#SDGsを知る

サステナブルシーフードとは?メリット、デメリット、商品を購入できる場所も紹介

イメージ画像

近年、「サステナブル」に関する取り組みが盛んに進められるようになりました。その中で、欧米を中心に注目を集めているのが「サステナブルシーフード」です。

これまでのシーフードとは少し異なるサステナブルシーフードについて、なぜ注目されているのか、メリットや課題、日本と世界の取り組みを紹介します。

サステナブルシーフードとは

まずは、サステナブルシーフードの定義を確認しておきましょう。

サステナブルシーフードの定義

サステナブルシーフードとは、英語で「持続可能な」という意味を持つSustainbleと、人間が食べている魚介類のシーフード(Seafood)を併せた言葉です。

限りある水産資源を適切に管理することや、周辺の環境に配慮した漁業・養殖の実践など、私たちが将来も安心して食べられるような方法に沿って漁獲された水産物のことを指します。

サステナブルシーフードには認証マークが貼られる

サステナブルシーフードと呼ばれる水産物には、適切な管理がされているかを証明する認証マークが貼られています。

次では、この認証制度について詳しく見ていきましょう。

【関連記事】サステナブルとは?企業の取り組み事例やエシカル・SDGsとの違いを簡単解説

サステナブルシーフードの認証制度

認証制度には、主にMSC認証とASC認証があります。それぞれ説明します。

【天然】MSC認証

MSC認証(Marine Stewardship Council)は、天然の水産物を対象にした制度です。

さまざまな立場の人々からの意見によって決定された3つの原則に基づき、第三者機関が漁業を公正に審査します。

<MSCの3原則>

  • 原則1:資源の持続可能性
  • 原則2:漁業が生態系に与える影響
  • 原則3:漁業の管理システム

簡単にまとめると、貴重な水産資源や環境を長期間にわたって残せるよう、ルールに則って漁獲・流通したシーフードにのみ与えられる認証です。

【養殖】ASC認証

ASC認証(Aquaculture Stewardship Council)とは、養殖によって生産・加工された水産物に対する認証制度です。

ASCは7つの原則をもとに、養殖場が独立した機関と契約を結び、厳正な審査を受けます。

<ASCの7原則>

  • 国および地域の法律および規制への準拠
  • 自然生息地、地域の生物多様性および生態系の保全
  • 野生個体群の多様性の維持
  • 水資源および水質の保全
  • 飼料およびその他の資源の責任ある利用
  • 適切な魚病管理、抗生物質や化学物質の管理と責任ある使用
  • 地域社会に対する責任と適切な労働環境

人工的に環境をつくって育てるという特徴から、周囲の生態系や環境への配慮のみならず、飼料の適切な管理といったポイントも審査対象に含まれます。

それぞれの認証制度は厳しい審査基準が設けられていることが特徴です。これらの審査を通過することで、水産資源や環境を守ることにつながることに加え、消費者も安心して口にできるのです。

【関連記事】MSCが推進するMSC認証ラベルとは?注目理由を簡単にわかりやすく解説

サステナブルシーフードが注目される背景

サステナブルシーフードに注目が集まるようになった背景には、これまで漁業に関する国際的なルールが制定されていなかったことが挙げられます。そのため、乱獲やIUU漁業といった、さまざまな問題の発生につながりました。

ここでは、近年特に問題となっている「IUU漁業」について、簡単に説明します。

IUU漁業とは

IUU漁業とは、英語でIllegal, Unreported and Unreglated Fishingと表記され「違法・無報告・無規制」な漁業のことを言います。

具体的には、以下のような事例が挙げられます。

  • ある国の法的水域に、外国船が無断で立ち入り漁獲を行うこと(違法)
  • 実際の漁獲量よりも少ない量、もしくは全く獲れなかったと、国や団体へ虚偽の申告を行うこと(無報告)
  • 定められた旗国※を持たない船による漁獲(無規制)
旗国

船舶や航空機に登録された所属国の旗を指す。漁船を含む船舶は、原則として所属する国旗を掲げなければならない。

ここで、下の図を見てみましょう。日本に輸入された魚介類と、IUU漁業による漁獲の割合を示しています。

日本に輸入されている水産物の24~36%は、違法・無報告による漁業だといわれています。種類別でみると、特にウナギやイカ類が多く、そのほかでも20%は下らないとの推定です。

乱獲による影響

加えて、乱獲による影響も深刻です。乱獲は成長が不十分な稚魚までも捕えてしまうため、新しい水産資源を増やすことができません。つまり、長期的に見ると私たち人間が食べるのに必要な生体数が減ってしまうのです。

このような実態は、日本だけでなく世界中で起きている問題です。漁業に従事する人たちがルールを守らないために、乱獲・密漁などによる生態系の減少やバランスの崩壊につながり、私たちが魚を安心して食べられる未来が奪われてしまいます。

このような背景を踏まえて、次は実際に世界と日本が抱えている水産資源の問題について見ていきましょう。

世界と日本が直面している水産資源の問題

世界の海が抱える問題

まずは世界の水産資源に注目して説明します。

先ほど紹介したIUU漁業が蔓延したために、世界ではこの数十年間で急激に水産資源が減少しています。

こちらの図は、FAO(国連食糧農業機関)による「世界の水産資源の推移(1974年~2019年)」をまとめたものです。

赤色は「過剰な漁獲量」、青色は「持続可能な方法でなら獲ってもよい水産資源の量」を示しており、白い線が「その種に影響を与えることなく漁獲が可能な水産資源の量」を表しています。

この図によると、赤色の過剰な漁獲量は2019年までに10%から35%と、3倍以上に増加していることが分かります。

また白線に着目すると、1974年はまだ39%もの水産資源が安全な状態にありましたが、40年後の2019年には、その割合が9%にまで減少してしまったのです。

グローバル規模で過剰な漁業を続けた結果、確実に海の生態系へネガティブな影響を及ぼし、私たちが食べてもよい水産資源の量は近い将来、底を尽きようとしています。

日本の海が抱える問題

続いて日本の現状について見ていきます。

日本は、世界的に見ても1人当たりの魚介類の消費が非常に多く、2017年には世界第6位にランクインしています。

しかし日本国内の漁業・養殖産業の推移を見ると、全体的に減少傾向にあるのが現状です。

こちらは、水産庁が発表した「漁業・養殖業の生産量の推移(1965年~2016年)」です。

日本の漁業・養殖産業はどちらも1984年をピークに減少傾向にあり、特にマイワシの漁獲量の変化が顕著です。マイワシが減少した主な原因には、気候変動海洋汚染などによる海洋環境の変化が考えられます。

マイワシ以外に、サケやイカ類の種類も不漁が続いており、その原因には海洋環境の変化だけでなく、やはりIUU漁業が関わっているといわれています。水産庁が取りまとめた調査結果によれば、2020年での密漁の検挙数は1,426件で、中でも漁業者以外による密漁が増加傾向にありました。

養殖漁業について見てみると、統計を開始した1965年以降ゆるやかに増加し、現在はほぼ横ばいになっています。養殖といえば安定した環境で飼育され、「漁獲量が増えそう」「管理されているからリスクも低そう」といったポジティブなイメージがあるかもしれません。しかし、実際はエサとなるプランクトンや栄養素の減少による周辺環境の汚染・海域の基礎生産能力の低下、養殖用の網が破れて養殖魚が逃げ出しほかの生態系をかく乱するなど、さまざまなリスクを抱えているのも事実です。

このように日本でも世界でも、水産資源に関する様々な問題を抱えています。そこで、生態系の崩壊や食料危機の観点からサステナブルシーフードの重要性が叫ばれるようになりました。

サステナブルシーフードのメリット・デメリット

ここまで、サステナブルシーフードについての基礎知識を学んできました。次にサステナブルシーフードを取り入れるメリット・デメリットについて確認しておきましょう。

【メリット】水産資源を守りながらシーフードを楽しめる

これまでお伝えしたように、現在流通している水産資源の中には、IUU漁業を経由していたり、適切な管理がされずに育てられていたりする場合があります。私たちは消費者として、このような水産資源を避けたいものです。

そこで厳格な審査をクリアした認証付きのアイテムを選ぶことは、違法な漁業を行なっている事業者を排除できることに加え、海の生態系に配慮しつつ、おいしい魚介類を楽しめるのです。

【デメリット】認証をクリアした商品はまだ少ない

MSCやASCといった認証制度の審査基準は非常に厳しく、一度取得した後も5年ごとの更新を求められます。また漁業に従事する者だけでなく、加工や流通・販売に関わる事業者も、別途でCoC認証の取得が必要です。

CoC認証

MSCおよびASC認定漁業者によって獲られた水産資源が、加工や流通・販売すべての過程において追跡可能であり、かつ認証アイテム以外のものと分別されていることを証明するための認証。CoC認証の取得にも、独立機関による厳しい審査が必要となる。

認証を取得しようとしても、漁業者によっては改善に何年もかかる場合があり、ハードルが高いのが現状です。そのため、まだまだ認証ラベル付きの商品を見る機会は少ないかもしれません。

そのような状況でも、すでにサステナブルシーフードに取り組む企業や飲食店が増えています。次は、実際にサステナブルシーフードに取り組む企業・レストランをチェックしてみましょう。

サステナブルシーフード商品に取り組む企業

まずは、サステナブルシーフードに取り組む日本の企業からご紹介します。

セブン&アイホールディングス

株式会社セブン&アイホールディングスは2022年10月、MSC・ASC認証を取得した商品を店内加工するためのCoC認証を取得しました。

これまでは店外加工されたMSC・ASC商品のみを展開してきましたが、CoC認証を取り入れたことで店内加工が可能となり、同社が運営するスーパー「イトーヨーカドー」など全国450店舗以上での展開が見込まれています。

10月末から「ASC認証 セブンプレミアム フレッシュ生アトランティックサーモン」を販売開始するなど、日本でいち早くサステナブルシーフードに取り組む企業のひとつです。

イオントップバリュ

大手スーパー企業のひとつであるイオントップバリュ株式会社でも、MSC・ASC認証を取得したサステナブルシーフードを展開しています。

サケやカツオ・ししゃものような生魚のほか、一部店舗では認証制度を取得した魚介類を使用したおにぎりの販売も実施。将来的には全店舗でのCoC認証取得を目指しており、持続可能な漁業を支援しています。

パナソニック

家電メーカー・パナソニック株式会社では、2018年より日本で初めてサステナブルシーフードを社員食堂に導入しました。

以前から活動を共にしているWFFジャパンやサプライヤー企業の協力を経て、MSCおよびASC認証を取得した魚介類のメニューが並んでいます。

2021年には全国にあるオフィスのうち、50拠点以上がサステナブルシーフードを社員食堂に取り入れるまでに拡大。現在は大阪にあるショールームのカフェで、お客様に向けてもサステナブルシーフードを提供しています。

サステナブルシーフードに関する世界企業の取り組み

次に、サステナブルシーフードに取り組む世界の企業にも目を向けてみましょう。

Walmart(アメリカ)

アメリカの小売企業としては最大ともいわれるWalmart(ウォルマート)では、世界でもいち早い2006年にサステナブルシーフードへの取り組みを発表しました。現在は全店舗のうち98%の商品が、MSC・ASCおよび持続可能な漁業を目指す各プロジェクトに参加している業者から調達しています。

生鮮魚や冷凍食品だけではなく、缶詰のツナといった商品にもほぼ同様の基準を設けており、持続可能な水産業へ大きく貢献していることが分かります。

WOOFS(イギリス)

サステナブルシーフードは、人間の食品だけが対象ではありません。イギリスのペットフードブランド・WOOFS(ウーフス)は、MSC認証を取得した魚を用いて、犬用のおやつを販売しています。

コイやニシンなどを主な原料とし、乾燥させてクッキーやジャーキーに仕立てています。私たち人間だけでなく、家族であるペットの食べものにも気を遣いたい人におすすめのブランドです。

サステナブルシーフードメニューが食べられるレストラン

サステナブルシーフードは、スーパーや店舗で商品を購入するだけでなく、レストランでも楽しめます。今回はサステナブルシーフードを提供しているお店を2つ挙げてみました。

sincereBLUE(東京・神宮前)

sincereBLUE(シンシア・ブルー)は、原宿エリアでさまざまなお店がひしめく「JINGUMAE COMICHI(ジングウマエ コミチ)」の中に佇む、カジュアルフレンチレストランです。

フランスでの料理修行を終え、日本に帰国してからは全国を旅していたシェフの石井真介さんは、立ち寄ったどの漁港でも「魚が獲れなくなってきている」という漁師の声を聞いたのをきっかけに、サステナブルシーフードへの取り組みを始めました。

ブッフェ式の食事では、MSC・ASC認証を取得した魚の実が並び、中には普通の市場ではなかなか出回らない「未利用魚」を使ったメニューも楽しめる点が魅力です。

シンシア・ブルー:https://www.tablecheck.com/ja/shops/sincere-blue/reserve

Brockley’s Rock(イギリス・ロンドン)

ロンドン市内の南西エリアに位置するBrockley’s Rock(ブロックリーズロック)では、MSC認証を取得した魚を用い、イギリスの名物料理ともいえるフィッシュアンドチップスを提供しています。国内では言わずと知れた名店で、グルテンフリーやヴィーガン対応も行っています。持ち帰りが中心のお店なので、旅行の際にはぜひ訪れたいですね。

サステナブルシーフードとSDGsの関係

最後に、サステナブルシーフードとSDGsの関係について押さえておきましょう。

目標14「海の豊かさを守ろう」との関係

SDGs14「海の豊かさを守ろう」は、海の生態系や環境に配慮して海洋ごみやプラスチックを減らすだけでなく、持続可能な漁獲のルールを定め、適切な方法と漁獲量を順守することも含まれています。

持続可能な方法によって漁業を行えば、魚介類の個体数を減らすことなく魚を獲り続けることができ、私たちの大切なたんぱく源としてこれからも長く関係を保つことができます。

そのためには、ターゲット14.4に記載されているように、科学的な根拠に基づいた管理計画を策定し、みんなが守っていく必要があります。

ここでいう「みんな」とは、決して漁業に関わる人たちだけでなく、最後に口にする私たち消費者も含まれます。購入の際は、MSC・ASCのような認証ラベルのある商品があれば、出来るだけ優先して選ぶようにしましょう。

【関連記事】SDGs14「海の豊かさを守ろう」現状と課題、日本の取り組み事例、私たちにできること

まとめ

欧米ではすでに注目を集めているサステナブルシーフードについて、基本的な知識や実際の取り組みなどをご紹介しました。

国民1人当たりの魚介類の消費量が多い日本で暮らす私たちこそ、サステナブルシーフードに着目し、積極的に取り入れていきたいですね。

参考リスト
MSC「海のエコラベル」とは | Marine Stewardship Council
Home – ASC Japan
What is IUU fishing? | Illegal, Unreported and Unregulated (IUU) fishing | Food and Agriculture Organization of the United Nations
Fish and Overfishing – Our World in Data
日本の水産物市場におけるIUU漁業リスク|WWFジャパン
14.海の豊かさを守ろう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)