッパ

ヨーロッパ各国は、WWOOFやWorkawayに登録しているファームが多く、国を問わず探しやすいのでおすすめです。

中でも多いのは、フランスやドイツのほか、アグリツーリズム(農に関連する観光業)がさかんなイタリアなどが挙げられます。

近年ヨーロッパ内では、日本人向けにワーキングホリデービザを発給する国が増えています。申請ができる年齢となる30歳以下(アイスランドは26歳以下)であれば、半年~1年という長期間を利用して、複数個所を周りながらボランティア体験するのも楽しいかもしれません。

北海道

北海道は日本の中でも広い農地を持つエリアで、全国にある農地のおよそ1/4を占めています(令和2年時点)。

広大な自然を楽しみつつ、野菜や果物だけでなく酪農も盛んな北海道では、いつもとひと味違った体験を得られるかもしれません。

また、ひとつひとつの規模が大きいため、ボランティアはもちろん、有償労働でのファームステイを体験できるチャンスが多い場所ともいえます。

関東エリア

都心からのアクセスがよい関東エリアは、都市部に住みながら気軽にファームステイを体験してみたい人におすすめです。

千葉県や静岡県・長野県など、都心から2~4時間ほど車を走らせると、豊かな自然や畑の広がる光景に出会えます。その地ならではの作物を育てている場所も多く、同じ関東でも食文化の違いを知ることができる点が魅力です。

高校生なら国内でファームステイするのもアリ!

農業や田舎暮らしに興味のある高校生は、初めてのファームステイに国内がおすすめです。基本的に日本語のできるホストがいるだけでなく、場所によっては海外からやってきたボランティア・宿泊者との交流ができるかもしれません。

ファームステイの注意点

ここで、ファームステイをするにあたって注意すべきことを確認しておきましょう。

自然が近い環境であることを理解する

ファームの多くは、自然が豊かに広がる環境に位置しています。野生の動物はもちろん、虫などもたくさんいるため、苦手な人は注意しましょう。

また、農作業をすると土で衣服が汚れたり、装備が万全でないと虫に刺されたりすることもあります。リゾート滞在だとしても、自然と近い環境であることを念頭に置いて、服装や虫よけスプレー・薬などを準備しておくのがベターです。

海外ならある程度の語学力が必要

特に海外でのファームステイを希望する場合、最低でも挨拶や指示を理解できるくらいの語学力を備えておくと、後々のトラブルを防ぐことができます。

最低限のレベルでコミュニケーションが取れないと、指示が聴きとれず足手まといになってしまったり、誤解が生まれてトラブルの発生につながりやすくなったりします。心配であれば、海外に拠点を置く日本人ホストや、日本語がある程度理解できるホストを探すのもよいでしょう。

相手へのリスペクトを忘れずに

最後に注意する点は、一緒に時間を共にする相手へのリスペクトです。

ボランティアや労働者として、一定の期間ファームステイをする場合、滞在先でほかの仲間と宿や共用エリアをシェアすることがあります。

相手がどのような人であっても、生活習慣や文化背景の違いを理解し、リスペクトを忘れずに生活しましょう。食事の準備や清掃といった、暮らしの中で行う家事の分担をし、コミュニケーションを意識して接すれば、言葉が通じなくても分かりあえるものです。

リゾート滞在の場合も、宿主やスタッフが時間を取って準備してくれていることへの感謝と、リスペクトの気持ちを常に忘れないようにしましょう。

ファームステイとSDGs15「陸の豊かさも守ろう」の関係

最後に、ファームステイとSDGsの関係について見ていきましょう。

社会・環境・経済と3つの柱から成るSDGs(持続可能な開発目標:Sustinable Development Goals)ですが、ファームステイとは特に環境面との関わりを強く持ちます。

今回は17つある目標のうち、SDGs15「陸の豊かさも守ろう」との関連について紹介します。

sdgs15

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では、森林や山間地・湿地といった陸地に加え、内陸の淡水における生態系を守り、人間との共生を目指しています。

ファームステイには、自然豊かな環境が不可欠です。作物を育てるための土壌づくりや家畜の健康はもちろん、滞在する観光客やボランティアを出迎えるために景観を保全したり、まわりの生態系を壊さないよう暮らしの中で使うものに配慮したりと、さまざまな工夫が必要となります。

また、利用者としてファームステイを体験することによって、自然への意識そのものが芽生え、豊かな生態系を守るための行動を起こすきっかけになるかもしれません。

【関連記事】SDGs15「陸の豊かさも守ろう」私たちにできること現状や取り組み事例を紹介

まとめ

今回は「ファームステイ」について、種類や探し方・おすすめのエリアまで幅広くお伝えしました。

筆者自身、ファームステイを経験するまで、ほとんどの時間を都市部で過ごしてきましたが、自然豊かな場所で農作業をする暮らしを経たことで、環境問題への意識が一気に強まりました。周りにも同じような経験を通して気候危機や環境問題に興味を持ったという人がたくさんいます。

最初は気軽な気持ちでもよいと思います。気になる人はぜひ一度ファームステイをしてみて下さい。自分と自然との関係性が一気に縮まり、人と地球にとってよりよい暮らし方を考えるきっかけになるかもしれません。

<参考リスト>
What is a farm stay? | Agency of Agriculture Food and Markets
World Wide Opportunities on Organic Farms | WWOOF
Workaway.info the site for cultural exchange. Gap year volunteer for food and accommodation whilst travelling abroad.
北海道における「令和2年耕地面積(7月15日現在)」|農林水産省北海道農政事務所統計部 令和3年2月26日