グレートバリアリーフを抱えるケアンズは、世界中から人々が集まる観光地として高い人気を誇ります。
そんなケアンズの新たな観光スポットとして注目されているのが、Cairns Aquariumです。
グレートバリアリーフから最も近い水族館として知られており、多方面における環境保全に力を入れています。
この記事では、Cairns Aquariumがどのような方法でケアンズの自然環境を保護しているのか詳しく解説していきます。
Cairns Aquariumの概要
ケアンズの市街地に位置するCairns Aquariumは、2017年に設立された比較的新しい水族館です。
3階建ての館内は11のゾーンにわたる9つの生態系に分類されており、水槽タンクの数は71にも及びます。
また、国内唯一の深さ10メートルのサンゴ礁専用のタンクを展示しているほか、20メートルの水中トンネルやマングローブの遊歩道なども完備されている大型の水族館です。
Cairns Aquariumはグレートバリアリーフから最も近い水族館!
グレートバリアリーフから最も近い水族館として運営されているCairns Aquariumは、立地を活かした展示を行っています。
展示する水生動物は淡水魚、サンゴ礁で生息する魚、サメ、エイなどクイーンズランド北部で見られるものに限定され、館内で飼育されている水生動物の数は実に16,000匹以上です。
また、ケアンズのもうひとつの観光スポット・熱帯雨林に生息する生物も展示しており、水生動物以外にもニシキヘビ、オオトカゲ、ワニといったバリエーション豊富な生物を楽しめます。
一般的な水族館で行われるイルカやアシカを使ったショーなどは行っておらず、グレートバリアリーフを含むクイーンズランド北部の生物や生態系を見せることに焦点を当てています。
Cairns Aquariumの目的
ケアンズの中心地に位置するCairns Aquariumは、海・陸両方のケアンズの生態系を展示する水族館です。
グレートバリアリーフと熱帯雨林という2つの世界遺産を持つ観光地であるケアンズは、地球上で最も生物多様性の高い地域のひとつと評価されています。
しかし、そこに生息する多くの固有種が絶滅の危機に晒されており、将来的に生態系に異常を来す可能性も否定できません。
Cairns Aquariumはリサーチ、啓発、リハビリテーション、人材育成、プラスチックごみの廃止といったさまざまなエコ活動を行い、オーストラリアの動植物や生態系を保護しようと取り組んでいます。
以下では、実際にCairns Aquariumが行うエコ活動の詳細についてチェックしていきましょう。
ウミガメのリハビリテーション病院の開放
Cairns Aquariumでは、オプションツアーとして来場者に対してウミガメのリハビリテーション病院を開放しています。
グレートバリアリーフはウミガメの生息地として知られており、主に以下のようなウミガメが見られます。
- Green turtle(アオウミガメ)
- Loggerhead turtle(アカウミガメ)
- Hawksbill turtle(タイマイ)
- Flatback turtle(ヒラタウミガメ)
- Olive ridley turtle(ヒメウミガメ)
- Leatherback turtle(オサガメ)
リハビリテーション病院のウミガメは、グレートバリアリーフでケガをして搬送された個体が中心です。
漁の網に引っかかったり、ボートと衝突したりといった事故によるケガのほか、近年ではプラスチック製の袋をクラゲと間違えて誤飲するウミガメも多くなっています。
ウミガメは喉から胃に向かってトゲのような突起が付いているため、一度飲み込んだものを吐き出すことは非常に困難です。
プラスチック製の袋が詰まることで搬送されるウミガメも増えており、Cairns Aquarium内のリハビリテーション病院ではケガから回復したウミガメを自然に還すためのリハビリテーションを行っています。
尚、リハビリテーション病院を運営しているのは、非営利団体のCairns Turtle Rehabilitation Centre(ケアンズ ウミガメ リハビリテーションセンター)です。
ウミガメのケアやリハビリテーションは全てボランティアスタッフが関わっており、Cairns Aquariumの来場者に対して解説やワークショップのサポートを実施しています。
ウミガメが晒されている危機と環境問題について身近に学べることから、来場者から人気のアクティビティとなっています。
海や陸の生態系を守るためのリサーチ
Cairns Aquariumは、グレートバリアリーフと熱帯雨林という2つのエリアに焦点を当てた展示を行っています。
しかし、自然を対象としていることから、生息する動植物の多様性、各生物の相互作用、環境問題に対する生態系への影響といったさまざまな点に関して解明できていない部分もたくさんあります。
正しい知識を身に着けることは、動植物や生態系を保護する上で必要不可欠です。
そこで、Cairns AquariumではR&D(Research and Development)と呼ばれる研究開発プログラムを実施し、海と陸に関するデータ収集及び研究を行っています。
研究の成果は実際にグレートバリアリーフや熱帯雨林で適用されており、自然下の生態系の持続可能性を高めています。
ペットボトル飲料の販売の禁止
グレートバリアリーフと密接な繋がりがあるCairns Aquariumでは、プラスチックごみが生態系に与える影響を懸念しています。
そんな中でCairns Aquariumが解決策として考えたのが、ペットボトルの販売中止と館内に設置されている水飲み場の増設です。
また、マイボトルを持って来ていない来場者のためにショップで再利用可能なボトルも販売しており、プラスチックごみを生み出さないように工夫しています。
車を使わずに済む立地
自動車による二酸化炭素の排出増加と気候変動を懸念して、Cairns Aquariumでは人々に対して自動車ではなく徒歩、自転車、公共交通機関で来場するよう呼び掛けています。
しかし、アクセスの悪い場所に水族館を建設すると、利便性を重視して自動車での来場者が多くなる恐れがあります。
Cairns Aquariumは人々がエコな方法で来場できる環境を実現させるため、市街地の中心に施設を建設しました。
ケアンズの主要駅からCairns Aquariumまでは徒歩10分前後で、実際に車以外の方法で訪れる来場者の方が多くなっています。
ボランティアや職場体験の受け入れ
長期的にグレートバリアリーフやケアンズの生態系を保護するためには、人材育成が欠かせません。
そこでCairns Aquariumでは、より多くの人々に海生生物の飼育体験の機会を提供すべくボランティアや職場体験の受け入れに力を入れています。
ボランティアや職場体験は一般的な水生生物の飼育方法だけでなく、各生物や生態系の保護についても学習できるカリキュラムになっています。
水族館への就職を希望する学生はもちろん、環境保全に興味を持つ人々からの申し込みも多く、ケアンズ周辺の環境保全に特化した人材育成に繋がっている活動です。
Clean up Australia Dayへの参加
オーストラリアで毎年5月の第一日曜日に開催されているのが、Clean up Australia Dayと呼ばれるゴミ拾い活動です。
海の保全を目的に1990年からはじまった取り組みで、Cairns Aquariumのスタッフも毎年参加しています。
ケアンズのClean up Australia Dayはビーチ、水路、熱帯雨林保護区周辺といった広範囲を対象としており、グレートバリアリーフをはじめとする海はもちろん、熱帯雨林などの陸の自然保護にも貢献しています。
まとめ
グレートバリアリーフから最も近い水族館・Cairns Aquarium。
グレートバリアリーフや熱帯雨林で見られる生物を数多く飼育することで、訪れた人々がケアンズの自然環境について学べる仕組みになっています。
また、海洋ゴミや人間の活動で傷ついたウミガメのリハビリテーション病院を開放し、環境問題の深刻性や環境保全の重要性を啓発しているところもポイントです。
Cairns Aquariumが取り組むエコ活動によって、ケアンズの自然環境が改善される日も近いのかもしれませんね。