近年サステナブルへの関心が高まり、様々なマークの付いた商品を目にするようになりました。本記事で紹介するレインフォレスト・アライアンス認証も、中央に大きなカエルがデザインされていることもあり、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。このマークが付いている意味や目的を知れば、自然環境の保全や人権問題の解決につながる可能性があります。ぜひ参考にしてみてください。
目次
レインフォレストアライアンス認証とは
レインフォレスト・アライアンス認証とは、農業を通して、「自然環境や生態系、天然資源」「農業従事者とその地域に暮らす人々の人権や福祉」を守る制度のことです。
現在、農業分野では、低賃金で長時間働かされたり一生懸命育てた農産物を安くで買い叩かれたり、農地拡大のために違法な森林伐採が行われたりするなど、多くの問題が発生しています。レインフォレスト・アライアンス認証は、これらの問題を解決に導き、誰も犠牲にならず損をすることのない状態を当たり前にするために誕生しました。
生産者が認証を取得するためには、独立した第三者機関から「環境」「社会」「経済」の3つの分野にもとづいた評価を受けます。この評価は「1度クリアしたら終わり」ではなく、定期的に行われており、農園や働く人々、自然環境がより良くなるように継続的な努力が求められます。
このレインフォレスト・アライアンス認証を取りまとめている団体が、レインフォレスト・アライアンスです。「森林減少」「気候変動」「人権」「生活水準の向上」といった課題に取り組む国際的な非営利団体で、1987年に設立されました。現在、70カ国以上で取り組みを展開しています。
ロゴにカエルが使われている理由
ロゴデザインに、カエルが採用されている理由は2つあります。1つは、科学者たちの間でカエルが「生物指標※」となっているためです。カエルの個体数が健全であれば、生息地の環境に問題がないと判断し、逆に多かったり少なかったりすると異常があると判断するといいます。
もう1つの理由が、レインフォレスト・アライアンスの創設者が熱帯雨林の保護活動を開始した時に、新熱帯区にて「アカメアマガエル」という種類のカエルを見たためだと言われています。
なぜレインフォレストアライアンス認証が必要とされているのか
続いては、認証制度が必要な理由を見ていきます。
人や地球に良い影響を与えるサービスや製品への注目度の高まりから
近年、SDGsやサステナブルに対する認知度が上がり、エシカルな選択をする消費者も増えています。そのため、商品やサービスを選択する際に、消費者が環境や人に配慮した製品であることを一目でわかるような目印が求められるようになりました。
レインフォレスト・アライアンスが行った調査においても、消費者の40%は持続可能な方法で生産または製造された製品であるかを見分けるために、ラベルを頼りにしていると回答しています。
つまり、レインフォレスト・アライアンス認証ラベル付きの製品が増えると、消費者が選びやすくなるのです。
世界中で起きている多様な問題の解決につながる
レインフォレスト・アライアンス認証は、地球上で起きている多様な問題の解決につながるとして注目されています。例えば、認証を受けた農場では、人工肥料や農薬の使用を減らしたり生態系や自然環境を保護する方法を学んだりと、環境面に配慮した農法を実践しています。
その他にも農業従事者に対して、児童労働法やジェンダー平等と差別の禁止について教え、賃金の改善なども行い、農村に暮らす人々の生活改善や人権保護にもつながっているのです。そしてこれらの活動は、現在世界全体で取り組まれている、SDGsの目標達成にも貢献すると注目されています(※SDGsについては、後ほど詳しく説明します)。
レインフォレストアライアンス認証の仕組み
レインフォレスト・アライアンス認証について理解したところで、続いては生産者が認証取得に至るまでの流れを確認していきましょう。
1.農園の認証に必要な監査を受ける
レインフォレスト・アライアンス認証には、「持続可能な農業基準」があります。
この基準には、
- 管理
- トレーサビリティ
- 収入と責任の共有
- 農業
- 社会
- 環境
の6つの主要要件(2023年9月時点)があり、条件を満たしていることを確認し、準備を進めます。その後、自身の農園がある地域内に、レインフォレスト・アライアンス認証を受けた機関がないか探し、監査を依頼します。
2.監査員による農園監査
監査員が農園を来訪し、現地監査によって持続可能な農業基準に従い運営しているかを確認します。問題がなければ合格となり、不十分な点がある場合は、監査員から必要な改善点のフィードバックを受けられます。
3.販売
農園監査に合格すると、レインフォレスト・アライアンス認証の農作物として販売が可能になります。名称や認証ラベルを使用する場合は、トレーサビリティと商標のポータルサイト「レインフォレスト・アライアンス・マーケットプレイス」への製品登録およびライセンス同意書への署名が必要です。
レインフォレストアライアンス認証を受けている商品一覧
続いては、レインフォレスト・アライアンス認証を受けた製品には、どのようなものがあるか確認していきましょう。コーヒーやカカオ、バナナなど幅広く展開しており、レインフォレスト・アライアンスの公式サイトにも、商品検索ページがありますので参考にしてみてください。
【エカテラ・ジャパン・サービス株式会社】リプトン ティーバックの紅茶製品
エカテラ・ジャパン・サービス株式会社が展開する紅茶ブランド「リプトン」は、2007年にケニアの自社農園で認証制度の導入を開始。2015年末には、125カ国以上で展開しているリプトンティーバック製品の茶葉を、100%レインフォレスト・アライアンス認証のものにすることを実現しました。現在は認証を受けた農園も増え、ケニア以外にも、スリランカやインドネシアなどからも調達しています。
2023年9月に発売された、「カフェインレスのはちみつ紅茶」の茶葉も100%レインフォレスト・アライアンス認証を受けたものです。渋みの少ない茶葉を使用し、はちみつの甘い香りも楽しめます。そのため、紅茶特有の渋みや苦味が苦手な子どもも楽しめる製品となっています。
【イオントップバリュ】減の恵 バナナ
「トップバリュ」は、フェアトレード認証や有機JASなど、人や環境に優しい製品を多く取り扱っているイオングループのプライベートブランドです。製品の中には、レインフォレスト・アライアンス認証製品もあり、認証農園で生産されたバナナ「減の恵」を販売しています。
通常のバナナより小ぶりですが、果肉がしっかりとしていて甘みとコクを感じられると、購入者からも高評価を得ています。デザート以外に、料理に使用する人もいるようです。
【株式会社ローソン】MACHI caféのコーヒー豆
株式会社ローソン(以下:ローソン)の「MACHI café」は、コーヒー豆やミルク、焙煎方法、抽出機械、品質管理などにこだわり、社会と環境に配慮したコーヒーサービスです。シングルオリジンシリーズとカフェインレスシリーズ以外に使用しているコーヒー豆は、レインフォレスト・アライアンス認証の農園で生産されたものを採用しています。
またローソンは、レインフォレスト・アライアンスと認証農園の生産品を取り扱う企業が設立した、「レインフォレスト・アライアンス コンソーシアム」にも参画。認証制度の普及活動や、持続可能な農法で生産された農作物を活用した製品の継続的な提供を目指しています。
レインフォレスト・アライアンス認証に関してよくある疑問
ここからは、レインフォレスト・アライアンス認証に関する疑問と、それに対する答えを見ていきましょう。
レインフォレスト・アライアンス認証とフェアトレードとの違いは?
この2つの認証制度は、どちらも農業の現状を変えることによって、持続可能な生産や市場、自然環境などの実現を目指しています。しかし、「重点をおく活動分野」と「実践方法」に違いがあります。
フェアトレード認証は「生産者の支援」に重点をおき、公正な取り引きの推進や生産者の生活水準の向上などに取り組む制度です。実践方法も、製品に最低価格とフェアトレード・プレミアム(※)を保証するなどがあります。これらを基盤に、人権保護や男女平等、若者の社会参加、気候変動への対応力の強化なども行っているのです。
一方でレインフォレスト・アライアンス認証は、自然環境や生態系の保護と農業従事者や農村に暮らす人々の生活向上を含む「農業」に重きをおいています。そのため実践方法も、農園管理や金銭管理の研修や、市場参加を通じて事業成長・収益向上・適応力の向上など、農産物の育成に留まらず総合的に支援するところも特徴です。
農薬は使われている?
レインフォレスト・アライアンス認証は、持続可能な農業を推進していますが、有機農法であることは定めていません。「持続可能な農業基準」も、「化学肥料と農薬の使用禁止」ではなく「使用削減」を推進しています。全面的に禁止にするのではなく、最終手段として使うようにしているのです。
例えば、育てていた農作物が病気になったり害虫による被害に遭ったりしたとします。このままでは市場に出せなくなり、経済的に大きな損害を受けてしまうという場合は、安全性が確かな農薬を部分的に使うことを認めています。加えて、労働者が病害虫の管理に関わる時は、農薬使用に関する研修を受け、保護具を着て農薬を使うことが決められているのです。
オーガニックとの違いは?
オーガニックは、農薬や化学肥料に頼らずに、太陽や水、土壌、微生物などが持つ、自然の力を活用した農林水産業や加工方法のことです。そのため、安全性が認められた農薬を部分的に使うレインフォレスト・アライアンスの農業との違いは、農薬や化学肥料を使用しないところです。
FSC認証との違いは?
農業を基盤につくられたレインフォレスト・アライアンス認証に対して、FSC認証は「森林管理」に重点をおいた認証制度です。そのため、農業以外が原因で起こる森林破壊や森林業における研究目的以外での遺伝子組み換え生物の使用禁止なども含まれています。またレインフォレスト・アライアンスは、FSCの設立メンバーでもあります。
レインフォレストアライアンス認証とSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」
最後に、レインフォレスト・アライアンス認証とSDGsの関係を見ていきましょう。
SDGsとは、2015年9月に開催された国連総会にて、参加した193カ国すべてが賛同し、決定した国際目標のことです。日本では、「持続可能な開発目標」とも呼ばれています。世界中で起きている、環境・社会・経済に関する課題解決にむけて、17の目標と169のターゲットが設定されました。
2030年までにSDGsの全目標の達成を目指し、現在、政府や企業、団体、個人などが取り組んでいます。そして、レインフォレスト・アライアンス認証が広まり、製品が増えることによって、
- 目標1「貧困をなくそう」
- 目標2「飢餓をゼロに」
- 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
- 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
- 目標8「働きがいも経済成長も」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」
など、SDGsの多様な目標の達成につながると期待されているのです。
今回は、その中でも特に関わりの深い目標15について見ていきましょう。
目標15は、
- 陸の生態系の保護や回復を行い、持続可能な利用の推進する
- 持続可能な森林管理
- 砂漠化の防止
- 土地劣化の阻止と回復
- 生物多様性の損失を防ぐ
など、自然環境や内陸と淡水の生態系に関することに焦点を当てています。
これ以上の自然環境および生態系の破壊に歯止めをかけるために、外来種や絶滅危惧種の問題、国と地方の役割、資金問題など、あらゆる角度から対策を行います。
レインフォレスト・アライアンス認証は先述した通り、森林にも焦点を当てた認証制度です。そのため、認証マークや制度が大勢の人に認識され、認証製品の購入者が増えることによって、自然環境と生態系の保護や保全に貢献できます。
>>各目標について詳しくまとめた記事はこちらから
まとめ
森林・気候・人権・生活水準の4つのテーマに焦点を当てた、レインフォレスト・アライアンス認証。最近は、コンビニやスーパーなどで見かける機会も増えてきました。カエルのマークのついた認証製品を購入すると、自然環境や生態系の保全、農村部で働く人々や先住民族の権利の保護などに貢献できます。SDGsの目標達成にも近づくでしょう。
買い物は、個人が手軽にできるアクションの1つです。1人ひとりが、人や地球に良い影響を与える製品を選択することによって、地球上で起きている様々な問題の解決に近づけます。これまで何となく製品を買っていた人は、レインフォレスト・アライアンス認証のものも選択肢に入れてみてください。
〈参考文献〉
SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江憲史 著|中央公論新社
組織とFSCとの関係に関する指針|Forest Stewardship Council
Q&Aでオーガニックを知ろう!|定非営利活動法人日本オーガニックアンドナチュラルフーズ協会
よくある質問(FAQ):レインフォレスト・アライアンス認証は、有機農法を義務付けていますか。|Rainforest Alliance
Fairtrade Premium overview|Fairtrade International
よくある質問(FAQ)|Rainforest Alliance
MACHI café|株式会社ローソンリプトンから待望の「はちみつ紅茶」が登場!やさしい甘さでカフェイン0.00g*だから、親子でも楽しめる!「リプトン カフェインレスのはちみつ紅茶」新発売|PRTIMES
レインフォレスト・アライアンス持続可能な農業基準 農場要件| Rainforest Alliance
レインフォレスト・アライアンス認証がどのように御社の利益になるのか|Rainforest Alliance
農業労働者の権利と福祉の向上|Rainforest Alliance
農村地域の人々の人権の保護|Rainforest Alliance
Rainforest Alliance は Preferred by Nature (旧 NEPCon) とどのように連携していますか?|Rainforest Alliance
「レインフォレスト・アライアンス認証」とは何を意味しているのですか?| Rainforest Alliance
アジアにおける開発と労働―グローバル市民社会の視点から|大原社会問題研究所雑誌 №726/2019.4
森林は二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に貢献しています|林野庁
気候変動と適応|国立研究開発法人 国立環境研究所
途上国の森林減少と地球温暖化|国際環境経済研究所世界の森林を守るために|環境省
森林・林業分野の国際的取組|林野庁