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絶滅危惧種のカエルの保全活動!特殊なカエルが生息するオーストラリアで行われているFrogIDウィークとは?

日本にも数多くの個体が生息しているカエル。

南半球のオーストラリアでも見られるカエルですが、特殊な気候や地形で生き抜くために独自の生態を持つ種がいます。

しかし、人間の活動によって個体数の減少が危ぶまれており、カエルが絶滅することで生態系の崩壊も招きかねません。

そこでオーストラリアでは、FrogIDウィークと呼ばれるカエルを保全するための活動を行っています。

この記事では、FrogIDウィークの詳細はもちろん、オーストラリアに生息するカエルの特徴や個体数減少の原因についても深掘りします。

オーストラリアは特殊なカエルが生息する国

世界では4000種ほどのカエルが生息しており、オーストラリアで確認されているのは20分の1にあたる約200種類です。

しかし、大陸国であるオーストラリアには他の地域では見られない特殊なカエルが数多く生息しています。

本来であれば多湿環境を好むはずのカエルですが、乾燥地帯のオーストラリアに適応した種が発見されています。

例えば、南オーストラリア州に生息するウォーターホールディングフロッグ(Cyclorana platycephala)は、自身の体内に水を蓄えることで湿気や水のない場所でも生き抜くという特性を持つカエルです。

主な生息地は地下ですが、乾燥シーズンの到来や干ばつによって生息エリアの水たまりが乾くことも多々あります。

水たまりが乾くとカエルは砂地に穴を掘り、脱皮した皮膚の層で作った繭のような膜を張って体の脱水を防ぎます。

膜は膀胱や皮ふに蓄えた水を主成分としており、再び水たまりが出来上がるまで約7年間もの期間を生き延びることが可能です。

ほかにも、生涯のほとんどを地下の砂地で過ごしてシロアリを主食とする西オーストラリア州のカメガエル(Myabatrachus gouldii)など、オーストラリアには特殊な生態を持つカエルがたくさんいます。

オーストラリアにおけるカエルの個体数

珍しいカエルが確認されているオーストラリアですが、絶滅の危機に瀕している種も多いのが実情です。

1980年代以降、オーストラリアではカエルの個体数が減少しており、2024年時点で15種類が絶滅危惧種、12種類が絶滅危急種、4種類が絶滅しています。

6種類に1種が絶滅のリスクを抱えているため、オーストラリアではカエルの個体数減少を防ぐ必要があります。

尚、オーストラリア全土に幅広く生息するカエルもいる一方で、限定されたエリアでのみ確認されているカエルも少なくありません。

オーストラリアにしかいないカエルも存在することから、オーストラリアで絶滅=地球上から消失してしまう種もいることが大きな懸念点となっています。

個体数減少の原因

オーストラリアにおけるカエルの個体数減少には、さまざまな要因が絡み合っていると言われています。

主な個体数減少の原因として、以下のようなものが挙げられます。

・湿地帯の埋め立てによる繁殖地喪失

・気候変動による大気と水質の変化

・農業や園芸作業における殺虫剤及び除草剤

・池を畜産用のダムに変えることで起こる家畜の土壌踏みつけによる生息地の破壊

・土地の伐採による塩分の増加(多くのカエルは塩分不耐症)

・カエルの卵やオタマジャクシを捕食する外来種の存在

・森林作業による沈泥

生息地の破壊・減少、汚染、外来種による捕食など、いずれも人間の活動が主な原因です。

カエルはコアラやワラビーなどの哺乳類と比べると軽視されることも多く、カエルに特化した保全活動が少ないことも個体数減少に拍車をかけています。

しかし、カエルが消失すると、カエルが餌としている無脊椎動物が不必要に増加する可能性が高くなっています。

また、カエルは多くの鳥類、哺乳類、爬虫類にとって重要な食料源となっていることから、餌不足による食物連鎖の崩壊といった生態系への悪影響も忘れてはいけません。

FrogIDウィークはカエルの保全のためにはじまった取り組み!

カエルの個体数減少を防ぐためにはじまったのが、FrogIDウィークです。

ニューサウスウェールズ州のオーストラリア博物館が主催する保全イベントで、2018年11月にスタートしました。

カエルの個体数を守るためには、国内のカエルの分布状況や健康状態を正しく把握することが大切です。

そこで、FrogIDウィークではFrogIDアプリを使ったカエルの鳴き声の録音を一般市民に促しており、より多くの人々が参加することで幅広いエリアにおけるカエルのデータ収集が可能です。

アプリによって集められたデータは、オーストラリア博物館に駐在するカエルの鳴き声を専門とするスタッフによって種の特定及び分類が行われます。

カエルの生息地のマッピングを作成することで種ごとの個体数の把握、脅威の特定、土地管理者への指導による生息地の改善、保全マネジメントの強化に繋がるのはもちろん、軽視されがちなカエルの重要性を一般市民に再認識してもらえる点もメリットです。

FrogIDウィークへの参加方法

FrogIDウィークは毎年11月に実施されており、2024年の開催期間は11月8日から17日です。

参加者は期間中にFrogIDアプリをインストールし、アプリ内に搭載されているレコーダー機能を使ってカエルの鳴き声を録音します。

アプリに保存したデータは専門家によってカエルの種の分類が行われ、オーストラリア政府や州の野生動物データベースにも共有される仕組みです。

尚、FrogIDアプリは無料となっており、オーストラリア市民が誰でも気軽に環境保全に貢献できるシステムが構築されています。

2023年のFrogIDウィークの成果

2023年に行われたFrogIDウィークでは、過去最大規模となる4,743人が参加しました。

実に17,700匹を超えるカエルの録音データが寄せられており、はじめてFrogIDウィークを開催した2018年から6年目にして総記録数が100万件を突破しました。

確認されたカエルは112種類にも及び、オーストラリアの全カエル種の実に45%にも匹敵します。

また、2023年のFrogIDウィークでは、絶滅危惧種を救うカギになり得る以下のような成果も確認されました。

①絶滅危惧種の発見

112種類のカエルのデータ収集に成功した2023年のFrogIDウィークには、ニューサウスウェールズ州ウォランビン山でのみ生息している絶滅危惧種・ウォランビンポーチドフロッグ (Assa wollumbin) が含まれていました。

また、個体数減少が危ぶまれるビクトリア州のオトウェイスムースフロッグレット (Geocrinia sparsiflora) や西オーストラリア州のカメガエル(Mybatrachus gouldii)なども記録されており、新たな生息地や個体数の発見に繋がりました。

②これまで個体が確認されていなかった地域での発見

過去最大の4,743人が参加した2023年のFrogIDウィークでは、過去にサンプリングされていなかった地域での記録の録音が投稿されました。

クイーンズランド州ピークヴェイル(Peak Vale)、ニューサウスウェールズ州アイリンプル(Irymple)、ノーザンテリトリー州キャンティーンクリーク(Canteen Creek)といった僻地でのデータが収集されたことにより、これまで空白となっていた地域のカエルの情報や現状をアップデートすることに成功しています。

参加者のモチベーションを高めるトップフロッガーコンテスト

FrogIDウィークでは、開催期間に合わせてトップフロッガーコンテストと呼ばれるイベントを行っています。

期間中に最も多くのデータを収集した上位10名に送られる表彰で、FrogIDウィークの公式ホームページにて1年間にわたって名前が公表されます。

2023年のトップフロッガーコンテスト優勝者はニューサウスウェールズ州出身のMichele Brooke氏で、合計312件の録音記録を共有し、830件分のカエルのデータが確認されました。

自身の環境保全への取り組みが可視化しやすくなるため、参加者のモチベーションアップに繋がっている取り組みです。

まとめ

オーストラリアでは、FrogIDウィークを活用することでカエルの個体数減少を防ごうと努力しています。

一般市民の興味を引くことにも成功しており、国全体でカエルを保護する意識が高まっています。

私たちも、身近に暮らすカエルを気にかけることから始めてみましょう。