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【タスマニアのノアの方舟】オーストラリアのマライア島が自然環境と野生動物を守るために行う取り組みとは?

雄大な自然が魅力のオーストラリア。

特殊な野生動物が生息することでも知られるオーストラリアですが、南東部に位置する島・マライア島をご存知でしょうか?

1970年代に数多くの野生動物が放された無人島で、独自の生態系を持つ島として多くの観光客が来島しています。

しかし、観光客の存在が自然環境や野生動物に悪影響を及ぼす可能性も高く、観光業と保全活動の両立が必要不可欠です。

そこで今回は、マライア島を拠点に活動するエコツーリズム・MARIA ISLAND WALKの取り組みについて解説していきます。

マライア島の基本情報

マライア島(MARIA ISLAND)は、オーストラリアのタスマニア東海岸沖に位置する島です。

東京ドーム2,500個分ほどの大きさで、州都・ホバートから車とフェリーで2時間ほどの距離にあります。

ビーチ、山、野生動物といった豊富な自然環境のほか、2010年に世界遺産に登録された「オーストラリアの囚人遺跡」の一部も見られる観光地として知られています。

マライア島の中には複数の自然・歴史観光スポットがあり、初心者向けから上級者向けまでニーズに合わせて楽しめるところが特徴的です。

尚、島内全域が国立公園に指定されており、定住者はマライア島の管理を行う現地レンジャーのみとなっています。

ホテルなどの宿泊施設やショップなども一切なく、観光客がマライア島に泊まる際はキャンプを行うのが一般的です。

マライア島はタスマニアのノアの方舟

1970年代、オーストラリアの固有種を守るべく、絶滅危惧種の野生動物たちがマライア島に放されました。

マライア島は種の保存という観点から「タスマニアのノアの方舟」とも呼ばれており、オーストラリア国内でも希少かつ珍しい野生動物が見られる地として認知されています。

ウォンバット、タスマニアデビル、カンガルー、ワラビーといった有袋類や、ケープハレンガン、フォーティスポッテッドオウム、アマツバメオウムをはじめとする125種にも及ぶ鳥類も生息しています。

MARIA ISLAND WALKとは?

MARIA ISLAND WALKとは、数日間にかけて行われるマライア島のガイド付きウォーキングアクティビティのことです。

環境に配慮している点が特徴で、ウォーキングを通して参加者がマライア島の環境保全について理解する機会を生み出しています。

MARIA ISLAND WALKは質の高い観光事業を通じた持続可能な観光に対して認定されるEcoStar認定ビジネスを受けており、エコツーリズムアクティビティとして認知されているプログラムです。

また、オーストラリア政府観光局もMARIA ISLAND WALKの保護活動を評価し、アクティビティによる自然環境への保全や一般市民への啓発などが注目されています。

MARIA ISLAND WALKが行う保全活動の事例

MARIA ISLAND WALKは、マライア島での環境保全と観光の両立を目指しています。

ここでは、実際にMARIA ISLAND WALKが実施しているエコ活動について詳しく見ていきましょう。

ビーチでのゴミ拾い

海に囲まれているマライア島は、美しいビーチを有することでも知られています。

しかし、外洋から流れ込んでくるゴミがたどり着くことも多く、マライア島に生息する野生動物や海洋生物にとって脅威となる可能性も高くなっています。

そこでMARIA ISLAND WALKが行っているのが、ビーチの清掃活動です。

ウォーキングアクティビティの一環として実施しており、ビーチを綺麗にすることでより直接的な環境保全に貢献できるところもメリットです。

尚、収集されたゴミは分別され、オーストラリア全土の海洋ゴミの除去及び防止に努めるチャリティー団体・タンガロアブルー(Tangaroa Blue)にデータを共有しています。

タンガロアブルーは沿岸環境へのゴミの流入を最小限に抑えるため、オーストラリア海洋ゴミのデータベースを作成しています。

MARIA ISLAND WALKが送ったマライア島からの詳細もデータベースに加えられ、海洋ゴミの流れを明確化することに繋がっています。

最小限の廃棄物

MARIA ISLAND WALKが提供するアクティビティは、3日間と4日間の2種類があります。

3日間のアクティビティは冬に開催しているため、年間を通して人気があるのは4日間のプランです。

4日間では12人が1グループとなってウォーキングを楽しみますが、廃棄物は大きなゴミ袋1袋分に抑えるように努めています。

参加者にとって必要最低限のものだけを持ってアクティビティを行うことをポリシーとして掲げていることから、過剰なサイズの食事容器、包装、アメニティなどの削減に成功しています。

また、廃棄物は全て分別されており、有機廃棄物に関しては全て堆肥化している点も特徴です。

Bush Walk参加者へ再利用可能なボトルの提供

ウォーキングに欠かせない飲み水。

しかし、廃棄物の削減に力を入れているMARIA ISLAND WALKにとって、使い捨てペットボトルは避けるべき存在です。

そこで、MARIA ISLAND WALKでは参加者全員に対して再利用可能なボトルを提供しています。

ペットボトル1本を分解するのに約400年かかると言われていることから、再利用可能なボトルを導入することで環境への負荷低減に貢献しています。

野生動物に干渉しない

MARIA ISLAND WALKの参加者の中には、野生動物とのふれあいを目的としている人もたくさんいます。

しかし、人間に触られることでストレスを感じる野生動物も多く、本来の野生動物が見せない異常行動の原因となる可能性も高いです。

マライア島は観光客に対して野生動物との距離を2mほど開けるように警告しており、MARIA ISLAND WALKでも参加者にルールを守るように伝えています。

触れる代わりにガイドによる解説を聞くことで、野生動物について正しい知識を得られると高評価を得ています。

水の節約

MARIA ISLAND WALKでは、限りある資源・水の節約を行っています。

1人あたり使用できる水の量は1晩あたり8L程度としており、シャワーや衣類の手洗いが必要な場合も全て規定内の水の量で済ませるルールです。

尚、参加者が使用する水はマライア島で全て収集されており、単なる水の節約だけでなく雨水などの有効活用にも努めています。

植樹

MARIA ISLAND WALKは、活動の一環として植樹を行っています。

Tasmania Parks and Wildlife Service(タスマニア公園及び野生動物局)と提携し、マライア島の港付近に位置するダーリントンに植民地時代の木を植えました。

ダーリントンは世界遺産である「豪州の囚人遺跡群」の1つを構えるエリアで、刑務所として使われていた後は長らく放置されていました。

現在では植樹によってマライア島本来の姿に近い状態を再現しており、野生動物たちの生息地としても役立てられています。

また、木によって浸食や表土の損失を抑えられるというメリットもあることから、マライア島自体の保全に貢献している点もポイントです。

猛禽類に対する保全活動

MARIA ISLAND WALKでは、Raptor Refugeへの後援を行うことで猛禽類を保全しています。

Raptor Refugeはタスマニアの猛禽類の保護を目的に設立された財団で、負傷・病気の猛禽類へのケアや孤児となった猛禽類のリハビリテーションを行っています。

また、ゴマフクロウの生息地保護のため、MARIA ISLAND WALKはタスマニア土地保護団体に対して1万ドル(約100万円)を寄付しました。

カンガルーやタスマニアデビルなどの有袋類と比べると軽視されがちな猛禽類ですが、タスマニアやマライア島の生態系を守る上で必要不可欠な存在です。

健康な猛禽類が増えることで生態系の維持に繋がるため、MARIA ISLAND WALKは猛禽類の保全も重要だと考えているのです。

まとめ

MARIA ISLAND WALKは、マライア島の自然や野生動物の保護を目的にさまざまな活動を実施しているエコツーリズムです。

SDGsを意識したアクティビティを提供することで、自然環境や生態系へ悪影響を与えることなく旅行を楽しめるということを人々に啓発しています。

もしオーストラリアを訪れる機会があったら、手つかずの大自然を満喫できるマライア島で自分にできるエコ活動を行ってみてはいかがでしょう?