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夫婦別姓とは?日本で認められる日はくる?メリット・デメリットも

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「結婚したら相手と同じ姓になる」という法律は、明治31年(1898年)に成立しました。それから100年余りの間に法律は改正されましたが、今でも夫婦が同じ姓を名乗ることは変わらず続けられています。しかし近年、夫婦別姓に関する議論が巻き起こり、裁判で争われる事例も出ています。

この記事では、夫婦別姓とは何か、事実婚との違い、メリット・デメリット、日本の現状、最新動向、SDGsとの関係について解説します。

夫婦別姓とは

夫婦別姓とは、夫婦が結婚後も結婚前の姓を名乗ることを認める制度です。現在の日本の法律は夫婦別姓を認めておらず、夫婦のどちらかが相手の姓を名乗る必要があります。

世界を見てみると、夫婦別姓を認めていない国は日本だけです。他国ではもともと別姓であるか、夫婦別姓を選択できる、または結合姓・複合性といって相手と自分の姓を組み合わせて名乗る制度が採用されています。

もし日本で夫婦別姓が導入されることになった場合、現在検討されているのは「選択的夫婦別姓」と「例外的夫婦別姓」の2つの制度です。

選択的夫婦別姓

選択的夫婦別姓とは、夫婦が結婚後も結婚する前の姓を名乗るかどうかを選べる制度です。ドイツやタイ、スウェーデン、フィンランドで採用されています。ちなみにスウェーデンやフィンランドは、夫婦別姓のほか、同姓、結合姓、新しい姓をつくるといった選択肢もあります。

選択的夫婦別姓は、別姓にするかを選べる制度なので、同姓を選択することも可能です。

例外的夫婦別姓

例外的夫婦別姓とは、夫婦が結婚後も結婚する前の姓を名乗ることを例外として認める制度です。夫婦が同じ姓を名乗ることを原則とし、手続きを踏んだ上で例外的に別姓が許可されます。

夫婦別姓と事実婚との違い

夫婦別姓を説明する際によく引き合いに出される言葉に事実婚があります。この2つの違いは、法律上の夫婦であるのか、そうでないのかという点です。夫婦別姓は、夫婦の姓は違っても婚姻届により法律上の夫婦となります。

一方、事実婚は、婚姻届を提出せずに夫婦としての関係を続けるため、法律上の夫婦ではありません。法律上の夫婦ではないと、相続権がない、子どもと父親との関係を戸籍上で証明できない、医療同意ができないなどの制約があります。

夫婦別姓のメリット

諸外国では認められている夫婦別姓ですが、実際に日本で運用された場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。3つのポイントを取り上げます。

改姓に必要な手続きが不要

1つ目のメリットは、氏名を変更するための手続きが必要ないことです。姓が変わると、マイナンバーカードや免許証、パスポート、銀行口座、国家資格などに登録している氏名を変更しなければなりません。これらの手続きが不要になれば、改姓をする本人にとっても、事務処理を行う側にとっても負担が少なく済みます。

改姓による混乱の防止

2つ目は、氏名を変更すると起きやすい混乱を防ぐことができることです。仕事などで築いてきた実績や信用は、氏名と結びついて記録に残っています。姓を変えることにより、それまで積み上げてきたものが引き継がれない場合も実際にあります。また、結婚や離婚により本人や子どもの呼び方が変わることで混乱を招くといった事態も避けられます。

ジェンダーの平等の実現

3つ目は、ジェンダー平等の実現につながることです。どちらかの姓に合わせることは、一方の尊厳やアイデンティティーを脅かされるという考え方もあります。また、現行の制度では夫か妻の姓のいずれかを選択できるはずですが、結果的に改姓している約95%は女性です。[i] これは、女性に改姓を求める見えない差別とも捉えることができます。こうした点から、夫婦別姓は男女平等を実現する制度であると言えます。

このように、夫婦別姓のメリットには、姓を変えることで生じる負担や不便をなくすという生活の面から、男女平等といった社会の在り方にも及びます。諸外国では、儒教の教えから先祖のつながりを重んじる韓国、男女平等や個人の選択を重んじるドイツなどが夫婦別姓を採用しています。(ドイツは選択的夫婦別姓)日本が夫婦別姓を導入する際には、個人や社会にとってのメリットを広く検討していく必要があるでしょう。

夫婦別姓のデメリット

現在の日本で夫婦が別姓を名乗る場合は、法律上の夫婦ではない事実婚として扱われます。この場合、「夫婦別姓と事実婚との違い」で解説したように、相続権がない、子どもと父親との関係を戸籍上で証明できない、医療同意ができないなどがデメリットです。

しかし今後、法律が改正されて夫婦別姓が認められることも考えられます。そこで、夫婦別姓が導入されたときのデメリットを取り上げてみましょう。

子どもの姓の問題

夫婦別姓を選択した場合、子どもの姓をどうするのかという問題が発生します。諸外国では、父親・母親のいずれかの姓を選ぶ、両方の姓を入れる、その場合はアルファベット順になるなど、国によって規定はさまざまです。日本でも、決められたルールに沿ってこの問題を家族内で話し合う必要があります。子どもが自分と異なる姓になる可能性もあり、必ずしも納得できる形に決まるとは限りません。

生活する上で不便

夫婦別姓を選択した場合、生活する上で不便であることも考えられるデメリットです。同じ姓の場合、夫婦や家族であることが対外的に分かりやすいという面があります。一方、別姓の場合は、夫婦関係や親子関係を姓で判断することは難しくなります。このことは、夫婦別姓を実施している諸外国では大きな問題として扱われている様子はありませんが、日本では関心事の1つになっているようです。[ii]

夫婦別姓に関する日本の現状

夫婦別姓にはメリットやデメリットがいくつかありますが、日本国内でも導入するべきという意見が以前からあります。しかし現在のところ、夫婦別姓は認められていません。日本だけがなぜ認められないのか、人々の意識に注目してみます。

結婚により姓が変わることに肯定的

まず、結婚により自分の姓が変わることに肯定的な感情が生まれていることが挙げられます。「婚姻によって、自分の名字・姓が相手の名字・姓に変わったとした場合、どのような感じを持つと思うか」を聞いたところ、「名字・姓が変わったことで、新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」と答えた人の割合が54.1%と最も高く、次に「相手と一体となったような喜びを感じると思う」の39.7%でした。

■婚姻による名字・姓の変更に対する意識(令和3年12月「家族の法制に関する世論調査」より)

これに対して、「名字・姓が変わったことに違和感を持つと思う」(25.6%)、「今までの自分が失われてしまったような感じを持つと思う」(9.7%)といった否定的な感情を持つ人の割合は多くありません。つまり、現行の制度が続けられたとしても、疑問を持たない人が一定数いることが考えられます。こうした背景も、夫婦別姓の導入に踏み切ることなく現在に至っている一因と言えるでしょう。

ただし、性別や年齢によりこの意識の傾向は多少異なります。また、姓を変えるのは女性がほとんどである実情を踏まえることも必要です。

家族の一体感・絆が弱まる不安

次に、夫婦別姓にした場合、夫婦や親子の一体感や絆が弱まると思う人が一定数いることです。調査では、姓を別にしても家族の一体感・絆には影響がないと答えた人の割合は61.6%と半数以上います。しかし一方で、弱まると答えた人の割合は37.8%と、決して少ない数字ではありません。

■夫婦・親子の名字・姓が違うことによる家族の一体感・絆に対する思い(令和3年12月「家族の法制に関する世論調査」より)

特徴的なのは、家族の一体感・絆が弱まると答えた人の割合は女性より男性の方が多いこと、また年齢が高くなるにつれて数値が上がっていることです。これは、姓と家族に対する考え方や生きてきた時代の背景・慣習などにより生じていると推測できます。それでも社会全体で見た場合、家族の一体感・絆が弱まるという不安も無視できない状況です。

また年代別で見た場合、若年層ほど影響はないと考えていることから、時代が進めば夫婦別姓の議論が進んでいくことも考えられるでしょう。ただし、今のところ決定的な動きにはなっていません。

夫婦別姓に関して、国民の意識の観点から2つのポイントを取り上げましたが、これ以外にも問題はあると考えられます。これらの問題を乗り越えて、日本にも夫婦別姓を採用するときが来るのでしょうか。次に、日本における夫婦別姓の最新動向を見ていきます。

日本における夫婦別姓の最新動向

夫婦別姓の導入に関する議論は以前からなされていますが、近年はどのような動きがあるのでしょうか。国内の状況や国際的な日本の立場、政界について確認していきましょう。

夫婦別姓を求めて12人が国を提訴

2024年3月、夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反であるとして、都内などに住む12人が国に対して訴えを起こしました。同規定について最高裁判所は、2015年と2021年に「憲法に違反しない」と判断しています。

原告の1人は、仕事や出産、住宅の取得などの場面で不便を感じて、同じ夫と結婚と離婚を5回繰り返したと言います。弁護団は、姓が変わると旧姓で得た信用や評価を維持することが難しいほか、アイデンティティーの喪失を感じる人もいると主張。また、結婚せずに事実婚を選んだとしても、相続の場面で不利になるなどの不安を抱えていると訴えています。

2021年に最高裁は、「2015年の判決後の社会の変化や国民の意識の変化といった事情を踏まえても、憲法に違反しないという判断を変更すべきとは認められない」と指摘しています。[iii]今回の裁判の行方が注目されるところです。

国連から4度にわたる勧告

夫婦別姓を認めない民法の同規定は合憲とされる一方、国連は2003年、2009年、2016年、2021年と4度にわたり日本に対して改善するよう勧告をしています。多くの国で女性が夫の姓を選んでいるのは事実です。しかし国連は、それを強制することが問題であり、男女平等を実現するために女性が選択肢を持つことが重要であるとしています。[iv]

日本はこの勧告を受けて、実施に向けた措置を提出しています。現在のところ、夫婦別姓を実施する具体的な段階までには至っていませんが、国際的な流れとして、姓を選択できる法の整備が求められている状況です。

2022年参議院選挙の候補者の半数は賛成

次に、2022年に行われた参議院選挙の候補者のうち、選択的夫婦別姓に賛成する人の割合から、政界の流れを見ていきましょう。NHKが行ったアンケートによると、2022年参議院選挙の候補者のうち、選択的夫婦別姓の導入に賛成と答えた割合は62%、反対は29%でした。

■選択的夫婦別姓の導入について

これを政党別の回答の平均値と比べてみると、公明党、共産党、れいわ新選組、社民党は全員が「賛成」、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、NHK党の順に賛成が多くいる状況です。これに対して自民党は「回答しない」が40%を占めました。

候補者全体の割合では賛成が半数を占めるものの、反対も一定数いるほか、自民党のように見解を明らかにしていないケースもあります。意見が分かれていることはもちろんのこと、賛成・反対と割り切れない事情があることが分かります。こうした理由も、夫婦別姓の議論が大きく進まない1つの要因と言えるでしょう。

夫婦別姓とSDGs

最後に、夫婦別姓とSDGsとの関係について確認します。夫婦別姓は、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に貢献する制度です。

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、女性への差別をなくし、ジェンダー平等を促進するための政策や法律を導入することを掲げています。

夫婦別姓は、本人の意思に反して姓を変えなければならない事態を避けられる制度です。特に日本では、改姓している約95%が女性という実態があります。このことは、女性への差別と捉えることも可能です。その中で、女性が夫の姓を名乗ることを強制されず選択肢を持つことは、ジェンダーの平等につながります。夫婦別姓を実現する法律を整備することは、SDGsの目標の達成につながります。

まとめ

夫婦別姓とは、夫婦が結婚後も結婚前の姓を名乗ることを認める制度です。夫婦別姓のメリットは、改姓に必要な手続きが不要であることや、混乱を防止することなどが挙げられます。一方、デメリットは子どもの姓をどちらにするのかなどの問題があることです。

現在の日本の法律は、夫婦別姓を認めていません。この背景には、姓を変えることで結婚の喜びや家族の一体感を感じる人も中にはいることが挙げられます。しかし2024年現在、夫婦別姓を求める訴えが起きたり、国連から4度にわたる改善勧告を受けたりと、夫婦で同じ姓を名乗ることを強制する法律には問題があることも事実です。SDGsには、ジェンダー平等の目標が掲げられています。国内外の事情やSDGsの観点からも、夫婦別姓の導入の是非は今後も議論を深めていく必要があるでしょう。

[i] 夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ | 内閣府男女共同参画局
[ii] 20代~30代独身男女、「夫婦別姓」賛成5割、実際に「別姓にしたい」は2割~女性の5人に1人は夫婦同姓に憧れないと回答~ | タメニー株式会社のプレスリリース
[iii] 結婚と離婚を5回繰り返す人も 夫婦別姓求め12人が国を提訴 | NHK | 憲法
[iv] 「男女が同じ選択肢を」夫婦同姓、国連は改善勧告 最高裁が「合憲」判決-日本経済新聞夫婦別姓など求める国連の文書、外務省が2年以上放置:朝日新聞デジタル