遊休農地とは|活用事例・耕作放棄地、荒廃農地との違いも

近年、日本の多くの市町村において、遊休農地の増加が問題になっています。

この問題を放置しておくことは、私たちの生活や将来の国土全体にも、大きな損失をもたらすとして、その解消が急がれています。

遊休農地とはどのような土地で、なぜ問題化しているのか、どうやって活用していけばいいのか。その詳細に迫ります。

遊休農地とは

遊休農地とは、農地ではあるものの、現在は農業をしておらずに放置されている土地のことです。

遊休農地の定義

農地法の定義によると遊休農地とは、

  • かつて農地だったが現在農地として利用されておらず、今後も農地として利用される可能性も低い土地
  • 農地ではあるけれど周辺の農地と比較した時に利用の程度が著しく低い土地

とされています。

遊休農地と耕作放棄地との違い

耕作がされず放置されてきた農地として「耕作放棄地」という言葉が一般的に知られていますが、遊休農地とはやや性格が異なります。

耕作放棄地は、「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付けせず、この数年の間に再び作付けする考えのない土地」と定義されます。ただこれだけだと、遊休農地との違いはわかりません。

両者の違いは

  • 遊休農地:自治体の農業委員会が毎年行う現地調査で客観的に決められる農地
  • 耕作放棄地:5年ごとに調査される統計(農業センサス)で、農地の所有者自身が農業を行わないという申告により記録される農地

となっています。

遊休農地と荒廃農地との違い

もうひとつ耕作が行われない農地には「荒廃農地」があります。こちらは、

  • 現に耕作されておらず、耕作放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能な農地
  • 「農地として再生可能なA分類」「再生困難または不可能なB分類」の農地

のことを指します。

B分類の荒廃農地は、再生が困難な点で遊休農地とは異なりますが、再生可能なA分類と次に説明する1号遊休農地とは基本的に同じです。

遊休農地には1号と2号がある

一言で遊休農地といっても、農地の状態の違いによって1号遊休農地2号遊休農地に分けられ、その扱いについても大きく変わります。

※荒廃農地+2号遊休農地の合計と耕作放棄地の総面積が一致しないのは、農業センサスでは5アール未満の農地はカウントしないこと、まだ遊休農地と見なされない「耕地」であっても、持ち主が耕作放棄の意思を示せば農業センサスで耕作放棄地に計上されるため

1号遊休農地とは

1号遊休農地とは「現に耕作されておらず、かつ、引き続き耕作されないと見込まれる農地」のことをいいます。1号遊休農地の特長としては、人力・農業用機械や重機などを使い、農地に復元することが可能な土地や、基盤整備を実施して農地に復元し利用すべき土地などです。

1号遊休農地は国内の遊休農地の約93%(平成30年)を占めており、前述の「農地として再生可能なA分類の荒廃農地」に該当します。

2号遊休農地とは

一方の2号遊休農地は、1号遊休農地ほど状態が荒れておらず、荒廃農地には該当しません。

定義としては「利用の程度が周辺の地域の農地に比べ著しく劣っている農地」のことをいいます。例としては、使われていても規模が小さいか、家庭菜園や自給農業程度で、農地としての生産性がきわめて低い状態、と考えるといいでしょう。

日本の遊休農地の現状

現在、日本において遊休農地はどのくらい増えていて、どのような背景があって発生しているのでしょうか。国内の農地全体、そして耕作放棄地、荒廃農地の推移とあわせて辿っていきたいと思います。

耕地面積の推移

まず日本の耕地面積を見ていくと、昭和36年の609万ヘクタールを最大に、令和元年の438万ヘクタールへと、約169万ヘクタール分減少しています(誤差あり)。この58年の間に、平均すると29,000ヘクタール、東京ドーム6,170個分の農地が毎年無くなっていることになります。

耕作放棄地の面積推移

耕作放棄地、つまり「農家が農業を行わないと明言した土地」は、昭和50年の13.1万ヘクタールから、平成27年には42.3万ヘクタールへと増加しています。

特に近年では、農地を持っているが耕作をやめた「土地持ち非農家」と、商売をやめて自給のためだけに耕作する「自給的農家」の割合が多くなっており、両者を合わせて6割強を占めるようになっています。

荒廃農地の面積推移

一方で荒廃農地はというと、トータルでの面積はそこまで増えていません。平成20年の荒廃農地は全国で28.4万ヘクタールですが、10年後の平成30年は28.0万ヘクタールと、ほぼ横ばいまたは微減状態となっています。

ただしその中の「再生利用が困難」とされる農地の割合は確実に増えており、荒れるがままに手を入れられず放置されている土地が増えている様子がうかがえます。

耕作放棄地・荒廃農地が増加している原因

耕作放棄地や荒廃農地が増えている理由は、ひとえに農業を行い農地を利用する人数が減っているからです。全国的な少子高齢化により高齢の農家がやめたりいなくなったりする一方、若い世代の人口は年々少なくなっています。それに加え、

  • 農産物価格の低迷
  • 収益の上がる作物がない
  • 基盤整備が進まない
  • 立地条件が悪く、維持に労力がかかる
  • 鳥獣害に対応しきれない

などの理由から、農業に見切りをつけて「土地持ち非農家」になる人が増えたのも、耕作放棄地や荒廃農地が増えている原因になっています。

遊休農地の活用に注目されている理由

このように年々農地が減少している状況に対して、国も地方自治体も大きな危機感を持ち、さまざまな方法で対策へと乗り出しています。遊休農地や荒廃農地の活用が注目されている背景には、農業の問題だけではなく、国土保全や地域社会の問題、SDGsを契機とした社会全体の持続可能性が関わっているのです。

食料自給率の改善

遊休農地を活用する最大の理由は、農業生産を維持・強化して食料自給率を上げるためです。

現在の日本は、食料自給率が38%程度にとどまり、農産物や飼料・エネルギーなどの多くを輸入に頼っています。しかし、近年の感染症の世界的流行や国際情勢の激変などでこれらの供給に支障が出れば、私たちの生活にも大きな影響が出ることは明らかです。

常に耕作可能な農地を増やし、維持することは食料安全保障のために不可欠な取り組みなのです。

【関連記事】食料自給率とは?世界の現状・日本の課題、上げるための対策も

生物多様性の保全

生物多様性は、空気や水、衣食住など私たちの生命や生活を支えるものとして、近年注目を集めるSDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」とも密接に関連しています。

農村環境地域では、多種多様な動植物が豊かに生息し、複雑な連鎖やサイクルを形成しながら多様性を保っています。これらは農業を始めとして、その里山に暮らす人々の営みによって、長い年月をかけて築かれてきました。遊休農地を野ざらしにすることを防ぎ、活用することは、生物多様性の宝庫である里山の環境を保全することになります。

安全面の確保

遊休農地の増加は、住み続けられるまちづくりへの大きな障害ともなります。

農地が荒廃していくと、

  • 野生鳥獣の被害
  • 産業廃棄物や家庭ゴミなどの不法投棄
  • 整備されない農道や用水路による事故

などの問題が起きやすくなります。地域の安全や治安を守るには、常に人の手が入り、管理されていることが大切です。

【関連記事】SDGs12「つくる責任つかう責任」現状と取り組み、私たちにできること

災害時のリスク軽減

農地の保全と活用は、防災の観点からも重要です。特に山間部を中心とする水田地域で耕作が放棄されると、粘土質の土が乾燥して地割れが生じます。さらに地割れによって水が地下深くまで浸透し、地滑りが起こる原因となります。

最近では、毎年のように多発する集中豪雨により、大規模な水害が起きています。土壌の保水機能や水路を正常に保ち、災害の被害を減らすためには農地の活用が大きな役割を果たすのです。

このように、日本が抱える様々な課題を解消するためにも、遊休農地の活用が注目を集めています。そして、実際に活用する事例も増えつつあるため、次で見ていきましょう。

遊休農地の活用事例

遊休農地や荒廃農地を集約し、活用する取り組みは全国各地で行われています。

その中から、主な取り組みを3例ご紹介していきます。

【事例①】山形県白鷹町

山形県白鷹町は、稲作や園芸作物、酪農や紅花まで、多彩な農業を展開しています。萩野地区では、養蚕の衰退で遊休農地の増加が問題化していました。そこで地域住民によるワークショップで、営農組織を結成し、農地の集積と高生産性作物の栽培に乗り出しました。

  • 飲料会社との協力でワイン用ブドウ栽培を導入
  • 農事組合法人を組織
  • 農地の基盤整備と集積化を図る

といった取り組みの結果、3.72ヘクタールを再生し、新たにブドウ産地として地域の活性化を果たしています。

【事例②】岩手県遠野市

岩手県の遠野市では、農業委員会主導のもと、関係機関との緊密な連携や市民への啓発活動を積極的に行い、遊休農地解消の必要性を訴えてきました。主に取り組んだのは、

  • 国の支援制度を利用し、加工米・飼料米の作付けを行う
  • 新規就農者や学校、市民へ農園を貸出す
  • アスパラガス、ニラ、ピーマンなどの栽培を推奨
  • 菜の花を栽培し、観光スポット化。県内外へPRを行う

などです。これにより、202ヘクタールの遊休農地や耕作放棄地を、20ヘクタールにまで減少させています。

【事例③】長野県松本市

長野県松本市の取り組みは、自動車販売業と製麺業者という、農業以外の異業種連携により遊休農地解消を行うユニークな事例です。両社の共同出資による農業生産法人では、遊休農地の増加とソバ産業の衰退を解決するべく、

  • 農業委員会や地元JAなど、関係機関との連携を密にする
  • 条件不利地域でも持続可能なモデルを確立するため、ソバを起点に6次産業化を展開
  • 他業種との連携で、小麦、大豆などの栽培と地域特産物づくりをめざす

といった取り組みにより、25ヘクタールの遊休農地再生に成功しました。

遊休農地を活用する際の注意点やポイント

このように全国各地で、自治体や営農組織、民間企業が、遊休農地の荒廃を防ぐため新たな産業を模索しています。こうした組織が遊休農地を効果的に活用するためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

遊休農地活用に関する補助金について知る

遊休農地解消のため、国や自治体はいくつかの支援制度に基づく補助金を交付しています。その多くは農業や関連産業を振興したり、効率的に農地を使うために集約化するためのものです。

主な補助金・交付金制度には、以下のようなものがあります。

  • 中山間地域等直接支払制度:荒廃農地の解消や復旧を補助
  • 多面的機能支払交付金:農地・農道・水路などの保全管理/質的向上を図る活動を支援
  • 農山漁村振興交付金:山村活性化や最適土地利用など複数の取り組みを補助

このほか、都道府県でも独自に遊休農地の対策を行い、補助金を交付しています。

>>都道府県独自の荒廃農地対策事業一覧(令和4年4月時点)

遊休農地を購入するのか借りるのかを決める

個人や法人が農地を購入もしくは借りる場合、最低限以上の面積の農地をすべて効率的に利用し、周辺に支障がないようなやり方で常に農業に従事するという要件を満たし、農業委員会の許可を受けなければなりません。

さらに法人の場合、農地所有適格法人になれば購入も貸借も可能ですが、借りるならば、農地所有適格法人でない一般法人でも可能です。業務の規模、内容などの計画に基づいて決めましょう。

遊休農地の固定資産税について調べる

農地を所有する場合、固定資産税についても知っておきましょう。

通常、土地の固定資産税=評価額×1.4%となりますが、農地ではこの数字に、限界収益修正率の0.55%という数字を掛けるため、固定資産税はぐっと低くなります。

しかし、農地中間管理機構へ貸し付ける意思を示さない、耕作もしないなど、遊休農地を放置していると、限界収益修正率が適用されません。遊休農地は、固定資産税が普通の農地の1.8倍にまでなるため、速やかに対策を行いましょう。

農地を転用できるかを調べる

農地を農業以外に使う場合、必ず「転用(農地を農業以外の用途に使うこと)」ができるかどうかを調べなければなりません。農地は国民の食料生産を支える基盤として国が用途を制限しているため、農家はたとえ自分の土地でも、勝手に田畑を潰して農業以外に使うことはできないからです。

現在、全国の遊休農地の約65%は原則として転用ができず、転用の条件も以下のように分類されています。

  • 農用地区域内農地=不可
  • 甲種農地(10ヘクタール以上の良好な営農条件を備えた農地)=不可
  • 第1種農地=農業関連施設、加工場や販売施設には条件付きで転用可能
  • 第2種農地(市街地化が見込まれる農地)=可能
  • 第3種農地(市街地化した農地)=可能

本記事では詳細は割愛しますが、転用の際は農地法の基準を満たし、農業委員会へ申請する義務があります。

まとめ

日本の農地は狭い国土で豊かな食料生産を担うために、長い年月をかけて作り上げられました。現在も増加する遊休農地問題の解決は、国民の食料安全保障はもとより、生態系や国土保全など、この国で持続可能な社会の維持には不可欠です。

近年は農業に関心を持つ個人や、農業を起点に新たな産業に乗り出す企業も増えています。社会全体で遊休農地について理解を深め、活用を積極的に推進していかなければなりません。

<参考文献・資料>
耕作放棄地の現状と課題 – 農林水産省
荒廃農地の現状と対策
農村の生物多様性把握・保全マニュアル – 農林水産省
中山間地農業と土砂災害 – 農林水産省
荒廃農地解消の優良事例集
農地の売買・貸借・相続に関する制度について – 農林水産省
中山間地域等直接支払制度とは – 農林水産省
多面的機能支払交付金
農山漁村振興交付金 – 農林水産省
遊休農地の課税の強化
全国農業図書ブックレットNo.14 いまこそ、農地をいかしてめざそう地域の活性化ー農地利用最適化にむけた「遊休農地対策の優良事例」に学ぶ/井上和衛 編/一般社団法人 全国農業会議所

この記事の監修者
ライター
自転車、特にロードバイクを愛する図書館司書です。現在は大学図書館に勤務。農業系の学校ということで自然や環境に関心を持つようになりました。誰もが身近にSDGsについて考えたくなるような記事を書いていきたいと思います。