#インタビュー

大阪石材工業株式会社|「業界の異端児」と呼ばれながら、斬新なアイデアで道を切り開く。石材業界に明るい未来をもたらす方法とは?

大阪石材工業株式会社 安達さん インタビュー

昭和52年12月 大阪石材工業株式会社を大阪市北区天満町にて設立登記

平成元年2月 本社を東大阪市水走3-8-43(現在地)に移転

平成5年8月 和泉店を開設

平成8年8 神戸支店を開設

平成13年11月 明石営業所を開設

平成14年1月 本社展示館を東大阪市水走3-4-23に開設

平成15年7月 八尾店を開設

平成18年3月 高槻店と南大阪店を開設

令和3年3月 南大阪店が富田林市SDGsパートナー企業に認定。

introduction:

みなさんは、石材業界についてどんなイメージをお持ちですか?石材店で主に扱われる商品に「お墓」があります。「お墓」と聞くと、「暗い」「悲しい」といったイメージを持つ方が少なくありません。そんな石材業界をもっと「親しみやすいもの」にするため、前例にないさまざまなチャレンジをしている会社が大阪にあります。

昔ながらの風習が根強く残っている石材業界に一石を投じ、石材業界の明るい未来に向かって活動している大阪石材工業株式会社。今回は、入社17年、石材に魅了され日々新しい事業を模索する安達さんに、同社の挑戦とSDGsへの取り組みについてお話を伺いました。

恩師の一言で石材店の道へ。風通しの良い業界を目指す

ーまずは、大阪石材工業株式会社についてお聞かせください。

安達さん:

当社は、石材製品の製造を、原石の加工、彫刻、施工、アフターサービスまで一貫して自社で行う事業を展開しています。

当社の売り上げの9割は「墓石」が占めていますが、エクステリアや神社の石材建築、モニュメントなど石材を用いたあらゆる商品を扱っています。大阪府東大阪市に本社があり、創業は昭和52年。石材業界の中ではまだまだ若い会社ですが、そんな中で、社長の伯井は「業界の異端児」と言われているんです。

昔ながらの風習が根強く残る石材業界では、お客様への提示価格は石材店の言い値で決まっていくのがあたりまえ。さらに各社の縄張りが決まっているような業界で、新参者はなかなか参入しづらい状況でした。

そんな不透明な業界を変えるべく、伯井は大胆な行動に出ました。

スーパーマーケットの前に墓石を並べ、紅白幕をつけて購買者にわかりやすく展示したのです。

業界団体からはクレームがあったのですが、今までの不透明な石材業界に革命を起こそうと奮闘します。このように業界の常識を覆していき、一般のお客様へわかりやすく価格を提示するなど、業界全体の風通しが良くなることを目指しています。

ー伯井社長はなぜ石材業界で起業されたのですか?

安達さん:

伯井が起業前から師事していた理論物理学者の小田切瑞穂先生の言葉がきっかけとなったそうです。伯井は毎年、小田切先生の勉強会に参加していました。ある時、愛媛県の大島という土地でとれる「大島石」について紹介され「この大島石の振興をするために起業してはどうか」と助言を受けた伯井は、あっさり起業することを決めたそうです(笑)。

大島石は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」の南部で採掘される石材で、青味を帯びた美しい色合い、上品な石目で高級銘石のひとつです。水を吸いにくく風化にも強いので、墓石としてもよく使われています。

仏教の教え「修行を重ね、人のために尽くすと自分に返ってくる」の精神で、みんなの「幸せ」を願う。

ー恩師の一声で起業を決めるとは、大胆な決断ですね。 

経営理念「幸福創造カンパニー」という言葉などから、御社のキーワードとして「幸せ」という言葉があるように感じましたが、この由来はどこからきているのでしょうか?

安達さん:

そうですね。会社のテーマとして、仏教の「自利利他(じりりた)」の思想は大切にしています。「自利利他」とは、自らのために修行して努力し、他人のために尽くそうという意味です。商売をする上で「まずは他(お客様や取引先)の幸せや利益になることをして、その結果、自分達に少しでも利益が返って来れば良い」という順序が大切だと考えています。

先ほどの「スーパーに墓石を並べて価格を提示した」というエピソードも、お客様の利益をまず考えて、前例がなくても行動する当社の姿勢を示す一つの例ですね。

もちろんお客様だけでなく、取引先や石材業界全体の利益も考えなければなりません。

石材業界には、山から石材を切り出す採石場、採石した石を切ったり磨いたりして加工する工場、仕上がった石製品を販売する石材店などが携わっています。

日本には古くから採石・加工の技術があるのですが、年々職人のなり手は減っています。そこに中国産の安い石材が台頭してきました。加工も日本の石材を中国に送って行い、逆輸入するようなパターンが主流になってきているんです。こうして国内の採石場や加工場が閉鎖するところも出てきているのが石材業界の厳しい現状です。当社は、石材を加工する自社工場を持っている国内では数少ない石材店なので、国産石材を少しでも多く活用して、山地のお役に立てたら、また日本の職人さん達に仕事が回るような仕組みを作れたらと取り組んでいます。

また、当社は、地球の自然素材である「石」を通じて、お客様一人ひとりの想いに身をもってお応えし、「売って良し、買って良し、世間良し」の「三方良し(さんぽうよし)」を実現することも理念として掲げています。現在会社としてSDGsにも意識して取り組んでいるのですが、創業時から大切にしている「自利利他」や「三方良し」の考え方はSDGsにも直結すると考えています。

-創業時からSDGsにつながる思想をお持ちだったのですね。具体的にSDGsに取り組むようになった背景について教えてください。

安達さん:

当社の南大阪店がある大阪府富田林市は、国内でも特にSDGsに力を入れている市なのですが、市の担当者から「SDGsパートナーシップ」への参加を勧められたのがきっかけです。

当社では元々、石材加工時に出る石の端材をそのまま捨ててしまうのがもったいないので、お客様へ無料でお配りして、庭の参道や車止め、土留めなど様々な用途で活用いただいていました。その取り組みを目に留めてくださった市の担当者から「それってSDGsと言える取り組みですよ。それに、会社の『三方良し』の理念もSDGsに通ずる考え方ですよ。」と教えてもらい、それならば「SDGsを固く考えすぎず、自社のこれまでの事業を見直してみようか」ということになりました。

ここから、SDGsな新しい墓石ブランド「re産(り・うぶ)」が誕生することになりました。

SDGsの考えから生まれた墓石への新たな挑戦「re産(り・うぶ)」

-SDGsな墓石「re産」とは一体どのようなものなのですか?

安達さん:

「re産」は、今まで「墓石としては使えない」と排除されていた石材を利用した、個性的なデザインの墓石です。

皆さんもイメージされる「お墓」は、四角くて、機械で綺麗に磨かれた、ツルツル・ピカピカのデザインが一般的だと思います。ある意味「お墓ってこうあるべき」というものが固定化されていますよね。

そういう綺麗な原石を使おうとすると、実は採石場にある石材の約5%ほどしか使いものにならず、残りの95%ははじかれてしまうんです。

この95%も、埋立材や土木材として活用されてはいるものの、墓石として使われた方が高値で取引できるのですが、「ナデ」と呼ばれる模様や柄が入っているため、従来の綺麗な墓石には仕上げられません。

なんとか墓石として活用することができないかと考え、当社では「ナデ」を逆手にとって、「同じ模様は一つとしてない」という石それぞれの個性を生かし、「石本来の柄を活かしたデザイン」という付加価値を付けて、この墓石「re産」をブランド化することにしたんです。

「re産」には「re=再び」「産=産まれかわる」という意味を込めています。

まだ始まったばかりのブランドなので販売数はそれほど多くありませんが、多様性の時代ということもあり、これまでにない自然な風合いの墓石は新しい選択肢として受け入れられてきているなと感じます。お客様からは、「こんなのがあったらなと思っていたんだ」というお声もいただきました。

-前例のない新たな挑戦は、苦労も相当あったのではないですか?

安達さん:

業界の前例を覆すような取り組みでしたので、まず原石を調達するのが一苦労でした。というのも、採石場では「ナデ」のある原石は「使わない」「捨てる」が常識だったからです。それを、今度は「ナデがある原石を探してほしい」と依頼されるわけですから、「え?それって売れるの?」と初めは職人さんたちにもすごく困惑されました。

ですが、「国内の石材業界のために、採石場の皆さんと一緒に取り組んでいきたいブランドなんだ」ということを伝え、しっかりとコミュニケーションをとったことで、現場の職人さんたちにも快く受け入れてもらうことができました。

やはり、わたしたちだけでは「re産」の成功はできないですからね。

こうして生まれた「re産」は、自社の強みである発信力を活かして露出を増やしているのですが、当社は業界の異端児と呼ばれていることもあり、他社から取り組みを注目していただくことも多いんです。そのため、「re産」の取り組みは業界内で浸透してきていて、他社でもこれまで排除してきた石材を活用するような動きが増えています。そこから、同じ想いを持つ会社さんとの共創にも繋がっていて、良い流れができていると感じます。

「世界一面白い石材店」を目指して。ITも駆使してお客様の関心を高める

-原石の無駄をなくしつつ、新たな価値を吹き込む素晴らしいアイデアですね。他にも業界の常識を変えてしまうような面白い取り組みがありましたらぜひ教えてください。

安達さん:

私自身は「世界一面白い石材店になりたい」といろいろなところで宣言しているんですが(笑)、それは「墓石をもっと親しみやすいものにしたい」「石材店がお客様に気軽に立ち寄ってもらえるお店になれれば」という想いからきているんです。

お墓はもともと「暗い」「悲しい」というイメージを持たれがちで、最近では「墓ばなれ」や「墓仕舞い」という言葉もよく聞かれますよね。「供養の心がなくなっているのでは」ということも危惧されています。

そういうマイナスなイメージを少しでもプラスに変えていきたいということで、私が店長を務める南大阪店では「お墓のテーマパーク」と銘打って、図書コーナーの設置や石のガチャガチャゲームができる楽しいスペースも設けています。

また、先ほど紹介した「re産」ブランドのサロンを2023年1月にオープンしました。

ここでは実際にお客様に原石を見てもらいながら商品検討していただけるよう、「re産」で使われるナデ模様の入った原石などを展示します。

そして、このサロンの目玉として、原石の採掘現場に設置したライブカメラの様子を見ることができるモニターを設置しています。

お客様には「自分が注文した石がどんなところで採石されているのか」をライブ映像で見ていただくことで、安心を感じていただいたり、石材製品への愛着を感じていただいたりすることができるのではないかと考えています。また、ライブカメラは現場の保守点検の観点からも活用できそうです。

-採石場の様子はなかなか見ることができないので、ライブ映像を観られるのは嬉しいですね。その他にもSDGsにつながるような取り組みはされているのでしょうか。

安達さん:

はい。目標11「住み続けられるまちづくりを」に関連して、魅力あるまちづくりに貢献するため、富田林市と連携した市内の「まちあるき」企画などを実施しています。これは高齢者の方の健康増進という目的も兼ねて行っています。

また、社員に働きやすさや働きがいを感じてもらう職場づくりも進めています。

例えば、当社では月に一度、全社員が集まる場があるのですが、そこで事前に募ったアイデアを発表してもらう場を設けています。良いアイデアは表彰して、みんなで刺激しあっています。社員一人ひとりが参加し主人公になることによって、みんなで成長できる職場にできたらと考えています。

他にも、本社のある東大阪市で開かれる「こーばへ行こう!」というイベントにも参加しました。これはまちの皆さんに地元の工場を見学していただくイベントですが、当社では社員の家族の皆さんを招いて、普段のわたしたちの仕事を見ていただきました。ご家族の皆さんには「こんな会社で、こんな仲間と働いているんだ」ということが目に見えて安心していただける場になったかなと思っています。

-社員やそのご家族の「幸せ」も願っての取り組みですね。墓石製造からはじまり、本当に幅広い取り組みをされている御社ですが、最後に今後の展望を教えてください。

安達さん:

始まったばかりの「re産サロン」を他の店舗へ拡げていきたいです。今後は実際に採石場への見学ツアーなども企画して、お客様に石材をもっと身近に、愛着をもってもらえるようにしていきたいですね。

また「re産サロン」でのライブカメラ設置は、今後の事業DX化の第一弾として成功させていきたいです。さらにこの先、このライブカメラを石材業界の一つのツールとして活用して、愛媛県の大島石や香川県の庵治石(あじいし)、岡山県や茨城県などさまざまな採石場と全国の石材店が繋がるネットワークができれば、日本の石材業界をもっと盛り上げていけるのではないかと思っています。

お客様との商談にライブカメラやビデオ通話を使うなど、これからは石材業界でもITをどんどん活用していかなければいけないと思っているので、そういった知識がない石材店などに対しても当社がサポートできるような事業も考えたいです。

日本の石材業界全体を活性化するために、これからもどんどんチャレンジしていきます。

-御社のチャレンジ精神で、日本の石材業界がより開かれた明るい業界になっていきそうですね。本日はありがとうございました。

関連リンク

大阪石材工業株式会社