スウェーデンをはじめ、北欧諸国では広く一般的に行われているアルミ缶やペットボトルのリサイクルシステムがあります。空きペットボトルもつい捨てずに持ち帰りたくなってしまう、そのシステムの名前はパント(Pant)。
エコ先進国スウェーデンの画期的なリサイクル方法、パントについてご紹介します。
そもそもパントってなに?

スウェーデンでは、2022年現在コカ・コーラやレッドブルのようなアルミ缶のドリンク、全てのペットボトルのラベルに、リサイクル可能な表示である「パント」のシールが印刷されています。パントとはどういったリサイクルシステムなのでしょうか。
パントは商品パッケージに付けられた担保
スウェーデンでペットボトルやアルミ缶のドリンクを買うと、バーコード横にパントと書かれたマークを見つけられます。パントマークには、1クローナ(1KR/約13円)と、2クローナ(2KR/約27円)の2種類があります。アルミ缶と500mlのペットボトルが1クローナ、1,5L以上のペットボトルが2クローナです。
パントと言うのは、商品パッケージをリサイクルするためにつくられた、担保のシステム。店頭で10クローナの水を1本買ってレジに行くと、レジではパント分の2クローナが加算され、合計12クローナの支払いをします。
このとき支払った2クローナは、飲み終えたボトルを回収機に入れると返却されるというのがパントの仕組みです。あらかじめ支払っていた分が戻ってくるので、別に得するわけではないのですが、ボトルを回収機に入れなければただの捨て金になってしまいます。
パント付き商品の種類
2022年のスウェーデンでは、一般のスーパーで購入できるアルミ缶とペットボトルには全て、パントの表示があります。また、国営アルコール専売公社(Systembolaget)で売られている一部のビール瓶にもパントが付属しています。
2023年1月からは、全ジュースや濃縮ジュースのパッケージにもパントが課せられることが決まっています。今後もヨーグルトドリンクなどの乳飲料系や、スムージーの包装にもパントの普及が検討されています。
スウェーデンのパント率は?
スウェーデンは、ヨーロッパで初めて瓶のパントシステムを導入した国です。アルミ缶のパントは1984年にはじまり、当時のパント率は63%でした。
スウェーデンでペットボトルが一般的につかわれ始めたのは1970年代半ばですが、ペットボトルのパントが導入されたのは1994年のことです。アルミ缶のパント導入から10年、すでにパントシステムに理解と知名度があったためか、当時から80%越えの高い回収率でした。
2021年の統計では、アルミ缶の89%、ペットボトルの86.4%がパントシステムによって確実に回収されています。
スウェーデン以外の国にもパントシステムはある?
現在ではヨーロッパの多くの国やアメリカの一部でも実地されている、パントシステム。実は、世界でパントによるリサイクル率が最も高いのは、同じ北欧の国フィンランドです。
ただし、他国のペットボトルをうっかり持ち帰ってしまうと、自国では返金不可なのは不便なところです。返却国でパントを支払っていないので、当然と言えば当然なのですが、返却できない他国のペットボトルが溜まってしまうこともよくあります。
しかし、アルミ缶の場合はどのようにもリサイクル可能なため、パントの返金はありませんが、無料で回収だけは可能です。
ペットボトルを返却するだけでお金が戻ってくるとなると、やはり飲み終わったボトルを捨てるよりは、持ち帰りたい気分になるものです。1本あたり数十円ですが、ちりも積もれば山となるよい例といえるでしょう。
スウェーデンでのリサイクルボトル返却方法は?

パントの仕組みが分かったところで、実際にスウェーデンのボトル回収機と返金の方法について詳しく見てみましょう。
近くのスーパーにあるボトル回収機

ボトルの回収機は、ほとんどの身近なスーパーマーケット内に備えられています。ある程度溜ってから持って行く人が多いので、最寄りのスーパーに返却できるのはありがたいですよね。
店の片隅からボトルを潰す音が聞こえてくるので、設置場所はすぐに分かります。ただし、大量にたまったボトルを運んだ日に限って、機械が動作不良を起こしているのは、もはやスウェーデンではあるあるです。そんな日は大人しく出直しましょう。
ボトル回収機の使い方は簡単

電源やスタートボタンなどはなく、トンネル状の回収口にボトルを突っ込むと、ベルトコンベアが動き始めます。そのままボトルが流され、奥の方でぐしゃっとつぶされる音がします。
気を付けたいのは、続けてどんどん入れるとシステムが作動しなくなることです。日本のように何事もスムーズにいくわけではないので、確実に流してから次のボトルを入れるようにしましょう。
パントは寄付も可能

パントが幾ら分になっているかは、回収機の電子スクリーンに表示されます。全部のボトルを回収機に入れ、最後にボタン(タッチパネル式もあり)を押すとバーコードと合計金額の印刷されたレシートが出てきます。
回収機には通常2種類のボタンがあります。機械によってボタンの色は違いますが、ひとつは通常の返金システム。もうひとつは赤十字などに寄付できるようになっていますので、好きなほうを選びましょう。
レシートを見せるとレジで同額が戻ってくる
回収機で印刷されたレシートには、使用期限が記載されています。1年有効と書かれていますが、感熱紙のレシートなので数週間で消えてしまいます。早めにつかうほうがよさそうですね。
20年ほど前までは現金で返金してくれたのですが、現在では買い物の際のクーポンのようにしかつかえなくなっています。また、ボトルを回収した店舗でしか利用できないので、注意が必要です。
スウェーデンのリサイクル、パント回収裏話

子供たちが積極的にボトルを集める理由
以前ほど見かけなくなりましたが、外でペットボトルを持ち歩いていると小学生くらいの子供に「それ、要らないならちょうだい?」と声を掛けられることがあります。
ちょっとしたお菓子を買うためにパントのついたリサイクルボトルを集め、回収機へ持っていく子供。中には、所属しているサッカーやホッケーなどのスポーツチームの資金のために、パントを集めている子供たちもいます。
正直、子供たちに「資源回収に貢献している」という気持ちがあるかどうかは分かりません。しかし、幼いころからリサイクルボトルは回収するものという体験を当たり前に行い、生活の一部になっていると感じます。
返金の使い道はともかく、パントシステムは確実に資源回収に生かされています。
ホームレスの生活費に
街中に設置されたゴミ箱をひとつひとつ覗き、ペットボトルを集めている大人は、少し大きな町ではかなりの人数みられます。
彼らは完全なホームレスではありませんが、収入が乏しく、やはりボトルを集めて食料品や日用品を購入しています。パッと見た感じでは、外国人が多い印象です。
ただし、ゴミ箱からボトルを集めている全ての人が、生活に困窮したホームレスではありません。実際、私の暮らすアパートの上の階に住んでいるおじさんは、ふたりの子供を持つ普通の家庭的なお父さんですが、毎日ボトル集めをしている姿を見かけます。
そのご家庭では奥さんが会社勤めのため、ボトル集めは旦那さん側の副収入なのでしょう。
パント回収会社のコマーシャルが秀逸!
スウェーデンのパントを運営している会社のひとつに、PANTAMERA(パンタメーラ)があります。パントをするという動詞のパンタ(PANTA)と、もっとという意味のメーラ(MERA)を掛け合わせた社名ですが、この会社のCMソングが秀逸です。
元歌は、1960年代に世界的ヒットを飛ばしたキューバの民謡「グァンタナモのお嬢さん」(Guantanamera)。
キューバのおじいちゃんバンドと思われるメンバーが、ただグァンタナメラをパンタ ア メラ(PANTA A MERA、もっとパントしよう)と替え歌にして歌うだけのCMですが、ノスタルジックな雰囲気とあふれる語感センスに思わずしびれてしまいます。
PANTAMERA:https://pantamera.nu/
まとめ
資源のリサイクルが、生活の中に当たり前に溶け込んでいる国スウェーデン。エコ先進国のスウェーデンのリサイクルボトル回収方法は、他の国でもどんどん導入されてもよいシステムですね。
回収機はラベルのバーコードからパントを読み込むため、日本のようにわざわざラベルを剥がす手間がないのも、回収率が高い理由のひとつかもしれません。
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