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MDGs(ミレニアム開発目標)とはいつから始まった?達成状況やSDGsとの違いを解説

MDGs(ミレニアム開発目標)とは?達成状況やSDGsとの違いと目標一覧

SDGsについて学んでいると、しばしばMDGsという単語に出会います。

どちらも似たような言葉ですが、MDGsとは一体なんでしょうか。

この記事では、MDGsについての説明をはじめ、MDGsとSDGsの違いも詳しくご紹介します!

MDGs(ミレニアム開発目標)とは

MDGsとは、ミレニアム開発目標(Millenium Development Goals)の略称のこと。

2000年9月に行なわれた国連ミレニアム・サミットにて採択された「国際ミレニアム宣言」をもとにまとめられた目標です。

国際ミレニアム宣言で掲げられた7つのテーマとは

国際ミレニアム宣言では、以下の項目が定められました。

  1. 平和、安全および軍縮
  2. 開発および貧困撲滅
  3. 共有の環境の保護
  4. 人権、民主主義および良い統治
  5. 弱者の保護
  6. アフリカの特別なニーズへの対応
  7. 国連の強化

MDGsはミレニアム宣言を基盤として、2015年までに達成すべき8つの目標を設定しています。

MDGsが作られた背景と目的

MDGsが設定された背景には、特に1990年以降、次のような事例が国際的に問題となっていたことが挙げられます。

  • 飢餓・貧富の差
  • 子どもの教育の機会が奪われる
  • HIVやAIDS・マラリアといった感染症の蔓延
  • 性別による労働環境の不平等
  • 自然災害やジェノサイド(集団虐殺) など

こうした問題は、とりわけアフリカやアジアをはじめ、開発途上国で深刻でした。

そこで国連が中心となって世界各国に呼びかけ、すべての国や地域の人々が、公正で平和な暮らしを送れることを目的としたのが、MDGs(ミレニアム開発目標)です。

参加団体・組織

MDGsへの取組を行なったのは、主に国連に参加する各国政府です。

ほかにも、国連のパートナーとなる組織や地域共同体が名を連ね、MDGsの目標達成に貢献しました。

【参加団体例】
  • 世界銀行
  • WHO(世界保健機関)
  • UNICEF(国際連合児童基金)
  • ECA(アフリカ経済委員会)

MDGsの8つの目標・21のターゲット・60の指標

MDGsでは8つの目標を軸に、21のターゲットと60の指標がつくられました。

ここでは、MDGsの目標とターゲットを見ていきましょう。

目標・ターゲット一覧

MDGsには、以下のような目標とターゲットが設定されました。

目標1 極度の貧困と飢餓の撲滅

1-A 1990年と比較して1日の収入が1米ドル未満の人口比率を2015年までに半減させる。

1-B 女性、若者を含むすべての人々に、完全(働く意思と能力を持っている人が適正な賃金で雇用される状態)かつ生産的な雇用、そしてディーセント・ワーク(適切な仕事)の提供を実現する。

1-C 1990年と比較して飢餓に苦しむ人口の割合を2015年までに半減させる。

目標2 普遍的初等教育の達成

2-A 2015年までに、世界中のすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。

目標3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上

3-A 2005年までに初等・中等教育における男女格差の解消を達成し、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差を解消する。

目標4 乳幼児死亡率の削減

4-A 1990年と比較して5歳未満児の死亡率を2015年までに3分の1に削減させる。

目標5 妊産婦の健康の改善

5-A 1990年と比較して妊産婦の死亡率を2015年までに4分の1に削減させる。

5-B 2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)への普遍的アクセス(必要とする人が利用できる機会を有する状態)を実現する。

目標6 HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止

6-A HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。

6-B 2010年までにHIV/エイズの治療への普遍的アクセスを実現する。

6-C マラリアおよびその他の主要な疾病の蔓延を2015年までに阻止し、 その後減少させる。

目標7 環境の持続可能性の確保

7-A 持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。

7-B 生物多様性の損失を2010年までに有意(確実)に減少させ、その後も継続的に減少させ続ける。

7-C 2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生設備を継続的に利用できない人々の割合を半減させる。

7-D 2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。

目標8 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

8-A 開放的で、ルールに基づいた、予測可能でかつ差別のない貿易および金融システムのさらなる構築を推進する。

8-B 後発開発途上国(LDC)の特別なニーズに取り組む。

8-C 内陸国および小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。

8-D 国内および国際的な措置を通じて、開発途上国の債務問題に包括的に取り組み、債務を長期的に持続可能なものとする。

8-E 製薬会社と協力し、開発途上国において、人々が必須の医薬品を安価に入手・利用できるようにする。

8-F 民間セクターと協力し、特に情報・通信における新技術による利益が得られるようにする。

60の指標については、こちらのリンクから確認できますので、是非チェックしてみて下さい(英語)。

MDGsの達成状況

2015年末を達成期限としていたMDGsですが、目標はどの程度達成できたのでしょうか。

一部の目標は達成も、未達成の項目や課題が残っている

一言でまとめれば「一部の目標は達成できたが、未達成の項目や課題が残っている」といったところです。

たとえば、目標1「極度の貧困と飢餓の撲滅」では、貧困率の減少に成功。

1990年に比べで約10億人もの人々が、貧困から脱却できました。

しかし完全に貧困と飢餓を撲滅できたわけではなく、現在起きている2015年時点で約8億人が極度の貧困の状態で生活するなど、まだまだ課題解決への取り組みが必要です。

また目標4「幼児死亡率の引き下げ」では、5歳未満の幼児死亡率が1990年代に比べて半分以下に減少

一方で、毎日1万人を超える子どもたちが、5歳の誕生日を迎える前に亡くなっているのが現状もありました。

その死因の多くは、医療体制が充実していれば防げるため、誰もが医療にアクセスできるインフラシステムを整えることが求められています。

そのほか、MDGsの詳細な達成状況は「国連ミレニアム開発目標報告2015」で分かりやすくまとめられていますので、チェックしてみて下さい。

MDGsからSDGsになった理由

以上のように、MDGsでは一定の改善が見られたものの、すべての目標を達成できたわけではありません。

MDGsが失敗と言われた原因

またMDGsを通して、気候変動や経済成長のような、すべての人にとって関わりのある大切な要素への配慮に欠けていることも指摘されました。

そこで2015~2030年にかけての目標として採択されたSDGsでは、MDGsで残された課題を引き継いだのです。

SDGsとは

SDGsとは、持続可能な開発目標(Sutainable Development Goals)を指す言葉です。

2015年9月、国連で開催された「持続可能な開発サミット」にて採択されました。

SDGsでは、大きく分けて以下の3つを軸としています。

  • 経済成長
  • 社会的包摂
  • 環境保護

MDGsでは開発途上国を中心とした課題への取り組みが主でしたが、SDGsは全世界の国・地域が一丸となって取り組む課題として、先進国も対象となり、より幅広い分野の目標が設定されています。

17個の目標・169のターゲット・232の指標に

圧縮済みSDGs画像

MDGsでは8つの目標・21のターゲット・60の指標であったのに対し、SDGsでは、17つの目標と169のターゲット、232の指標が設定されました。

目標数はMDGsの約2倍、ターゲットと指標も大幅に数が増え、MDGsでは取り上げられなかった多様な視点を導入している点が特徴です。

たとえば、MDGsで重要課題のひとつだった「貧困」については、SDGs目標1「貧困をなくそう」で引き継がれており、以下のようなターゲットが設定されました。

ターゲットの見方

ターゲットは、どの課題に対してどういう解決をしていったらいいのか、より具体的な1〜5の達成目標とa〜bの実現方法、合計7個のターゲットで定義されています。

 ターゲット
1.12030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.22030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.42030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.52030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.aあらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

このように、SDGs目標1だけを見ても、MDGsと比べてターゲットの範囲・項目がより広く、細かくなったことが分かります。

具体的なターゲットを設定することで、目標達成への道すじがクリアに見えるようになりました。

もう少し踏み込んで、MDGsとSDGsの違いを見ていきましょう。

MDGsとSDGsの違いとは

MDGsの後継としてSDGsはうまれました。

2015年までに達成すべき目標のMDGsと2015年から2030年までに達成すべき目標のSDGsですが、具体的には、どのような違いがあるのでしょうか。

目的と取組主体が変わった

特徴は大きく「目的」と「取組主体」の2つに分けられます。

目的

MDGsでは貧困や教育といった「発展途上国の課題解決」を重視していました。

しかしSDGsでは、発展途上国に限らず先進国を含むすべての国・地域が抱える、あらゆる形の貧困や不平等といった課題を解決することが求められています。

取組主体

MDGsの参加団体・組織の中心は、主に政府や国連でした。

それに対してSDGsでは参加できる主体の範囲が広くなり、企業から個人まで誰もが取り組みやすい目標となっています。

それぞれの違いについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

「環境」「経済」が加わった

MDGsの目的は、主に途上国における社会問題の解決でした。

2015年のMDGs達成期限を前に、国際社会で後継となる枠組づくりに手を付けはじめたとき、重要なキーワードとして挙げられたのが「持続可能な開発目標」です。

SDGsでは、MDGsで重視されたような「社会」を開発するには「環境」への配慮が必須であり、同時に「経済」とのバランスも大切、という考え方を軸にしています。

特に「環境」を重視した目標・ターゲットが新たに設置された点は、SDGsの大きな特徴といえるでしょう。

目標13「気候変動に具体的な対策を」を例に

たとえば、SDGs目標13「気候変動に具体的対策を」に見られるように、持続可能な開発と、貧困や雇用・教育の平等のような課題の解決には、環境問題への取り組みが必須、との考え方を明確にしています。

この背景には、MDGsで掲げる貧困をはじめとした途上国の抱えるさまざまな問題と、気候変動との深いつながりが関係しています。

SDGsが採択される前の2013年、世界銀行が出したレポートによれば、このまま何の対策もせず地球の気温が2℃上昇した場合、最も貧困層が多いといわれるアフリカ地域で干ばつと猛暑が起こり、主食となるトウモロコシの栽培が40%も減少するとの予測が出ました。

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ほかにも、南アジアでは降雨量が急激に増えて一部の土地が沈没したり、逆に雨が降らず水が不足したりする可能性も指摘されています。

たった2℃の変化でも、気候変動による影響は甚大です。

さらには、温暖化がもたらす自然災害で最も影響を受けるのは豊かな暮らしを送る先進国ではなく、貧困にあえぐ開発途上国の人々だということ。

そこでSDGsでは、あらゆる課題解決のために気候変動への取り組みが必要であるという考え方から、目標13以外にも、さまざまな目標の中に環境問題への対策を求めています。

例えばSDGs目標1「貧困をなくそう」。

「貧困をなくそう」のターゲット1.5には、「 2030 年までに、貧困層や状況の変化の影響を受けやすい人々のレジリエンスを高め、極端な気候現象やその他の経済、社会、環境的な打撃や災難に見舞われたり被害を受けたりする危険度を小さくする」といった内容が書かれています。

このように「社会」の問題に「環境」と「経済」が加わり、3つの軸をもとに目標を設定することで、SDGsでは誰一人取り残さない、持続可能な社会づくりを目指しています。

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企業・個人も取り組みやすくなった

SDGsでは、政府や国連組織だけではなく、国籍に関係なく企業・個人も対象としています。

MDGsは、主に社会問題に的を絞り、専門家グループが中心となって策定した目標でした。

対するSDGsは、さまざまな分野の企業や民間団体・市町村長がステークホルダーとして参加し、多くの人からの意見を取り入れています。

その結果、立場や置かれた環境に関係なく誰もが取り組みやすい目標となっているのです。

各自の優先課題にあわせて取り組みを設定できる

また、SDGsには17つの目標がありますが、すべてに取り組むというわけではありません。各自の優先課題にあわせて自由に取り組む目標を設定できる点もポイントです。

どのようなことか分かりやすくするために、環境に優しい製品を作る企業A社と仮定して説明します。

A社はゴミの削減を目的とした何度でも使用できるペットボトルを開発しました。

この場合に関連するのは、

  • 目標12「つくる責任 つかう責任」
  • 目標13「気候変動に具体的な対策を」
  • 目標14「海の豊かさを守ろう」

になります。どのように関連するかというと、

目標12「つくる責任 つかう責任」

・従来の大量生産・消費の形を見直し、資源を無駄にせず必要なぶんだけ作ること

・使用する素材の生産から、消費者に渡ったあとの廃棄の過程まで視野に入れ、環境に配慮した循環型システムの構築

・消費者もそのシステムを理解し実践することで、循環型社会の構築に貢献できる

目標13「気候変動に具体的な対策を」

・生産量を抑えられるため、生産に必要な資源・エネルギー使用量を削減できる

・廃棄が減ることでCO2排出量も削減でき、生産から廃棄まですべての流れのなかで温暖化・気候変動への影響を最小限に抑えられる

目標14「海の豊かさを守ろう」

・ペットボトルを何度もリサイクルすることで、海洋ごみを削減

・海洋生物の命を脅かすマイクロプラスチックの流出を抑えられ、生態系の保護にも繋がる

となります。17個のうちの3つだけでも良いの?と思う方もいるかもしれません。しかし、ここから無理に他の目標と関連させることはSDGsでは求めていないのです。

つまり、企業が持っている商品やサービスに応じて、取り組む目標を自由に選択できるのがSDGsの特徴です。

これにより取り組みへのハードルも低くなり、多くの企業が参入しやすくなるメリットがあります。

そして多くの企業が積極的に行なうことで、SDGsや環境問題に関心のある消費者からの支持が増え、さらには新たなビジネスチャンス・アイディアが生まれるきっかけも期待できます。

このように、SDGsは経済とも密接な関係を持ち、企業や個人が参加しやすいように考えられているのです。

SDGsに取り組む企業事例

ここまで見てきたようにSDGsは、誰もが取り組みやすい目標です。そのため、事業と結びつける企業が増えてきています。ここでは、具体的事例として2社の取り組みをピックアップしました。

シサム工房(フェアトレード衣服)

シサム工房
引用元;シサム工房

インドやタイ・フィリピンといったアジアの国々で、社会的に弱い立場にある人たちと取引を行なうのがシサム工房です。

環境にも身体にもやさしいオーガニックコットンの衣服や、伝統製法によってつくられたファッションアイテムを中心に取り扱っています。

フェアトレードとは、作り手の生活・労働環境の向上を目的とし、商品を購入したお金が生産者の支援につながる仕組みのこと。

SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」や、目標8「働きがいも経済成長も」に当てはまる事業です。

オーサワジャパングループ(食品)

販売者が生産者が正当な取引を行ない、持続的な信頼関係を結ぶ点は、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に繋がります。

オーサワジャパングループでは創業時から、玄米菜食を中心とする「マクロビオティック」に即したアイテムを販売しています。

マクロビオティックの理念は、多くのSDGs目標に通ずるものがあるのです。

たとえば、次のような考え方が挙げられます。

・一物全体:ひとつのものを出来る限り丸ごといただく

 →農薬や肥料を使わない野菜や果物、伝統製法に基づいた海藻類を厳選し、取り扱う

 =SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「森の豊かさも守ろう

・身土不二:住んでいる地域・季節に応じた食べものを中心にいただくことで、風土に適応し健康に過ごせる

 →地域の農家・生産者とパートナーシップを組む。消費者に安全な商品を届け、健康を守る

 =SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」、17「パートナーシップで目標を達成しよう

消費者がオーサワジャパングループの製品を利用すれば利用するほど、持続可能な社会につながるというまさしくSDGsの考え方に沿った事業となります。

まとめ

SDGsの前身となるMDGs(ミレニアム開発目標)は、開発途上国を中心とした貧困・飢餓のような社会問題の解決に向けてつくられました。

2000~2015年の取り組みを通して、一定の目標達成・改善が見られましたが、残された課題があったのも事実です。

SDGs(持続可能な開発目標)は、そうした社会問題への姿勢を受け継ぎつつ、環境・経済の視点を加え、企業や個人も参加しやすい工夫がされています。

私たち一人一人が、SDGsを通して具体的な行動を起こせば、持続可能な社会づくりへ一歩近づくことができるはずです。