#インタビュー

株式会社ウィファブリック|「ファッションをもっと楽しく持続可能なものに」を理念に、オンライン・アウトレットモールSMASELLでアパレル削減廃棄を目指す

株式会社ウィファブリック

株式会社ウィファブリック 藤本恵子様 インタビュー10

藤本恵子

デジタル業界にてマーケティング・プランニング・ディレクターリーダーとしてデジタルを通した企画提案を行い、多業種に渡るクライアントの課題解決に向けて従事。その後、現職の株式会社ウィファブリックにてマーケティング兼広報を担い、ブランディングの企画・実行からオウンドメディアやSNS運用、広報活動まで多岐にわたって企業のグロースに向けて取り組む。グロービス経営大学院にて経営学修士号(MBA)取得。

introduction

ウィファブリックは、「最後の一点まで商品を届けたい企業」と「お得に商品を購入したいユーザー」を繋げるプラットフォーム「SMASELL(スマセル)」で躍進中の企業です。売買成立ごとに達成されたCO₂削減量を可視化するなどの企業努力により、ユーザーの課題参加意識も高まっています。

今回は同社の藤本恵子執行役員に、創業の背景をはじめ、アパレル廃棄の削減を目指す様々な取り組みについて伺いました。

アパレル在庫を循環させ、作り手と買い手の思いを紡ぐ

–はじめに、御社の業務概要をご紹介ください。

藤本さん:

EC(Electronic Commerce: 電子商取引)版のサステナブル・アウトレットモールSMASELLというサービスをメイン事業とする、2015年創業の企業です。作り手、売り手、買い手のみなさんすべてにとって、ファッションがもっと楽しくあってほしい、という願いを込めて「ファッションをもっと楽しく持続可能なものに」を理念に掲げています。SMASELLという名前も、笑顔のSMILEと販売のSELLをかけあわせた名称なんです。また弊社は、ファッションと環境の共生における持続可能性も追求しています。

この両軸の実現を目指し、「私たちは世界のファッション業界の在庫を資源として循環させ 作り手と買い手の想いを紡ぐ場を提供します」ということをミッションとしています。

世界で廃棄される、年間228億枚の衣類

–ファッションの持続可能性に注目したのはきっかけがあったのでしょうか。

藤本さん:

現代表の福屋剛は、もともと服が好きで、かつて繊維商社に勤めていました。服を通じて人を幸せにしたい、という思いからの職業選択だったのですが、ある日、テレビで、衣服の大量廃棄が問題になっていることを知りました。

廃棄問題を調べるにつれてその深刻さを感じ、自分がその業界で廃棄問題を引き起こしている側であることに衝撃を受けたそうです。

衣服の大量廃棄

アパレル業界で働く多くの人々は、自らの手で衣服を処分する体験がほぼなく、業者がトラックで持っていくケースがほとんどのため、廃棄現場を目撃することもありません。その点からも、実感を持ちにくい部分ではありますね。

当時はまだSDGsが採択される前でしたし、環境保護団体もアパレル廃棄を詳しく取り上げてはいない時代でした。自力でいろいろ調べるうちに、業界の深刻さを感じ、繊維商社を退職。試行錯誤の末、2015年3月に株式会社ウィファブリックを設立しました。

–アパレルは食品とは異なり、腐敗せず、劣化までのスパンもかなり長いと感じます。そうでありながら、大量廃棄という結果になるのはなぜでしょうか?

藤本さん:

弊社算出では、毎年、世界で228億枚ほどの衣類が廃棄されています。その半分はアパレルメーカーや商社による売れ残り廃棄、もう半分は家庭などからの個人消費者によるゴミとしての廃棄です。

企業としては、新作のうちに売り切れなかったものは、ショップでのセール、アウトレットモールや関係者のファミリーセールに出すなど、様々な努力を重ねてはいるのですが、4~5年かけてまだ売れ残ったものについては、ブランド棄損を防ぐためにも廃棄してきたのが現状です。

捨てるくらいなら無償で福祉に役立てればいいという考えもありますが、被災地や貧困層、途上国などにただ送ればいいというものでもありません。相手の事情もわからず大量に送り、先方でゴミの山と化してしまうこともままあるため、難しい問題なんです。

廃棄を救えるのは、新品であれ中古であれ、着用できるレベルの衣服であり、弊社のSMASELLで扱うのも、そのような衣服群です。多くの染みや汚れ、棄損などがある場合は、衣服としての役割を充分にまっとうしたとして、繊維に戻すかたちのリサイクルに出したり、廃棄処分にすることはいたしかたないと捉えています。

売買成立ごとに、貢献できたCO₂削減量を可視化

–SMASELLがどのようなプラットフォームであるか、具体的に教えてください。

SMASELL

藤本さん:

SMASELLは、「最後の一点まで商品を届けたい企業」様と、「商品をお得に購入したいユーザー」様を繋げる、アパレル廃棄削減を目指すマッチング・プラットフォームです。

あくまで場の提供をするプラットフォームであり、個々の商品の説明や返品ルールなどは、すべて出店社によるものとなります。

出店側は、多彩なブランド企業様、古着法人様で、現在約1,300社、3,000ブランドほどになります。個人様の出品はお受けしていません。

出品される商品は、「新品」「USED(中古)」の二つのジャンルに分かれます。

新品とは、キャリー品(新作の次のシーズンでも引き続き販売される商品)や訳あり品を主として、状態もよく、値札やタグが付いているものを指しますが、最近では、「新作」の段階で出品するメーカーさんも増えてきました。実のところ、新作で売り切れれば一番良いんです。

2023年4月からは、SMASELL別フロアとして、国内外の著名ブランドの新品のみを取り扱うEMARE(エマレ)がオープンしますので、さらに総合的なファッションのオンラインモールへと移行いたします。

お買い物をしていただくユーザー様については、会員登録していただければすぐにショッピングが可能となります。かつては、SMASELLで安価に商品を仕入れて再販する小売店様・個人事業者様のみを対象としましたが、現在では一般個人消費者様を中心として、登録者数は約25万人に上っています。

また、売買成立時には、その商品を廃棄から救ったことによるCO₂削減量がサイト上に表示されます。さらに、1受注あたり10円が森林保全団体に寄付される仕組みとなっています。

CO₂削減量見える化

この他にもオフラインの取り組みにも力を入れています。

「自分に不要な衣類」が「他者の喜び」になると知る楽しさ

–オフラインでの取り組みについて詳しくお聞かせください。

藤本さん:

衣類の家庭廃棄の抑止としては、2つの取り組みがあります。一つ目は、2021年よりスタートした、契約したブランド様と協働の「古着回収企画」です。協働ブランド様の店舗に古着回収ボックスを設置し、そのブランド様のお客様からご自宅で眠っている同ブランド商品の回収を募ります。回収された商品はSMASELLが買い取って再販し、ご協力いただいたお客様には同ブランド様でのお買い物に使えるポイントや金券などがプレゼントされる仕組みです。

使われなくなった商品の廃棄を防ぎ、かつSMASELLで再販することによって、ブランド様も新規のファン獲得に繋がります。また既存顧客様には、獲得ポイントなどを用いて新たな商品を購入していただけるなど、いくつもの循環が生まれる取り組みとなっています。2022年度では、30店舗以上の協力のもと、約3.8万点の衣類を回収しました。

2つ目は、「ファッションスワップ」です。シンプルに言えば、お客様同士での物々交換会です。自分が持参する衣服の枚数と同じ数だけ、他者の中古服を持ち帰ることができます。

自分には不要な服を誰かが喜んで持ち帰ってくれる楽しさ。また、自分も気に入った服を持ち帰ることができる喜び。この2つの体験を合わせて届けられるイベントです。これまで2回の開催で、通算10,000点以上の衣類の循環を生みだせました。

ファッションスワップ

新品に対するアプローチとしては、アップサイクルプロジェクトがあります。在庫となっている新品の服をボディとして用い、デザイナー様やアーティスト様とコラボして、プリンティングなど何かしらのアップサイクルを施し、新しい洋服として再販する企画です。

こちらのゴールは、在庫の服を売り切ること。再度繊維に戻してのアップサイクルという道もありますが、再び製造するエネルギーやコストが無駄ですし、充分着れる服をそのまま活かして付加価値をつければ、資源の節約にもなります。

基本的に1着1万円前後で販売できるように努力していますが、コラボしたデザイナー様、アーティスト様が手がける衣服を、手に届きやすい価格で多くの人に提供できるのは嬉しいことです。

現在はアーティストの大沢伸一さん、デザイナーのMINAMIさんと一緒に企画した≒heart core remedy(ニアイコールハートコアリメディ)や、アーバンリサーチ様とのアップサイクル品を展開しています。

また、これからバングラディシュの廃棄在庫にアプローチをかけた取組みもスタートする予定です。

ゴールは「世界中のアパレル廃棄をなくす」こと

–創業からまだ8年ほどでありながら、革新と発展が目覚ましく、驚きます。これまでに遂げられた様々なご成果をお聞かせください。

藤本さん:

起業以来、CO₂削減量約1,800トン相当を達成できたのは大きな成果かと思います。また、試行錯誤を重ねるなかで、会員登録者がどんどん増えたことも、出店社様、ユーザー様双方のご賛意とご信頼を得てこれた結果と考えます。

CO₂削減量の可視化や、森林保護団体への寄付をはじめ、弊社のアパレル廃棄削減や環境保全への活動をサイトで示してきた結果、現在約25万人のユーザーの9割が、衣類の廃棄課題と弊社の取組みを理解してくださっているのも嬉しいことです。

また、SMASELの返品率は1%と大変低い数字です。これも、弊社のアパレル廃棄削減という目的へのご賛同から、多少のことでは返品せずに活動に参加する、という意識の現れが含まれていると捉えています。

実は3年ほど前までは、うちに出店することを悩まれる企業様が多かったんです。なぜかというと、SMASELLに出すということは、売れ残りの服を大量に持っていることを露呈するに等しいからです。それが今では、最後の1点まで売り切ることにしっかりコミットしている企業として弊社をとらえ、一緒に取り組んでいくと言ってくださるメーカー様が拡大しました。これは業界としての意識であり、社会の流れの変化でもあると思っています。

4月からの「EMARE」フロアには、約60社ほどの著名ブランドが出店してくださる予定ですが、ブランド棄損を怖れるはずのこのような企業様が協働してくださることで、さらに廃棄削減の輪も広がることと思います。

2022年度の「日本中小企業大賞」においては、2度目のSDGs賞・最優秀賞をいただきました。弊社のようなオンラインのアウトレットモール、それも、定量的に廃棄削減数やCO₂削減量を出したり、様々なアクションを起こしたりするサービスはまだ無くて、そこを評価していただけました。

–成果の可視化は、どの立場からも励みになりますね。今後は、さらにどのような展望をお持ちですか?

藤本さん:

まずは、2026年でのIPO(新規株式公開)を目指しています。その先は、日本だけでなく、グローバルな展開を意図しています。弊社の願いは、世界中のアパレル廃棄をなくすことです。日本で売れ残っている服をアメリカの人々に着てもらえたり、欧米で廃棄されたはずの服を日本人が着ていたり、ということが実現するかもしれません。弊社は、そのようなグローバルなゴールを目指します。

–世界中の服をお得に買えて廃棄を救える未来を思うと、ワクワクします!今日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

株式会社ウィファブリック公式サイト:https://www.wefabrik.jp/

SMASELL公式サイト:https://www.smasell.jp/