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オーストラリアの職業訓練専門学校・Tafeクイーンズランドがサスティナブルな未来のために行う取り組み

オーストラリアのポピュラーな教育機関に、実務経験の習得に特化した職業訓練専門学校・Tafeがあります。

実践的なスキルと知識を学べることから、高校卒業後に進学するのはもちろん、社会人学生として通う人々も多くなっています。

Tafeは州ごとに異なる運営を行っており、クイーンズランド州のTafeは教育水準の高さと同時にエコ意識の強さにも定評がある教育機関です。

この記事では、Tafeクイーンズランドが具体的にどのような環境保全活動を実施しているのか解説していきます。

Tafeってどんなところ?

Tafeは、オーストラリア州立の職業訓練専門学校です。

大学よりも実務的な学習やスキルを身につけられるカリキュラムとなっており、IT、ビジネス、アート、観光学、看護、介護、保育、動物学、美容系、メディア、コミュニケーションといったバリエーション豊富なコースから選べます。

Tafe自体はオーストラリア国内の全ての州にありますが、クイーンズランド州が運営するTafeクイーンズランドは環境保全に力を入れていることで知られています。

州都のブリスベンをはじめとする州内60エリアにキャンパスがあり、市街地や田舎を問わずに学生が学べる環境が整っている点が特徴です。

また、Tafeクイーンズランドは、2022年にエコを意識したロビーナキャンパスを設立しました。

環境負荷低減のためにさまざまな工夫が凝らされたロビーナキャンパスは「世界高等専門学校連盟(WFCP)」優秀賞の建設部門で銀賞を受賞しており、持続可能性の目標設定と達成が高く評価されています。

Tafeクイーンズランドが行うエコ活動とは?

ここでは、Tafeクイーンズランドがどのようなエコ活動を実践しているのか見ていきましょう。

BYOD

Tafeクイーンズランドのロビーナキャンパスは、紙の使用量削減を目的にBYODを導入しました。

BYODとはBring Your Own Deviceのことで、学生に対してタブレット端末やノートパソコンなどのデバイスを持参するように促すシステムです。

オーストラリアの各学校が消費する紙の量は、年間で約600万枚と言われています。

当然、生徒数が多い学校では消費量も大きくなるため、平均12万人以上の学生を抱えるTafeクイーンズランドでは紙の膨大な消費が問題視されてきました。

そこでスタートしたのが、紙ベースから電子ベースに切り替えるためのBYODです。

テキストや資料を全て電子ベースに切り替えることで、生徒へ配布するための紙の消費を大幅に節約できます。

尚、オーストラリアは教育現場でのIT化が比較的早い国であり、新型コロナウイルス感染症以前から自身のデバイスを使う生徒が多く見られました。

その一方で、Tafeクイーンズランドはさまざまなバックグラウンドを持つ留学生も多く、経済的な理由から紙ベースで講義を受ける学生の姿も目立っていたのが実情です。

全ての生徒が手軽に電子ベースへの切り替えを行えるように、Tafeクイーンズランドでは学生向けの格安パッケージの提供も実施しています。

大型家電量販店のJB Hi-Fiと提携しており、学生は購入割引、延長保証、ソフトウェアライセンスなどが特典として付いているパッケージを使ってデバイスを購入可能です。

学生たちが無理なく自身のデバイスに切り替えられる仕組みが構築されているため、ペーパーレス化促進に繋がっています。

また、教授陣も紙の印刷量を抑えるなど、キャンパス全体で紙の使用と二酸化炭素の排出量削減に努めているのが特徴です。

環境コンテストの開催

Tafeクイーンズランドは、World Earth Dayをテーマにした生徒主体のエコ活動も行っています。

World Earth Dayとは、毎年4月22日に世界中で行われている環境保全イベンドのことです。

193か国以上、総計10億人の人々が参加していると言われており、毎年異なる環境テーマが決められています。

2022年、World Earth Dayのシーズンに合わせてTafeクイーンズランドが開催したのが、「World Earth Day 2022 x Study Sustainability Tips」と呼ばれるコンテストです。

SNSを使って在学生が気軽に参加できるイベントとなっており、勉強中にトライできるサスティナブルなアイデアを募集するという内容です。

合計37,500人もの学生が投稿し、特に優れたアイデアを考え出した10名が選出されました。

Tafeクイーンズランドはカランビン野生動物保護区のコアラ募金への寄付を行い、受賞者10名にはコアラ募金に対する名前の記名権利が与えられました。

学生たちがより身近にエコについて考えられると同時に、野生動物への経済的支援にも繋がったイベントとして知られています。

再生可能エネルギー

TAFE クイーンズランド州は、再生可能エネルギー戦略推進を目的に再生可能エネルギー委員会を設立しました。 

再生可能エネルギーを検討する政府関係者と議論することで、環境負荷の低いキャンパスづくりに役立てられるというメリットがあります。

2022年に完成したロビーナキャンパスでは、再生可能エネルギー委員会での検討によって250枚のソーラーパネルが設置されました。

また、キャンパス内では日射制御ガラスなども採用し、建物に入る熱の量を減らすことでエアコンの使用率削減を実現しています。

消費電力と二酸化炭素の排出量を大幅に減らす取り組みとして高い評価を受けており、結果としてTafeクイーンズランドの中でも随一のエコキャンパスとしての地位を確立しています。

環境関連のコース展開

州内の60か所以上にキャンパスを有するTafeクイーンズランドでは、500以上のコースを展開しています。

グレートバリアリーフ、熱帯雨林、クジラ遺産地域であるハービーベイ、州最大の農業経済地帯として知られるトゥーンバなどにもキャンパスがあり、地域ごとに特化した以下のような環境関連コースを提供しています。

  • サスティナビリティコンセプト
  • サスティナブルエナジー
  • 環境保全&エコシステムマネジメント
  • 農業マネジメント
  • 野生動物と展示動物の飼育

環境保全や生態系に直結するコースはもちろん、サスティナブルなIT、環境を意識したビジネスをはじめとする実務スキルにエコを組み込んだコースも多く、環境に関心が少ない学生も自然とサスティナビリティについて考えられるカリキュラムとなっています。

電気自動車の導入

Tafeクイーンズランドの中には、大規模な敷地を持つキャンパスも数多く存在します。

大きいものでは東京ドーム5個分ほどの広さがあり、職員が移動するための自動車を保有しているキャンパスも少なくありません。

しかし、温室効果ガス排出への懸念の声も長年にわたって挙がっており、Tafeクイーンズランドではエネルギー効率の高い輸送手段を検討していました。

解決策として採用されたのが、電気自動車への切り替えです。

ブリスベンのキャンパスに27台の電気自動車を導入し、4つのエリアに25か所の電気自動車充電ステーションを完備しました。

各車はフル充電で200~500kmの走行が可能なので、顧客やサプライヤーへの訪問範囲も電気自動車で十分にカバーできると考えられています。

また、電気自動車のパフォーマンス向上を目的に設置した施設も4か所あり、利便性と環境保全を両立できる状態も整えています。

リサイクル促進

数多くの学生が在籍するTafeクイーンズランドでは、各キャンパス内にて大量の廃棄物が発生します。

少しでも環境負荷を減らすために実施されているのが、紙、ボール紙、トナー、金属などのリサイクル及び再利用です。

また、リサイクル率を上げるために、一般ごみのゴミ箱の数を減らすと同時にリサイクル用のゴミ箱を細かく分別して置いています。

水の有効利用

Tafeクイーンズランドは、キャンパス内にて雨水の採取、貯蔵、利用を行っています。

また、スマート水道メーターや水効率の高いデバイスの導入により、不必要な水の使用を最小限に抑えているのも特徴です。

まとめ

Tafeクイーンズランドは、良質な教育と共に環境への負荷低減も目指しています。

再生可能エネルギー、水の有効利用、リサイクル率アップといった取り組みのほか、学生を取り込んだ環境コンテストやBYODなどを行っているのもポイントです。

学生のエコ意識を根本から変えていくことこそが、未来の環境を守るための近道なのかもしれませんね。