#SDGsに取り組む

【オーストラリアの漁業とSDGs】タッサルは漁業の環境問題に真っ向から向き合うサーモン養殖会社!

島国である日本と同様、大陸国のオーストラリアでも比較的頻繁に海産物が食べられています。

しかし、漁業と環境問題には切っても切れない繋がりがあり、持続可能性の高い地球を目指すためにもエコな取り組みを意識する必要があります。

そこで今回は、オーストラリアの養殖会社・タッサルが行うエコな取り組みを見ていきましょう。

漁業がもたらす主な影響に関しても詳しく解説していくので、漁業が抱える環境問題を多方面から理解した上で他国の保全活動について考えてみてくださいね。

タッサルってどんな会社?

タッサル(Tassal)は、1986年に設立されたサーモン養殖会社です。

オーストラリア南部のタスマニアを拠点としており、タスマニア産サーモンの最大生産者として認知されています。

国内外の市場にサーモンを供給し、2023年の具体的な収穫量はサーモンが36,123トン、エビは6,024トンです。

タッサルの製品はオーストラリア全土のスーパーマーケットにて販売されており、タスマニア州ではタッサルの専門店も構えています。

漁業が抱える環境問題

日本でも頻繁に食べる機会があるサーモン。

しかし、漁業は環境問題と密接な繋がりがあり、持続可能な漁業を意識する必要があると指摘されています。

主な漁業の環境問題として、以下が挙げられます。

・増加する消費量をカバーするための乱獲

・廃棄物の発生

・周辺の野生動物への影響

・気候変動による生態系破壊

ここでは、それぞれの詳細についてチェックしていきましょう。

  1. 増加する消費量をカバーするための乱獲

世界的な人口増加に伴い、海産物の需要も年々高まっています。

2022年の水産物の漁獲量・生産量をまとめた報告書内にて、オーストラリアは54位にランクインしています。

具体的な漁獲量は290,290トンとされており、12位にランクインする日本の3,910,316トンと比べると一見少ない結果です。

しかし、過去のオーストラリアのデータと比較すると、1985年の172,379トンから10万トン以上も漁獲量が増加していることが分かります。

漁獲量はその年によって変動するものの、過去5年間は25万トン以上を記録し続けているのが実情です。

国連食糧農業機関(FAO)の発表によれば、世界の水産資源の3分の1が乱獲状態にあります。

乱獲による不均衡を招くことで生態系を破壊する可能性も高く、サスティナブルな漁業を目指すためにもバランスを意識することが必要不可欠です。

  1. 廃棄物の発生

漁業は廃棄物の多い産業としても知られており、給餌パイプ、海中かご、支柱、鳥よけネットスタンドといった廃棄物が発生します。

また、養殖会社の場合は工場内でも廃棄物が出るため、段ボールや資材などの廃棄物マネジメントを徹底することが大切です。

忘れがちなのが製品のパッケージで、スーパーマーケットなどで購入した海産物にはトレイや袋が付いています。

ゴミとして処分されることで廃棄物の増加に繋がるため、消費者がリサイクルしやすいパッケージ作りについて考える必要があります。

  1. 周辺の野生動物への影響

オーストラリアにおける漁業では、周辺に生息するアザラシが大きな脅威となります。

アザラシはサーモン養殖場が所有する開放水域の囲いに入り込んで魚を捕獲することが多く、出入りする際に網が破れることも多々あります。

破れた網からサーモンが放出されるのはもちろん、場合によっては網にアザラシが絡まって怪我をする恐れもあるため、養殖会社はアザラシへの抑止対策を行うのが一般的です。

漁業用のクラッカーなどで大きな音を出すといった対策を取る会社も多い一方で、忌避剤を使用している会社もあります。

忌避剤はアザラシが嫌うニオイなどを発するのが特徴ですが、状況によってはアザラシが死亡する危険性もあるのがデメリットです。

漁業によるアザラシの個体数減少が深刻化した場合、海の生態系バランスが崩れる可能性も高くなっています。

  1. 気候変動による生態系破壊

船を使う漁業では、運営する上で漁船から二酸化炭素が排出されます。

1kgの漁獲に対して1〜5kgの二酸化炭素が排出されており、漁獲量が多い商業漁業の場合は二酸化炭素の量も膨大になります。

また、養殖会社においては工場からの二酸化炭素排出も指摘され、地球温暖化の大きな原因となっているのが特徴です。

地球温暖化が加速すると、海水温の上昇によって多くの魚や海洋生物に影響が出ます。

海は地球上の酸素の50%を生成し、二酸化炭素排出量の25%を吸収し、地球上の全生物の50~80% が生息していると言われています。

個体数の減少、生息地の変化、生態系破壊といったさまざまな問題点があることから、サスティナブルな漁業を行うためにも二酸化炭素の排出量に関して意識しなければなりません。

タッサルは持続可能な漁業を目指す養殖会社!

タッサルは自然環境と共存するためのサスティナブルな事業を意識しており、2023年にはタスマニア輸出賞ではEnvironmental Stewardship Award(環境管理賞)を受賞しています。

ここでは、そんな持続可能性の高い漁業への取り組みが高く評価されているタッサルのエコ活動についてご紹介します。

廃棄物の管理

タッサルでは、サーモン海洋養殖設備を2025年12月31日までに再利用、もしくはリサイクル化するシステムを構築しています。

対象となる設備は、給餌パイプ、海中かご、支柱、鳥よけネットスタンドといった100%ポリエチレン製のものです。

また、同日までにタスマニアの処理工場で発生する廃棄物の95%をリサイクルへ転用することも決定しています。

2024年12月時点では処理工場の現状把握と廃棄物処理計画の作成を行っており、作成後は毎月のモニタリングによって進歩状況を国へ報告する予定です。

さらに、オーストラリア包装協定組織 (APCO)へ提出するレポートも作成し、2025年12月31日までに消費者向けのパッケージを100%再利用可能、リサイクル可能、または堆肥化可能にするという目標に取り組んでいます。

現時点でSalmon PortionsとBurgersには100%リサイクル可能なトレイ、Salmon Infusionsには100%リサイクル可能なアルミニウムトレイ、Cooked and Smoked Salmon Filletsには100%リサイクル可能なスリーブ、Tassal BarramundiとTassal Prawnsには100%リサイクル可能なトレイとラベルが使用されており、環境に優しいパッケージへの変換を着々と進めています。

アザラシへの動物福祉の徹底

タッサルにとって脅威でもあるアザラシですが、生態系を構成する重要な要素のひとつでもあります。

そこでタッサルでは、養殖業とアザラシへの動物福祉を徹底するためにより安全性の高い抑止対策を行っています。

アザラシに対する忌避剤を段階的に廃止し、同時にビーンバッグと呼ばれるアザラシを威嚇するための玉入りの銃の使用も大幅に削減しました。

ビーンバッグはタスマニア州政府が施行する「アザラシ管理枠組み」の下、タスマニアの海洋養殖産業が保有を許可されている抑止方法のひとつです。

しかし、銃を使用することで物理的にアザラシを傷つける可能性が高いことから、タッサルではビーンバッグをできるだけ選択肢から排除するように努めています。

サーモン養殖従業員に対しても教育を徹底しており、全員が「HAPPYfish動物福祉トレーニング」と呼ばれるコースを修了した上で仕事をしています。

ネットゼロへの取り組み

タッサルは気候変動への対策として、2050 年までにネットゼロを目指しています。

以下は、タッサルが行っている具体的な取り組みです。

・32隻の海洋サーモンバージに再生可能エネルギーを導入

・316台のディーゼルコンプレッサーをエコな電動コンプレッサーに交換

再生可能エネルギーや持続可能性の高い設備の導入は今後も続けていく予定で、現在では各分野における設備ごとの二酸化炭素排出量を調査・確認している段階です。

まとめ

現在、世界では魚介類の51%が養殖で賄われており、2032年までに10%の増加が予想されています。

養殖業を担うタッサルは、生態系を保護しながら海産物を供給するシステムを構築している企業です。

私たち日本人にとって身近な海産物ですが、環境への影響やサプライヤーが行う取り組みなどをチェックした上で製品選びを行いたいですね。