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人口問題とは?問題点や原因・解決策と世界と日本の現状をわかりやすく解説

日本では少子高齢化や出生率の減少が問題視されており、ニュースでも度々取り上げられています。

こうした問題は大きくまとめて「人口問題」と言われます。

とはいえ、日本では人口問題として取り扱われるケースが少ないため、言葉自体をはじめて聞いたという方もいると思います。

そこで今回は、人口問題とはどういった事象を指す言葉なのかとともに、日本での人口問題、世界での人口問題など、網羅的に紹介します。

人口問題とは

人口問題とは、人口から生じる様々な社会問題を指します。先進国での少子高齢化や出生率減少、開発途上国での人口増加による貧困問題や環境破壊などが人口問題として挙げられます。

人口減少・人口増加のどちらにも問題を抱える

そもそも、人口問題とは人口によって生じる問題を指しているため、人口増加・人口減少の両方とも該当しています

日本で人口問題をテーマにすると人口減少がよく取り上げられるため勘違いしてしまいますが、世界的には過剰な人口増加も問題視されている点を押さえておきましょう。

人口問題の日本の現状

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次に、日本における人口問題の現状を確認します。

日本では主に人口減少によって様々な社会問題を引き起こしています。具体的に見ていきましょう。

高齢者の増加

人口減少は言い換えると、新しい世代が生まれてこないということです。これを日本社会全体で見ると、相対的に高齢者の割合が増加していくことになります。

すると、高齢者を支えるための社会保障制度を維持する負担が上昇していくと言われています。

日本では、定年を迎え会社を引退した高齢者の生活を維持するために、様々な制度が導入されています。例えば、年金制度や後期高齢者医療制度などが挙げられます。

制度の財源を確保するために、各種税金が設けられており、高齢者の割合が増えるほど現役世代への税金負担も大きくなるのです。

生産人口の減少

また、新しい世代が生まれてこないことで、次世代の生産人口が減少していく恐れもあります。

生産人口とは、国内で生産活動を行っている人口を指し、経済協力開発機構(OECD)によると15~64歳の人口と定義づけられています。生産人口が多ければ、労働力と消費者が多いことを意味します。このように生産人口は、その国の経済を活性化させる上でとても重要な役割を担っています。

総務省のデータによると、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少傾向にあると言われています。さらに、2050年の生産人口は2021年と比較して約30%減少すると見込まれています。

これは2050年問題と呼ばれており、日本が持続可能な社会を維持するための改革が求められています。

生産人口が減少することで、労働力ならびに消費者の不足が発生し、国内経済の縮小が懸念されているのです。

少子化の加速

そもそも日本では、現時点でも少子高齢化や出生率の低下が問題視されています。第二次ベビーブームと呼ばれた1973年の出生数が約210万人だったのに対して、2020年の出生数は約84万人です。

当然ながら、生まれてくる子供の数が減少すれば、その世代において、将来親になる人たちも減少していきます。そのため、どこかのタイミングで出生数が回復しない限り、今後も少子化は加速していくと予測されています。

日本総研のレポートによると、2030年には出生数は77万人になると言われています。

人口に対する65歳以上の高齢者の割合が14%以上の社会は超高齢化社会と呼ばれています。
現在の日本の人口に対する高齢者の数は2022年時点で29%を占めており、深刻な少子高齢化が進んでいることがわかります。

日本の人口問題の原因はライフスタイルの多様化

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このように人口減少は日本に様々な問題を引き起こします。ではなぜ、こうした人口減少が起こっているのでしょうか。

日本の人口は、1960年~1970年前半までは増加傾向にありました。自然な流れで行くと、そのまま現代まで人口が増加しなければおかしいはずです。しかし実際は、1975年ごろより人口、ならびに出生率が減少し始めました。

ここでは一般的に言われている、日本の人口問題の原因を紹介していきます。

人口問題の原因のひとつだと言われているのが、ライフスタイルの多様化です。

これまで日本人のライフスタイルは男性や女性、年齢による役割が存在していました

例えば「男性は、外で働くべき」「女性は結婚したら家の仕事をするべき」「早く結婚すべき」といった考え方です。

そのため、男女ともに学校を卒業したら就職し、ある程度の年齢になれば結婚。女性はそのタイミングで退社して家に入り、子を産む準備や子育て、家事に集中するというのが昔は一般的でした。

しかし時代とともにこの考え方に変化が起き、ステレオタイプの考えから脱却し、少しずつ女性の社会進出が促進されたり、娯楽や求められるスキル、働き方も多様化したりなど、多くの人が主体的に生き方を選択するようになりました。

このようなライフスタイルの多様化により、男女ともに結婚や妊娠を望まない人たちが増えたことが、人口減少につながっています。

少子高齢化や生産人口の減少などの日本の人口問題の影響

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では続いて、日本の人口問題が引き起こしている、具体的な影響や問題点をいくつかの視点ごとに紹介していきます。

産業・雇用への影響

今後人口減少が続いていくと生産人口も減少していくため、多くの産業分野でAI化や機械化が進み、業務の効率化が行われていくと言われています。

具体的には製造業や販売業といった単純作業による業務は、AIや機械に代替されていくかもしれません。

もし、これらを駆使しても労働力が足りないとみなされた場合、外国人労働者の導入や高齢者の社会進出によって、労働力をまかなっていく必要があるでしょう。

今後は人とロボットが協力して働く方法や、人種や年齢を問わず働きやすい環境の整備が求められています。

地域生活への影響

日本全体で人口問題への解決策が模索されている中、地方はより顕著に人口減少による影響を受けると言われています。

地方では、若者が大学進学や就職を機に都会へ進出するケースも少なくありません。これが続けば、地方における若年層や生産人口が、輪をかけて減少してしてしまい、経済力の低下を引き起こします。

さらに、地方の状況に危機感を抱く若者が、都心部へ流出するという悪循環も発生しています。長期的にこの傾向が続くと、人が全くいない地域も出てくると予測されています。

医療・福祉対策への影響

高齢者が増加していくと、病院や老人ホームといった医療・福祉施設を利用する方が増えていきます。

しかし、生産人口が減少しているため、増加する利用者に対応できるだけの、医師や看護師、介護士の人材を確保できない恐れがあります。

こうした状況になると、現場で働く方への負担も大きくなるでしょう。

また、一般的な病院で高齢者が増えていくと、その分若年層への対応も行き渡らなくなるかもしれません。

行財政サービスへの影響

生産人口減少による税収の低下と、高齢者が増加していく中で社会保障制度を維持するための財源確保は、日本における課題の一つです。

生産人口減少は私たちが普段利用している行財政サービスにも影響を及ぼします

働き手が減少すれば経済力が低下し、その分各自治体の税収も悪化し、行政サービスの質が低下する恐れがあるのです。

具体的には、財政悪化を理由に社会保障制度の廃止、人手不足が原因で水道や橋といったインフラ設備の老朽化対策が行われない、などが挙げられます。

日本の人口問題への解決策や対策

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このように、日本の人口問題は様々な分野に影響を及ぼします。また、現在日本の出生率は減り続けているため、何か具体的な対策を取らなければ、今後一層これらの影響が大きくなってくるでしょう。

ここでは、これらの問題に対して日本政府が行っている取り組みの一部を紹介していきます。

就業率の向上

厚生労働省の資料によると、女性は出産や結婚を機に30代前後で就業率が減少する傾向にあり、人口問題への対策としてこれを解消していく必要があるとしています。

また、60歳以上の高齢者に関しても、今後の高齢化社会を考慮すると、就業率を上昇させなければならないと記されています。

具体的には、2040年時点で30歳~34歳女性の就業率77.8%から北欧諸国並みの就業率81.5~82.2%へ、また35歳~39歳女性の就業率76.0%も同じく北欧基準の83.4~85.6%程度まで引き上げる目標を掲げています。

高齢者についても、2040年時点で男女合わせて60歳代前半の就業率を80%、60代後半の就業率は60%強を実現するために取り組んでいくと記しています。

※参考:厚生労働省 令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-

結婚、出産、子育てを行える環境の整備

人口減少による働き手不足への対応を行うとともに、少子化への対応も極めて重要であると指摘しています。

一般的に、少子化の原因として日本人の未婚化・晩婚化の影響が大きいと言われています。

そして、若い世代の結婚や出産、子育てが行えないのは、先述したライフスタイルの多様化に加えて、経済的な不安定さや子育て・教育にかかる費用負担の重さなどが挙げられるでしょう。

そのため、若い世代が将来に展望を持てるよう、雇用環境の整備や子育て支援に関する制度の充実などを目標に掲げています。

※参考:厚生労働省 令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-

人口問題の世界の現状

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ここまで、日本での人口問題について紹介してきました。日本では人口減少が問題視されており、これは多くの先進国でも同様の課題を抱えています。

しかし、人口問題は日本を含め先進国だけの問題ではありません。ここでは、人口爆発などより広い視野で世界での人口問題について紹介していきます。

人口爆発とは

人口爆発とは、人口が急激に増加することです。

日本をはじめ先進国では、人口減少が人口問題としてとらえられています。一方で、発展途上国を含めた世界全体では人口は増加の一途をたどっています

国際連合によると、1950年を境に世界人口は増加し続けており、2021年時点で約78億人にまで達しています。そして、同報告書では、2050年時点で世界人口は約97億人にまで増加すると予測されています。

人口増加は中国やインドなどの開発途上国で起きている

特に人口増加が激しい国として中国とインドが挙げられます

中国は1950年時点で約5.3億人だった人口が2021年時点では約14億人となっており、70年間で3倍弱にも人口爆発が起こっています。

インドの場合、1950年時点で約3.5億人だった人口が2021年時点では約14億人となっており、中国を超える人口増加を記録しています。このように、現時点でもこれら2国だけで世界人口の約36%を占めているのです。

人口増加は特にアフリカ地域で顕著に

また、アフリカのような地域でも人口増加の傾向は顕著に表れています

1950年時点で約2億人だったアフリカ人口も、2021年時点では約13億人にまで増加しています。中国やインドに比べて対象範囲が広いことを考慮しても、70年間で6倍以上もの人口爆発をしている現状は世界でも類を見ないでしょう。

関連記事:発展途上国とは?開発途上国との違いや貧困問題、日本の支援・できること

世界の人口問題の影響や問題点

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過剰な人口増加は時に問題を引き起こします。ここでは人口増加によって発生する、人口問題について紹介していきます。

貧困が加速する

まず改めて確認しておきたいのが、人口増加を実現しているのは中国やインド、アフリカのような開発途上国であるという点です。(※中国やインドの経済発展は目覚ましいですが、ここでは開発途上国として扱います。)

つまり、世界的に見ると、ごくわずかな地域で集中的に人口が増加しているということです。

人口が増加すると、その分だけ食料や水といった資源、衛生環境に優れた住宅地、経済的に自立するための職などが必要となります。

しかし、現実的には人口増加に見合うだけのこれら要件を揃えることができていません。

特に開発途上国では、貧しい家庭での出生率が高い傾向にあり、貧困に苦しむ人口が増加しているという問題を抱えています。

【関連記事】SDGs1「貧困をなくそう」の現状と取り組み事例、私たちにできること

環境破壊

人口が増加すると、生まれてきた人々に対応するだけの、エネルギーや食糧が必要となります。そして、これらを用意するために、環境破壊が発生が懸念されています。

ここでいうエネルギーとは、車や船が動くための運動エネルギー、機械やIT機材に欠かせない電気エネルギーを指します。エネルギーを生み出し、消費する際には、石油や石炭といった化石燃料が不可欠ですが、これらを使用すると二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出されてしまいます。

つまり、人口が増加すればそれだけエネルギー需要は増加し、その分環境破壊が進行する恐れがあるのです。

また、食糧に関しても同様であり、人口増加とともに食糧需要は増加します。需要を満たすだけの食糧を確保するために、森林伐採や耕地が行われ、温室効果ガスを吸収する森林も減少してしまいます。

その結果、森林の減少温暖化の進行といった環境破壊につながると指摘されているのです。

資源枯渇

人口増加に伴うエネルギー需要の増加によって、より多くの資源が必要となります。

しかし、これらの資源は有限であり、このまま人間が採取し続ければ、いつかは枯渇する恐れがあります

国立環境研究所が運営する環境展望台によると、世界の石油生産量は2010~2030年ごろにピークを迎え、それ以降は減少していくと予測されています。また、天然ガスについても採掘可能なのは、残り約50年程度と言われています。

このように、エネルギーを生み出す資源の枯渇が予測されている一方で、世界人口は増加しエネルギー需要も増加しています。今後の技術革新による、採掘量や燃費の向上を踏まえても、資源の枯渇は避けられない課題と言えるでしょう。

世界の人口問題への解決策や対策

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各国が抱える人口問題やその原因は様々です。同じ人口増加という問題を抱えていたとしても、その原因や適切な解決策、対策は異なります。

ここでは、人口問題への解決策や対策として期待されている新技術について理由とともに紹介していきます。

人工肉をはじめとするフードテック

現在の予測では、少なくとも2050年までは世界人口は増加し続けるとされています。そこで課題となるのが人間が生きていくために不可欠なタンパク質の確保です。

しかし、肉を大量に用意しようとすると、畜産に使用する広大な面積の牧場と、動物を健康に育てるための餌が必要になります。また、大量の餌を準備するための、広大な面積の農場と水も欠かせません。

とはいえ、利用できる地球の面積は限られており、牧場や農場を増やすために森林を伐採するのは、環境破壊につながり本末転倒です。

そこで、人口増加への対策として注目されているのが植物肉や培養肉といった、フードテックによる人工肉です。これらは新たな技術革新によって実現された食品であり、各種人口問題に対する対策として世界的に注目されています。

【関連記事】代替タンパク質とは?メリット・デメリット(問題点)、市場の現状も

風力発電や電気自動車のようなグリーンテクノロジー

人口増加に伴うエネルギー需要増への対策として、風力発電電気自動車といった、再生可能エネルギーを利用したグリーンテクノロジーが注目されています。

グリーンテクノロジーでは燃料として自然の力を利用するため、石炭や石油といった枯渇資源への依存から脱却できると期待されています。

一方で、こうしたグリーンテクノロジーの活用にはレアアースやレアメタルといった希少資源の活用が欠かせません。そして、これらの希少資源は石炭や石油といった化石燃料と同じく有限の資源です。

そのため、グリーンテクノロジーは資源枯渇に対する解決策にはならない、との指摘もあります。

人口増加に伴う資源の枯渇問題は、今後もさらなる技術革新や各国の適切な政策、規制などが必要となるでしょう。

人口問題とSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の関係

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最後に、人口問題とSDGsの関係について見ていきましょう。

SDGsは、将来にわたって住み続けられる地球にすることを目指して、2015年に国連で採択された国際的な目標です。持続可能な地球にするためには、解決しなければならない課題が山積みです。そこでSDGsでは、今地球が抱えている課題の解決を目指し、17の目標と169のターゲットが掲げられました。

特に目標11「住み続けられるまちづくりを」と関係

人口問題は、17ある目標のほとんどと関係する問題です。ここでは、その中でも特に密接な関わりを持つ、目標11との関係について説明します。

目標11は、先進国も途上国も関係なく、みんなが住み続けられるまちづくりを進めることを目指しています。ここまで見てきたように、人口問題によって、

  • 先進国であれば人口減少による過疎化など
  • 途上国であれば人口増加による貧困の加速や環境破壊など

などの影響を受けることとなります。住み続けられるまちにするために、これらの課題解決は避けては通れないものであるため、状況に合わせた技術開発や適切な政策を進め必要があると言えるでしょう。

まとめ

現在、多くの国で人口問題が注目されています。それぞれの国によって人口問題の内容は異なり、具体的な悪影響や原因も様々です。

そして、人口問題は現時点でも、各分野でその影響が表れており、今後もその流れは加速していく恐れがあります。

とても規模の大きな問題のため、皆さんでもできる対策というのは少ないかもしれません。

とはいえ、人口問題への動向はこれからの日本や世界に大きな意味を持つため、欠かさずにチェックしていきましょう。

<参考文献>
1.総務省 第1部 特集 情報通信白書刊行から50年~ICTとデジタル経済の変遷~
2.内閣府 令和4年版 少子化社会対策白書
3.日本総研 出生数急減の背景と今後の少子化対策-現物給付重視の少子化対策の限界と若い世代の生活支援
4.厚生労働省 Ⅰ 令和2年の働く女性の状況
5.UN World Population Prospects 2022
6.環境展望台 枯渇する資源