あなたは、「女の子なんだから、大人しくしてなさい」「男の子なんだから、泣かないの」とやりたいことを止められたりしたことはありませんか?大人になっても、「女なんだから、片付けて」「男なんだから、おごってよ」と聞いたこと、言われたことだってあるでしょう。
このような先入観は、日本はもちろん世界でもジェンダー差別を生んでいます。
ジェンダーとは、”社会的・文化的に作られる性別”のことです!
「女性は、家事をやらなければいけない。男性は、家族を養わなければいけない」など、社会全体が昔からの価値観や慣習に囚われていることで、自由に働く機会を与えられずに、差別に苦しんでいる人達がいます。
途上国に至っては、たった12歳で結婚をしなければならない女の子たちもいるのです。
2015年に採択されたSDGsの目標のうちのひとつ、目標5では、女性の潜在能力を十分に発揮できる未来を掲げています。女性によるエンパワーメントを促進することは、経済の成長にも繋がると考えられているのです。
それでは、SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について詳しく見ていきましょう!
目次
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」とは?
まずは、SDGs目標5について簡単に説明します。
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」を簡単に
SDGs目標5は、ジェンダーによる差別をなくし、誰しもが平等な機会を得て、自分の能力を発揮できる社会を作ることを目指しています。
世界では、「女性は家族の世話をして結婚するのが当たり前」と、幼い頃から家族から結婚を強要され、教育さえも受けられずに生活をしている地域があります。
実際に子供たちの支援を行っている日本ユニセフ協会から、以下のように発信されています!
“世界では、約7億5,000万人の女性と女の子が18歳未満で結婚しており、そのうち3人に1人以上(約2億5,000万人)が15歳未満で結婚している。”
日本ユニセフ協会
さらに、女性性器切除(FGM)の慣習が残る地域があります。こちらも日本ユニセフ協会では、以下のようにデータを公開しています。
“世界30カ国の少なくとも2億人の女の子たちや女性たちがFGMを経験している。うち、半数以上が3カ国(インドネシア、エジプト、エチオピア)に集中している”
日本ユニセフ協会
世界にはまだまだ、女性への差別や偏見が多く残っているのが現状です!
と言っても難しく感じる人も多いと思います。そこで次に、SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」の理解を深めるためのポイントをまとめました。
この記事はボリュームが大きいので、まずは気になるポイントだけ詳しく抑えてみても良いかもしれません!
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」のターゲット
SDGs 目標5のターゲットは、どの課題に対してどういう解決をしていったらいいのか、より具体的な1〜6の達成目標とa〜cの実現方法、合計9個のターゲットで定義されています。
ターゲット | |
---|---|
5.1 | あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。 |
5.2 | 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。 |
5.3 | 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。 |
5.4 | 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。 |
5.5 | 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 |
5.6 | 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。 |
5.a | 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。 |
5.b | 女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。 |
5.c | ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。 |
主に子どもや女性の立場を改善し、社会への参画を重視した内容です。女の子が不平等に扱われている問題や、女性が法律によって差別されている問題に目を向け解決を目指します。
それでは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が必要となる理由について詳しくみていきましょう。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が必要な社会の現状
SDGs5の目標「ジェンダー平等を実現しよう」が必要な理由として、SDGsでは、全ての人が健康で平等に権利を得る社会を目指しています。世界には、女性に対する不平等な社会的慣習などが根強く残っていることが、ジェンダー平等が必要となる理由のひとつです。
世界には、様々な社会的慣習が残っており、子どもや女性の活躍を阻んでいる状況があります。ここでは、世界や日本でどのようなジェンダーの差別があるのか、現状を把握していきます。
まずは、ジェンダーについて考えていきましょう!
そもそもジェンダーとは?
私たちの性別の在り方には4つの要素があります。
①からだの性
生物学的に出生後医師が判断する性別
②こころの性(性自認)
自分をどのような性別と捉えるかによる性別(社会的性別)
③好きになる性(性的指向)
好きになる感情がどの性別に向いているかによる性別
他者に性的に引かれない方をアクセクシャルという
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④表現する性(性表現)
言葉遣い・服装・振る舞いなどによる性別
ジェンダー(“gender”)は、日本語では「社会的性別」と訳されます。社会的・文化的な性別を表すときに使われる単語です。性別を表す言葉として「Sex」もありますが、こちらは、より生理学・生物学的に表現するときに使います。
最近は「トランスジェンダー」や「ジェンダーレス」といった言葉をニュースなどでも耳にすることも多くなってきました。日本でも男女差別の問題などが度々ニュースで取り上げられています。
長い間培ってきた慣習の全てが悪いわけではありません。しかし、社会的な性別によって役割や行動、考え方、見た目などが制限されてしまうことで、苦しんでいる人々がいます。
ジェンダー平等の実現は、持続可能な社会への第一歩
SDGsの掲げる理念は、「誰ひとり取り残さない」ことです。世界にはジェンダー差別により、
- 教育を受けられない
- 子どもの意志を無視した児童婚を強いられる
- 女性器切除
- 政治への参画機会が少ない
など、子どもや女性が活躍しにくい現状があり、「誰ひとり取り残さない」とはほど遠い状況です。つまり、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、SDGsの理念を実現するためにも不可欠な目標と言え、世界中の人々が一丸となって取り組まなければなりません。
SDGsでのLGBTQの扱いについて
SDGsでは、世界各国で達成するための目標として掲げられていますが、ここでは性的マイノリティと呼ばれる人たちについての記述がありません!
現状では、国によってLGBTQ+に否定的な姿勢を持つ場合や、時には宗教・倫理的な観点から罰せられることすらあるためです。
とはいえ、SDGsのスローガンにあるように「誰ひとり取り残さない」社会づくりが求められているのも事実。
性的マイノリティの人たちを含めたジェンダー平等については、今後スピーディーに改善を求める必要があります。
では、ここからは世界や日本のジェンダーに関する現状を詳しく掘り下げていきましょう!
ジェンダーに関する世界(開発途上国)の現状
まずは、開発途上国の現状について見ていきます。
女の子は学校に通わせてもらえないこともある
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」における現状は、世界子供白書2016によると、小学校に通うことさえできない子どもは、アフリカ地域だけでも約3,300万人(世界人口の約0.4%)。世界全体では、約5,900万人(世界人口の約0.7%)にも及びます。特に途上国の農村部では、女の子は教育を受ける必要がない、自宅の仕事を手伝うべきと考えられており、学校に行かせてもらえないケースが多いのが現状です。
以下は、地域別でのジェンダー差別の認識に関するグラフです。
世界には、「大学は男の子にとってより重要である」「男性のほうが政治的リーダーに向いている」など、女性に対する男性の差別的態度が残る地域があります。特にアフリカやアジアなど発展途上国では、半数以上の人が男性のほうが優位と考えているのが現状です。
さらに、アフリカ地域や一部のアジア諸国には、”児童婚”や”女性性器切除(FGM)”といった古い慣習が残っています。
どのようなことが行われているのか、実際の証言などを参考にしながら見ていきましょう。
児童婚
児童婚とは18歳未満の結婚、またはそれに相当する状態であることを言います。児童婚は、家族によって強制的に結婚させられるケースが多く見られます。その理由としては、自分の子供と引き換えに金品を得ることを目的としている場合がほとんどです。
子どもの支援をしているユニセフ協会によると、
“アフリカでは、1億2,500万人の女の子と女性が18歳未満で結婚している。
アフリカでは、3人に1人の女の子が18歳未満で結婚しており、約10人に1人が15歳未満で結婚している。”
日本ユニセフ協会
と、特にアフリカでの児童婚が多いことが分かります。
児童婚のリスク
未成年での結婚は、妊娠・出産に伴う妊産婦死亡のリスクが増加します。また、結婚した相手やその家族から暴力、虐待、搾取といった被害も報告されています。
児童婚が行われる地域の傾向
児童婚は、主に貧困家庭・地方(農村部)で多く行われている傾向があり、その多くが女の子です。男の子が幼いうちに結婚させられることもありますが、女の子はその約8倍近い人数が結婚させられているのです。
さらに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、学校閉鎖や地域サービスの中止、親の死去などで、児童婚のリスクが高まるだろうとユニセフ協会から報告がされています。
児童婚がどのように少女たちを苦しめているのか、その声に耳を傾けてみましょう。
参考
日本ユニセフ協会”世界子供白書”
『COVID-19:児童婚の進展への脅威(原題:COVID-19: A threat to progress against child marriage)』
児童婚に苦しむ人たちの証言
児童婚に苦しむ女の子たちの証言をまとめました。
◯小学校に2年しか通えずに結婚した女の子アミナさんの証言
”「小学校には2年しか通っていません。家族で唯一の女の子だったし、長女だったから、やめざるをえませんでした。料理をしたり家事をしたりしてお母さんを助けなければならなかったのです。学校をやめてすぐ、お母さんは私を結婚させました」とアミナさんが言います。”
”「家族がわたしに結婚するよう言ってきた時、わたしは何も言えませんでした」とアミナさんは続けます。「わたしが何か言ったところで、お母さんは受け入れなかったでしょう。だから、わたしは黙って従い、結婚したのです。お母さんたちも、かつてそうして結婚してきたのですから」”
チャド 結婚で夢を奪われる女の子たち 児童婚の慣習を終わらせるキャンペーン
◯14歳で結婚し、母になった少女チャドさんの証言
”ここは、西アフリカ・マリの金鉱。娘のダビーちゃんを背負いながら腰をかがめ、ヒョウタンで作った容器で川底の泥をすくい上げ、そっと選り分けているのは16歳のサイラさんです。「つらいことには慣れています」と彼女は言います。
サイラさんが結婚したのはわずか14歳の時。その後、36歳の夫との間にすぐに子どもができました。この妊娠は、彼女にとってつらいものでした。妊娠が分かってから1カ月後、朝起きると、夫がいなくなっていることに気づいたのです。サイラさんの義父のウスマンさん(65歳)は、夫が赤道ギニアに働きに出たと教えてくれました。それ以来、サイラさんの夫からは何も連絡がない状態が続いています。
サイラさんは無事に出産し、赤ちゃんをダビーと名付けました。ダビーちゃんは病弱だと言います。”
西アフリカ・マリ 児童労働や早期婚 子ども時代を奪われた女の子たち
◯学校に通うお金がないと父親に結婚をさせられた、タンザニアのアニタさん(19歳)の証言
”アニタ(19歳)は、中学校2年生だった16歳の時に父親に強制されて結婚した。「私を学校に通わせるお金がない、と父は言いました。その時すでに持参金として牛を20頭受けとっていたのです。」”
逃げ道がない:タンザニアの児童婚と人権侵害
児童婚が起きる原因は、社会的な慣習に加えて貧困です。児童婚をなくすためには、複数世代での貧困の連鎖などを断ち切る必要があります。そして女の子が教育を受けられるようにしなければなりません。これにより、栄養や衛生などの知識が身につき、自分の子どもの育児にも活かされるでしょう。
児童婚によって、学校に行けないなど自由が許されない子ども達が、世界にはまだ数多くいることを忘れてはいけないのです。
【関連記事】児童婚とは?なくならない理由や多い国、解決に向けた取り組み
女性性器切除(FGM)
世界には、女性性器を切除する慣習がある地域があります。小さな女の子は、女性性器切除(FGM)を受けると大人の女性になれると教えられているのです。
母親たちは、その危険性や害を知っていながらも、強い社会的規範に影響され、娘にも受けることを止めさせることができません。
この痛ましい現実について、詳しく見ていきましょう。
女性性器切除(FGM)とは
女性性器切除(female genital mutilation)とはアフリカや中東、アジアの一部の地域で行われている慣習です。一定の年齢になると女性の性器の一部を切除します。主に女性の処女性や純潔、貞節を守るために行われており、宗教上の義務だと主張する団体もあります。
麻酔などは使わずに行われることが多く、切除後は多くの女の子が感染症や不妊、死のリスクなどにさらされています。
女性性器切除(FGM)の実態
この慣習の始まりは、3000年も昔に遡ります。祖母から母、娘へと伝え続けられた言い伝えは強制力が強く、未だに娘に受けさせたいと考える母親もいるのです。
ある一部の地域では、女性性器切除(FGM)の医療化さえも進んでおり、「医師が施術するから安全」だと考えられているのです。とはいえ、何も知らない女の子にFGMを行うことは、人権侵害であることに変わりはないでしょう。
上記の表は、国別に女性性器切除(FGM)が行われている比率を現したものです。
女性性器切除(FGM)の慣習は、ブルキナファソやリベリアなどのアフリカや、エジプトなどのアジアの一部の地域で行われています。1980年代と比較すると、近年その数は少なくなっているとはいえ、それでも女性の半数以上が施術を受けている地域が残っています。
日本ユニセフ協会の発表によると、未だ世界30カ国で女性性器切除(FGM)の慣習は残っており、2億人もの女性と女の子が女性性器切除を受けています。そのうち15歳未満の女の子は、4,400万人にも上るのです。
さらに現在の傾向が続けば、2030年までに1億5,000万人(世界人口の約1.9%)もの女性(15歳〜19歳)が女性性器切除(FGM)を受ける見込みがあると、日本ユニセフ協会は発表しています。
参考:日本ユニセフ協会女性性器切除(FGM)
FGM撤廃の動きも見られている
このように、まだまだ世界にはFGMが慣習として残っているものの、最近では国連(UN)が2月6日を「女性器切除(FGM、女子割礼)の根絶のための国際デー 」に定めるなど、世界各地で反対を訴える活動が行われています。
また、ブルキナファソやエジプトなど女性性器切除(FGM)が行われている国では、女性だけでなく、男性たちも女の子たちへのこの慣習に否定的な人たちがいます。さらに、アフリカでは反対運動や慣習をなくそうと様々なコミュニティが活動を続けています。
そして、ケニア・ウガンダ・ギニアビサウ・ナイジェリア・ガンビアでは、すでに女性性器切除(FGM)を違法とする法案を可決するなど、国全体で、女性性器切除(FGM)の撤廃に取り組み始めています。
それでは、実際に女性性器切除(FGM)を受けた人たちの声を聞いてみましょう。
女性性器切除の実際の証言
公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンは、子どもの権利を推進し、貧困や差別のない社会を目指して活動をしている団体です。
各地の現状を訴えるために動画を配信しています。その中から、女性性器切除(FGM)についての動画を紹介します。
◯ソマリアで生まれ育ったソフィアさんは9歳で女性性器切除の施術を受ける
◯4歳の女の子が命を落としたことがきっかけでギニア国内では反対運動が始まる
◯エチオピアで女性性器切除を受けたアレガシュ・アゲグネフの証言
“アレガシュ・アゲグネフさんにとって、「女性の割礼」は、選択の余地のないものでした。「子どもの時、割礼を受けました。娘も同じく、割礼を受けなければなりませんでした。避けることができなかったんです。」(アゲグネフさん)
しかし、アゲグネフさんは、コミュニティで開かれたFGM/Cについての話し合いに参加してから、FGM/Cが、女性に必要なものであるという考え方をすっかり捨て去りました。
「コミュニティの話し合いに参加してから、FGM/Cの危険性について理解するようになりました。私は変わったのです。」アゲグネフさんはこう話しました。”
エチオピア:FGM/C(女性性器切除)根絶に向けた取り組み
ここまでは、深刻な途上国のジェンダー格差についての現状を見てきました。次に先進国や日本での現状を確認しましょう。
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先進国や日本のジェンダーに関する現状
SDGs5の目標「ジェンダー平等を実現しよう」における先進国や日本の現状としては、ジェンダー格差は未だに残っていることが挙げられます。世界経済フォーラムが、経済、政治、教育、健康の4つの分野のデータを基に作成した「ジェンダーギャップ指数2022年」によると、日本の総合スコアは0.650で146カ国中116位でした。先進国の中でも日本はこの問題においては遅れをとっていると言えるでしょう。
まずは、先進国のジェンダー格差について見ていきましょう。
先進国のジェンダー格差現状〜女性研究者の男女比率から見るジェンダー格差〜
文部科学省が、先進国においての女性研究者の割合を発表をしています。
上記のグラフからもわかるように、すべての国でほぼ横ばいの数値で推移しています。特に日本の数値は低く、女性研究者は増加傾向にあるものの、まだまだ他国よりも低い水準です。
日本では、結婚や妊娠の時期を考慮しなければならなかったり、親の介護によって職を離れなければならなかったりと、研究者になりにくい環境があります。結婚や育児、介護などで研究が中断してもキャリアアップできるような環境作りが必要でしょう。
また、女性研究者の割合が多い英国でも、女性の理工系分野への関心や履行は50%を満たないのが現状です。物理学に至ってはたったの23.7%しか学んでいないのです。物理や数学などへの興味は、幼い頃からの教育も関わると考えられています。先進国でさえも、昔からの慣習に乗っ取って、理数系分野は男の子が学ぶべきと分けられた教育が行われてきたと言えるでしょう。
もう少し踏み込んで、日本での現状について見ていきます。
自然科学系の大学での女性の占める割合
文部科学省では、自然科学系の大学で女性の占める割合を発表しています。
研究職でのキャリアアップに不可欠な博士号を取得する女性は、女性比率が高い保健学部でも32.1%と高くない数値となっています。
これは、今の日本の企業は働きにくいことを意味しており、キャリアアップがしにくい現状が関係しています。
では、実際に働いている女性がどのように感じているのかを見ていきましょう。
独立行政法人国立女性教育会館では、入社後5年の男女を追いかけ、キャリア形成と活躍推進に関する調査を行っています。
図からもリーダーシップを取りたくないと考える女性が多いことが分かります。入社から5年目になると、仕事と家庭の両立が難しいと考える人は全体の69.3%です。さらに、自分の上司や同僚で女性の管理職となる人が少ないのも、管理職を目指さない理由となっています。
とはいえ、リーダーには男性の方が向いていると考える人は少数であることから、女性がキャリアアップに興味がないわけではありません。つまり、
- 子育てや介護などは女性がやるべきことと考えられており、夫婦間での協力体制がない
- 女性が働きにくい会社の制度となっている
ことで、キャリアアップを諦めざるを得ないのです。
ここまでは、世界各地や日本のジェンダー平等の状況を確認してきました。
ジェンダー平等の実現は、SDGs全体の目標である”全ての人が健康で平等に権利を得る”ためには、不可欠です。
女性へのジェンダーの差別を失くすことは、途上国の貧困や教育といった様々な問題を解決する一助となります。さらに、現在働いていない女性たちや無給で働いている女性たちが、正当な賃金を得て働くことで、世界の経済成長にも繋がるのです。
日本でも、女性が社会的に活躍することで、1人当たりのGDP(国内総生産)を5%引き上げることも夢ではないと国際通貨基金(IMF)が発表しています。
それなのになぜジェンダー平等が実現していないのでしょうか。次からは、ジェンダー平等を達成するためにどのような問題があるのかを見ていきましょう。
【関連記事】【ジェンダーギャップ指数とは】日本の課題・取り組み・2022年最新データを解説
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途上国における目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の問題点とは?
ここまで見てきたように、これまでの社会的慣習により子どもや女性が苦しい立場に追いやられています。ジェンダー平等の実現のためには、この社会的慣習を変えていく必要がありますが、SDGs5の目標「ジェンダー平等を実現しよう」における問題は多岐に渡るため簡単ではありません。
ここでは、途上国と日本に分けて、ジェンダー平等に関する問題を詳しく見ていきましょう。
途上国におけるジェンダーが不平等で起こる問題①人身取引や女性・女児の性的搾取について
途上国では、幼い子どもが家事手伝いの労力となることや、貧しいがために幼いうちに嫁に出されることで家族を養ってきているという背景がありました。
加えて問題となっているのが人身取引や女の子への性的搾取です。
人身取引とは、その名の通り子どもや女性を組織が買い取るものです。国際開発センターの報告書には、以下のような記述があります。
“国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、2012年から2014年の間に、106の国・地域で合計 63,251人もの人が人身売買の被害者になったと報告がされています。”
国際開発センター
取引された人々は、強制労働、強制結婚、性的搾取により人権を無視した生活を強いられることとなります。 人身取引は、裏で秘密裏に行われているケースが多く、公的機関も具体的な数値が把握しにくいといった問題を抱えています。
人身取引は、やはり教育を受けていないことが大きく影響しています。人身取引業者に「いい仕事がある」などと声をかけられ、善悪の判断がつかずについていってしまうのです。
参考
国際開発センター
途上国におけるジェンダーが不平等で起こる問題②教育格差
2019年にユネスコの発表した資料によると、6歳〜11歳の子どものうち、一生学校に通えない女の子は、男の子の2倍となり、男女で教育格差が見られます。
また、ユニセフの発表では、開発途上国の3分の1が初等教育で男女平等を実現できていないとあります。学ぶ機会を奪われた女児達は、諦めて家族に従うしかありません。
参考:日本ユニセフ協会
学校に通えない理由は先述した通り、親が教育を受けさせる意味を理解していないことにあります。加えて、水やトイレに関する問題も関係しています。
水道の未整備により学校に通えない
開発途上国では、水道設備が整っておらず、近くの川や湖に水を汲みにいかなければなりません。これは主に子どもの仕事とされており、何キロも離れた場所に毎日のように水を汲みに行っています。重い荷物を背負いながら長距離を歩けば、子どもの体力は残っておらず、学校に通うことができなくなってしまうのです。
トイレの未整備も問題
また、トイレがないことも学校に通えない理由のひとつとなっています。
開発途上国の学校にはトイレが設置されていない場所も多く、野外排泄を強いられるケースが見られます。思春期の女の子にとって、野外での排泄は恥ずかしいものです。そのため、トイレにいけないために学校にも通えなくなり、授業についていけなくなって辞めてしまいます。
他にも様々な要素が絡んで教育を受けられなくなっているため、多角的な支援が求められているのです。
途上国におけるジェンダーが不平等で起こる問題③妊娠を望まない女性への配慮
人は、結婚するかしないか、子供を産むか産まないか、何人産むかを自由に決められるものです。
しかし、開発途上国では望まない妊娠をしてしまう女性がいます。これは、
- 安全な避妊具の供給が足りていない
- 性に関する知識がないことで、避妊の重要性を理解していない
- 強姦
など、様々な理由が挙げられます。
ここでも教育を受けられていないことで問題が発生しています。強姦については、紛争時に多く発生する傾向があり、その際には犯人達に脅され、中絶が不可能なタイミングまで誰にも相談できないと言います。
途上国におけるジェンダーが不平等で起こる問題④雇用機会・賃金の不平等
途上国の女性の多くが、衣料品の製造や露天商、家政婦など賃金の低い仕事についています。また、貧困国では、水汲みや薪集めなどライフラインを保つための時間も必要です。家族の世話や介護に多くの時間を奪われ、雇用の機会を得られていません。
こういった女性の労働を金額に換算すると9兆USドルにも上ると国際開発機関のActionAidが明らかにしています。
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先進国や日本における目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の問題点とは?
次に先進国や日本での問題点を見ていきましょう。
先進国におけるジェンダーが不平等で起こる問題①女性の意見を反映させる機会が不十分
政治や経済など、あらゆる分野に女性の意見を反映させるためにも、女性の社会への参画が不可欠です。以下のグラフは、各国の国会の女性議員数をまとめたものです。
2021年に発表された列国議会同盟(IPU、本部スイス・ジュネーブ)の報告書によると、世界の国会議員の女性の占める割合は、25.6%だったと報告されています。その中で日本は、9.9%と低い水準です。
次に国政の参加率について、地域別に見ていきましょう!
女性の社会への参画が最も進んでいるのは、北欧諸国で44.5%です。次いでアメリカ諸国が32.2%です。一方アジアは、20.8%とまだまだ低い水準となっています。
日本でも国会議員の女性比率は、平成30年2月現在,衆議院10.1%(47人),参議院20.7%(50人)となっており、他の先進国と比べ、まだまだ少ないのが現状です。
世界では、女性と男性議員の比率を一定にするといった法整備が進められる中、日本は「政治は男性が行うもの」という認識が色濃く残っているのが原因です。
今後、女性比率を上げるためにも、法整備に加えて意識の改革が必要でしょう。
ダイバーシティ(多様性)とは?語源とインクルージョンとの違いを簡単に解説なかなか解決しない女性の雇用条件
女性差別による不平等な雇用条件などは日本でも問題となっています。
“2014年のG20首脳会議で、日本は男女の就業率ギャップを25%縮めるとしていますが、これが実現すれば労働力人口は1.4%増加し、GDPは0.7%押し上げられると試算されています。2014年の日本のGDPは4兆8500億ドルであるため、単純計算でGDPが339億ドル押し上げられると考えられます。”
アピステコラム
出産・育児・介護等の両立によって離れなければならない時に、業績配慮や出産後の復帰についての取り組みが遅れ、多くの女性が仕事を退職しているのが現実です。このような問題に取り組み、社会を成長させたい企業では、女性採用を増やすなどの対策が進められています。
また、日本政府は、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも 30%程度となるよう期待すると目標を立てていましたが、未だに目標値に達していない企業がほとんどです。
人材紹介会社 エンワールド・ジャパン株式会社では、254社から調査を行い、以下のように発表しています。
【調査概要】
・「2020年 30%」目標を達成した企業は2割。外資系企業が9ポイント上回る
・ 6割の企業が「女性管理職比率の低さ」を問題視。外資系企業が23ポイント上回る・女性管理職を増やすために必要なこと第1位は、「女性管理職登用に関する、経営層の意識の変化」
・約5割の企業が「女性管理職を増やすための継続的な取り組みを実施」
・3割の企業が、リモートワーク・在宅勤務が「女性管理職の登用を促進する」と回答
人材紹介会社 エンワールド・ジャパン株式会社
多くの女性社員を抱える企業などでは、女性管理職比率の低さを問題視しています。厚生労働省による令和元年の調べでは、係長以上の女性管理職の割合は、12.2%です。
政府は2030年まで可能な限り早期に目標を達成すると改め、改革を進めています。
参考:厚生労働省雇用均等基本調査
2020年以降コロナの影響で浮き彫りになる日本のジェンダー不平等
2020年から始まったコロナの影響で、多くの店舗が休業を余儀なくされ、働いている人たちにも大きな影響を与えています。
総務省の労働力調査によると、2回目の緊急事態宣言が出されていた、2020年7月から8月の就労者の数は、男性の27万人の減少に対し、女性は48万人の減少しているのです。
また、日本でのひとり親家庭への影響は著しく、親子で食費を切り詰めるなどをしてなんとか凌いでいるという方もいます。
厚生労働省の調査によると、
”母子のみにより構成される母子世帯数は約75万世帯、父子のみにより構成される父子世帯数は約8万世帯(平成27年国勢調査)”
厚生労働省
としており、父子家庭で就労している男性のほとんどが正規の職員であるのに対し、母子家庭で就労している女性の43.8%が「パート・アルバイト」での就業である課題があります。
この件に関連して読売新聞の記事に、以下のような内容が掲載されていました。
“3年前から現在の仕事につき、収入が安定しつつあった中でコロナ禍に見舞われた。土曜や夜間の残業がなくなり、今年5月以降の手取り月収は12万円余りと昨年の27万円から半減した。このため食費を月2万円に削減。長女からは「大変だけど2人で頑張ろう」と声をかけられた。”
読売新聞オンライン
日本でのジェンダー不平等の対応が、コロナの影響でさらに厳しいものへと変化していっているのです。
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SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」の解決策は?
ジェンダー平等の実現のためには、貧困をなくし全ての子供の健康・教育・福祉・保護の増進などの健全な社会の構築が必要です。そのためには、組織面や事業面での取り組みが欠かせません。
世界で行われている解決策
- 開発途上国における避妊具へのアクセス向上
- ジェンダーの格差を生み出す要因の排除
- 女性の金融サービスへのアクセスのしやすさ
- 雇用条件や待遇などの見直し
- セクハラへの対策
- 女性の管理職への起用
企業や団体では、開発途上国での避妊具のアクセスを容易にする事業を展開したり、学校教育を受けることができるように支援したりと様々な取り組みが行われています。
また、技術革新により、金融サービスへのアクセスが向上していることも話題に。世界銀行は以下のように発表しています。
“ケニアやフィリピン、タンザニアといった国々で低所得層のための金融サービス・アクセス拡大に重要な役割を果たしてきた。ブラジルでは、技術を駆使した「コルレス・バンキング」の普及により、遠隔地に住む人々への金融アクセスが拡大した。”
世界銀行
世界では、インターネット・バンキングを、低所得者や女性、地方にいる人でも銀行を利用できるよう活用しています。このような技術開発も解決策のひとつとなっています。
次に先進国や日本での解決策を見ていきましょう!
日本で行われている解決策
先進国や日本では、各企業がジェンダー不平等に目を向けて、女性の雇用促進や、組織内の体制・構造の改善が進められています。女性が社会進出しやすくなるように、子育てをしながら働くことができる仕組み作りなどが行われているのです。代表的なものとして、育児休業制度が挙げられます。
育児休業制度
これまで育児休暇といえば女性が取るものとされ、男性が育休を取得することは難しいとされていました。
しかし2021年の法改正によって、以下のような点が追加されたのです。
- 企業側の、男性社員への育休取得確認義務
- 子どもの生後8週間~最大1年2か月までの期間、夫婦で交代もしくは同時に取得できる
- 申請期限が1か月前→2週間前に変更
- 働いて1年未満の非正規雇用でもOK
今回の法改正は女性だけでなく男性も育児・家事をしやすくなり、ジェンダー差別の解消に加え、家族間のコミュニケーションがとりやすくなる点もメリットです。
男性が育児休暇を取得できると、「仕事を続けたい」「さまざまな仕事に挑戦したい」と考えている女性にとって、社会に参加・復帰しやすい状況をつくれます。
これまで「女性は結婚・出産をしたら仕事をやめる」が社会の風潮として残っていましたが、性別に関係なく誰もが仕事と家事を両立でき、無理なく仕事を続けやすくなるでしょう。
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私たちにできること
ここまでジェンダー不平等についての現状や問題点、そして解決策について述べてきました。
では、私たちには何ができるでしょうか。
ここでは、すぐに始められることから私たちにできることを紹介します。
私たちにできること①家庭内タスクの役割分担を見直そう
ジェンダーバイアスを考えるとき、私たちにとって最も身近な場面は「家庭内の役割」です。
小さいころから母親に身のまわりの世話をしてもらってきた人も多く、家事をするのも女性、という固定観念を持っている人もまだ多いと思います。
しかし、それこそが「無意識のジェンダーバイアス」であるということに気が付く必要があるのです。
まずは、こちらの図をご覧ください。ILO(国際労働機構)が2018年に発表した「国・地域別における、男女のケアワーク時間(1日単位)」を示したものです。
ここでいう「ケアワーク」は、家事だけでなく、子どもの世話や家族の介護といった労働も含まれています。
【表の見方】
・左から:世界、アフリカ、アメリカ、アラブ、アジア&太平洋、欧州&中央アジア、低取得の国々、中所得の国々、高所得の国々
・赤色が「給与が発生する仕事をしている労働時間(有償労働)」、青色が「無償の仕事をしている労働時間(無性労働)」を表し、地域ごとに左側を女性、右側を男性として比較しています。
このグラフを見ると、無償労働はほとんど女性が行っていることがわかります。
さらには有償労働と無性労働時間の合計は、どの国を見ても明らかに女性のほうが多く、長時間働いていることも読み取れるのです。
立派な仕事であるはずの家事労働は「女性がするもの」とされ、とてもジェンダー平等な状態とはいえませんよね。
では、具体的にどのようなアクションを取ればよいのでしょうか。
どんなアクションなの?
ここで提案するアクションは「家事・家庭内タスクのリスト化」です。
掃除や洗濯といった分かりやすい家事から、ごみ出しの仕分け・子育ての中で起きる細かいタスクのように、名前のない家事もあるはず。
また「いつも自分がやっているけれど、相手はこのことを知っているのかな?」と思うような家事もあるでしょう。
お互いに、普段家の中で行なっている家事・タスクをリスト化し、見直すことで、ジェンダーによる家事分担を俯瞰でき、考え直すきっかけになります。
どうすればいいの?
アクションはたった2ステップで、簡単に実践できます。
- 家事・家庭内タスクを書き出す
普段、私たちが何気なくやっている家事・家庭内タスクについて、思いつく限りで書き出してみましょう。
家族やパートナーがいる場合は、一緒に行うのがおすすめです。
そうすることで、今まで「こんなことやっていたんだ」と相手が知らなかったタスクも、実はたくさんあるかもしれません。 - タスクを整理する
すべて書き出したら、「一緒に出来ること」「やらなくてもいいこと」「当番制でできること」のように、タスクを整理していきましょう。
家事・家庭内タスクは、みんなが気持ちよく暮らせるよう、平等なルールを決めていくのがポイント。
お互い同じ環境のもとに暮らしているわけですから、できるだけ平等になるよう配分するのがベストです。
この取り組みをさらに詳しく知るには、ジェンダー平等を目指すNPO法人ジェンダーイコールが、過去に行なったクラウドファンディングのプロジェクト「ハッピーシェアボード」が参考になります。
気になる人は、ぜひチェックしてみて下さいね。
毎日行うものだからこそ、家族やパートナーの間でジェンダー意識を考え直し、みんなにとって平等で快適な暮らしの実現が大切です。
【関連記事】ジェンダーバイアスとは?身近な例や解消に向けた取り組みも
私たちにできること②ジェンダー平等の活動を行なっている団体を応援しよう
次にご紹介するのは、「ジェンダー平等について活動している団体をサポートする」という取り組みです。
個人でできる範囲にはどうしても限界がありますが、団体を支援することで大きな活動の輪に参加できるでしょう。
どんなアクションなの?
世界には、女性やマイノリティの不平等を正すために、さまざまな活動を行う団体が存在します。
ジェンダー問題に興味を持ったら、インターネットで気になるキーワードを入れて、活動団体を検索してみましょう。
たとえば「ジェンダー 女性 団体」といった形で検索をすれば、たくさんの団体を見つけられますよ。
活動団体の多くは、寄付を受け付けていたり、ボランティアを募集していたりと、市民の応援を必要としていることも。
気になる団体をサポートしたい!と感じたら、思い切って参加してみてはいかがでしょういか。
どうすればいいの?
ひと口に「ジェンダー問題」といっても、さまざまな切り口があります。
- 発展途上国の女性差別
- 人身売買
- 強制結婚
- 労働
- 教育
こうしたトピックについて活動する団体の中から、特に応援したいと考える一般社団法人やNPOを探してみましょう。
寄付は少額から、1回限りで受け付けている場合もあるため、はじめて寄付を行なう人は、無理のない範囲で試してみるのもいいですね。
また、イベントの手伝いといったボランティアを募集していることもあります。
該当団体が分からない場合は、アクティボのようなサイトで探してみましょう。
ジェンダー問題は差別が根強く残っているため、差別の解消に取り組む団体のサポートは、世界全体の差別を解消することにも関わってくるのです。
私たちにできること③企業・組織のジェンダーバランスをチェック
続いてご紹介するのは、企業や政治といった組織において、男女比やマイノリティのバランスを気にしてみることです。
日本の社会に暮らす私たちにとって、会社や政府の仕組み・ルールを決めるリーダーの存在は重要です。しかし、男性の割合が多すぎると、女性の意見はなかなか理解してもらえず、声が通りにくくなってしまいます。
すると社会には男性にとって有利なルールばかりができてしまい、女性やマイノリティはますます生きづらくなってしまうのです。
こうした悪循環を断ち切るために、どんなアクションができるのかを見てみましょう。
どんなアクションなの?
個人がまずできることとして、企業・組織のジェンダーバランスをチェックして、「現状を知ること」が大事です。「知ること」で行動を起こせるようになります。
なぜ企業や組織のジェンダーバランスをチェックする必要があるのでしょうか。
企業や組織では、まわりからさまざまな意見を聞いてまとめ、最終的な決定を下す役員や管理職・リーダーのチーム編成が大切です。
組織の方針を決めるのはもちろん、組織に属するメンバーが、誰でも快適に働けるような環境づくりが求められます。
しかし、2021年に帝国データバンクが実施した「企業の女性登用に関する調査」によると、女性の女性登用の割合は、
- 管理職が8.8%
- 役員が11.8%
でした。
管理職の割合は、2013年以降、過去最高の数値とはいえ、日本政府が現在掲げている「2020年代の早いうちに、指導的な立場にある女性の割合を30%に」という目標には程遠いのが現状です。
また、2022年に発表されたジェンダーギャップ指数ランキングで、日本は特に、政治や組織の中心となる位置に女性が少なく、ジェンダーギャップ全体の指数を大きく下げていると指摘されています。この現状を変えるには社会全体で取り組まなければなりません。
そのためにも「ひとりひとりの意識が変わること」が重要です。ひとりでも多くの人がジェンダーについて考え、声を上げていけば、やがて社会の仕組みを変えるきっかけになり得るからです。
どうすればいいの?
あまり構えず、気になった組織のジェンダーバランスを、ウェブサイトなどで見てみましょう。政府はもちろん、企業・NPO団体なども、ある程度の役職まで名簿を公開している場合が多くあります。
特に政治は投票によって、誰を市民の代表に選ぶかを決められます。
自分が住む地域で、どのような議員さんが活動しているのかを、ウェブサイトやSNSでチェックし、投票時の参考にするとよいでしょう。
チェックだけでなく、気になる場合は問合せや直接面会を通じて、議員さんへジェンダーバランスについてどう考えているのか?を質問してみるのもおすすめです。
身近なテレビ番組・イベントにも注目
ほかにも、もうすこし身近な例として、
- 普段から観ているテレビやショーの出演者
- 気になるイベントの登壇者
など、ちょっとした場面で「誰が出ているのかな?」と見てみることも大事です。
テレビやイベントでは特に、発言者の声が大きく聞こえてしまいがち。テーマによっては性別による意見や考え方の偏りが原因で、社会に大きな影響を与えてしまうこともあります。
たとえば、ある業界の起業に関するイベントがあったとします。
そのイベントに登壇するプレゼンターが、全員男性だったどうでしょう。
そこでいくら「起業は女性にも簡単にできる」と主張しても、「起業=男性がするもの」というイメージを与えてしまいかねません。
もしそこに、女性が1人だけいたとしても、プレゼンターの全体数によっては、まだ同じ印象を受けるでしょう。
ですが、仮に10人中、少なくとも女性が4人程度いれば、はじめて「女性も参加しやすいイベント」になります。
さらに、男女にかかわらず登壇者のうち数人が、
- 子どもがいる
- 性的マイノリティである
- 外国籍である
といった、多様性に溢れたメンバーであれば、さらに多くの人に開かれたイベントになるでしょう。
世界には、男女の性差はもちろん、さまざまな人が暮らしています。
組織・団体のジェンダーバランスを意識することで多様性を見つめなおし、誰にとっても暮らしやすく開かれた社会づくりに向かうことができるのです。
今回はイベント登壇者の例を挙げましたが、こうしたところからジェンダーバランスを考え、声を上げていけば、大きな企業や政府といった組織にも影響を与えることができるはずです。
私たちにできること④本やイベントで、ジェンダーを学ぼう
ジェンダー問題を知るには、外からのインプットが必要です。
どんなアクションなの?
初心者や、もっとジェンダー問題について学びを深めたい人に向けて、インプットの方法を2つ挙げてみました。
- 本を読む
- イベントに参加する
読書の利点は、じっくり時間をかけて、知識を深められること。そして、手元にあればいつでも見返し、復習ができることです。
誰に聞いたらいいか分からない、まずは基本的なことを知りたい場合に適しています。
イベントの利点は、みんなで一緒に学べること。また、イベントを通じて同じ問題に関心を持つ仲間を見つけられることです。
どうすればいいの?
書籍
まず書籍についてです。すでに多くの本が出ていますので、かえって探すのが難しいと感じる人もいるかもしれません。
そんなときは、まず最初に「はじめてのジェンダー論」を手に取ってみることをおすすめします。
ジェンダー額を研究する大学教授による入門書で、基本的なポイントをおさえながら分かりやすく説明されている本です。
その後に、男性だけでなく女性も平等に生きられるよう唱える「フェミニズム」や、発展途上国を中心に問題となっている「強制結婚」といったテーマに絞り、自分がより深めたいと思う内容を論じている本を探してみましょう!
イベント
イベントについては、インターネットで「ジェンダー問題 イベント」を探すのも有効ですし、あらかじめ気になるメディアや団体のSNSをフォローしておくと、事前に告知を受けられます。
最近は対面だけでなくオンラインイベントも盛んなため、自宅から気軽に参加できますよ。
すでに終了したイベントについても、Youtubeのような動画サイトでアーカイブ視聴できることがありますので、ぜひ探してみてはいかがでしょうか。
どちらの場合も、学びを通して、自分だけでは見つけられなかった視点や問題に出会える点がメリットです。
すでにある程度ジェンダー問題に関心がある人も、知識のアップデートという意味で、定期的に学びを得るためにぴったりな方法です。
私たちにできること⑤日本の現状に目を向ける
日本の現状に目を向けてみるのも良いでしょう。
男女共同参画局センターを活用しよう
内閣府には、男女共同参画を推進する「男女共同参画局」があり、男女雇用機会の調査や、女性の活躍を推進する政策を立てるなどを行っています。
また、各地域にも男女共同参画センターがあり、女性の活躍をサポート。センターでは、女性の起業をサポートするセミナーを開催したり、お金や経営についての相談会を主催したりしています。起業家が実際にイベントやセミナーを開催することもできるのです。
男女共同参画局から、「ひとりひとりが幸せな社会のために」という資料が公開されています。わかりやすく世界の状況と日本の取り組みなどをまとめてくれているので、一度目を通してみてはいかがでしょうか。
コロナの影響下でできる女性への支援
日本でも、困窮している女性への支援が行われています。生理用品を手に入れられない「生理の貧困」や、食料の配布などがテレビでも取り上げられているのを見たことがある方も多いと思います。
各自治体がSNSなどで、生理用品の寄付などを呼びかけることもあります。まずは自分の住んでいる自治体をチェックしてみるのも良いでしょう。また、新宿ごはんプラスやセカンドハーベストなど食料を配布している支援団体へのボランティアや寄付を行うこともできます。
コロナの影響は1番身近な大きな問題です。ひとりひとりができることを探してみるきっかけとなるのではないでしょうか。
私たちにできること⑥自分の考え・学びをみんなに伝えよう
最後にご紹介するのは、これまでのアクションで学んできたことを、周りの人へ伝え、アウトプットする取り組みです。
どんなアクションなの?
アウトプットには、さまざまな形が考えられます。
- SNSでの発信や、賛同できるポストへの「いいね!」や拡散
- 家族や友人と、ジェンダー問題について話し合ってみる
- 普段の生活で触れる、メディアや広告のイメージ・発言に目を向けてみる
どれも小さなことのように思えますが、意外とまわりの人にとっても「気になっていたけど言えなかった」「考えてみればそうかもしれない」ということがあるはず。
アウトプットを通して、ひとりでも多くの人とジェンダー問題を共有し、声を上げていくことが大切です。
どうすればいいの?
まずは家族や友人のような、身近な人たちに「ジェンダー問題」について話してみてはいかがでしょうか。
いきなり話を始めるのは不自然かもしれませんが、一緒に観ているテレビやドラマの発言から、ジェンダーについて考えを深めたり、共通の話題から広げたりすれば、それほど抵抗はないかもしれませんね。
もし自分自身の考えを書くことに抵抗がある場合は、SNSを通して、共感できる投稿を拡散することも有効です。
たとえば、SNSでジェンダー論について発信している人は、探せばたくさんいます。
投稿の拡散を見た人が「これは問題だ」「共感できる」と思ってくれれば、そこから輪が広がります。
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実際の企業や団体の取り組みについて
実際にジェンダーの平等の達成を目指してどのような取り組みが行われているのでしょうか?
ここでは、日本や世界の企業や団体の実際の取り組みについて紹介します。
日本の企業/団体の取り組み事例・対策①厚生労働省
厚生労働省では、困難な問題を抱える女性に支援が行き渡るように、取り組みを進めています。
女性支援プロジェクトチーム~もっとあなたを支えたい~
引用:厚生労働省Youtube
発信力のある人などを交えて議論する場「コロナ禍の雇用・女性支援プロジェクトチーム~もっとあなたを支えたい~」を開催し、Youtubeにて公開しているのです。
また、内閣府の男女共同参画局では、コロナの影響について調査を実施し、結果に基づいて政府への提言を行っています。政府は、これらの各問題についての予算を拡大し、各支援体制の強化や実施への取り組みを進めているところです!
参考
厚生労働省
男女共同参画局 「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」「対応状況」
日本の企業/団体の取り組み事例・対策②株式会社Kanatta
株式会社Kanattaの事業の一環として「ドローンジョプラス」があります。女性の視点で捉えたドローンの魅力を発信したり、企業のPR動画を撮ったりと女性のみでドローンを仕事にしているのです。
すべての女性と女児のエンパワーメントを図るの実現に貢献
他にも、宇宙業界で活躍したい女性の夢を応援するために「コスモ女子」というコミュニティを運営するなど、様々な取り組みが行われています。まだまだ男性社会のメディア部門で活躍する女性のドローン集団。これからどんな活躍をみ見せてくれるのか楽しみです。
株式会社Kanatta|女性が社会で活躍できるフィールドをつくる日本の企業/団体の取り組み事例・対策③NPO法人ジェンダーイコール
ジェンダーイコールは「ジェンダーギャップをなくし、多様性を尊重できる社会へ」を掲げて活動している団体です。
学生や企業に向けたセミナーの開催や、メンバーの経験にもとづく子育て・育児に悩む親の個別相談など、幅広い活動を展開しています。
子どもから大人まで「ジェンダー」を考えよう!
中でも代表的な取り組みのひとつが、名もなき家事を可視化する「ハッピーシェアボード」です。
ハッピーシェアボードは、賃金の発生を伴わない家事や育児といった無償労働に潜む、ちょっとした仕事を洗い出し、パートナーや家族・友人と気軽にシェアできるアイテムとして開発されました。
日本に古くから根付く性別役割分担を今一度見直し、家庭内のタスクを整理できるように設計されています。
私たちが日々行っている家事は、洗濯・掃除といったメジャーなタスクだけではありません。
資源ごみを出す前に行うペットボトル潰しや段ボールをまとめる作業・入浴後の髪の毛とゴミの処理のように、名前こそないものの地道な作業が数えきれないほど存在するもの。
「家事・育児(無償労働)は女性がするもの」というステレオタイプの中に、こうした見えない作業が大量に隠れているからこそ、知らないうちに女性の負担が増えてしまうのです。
名前のない家事の洗い出し
そこで、細かな作業ひとつひとつを洗いだし、パートナーや家族が見えていなかったことをシェアし合って、
- このタスクはもっと頻度を減らせる
- これなら一緒にできる
のようなポイントを見つけるために、ハッピーシェアボードが活躍します。
2018年、ハッピーシェアボードの普及を目指し立ち上げたクラウドファンディングでは目標金額を達成し、100名近くの人々に渡すことができました。
ダウンロード形式で配布したため、気軽にプリントしてほかの人に渡しやすい点がメリットです!
見逃しがちな「名前のない家事」こそ、家族間でシェアして役割分担を見直すことで、性別による意識(ジェンダーバイアス)を取り払い、平等な生活を営む上で役立ちます。
日本の企業/団体の取り組み事例・対策④石徹白洋品店
石徹白洋品店は、岐阜県の小さな集落・石徹白にある衣服店です。
ジェンダーレスに楽しめる、日本の野良着を復刻
この地方に古くから伝わる「たつけ」や「はかま」を始め、さまざまな野良着を現代風にアレンジして製造・販売しています。
多くは着古した着物をほどいて、無駄がないように直線断ちで作るため、ゆとりがあって動きやすいのが特徴です。
基本的にどのアイテムも、性別に関係なく着られるようにできているので、サイズさえ合えばパートナーや親子でシェアすることもできます。
先人の深い知恵を復刻し、現代の人々に沿った形に改良されているのです。
主に西洋から渡ってきた洋服には、はっきりと「男性もの」「女性もの」という区別が分かれてしまいますが、日本の農民が着用していた野良着には、そういった分かりやすいカテゴリー分けが存在しません。
そのため、衣服で性別を象徴することなく、購入した本人はもちろん、後の世代まで長く楽しむことができるのです。
もうひとつ、石徹白洋品店の生地は、コットンやリネンといった植物素材を中心に利用。
県内で丁寧に育てられた藍をはじめ、地域で採れる草木や樹皮を使って染色しています。
その地に伝わる手仕事を今に伝え、環境に配慮した衣服づくりはSDGs目標12「つくる責任、つかう責任」にも通じますね。
日本の企業/団体の取り組み事例・対策⑤スマルナ
スマルナは、24時間オンライン相談・医療相談ができる無料アプリです。
これまで対面診療でないと処方してもらえなかったピルを取り扱い、オンライン診療を経て購入することができます。
オンライン診断で、性の悩みに関する相談のハードルが下がる!
日本では、望まない妊娠時の緊急処方となるアフターピルの入手が難しく、支援団体や専門家の間でたびたび問題視されてきました。
特に若い女性の多くは、
- 誰にも相談できない
- 医者に行くのが恥ずかしい
といった理由から、アフターピルを手に入れることが困難な状況があったのです。
中絶には膨大な費用がかかりますが、性行為をした相手の承諾がなければそもそも中絶は不可能なため、アフターピルは女性の人権・健康を守るために重要な存在といえます。
スマルナはそうした問題に目を付け、オンライン診療を通じて、アフターピルを手に入れられるようにアプリを開発しました。
アフターピルがあれば、女性が1人で不安を抱えたり、中絶のために巨額のお金を支払う必要もありません。
欧州ではすでに、薬局などで気軽に購入できるアイテムですが、日本ではスマルナのような取り組みは、まだまだ貴重な存在です。
他にも大切なサービスを用意
アフターピルに限らず、生理の周期を整え不妊対策にも役立つピルを複数種用意し、ビデオ通話またはテキストメッセージで細かく相談できるようにできています。
「ピルが欲しいけど病院へ行くのは抵抗がある」という人でも、オンライン診療を通じて購入できるため、プライバシーを守りながら健康に配慮できる点がメリットです!
こうした取り組みが今後さらに進めば、健康や妊娠に悩む女性を、より多く救うことができるのではないでしょうか。
また、アプリひとつで気軽に医療にアクセスできる画期的な取り組みは、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」にもつながります。
日本の企業/団体の取り組み事例・対策⑥正則高等学校
東京都港区の共学校・正則高等学校では、20年以上も前からジェンダー問題に関する授業プログラムを設けています。
具体的には、総合授業の時間に1年かけて「社会に潜むジェンダーバイアス」について学んでいくというもの。
共学がはじまったタイミングで、神学に必要な知識だけでなく、高校生にとっても身近な問題を学んでほしい、という思いから取り組みがはじまりました。
取り組み内容
日本に古くから根付く性別役割分担や「男だから」「女だから」のような意識を、無意識のジェンダーバイアスを捉え、講義やディスカッションを通して「人間の生と性」を考えるきっかけづくりを提供しています。
過去の事件やわかりやすい例を紹介しながら、
- ジェンダーバイアスがいかに社会構造に潜んでいるか
- 自分が思い込んでいた意識
などを紐解いていくことで、性別や立場に関係なく平等な関係を気づくことの大切さを学ぶのです。
たとえば「共働きの夫婦で、一方はトラック運転手、もう一方は保育士。
「家事・育児の負担は保育士のほうにかかっている」と性別を明かさずに紹介した授業では、ほとんどが「男性=トラック運転手」「女性=保育士」と勝手に想像するのだそうです。
これも立派なジェンダーバイアスのひとつですよね。
こうした気づきや発見を与えながら、それぞれに染みついたジェンダーバイアスを取り払い、性別や年齢にとらわれない思考を身につけていきます。
また別の例では、セクハラの加害者の多くが権力を持った男性であること、彼らのほとんどが
- 冗談だった
- 悪気はなかった
と意識の低い言い訳を繰り返すという事実を通し、対策や解決策について議論します。
第三者の目線に立ち、被害者と加害者の関係や意識を知ることで、社会システムやルールの改善ポイントを見つけることができるのです。
このような経験は、社会に出る前の段階で、世の中にはびこるジェンダー問題を学ぶことに意味があります。
性別に関わらず正しい意識を持った若者が増え、日本の将来を変える大きな力になるはずです。
未来の日本社会の課題解決の助けになる教育プログラムは、SDGs4「質の高い教育をみんなに」にも通じますね。
日本の企業/団体の取り組み事例・対策⑦株式会社Lily MedTech
近年、女性のヘルスケアや悩みにフォーカスし、最新技術で解決する「フェムテック企業」が注目を浴びています。
中でも、日本女性の9人に1人がかかるといわれている乳がんに注目したのが、株式会社Lily Medtechです。
痛くない!乳がんの早期発見に
乳がんは日本の女性がん患者の中でも、特に割合が多い病気です。
しかし、
- 検診を受けるのが恥ずかしい
- 痛そう
のような理由から、なかなか検診を受けない人が多くいるのが現状です。
そこでLily Medtechは、痛くないがん検診装置を開発し、がん検診率の低い日本で普及を目指しています。
乳がんは、早期発見ができれば生存率が高い病気のため、最新技術を駆使した乳がん検診装置は、今後の医療界を支えるカギになるでしょう!
女性の健康を守るだけでなく、医療インフラを整えるという点では、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に共通する取り組みです。
他にもSDGs5に取り組む企業について知りたい方は、以下のインタビュー記事をご参照ください。
ウーマンズリーダーシップインスティテュート株式会社|女性リーダーの育成で、意思決定層の多様性を 株式会社WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)| 笑顔溢れるワークスタイルとは?自社をモデルとして、良い働き方・オフィス設備の改善を中小企業に提案世界の企業/団体の取り組み事例・対策①アップル
アップル社は、何気なく使うメッセージのイラストに着目し、ジェンダーニュートラルな絵文字を2019年の10月から追加をしました。
ジェンダーニュートラルな絵文字を展開
誰もが気に留めずに使っていた絵文字ですが、確かに女性と男性を分けている事例のひとつです。性別や肌の色など差別の対象となるものを極力少なくできるように、工夫されています。自分の好みで絵文字を作成することも可能です。
見た目の性別とは違うと感じる人もいる中、日常的に使う絵文字にも配慮し、ストレスを感じることなく過ごせるように作られました。肌の色や服装、髪型などを自分自身で組み合わせることもできます。
参考
アップル社
世界の企業/団体の取り組み事例・対策②Amazon
Amazonでは、世界各地の社員たちが国際女性デーを祝い、活動をしています。その中心となるのが、有志で作られたWoman@amazonのグループです。グループには男性も属し、女性の活躍を推進する活動が続けられています。
有志グループWoman@amazonの活動内容
例えば、子育てをしながらも働きやすい職場環境にするため、搾乳室の設置や育休制度の充実を図っています。Amazonでは、育休を取った子育てのプロがたくさんおり、育児や家事、仕事への復帰などの相談も同僚とでき、安心して子育てができると、Amazonのスタッフのブログでも公開されています。
さらに、女性が自分自身で自信を持ってキャリアアップできるよう、「できない」と思ってしまう意識改革のために、精神面でのトレーニングやサポートなどソフト面でもサポートを行っています。
また、国際女性デーに合わせて、人生を切り開いてきた女性に話を聞くオンラインイベントなどを開催。「活躍する女性たちと考える 誰もが輝ける日本の未来とは 」という題目のパネルディスカッションを下記のページから見ることができるので、ぜひチェックしてみてください。
参考
Amazonブログ
活躍する女性たちと考える 誰もが輝ける日本の未来とは
世界の国の取り組み事例・対策|EU
EU(欧州連合)では、2015年12月に2020年までに女性の雇用率を上げて、男女差をなくそうという目標を目指すための戦略的取り組み2016-2019を発表しています。さらに男女平等を推進するために、予算としてEUは61億7,000万ユーロを拠出しました。
加盟国の環境に合った政策を展開
日本に比べても、女性の雇用が進むヨーロッパ各地。加盟国全てで同じ取り組みではなく、各国それぞれが自国にあった政策を行っています。
例えばドイツでは、ジェンダー平等法制などの整備とともに、1日8時間で基本的には残業のない働き方を実現しています。2012年時点で、すでに女性の管理職比率は29.9%となっています。
またフランスでは、育児休暇のほか、出産休業や病児看護休暇、父親休暇などもとれる両立支援制度が整っています。父親休暇は、出産後に11日間取得できる制度で、夫婦で育児がしやすくなっています。
このように、EU各国では、育児や介護を行っている人のために、労働形態を柔軟にしたり、出産・育児休暇を取りやすいようにしたりとワークライフバランスを取れるよう働きかけています。
まとめ
SDGsの目標達成期限である2030年に向けて、世界各国の国際機関やNGO・NPO団体、企業などがSDGs目標5に取り組んでいます。SDGs目標5が達成することで、世界的な経済成長が見込めるばかりでなく、女性が自由に学び、将来を選べる社会へと近づきます。
世界でジェンダー平等実現のためのポイントとして挙げられるのは、児童婚や女性性器切除(FGM)など、女性が差別される慣習が残っていること、人身取引や教育格差、雇用機会・賃金の不平等などです。
各国では、この問題を解決するべく、努力が続けられています。
- 途上国での児童婚や女性性器切除(FGM)を辞めさせるための啓発活動やサポート
- 政府による法律の改正や投資
- 国から企業への働きかけ(女性の雇用機会・賃金の改善)
- 貧困地域へのサポート(学校設立や電気の供給など)
これらの取り組みによって、途上国の経済成長や女性への差別が解消されることを期待されているのです。
また、先進国や日本でもジェンダー平等はまだまだ問題として残っています。
- 女性の雇用促進や雇用形態の向上
- 育休や復職についての社内待遇の改善
- ジェンダー平等についての発信
- 女性のエンパワーメントを発揮できる仕組み作り
- コロナの影響によるジェンダー不平等への支援
“女の子だから、男の子だから”という意識が強い日本。家事は女性がやると決められているわけではないのに、多くの家族がそのように過ごしてきているのも事実です。
そんな中で個人ができることは些細なことかもしれません。しかし、1歩ずつ進めることはできるはずです。また、コロナの影響で浮き彫りになったジェンダー不平等についても、目を向けてみる必要があります。
SDGs目標5は、誰しもが平等な機会を得て、自分の能力を発揮できる社会を作ることを目標としています。女性が現状を諦めることなく、次なる未来へと進んでいけるよう、手助けできることを探していきたいですね。