#インタビュー

防犯エンターテインメント集団GIFT|振り込め詐欺防止セミナーを行うマジシャン!若者へは仕事の楽しさも伝えたい

 防犯エンターテインメント集団GIFT ミスターTKさん インタビュー

ミスターTK

1978年4月9日、相模原市上溝生まれ。上溝小学校、上溝中学校、東海大相模高校、東海大学出身。大学卒業後自動車営業マンとして、なかなか成績の上がらない時期を過ごす。「営業マンは個性を持て」という上司の言葉でマジックを営業で使いだし、老人ホーム、幼稚園保育園へ地域のボランティア活動を10年続ける。2012年に相模原警察署からの依頼で防犯エンターテイメント集団「GIFT」を結成し、振り込め詐欺の被害防止マジックショー&セミナーをはじめる。

平成24年 相模原市防犯功労賞
平成25年 神奈川県警本部長褒賞
平成25年 関東管区警察局長特別功労賞
平成25年 関東防犯協会連絡協議会特別功労賞
平成27年 神奈川県知事表彰「犯罪のない安全・安心まちづくり奨励賞

Introduction

「マジックに騙されても振り込め詐欺には騙されない」をキャッチフレーズに活動する、防犯エンターテインメント集団GIFT。マジックと振り込め詐欺の被害にあわないための啓発活動を組み合わせたショーで人気を博しています。

今回、代表を務めるミスターTKさんに、防犯活動を始めたきっかけや、今後の展望などを伺いました。

マジックショーと啓発活動を結びつけたのは警察からの提案だった

まず防犯エンターテインメント集団GIFTは、どのような活動をされていますか?

ミスターTKさん:

ボランティアでマジックショーを開催し、その中で振り込め詐欺を防止する啓発活動も行っています。

マジックと防犯の2つが結びつくのに、何かきっかけがあったんでしょうか?

ミスターTKさん:

相模原警察からお声がけいただいたことです。私はマジシャンとしてのキャリアが20年ほどあり、これまで地域の自治会や公民館、行政のイベントに多数出演してきました。このイベントを見た相模原警察の方から、「お年寄りに向けて、オレオレ詐欺にあわないように啓発活動をやってもらえないか」と提案していただいたんです。

いつ頃その提案があったのでしょう?

ミスターTKさん:

10年ほど前です。今は、さまざまな手口の詐欺が増えてきたので総称して「特殊詐欺」と呼ばれていますが、当時は「オレオレ詐欺」が一般的でしたね。

なぜマジシャンであるミスターTKさんに依頼されたのでしょう?

ミスターTKさん:

警察や行政の方に聞いてみると「振り込め詐欺の被害額はこんなにあるんですよ」と真面目にお話ししても、面白くないから人が集まらなかったそうです。

2020年の数値ではありますが、日本全体で特殊詐欺の被害額は一年間で285億円にものぼります。私が住んでいる神奈川県だけでも、被害額は33億円もあるんです。とても大きい数字であるのに、なかなか効果的に伝えられていないという現状があったようで。

確かに、「自分が詐欺に引っ掛かるわけないから小難しい啓発イベントには興味がない」と感じる方もいそうですね。

ミスターTKさん:

そうですよね。でも「マジックがあるから見に来てくださいね」と言えば、特殊詐欺に興味のない方でも来場してもらえるのではないかと。だから、警察の方がマジックの力を使って集客して、合間に啓発活動を行おうと考えたわけです。
また、警察や行政では若い現役世代にこそ、もっとボランティアなどで地域に関わってほしいといった思いがあったようです。当時30代だった私たちは、年齢的にもお役に立てると思いました。

身内に「オレだよオレ」の電話が!自分ごと化して考えるきっかけに

ミスターTKさんご自身は、警察から啓発活動の提案を受ける前から、特殊詐欺を何とかしなければいけないと感じていましたか?

ミスターTKさん:

「なんとかしなければ」というより、身近で犯罪が起こる可能性があることを感じていました。というのも以前、私の実家に「オレだよオレ」と電話が掛かってきたことがあったんです。幸いにも被害はありませんでしたが、私の身の回りでも発生するのだから、他にもたくさんの家に電話がかかっているんだろうなと考えるようになりましたね。

ミスターTKさんのイベントに来場される方も、電話がかかってきたことがある人がいるのではないでしょうか?

ミスターTKさん:

実際に会場でお客様に「振り込め詐欺の電話を受けたことがある人は手を挙げてください」と尋ねると、1〜2割の方が手を挙げられます。

質の高い教育を実践すれば若者の犯罪が防げる!

そんなにいらっしゃるんですね。ということは、イベントに参加するのは固定電話をお持ちの比較的高齢の方が参加されているのでしょうか?

ミスターTKさん:

はい。ただ、本当は罪を犯してしまう若者を作らないという点に注目しているんです。

振り込め詐欺に加担する人をなくしたいと考えているんですね。

ミスターTKさん:

2022年2月には、中学3年生が運び屋になってしまったケースがありました。SNSで簡単に5万円、10万円稼げるアルバイトがあるといった情報を見てしまったそうです。中学生だと多少なりとも「危ないアルバイトかもしれない」と思ったかもしれません。それでも「簡単に稼ぎたい」と思って犯罪者になってしまったことが、大きな問題だと思っているんです。

確かに、少ないお小遣いでやりくりする中学生が「楽に稼げる!」となると飛びついてしまいそうですね。でもそれが人を傷つけ、さらに自分の人生も台無しにしてしまうのはもったいないことです。

ミスターTKさん:

地道に仕事をするのは大変なこともありますし、イヤだと思うこともたくさん経験します。でも長い目で見ると、コツコツ頑張った結果「あのとき頑張った成果がここで現れた」「仕事って楽しい」と感じる瞬間があるんですよね。僕はそうした「仕事って面白いよ」という体験談を、子どもたちに伝えていきたいと思っています。その結果、犯罪に加担する若者を減らし、特殊詐欺も減っていくのではないかなと。

とはいえ、学校関係の依頼はまだまだ少ないのが現状なので、今は色々と試行錯誤をしている段階です。 

若者を犯罪者にしない地域社会づくりのキーワードは「家族ごと化」

具体的にどのようなアクションを起こしているのでしょう?

ミスターTKさん:

例えば高齢者向けの講演会で、特殊詐欺の手法などをお伝えするとともに「みなさんのお子様やお孫さんを想像しながら、私の話を聞いてください」とお話しするようにしています。中学生や高校生や大学生が、アルバイトとして簡単に特殊詐欺に関わっているとお伝えしているんです。

「あなたの子どもや孫が犯罪者になる可能性がある」と伝えているんですね。

ミスターTKさん:

そうです。それでもやはり「自分の孫はスポーツに打ち込んでいるから大丈夫」「うちの子は勉強をとても頑張っているから関係ないよ」とおっしゃる方もいます。でも、2017年に、甲子園に出場したこともある高校球児が部活を引退した後に特殊詐欺に手を染めてしまったことがニュースになりました。

学生時代スポーツに打ち込んだ子どもでも、引退後に罪を犯すケースもあるということですね。

ミスターTKさん:

甲子園に出場するくらいなので、家族や地域の方も一緒に彼を応援していたと思うんです。そんな彼でも犯罪に手を染めてしまった。何かに打ち込んでいる子どもは犯罪者にならないとはいえない世の中です。だから「まずはご自身のお子さんやお孫さんを犯罪者にしない地域社会を作っていきましょう」とお伝えするようにしています。すると、みなさん真剣に考えてくださいますね。

自分が詐欺にあわないように「自分ごと化」して、家族も犯罪者にならないように「家族ごと化」して考えてもらっているんですね。

さがみはらSDGsパートナー登録で活動の幅が広がった

「防犯エンターテインメント集団GIFT」は、相模原市が展開する「さがみはらSDGsパートナー」にも登録されていますよね。

ミスターTKさん:

振り込め詐欺防止の啓発活動は、地域にとっても良い取り組みですし、活動の幅も広げたいとの思いがあり登録しました。

実際に活動の幅は広がりましたか?

ミスターTKさん:

そうですね。同じくパートナー登録をしている他の企業から「今度うちの会社のイベントに出演してください」と声を掛けていただいたり、相模原市のホームページから私たちのホームページやブログを見に来てくださって、どのような啓発活動をしているのか聞かれる機会も増えたりなど、これまでになかった動きがありますね。

他にあまり例のない活動をしているミスターTKさんに、お話しを聞いてみたいと思う方が多いのかもしれませんね。

持続可能なボランティアをたくさん誕生させたい

今後どのような展望をお持ちでしょうか?

ミスターTKさん:

防犯活動の継続はもちろんですが、それに加えて「ボランティアする側」と、「ボランティアを受け入れる側」がお互い気持ちよくなれる世の中にしたいと考えています。

それはどういうことでしょう?

ミスターTKさん:

1〜2回のボランティアは誰でもできると思うんです。ただ、10年間続けられるボランティアはなかなかいません。それはボランティアを受け入れる側にも原因があると感じているんです。

具体的にはどのような点が原因だと感じていますか?

ミスターTKさん:

ボランティア活動を私たちのような現役世代がするとなると、仕事の合間をみつけてなんとか参加したり、有給休暇を使ったりすることもあります。だからこそ「ぜひ来てほしい」と言ってくださるところへ行きたいと思っているんです。ただ、いざ現場へ行ってみると控室や音響設備、舞台の設置すらないこともあります。

ボランティアの方もお客様もお互い気持ちよくなれませんね。

ミスターTKさん:

これだと、ボランティアを始めたばかりの方が「ボランティアってこんなに大変なんだ」と思ってしまう可能性もありますし、なにより継続するのが難しいと思うんです。

確かに、有給休暇を使ってまでやる価値があるのかなと考えてしまいますね。

ミスターTKさん:

でも、例えばボランティアで老人ホームへ行って、気持ちの良い対応をしてもらえたとします。すると、いざ自分の親や近所の方が要介護状態になったら「あの施設はおすすめだよ」と紹介したくなるわけです。

口コミの影響力は大きいので、広告を出すよりも効率的に良い噂が広まると思います。その辺りをボランティアを受け入れる側に考えていただけると、お互いに気持ちよく活動できると思っています。なので今後は、私たちの活動を通してそういったことも伝えていきたいですね。

お互いにwin-winな関係で、持続可能なボランティアがたくさん生まれるといいですね。今日は貴重なお話しをたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。

関連リンク

ミスターTK HP:http://r.goope.jp/fp-mrtk
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