日本でも大人気のバーガーキング。
世界で約100か国に出店しているものの、実はオーストラリアにはバーガーキングがないことはご存知でしょうか?
オーストラリアのバーガーキングはハングリージャックスと呼ばれており、現在では独立したハンバーガーショップとして運営されています。
オーストラリアで高い知名度を誇るハングリージャックスは、食肉業界の環境負荷、食糧問題、廃棄物削減といったさまざま環境保全に向き合っている企業です。
この記事では、そんなハングリージャックスが取り組むエコ活動の詳細を解説していきます。
オーストラリアのハンバーガーショップ・ハングリージャックス
本社をシドニーに構えるハングリージャックス(Hungry Jack’s Pty Ltd.)は、1971年に生まれたハンバーガーチェーン店です。
ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、クイーンズランド州、西オーストラリア州をはじめとする国内のさまざまエリアに展開し、店舗数は440軒以上、雇用者数は2万人弱、目安顧客数は週に170万人以上と言われています。
ハンバーガーの販売数に関してはオーストラリアにて毎年合計1億2,500万個以上となっており、国内でも特に人気のハンバーガーチェーン店として知られています。
メニューは一般的なハンバーガー店と同様に、ビーフやチキンのバーガー、ポテト、オニオンリング、チキンナゲット、ドリンク類などです。
バーガーキングとして運営しなかった理由とは?
アメリカが発祥のバーガーキングは、1970年代にオーストラリアへの進出を決定しました。
ところが、実は「Burger King」という名称は南オーストラリア州アデレードのハンバーガーショップによって既に商標登録されており、バーガーキングがオーストラリアへ展開するにあたって名称を変えなければなりませんでした。
結果として生まれたのが、アメリカのパンケーキミックス製品の「Hungry Jack」を由来とした「Hungry Jack’s」です。
しかし、フランチャイズ契約を巡ってバーガーキングとハングリージャックスの間で訴訟が行われ、最終的にバーガーキング側が敗訴したことでバーガーキングはオーストラリアでの経営を中断します。
その後はオーストラリアがハングリージャックスの運営を行っており、バーガーキングとは異なる独自のハンバーガーチェーン店として国民的地位を獲得しています。
食肉業界と環境問題
ハングリージャックスで特に人気のメニューが、牛肉やチキンのハンバーガーです。
食肉業界は畜産業と深い繋がりがあるものの、実は畜産業は二酸化炭素の排出量が多い産業です。
特に牛は排泄物やゲップに多くの温室効果ガスが含まれていることから、赤身の肉となる家畜が最も環境負荷が大きいと言われています。
牛肉1kgあたり平均99.48kgの二酸化炭素が排出されており、自動車で約360km走行した場合の二酸化炭素量に匹敵するほどの環境負荷がかかっている計算になります。
ハングリージャックスが行うエコ活動とは?
オーストラリアを代表するハンバーガーショップ・ハングリージャックスは、多方面におけるさまざまな環境保全を行っています。
ここでは、各取り組みの詳細をチェックしてみましょう。
植物ベースバーガーの販売
気候変動と向き合うべく、ハングリージャックスでは早くから植物ベースのハンバーガーを提供していました。
2001年にはベジタリアンバーガーを発売しており、その後さらなるサスティナブルな未来を目指して2018年にヴィーガンバーガーの販売を開始しました。
ハングリージャックスは完全な植物ベースの食材への移行ではなく、食肉と植物ベースのバランスの取れた供給が必要だと提唱しています。
植物ベースのたんぱく質という選択肢を増やすことによって畜産業が抱える温室効果ガスや気候変動の問題の解決に繋がると考えており、長期的な視点で見ると環境負荷の低減に大きく貢献する活動です。
サスティナブルな食材の調達
ハングリージャックスでは、肉類、野菜、バンズをはじめとするさまざま食材をサスティナブルな方法で調達することを目指しています。
肉類に関しては牛や鶏といった動物の衛生面や環境面に配慮している農場と契約を結ぶことで、動物福祉を守りながら食材を調達しています。
また、野菜や小麦などの植物由来の食材においては、森林伐採による環境破壊に繋がらない農場を選択している点が特徴です。
契約を結んでいる農場やサプライヤーはハングリージャックスの要請に応じて原産地や施設の環境アセスメントを提出しており、環境に関する会議などにも出席することでハングリージャックスと一丸になって環境問題に取り組むシステムが構築されています。
食肉や食糧問題に関する講演会の開催
エコ大国としてのイメージが強いオーストラリアですが、食品ロスへの意識は低い傾向にあります。
オーストラリアの人口は約2,660万人と日本の5分の1程度である一方で、食品ロスは年間で約760万トンと日本の年間523万トンを大きく上回ります。
オーストラリアの国民1人あたり312kgの食品を廃棄している計算になるため、食糧問題に国全体で向き合うためにも国民の意識を改善することが重要です。
そこでハングリージャックスは、2020年にメルボルンにて食糧問題に関する講演会を行いました。
食品学者、農業研究員、食肉会社の役員、農業技術開発者、環境関連のドキュメンタリー監督といった多分野で活躍する環境専門家70名が講演者として招かれ、食品ロスや食糧問題に関する深刻性のほか、食肉がもたらす環境負荷について2日間にわたって解説しています。
また、植物ベースの食べ物を増やすことによる環境メリットや、手軽に取り入れやすいアイデアなども共有することで、食糧問題=他人事だと考えていたオーストラリア国民への啓発を行いました。
RecycleMeシステムの導入
オーストラリアのファストフード店やカフェなどで提供されている使い捨ての紙コップには、紙製でありながらリサイクルできないという矛盾があります。
紙コップの内側に防水性を保つためのプラスチックの裏地が付いており、使用後は廃棄物として処理されるという環境面でのデメリットが見られます。
オーストラリア人は年間10億個の使い捨てカップを使用しているとされていますが、リサイクルされているのはそのうちのわずか10%です。
そこで、食品包装メーカーのDetpakは、紙コップの内側に使われているプラスチック部分を防水性の高い紙に作り替える技術を開発しました。
研究、開発、実装までには約2年かかったものの、使用後の紙コップは専用の回収ポイントに持ってくることで蓋までリサイクルできるというシステムを構築しました。
回収ポイントはオーストラリア国内に5,000か所設けられており、Detpakの紙コップの使用及びリサイクルはRecycle Me Systemと呼ばれています。
ドリンクの販売数が多いハングリージャックスはいち早くRecycle Me Systemに参加し、導入の試験期間中からDetpakの紙コップを提供する数少ない飲食店のひとつとなっていました。
ハングリージャックスはRecycle Me Systemの導入によって自社1店舗ごとに年間約3本の木の保護に繋がっていると計算しており、国全体で1,300本の木々の保全に繋がっています。
サプライヤーのモニタリング
ハングリージャックスでは、環境問題の解決のために自社のエネルギー消費、水の消費、廃棄物の量などをこまかくチェックしています。
また、自社だけでなくサプライヤーに対してもモニタリングを行っており、エネルギー消費、水の消費、廃棄物の量のほかにも化石燃料使用量、廃水量、大気汚染、固形廃棄物の量や種類も管理・測定しています。
測定結果によってはサプライヤーへ削減を要請するなど、自社製品にかかわるさまざまな企業が環境問題に向き合える体制を整えているのです。
まとめ
オーストラリアのバーガーキングであるハングリージャックスは、食肉業界が環境に与える負荷を最小限に抑える取り組みを行っています。
また、サスティナブルな食料調達、啓発活動、リサイクルにも力を入れることで、多方面における持続可能な運営を心掛けています。
もしオーストラリアに旅行する機会があったら、現地のエコなハンバーガーショップ・ハングリージャックスを訪れてみてはいかがでしょう?