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【オーストラリアの空港×SDGs】ブリスベン空港がエコな未来を実現するために実践している取り組みとは?

オーストラリア第3の規模を誇るブリスベン空港は、航空業界の環境負荷を低減するためにさまざま取り組みを行っています。

国内ではじめて国際空港評議会のAirport Carbon Accreditationレベル4の評価を受けており、SDGsを実現している空港として認知されています。

今回は、そんなブリスベン空港が実践するエコ活動の詳細についてチェックしていきましょう。

ブリスベン空港の基本情報

クイーンズランド州ブリスベンに位置するブリスベン空港(Brisbane Airport)は、州内最大の規模を誇る空港です。

31社の航空会社が就航しており、国内50か所、海外29か所とのフライトを結んでいます。

オーストラリアのフラッグキャリアであるカンタス航空のハブ空港でもあり、ヴァージン・オーストラリア航空のメンテナンス施設なども併設されています。

シドニー、メルボルンに次いで国内線接続数が多い空港で、ブリスベン市街地からは約30分のアクセスです。

ブリスベン空港が行う多方面におけるエコ活動とは?

航空業界は世界の二酸化炭素排出量の約 2.5%を占めていると言われているものの、二酸化炭素の排出量削減が難しい業界です。

また、さまざまな業界の脱炭素化が進んでいることに伴い、2050年には航空業界が世界の二酸化炭素排出量の25%に到達する可能性も指摘されています。

ブリスベン空港も航空業界と密接な繋がりがあるため、2025年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするための炭素管理戦略を推進しています。

2023年度にはオーストラリアの空港として初めて国際空港評議会のAirport Carbon Accreditationレベル4を達成しており、国内でも特にエコな空港のひとつです。

二酸化炭素の排出量を減らすための具体的な取り組みには、再生可能エネルギーの導入やカーボンオフセットプログラムなどが挙げられます。

また、2018年にはクイーンズランド州で初めての電気バス車両を導入することで、年間250トンの排出量削減を実現しました。

ほかにも生物多様性の維持や廃棄物の削減などに力を入れており、多方面における環境保全を行っています。

以下では、具体的な取り組みの詳細について見ていきましょう。

①再生可能エネルギー

ブリスベン空港は18,000枚のソーラーパネルを設置し、6MW分(空港全体で消費する電力の約25%)の再生可能エネルギーを生産しています。

ブリスベン空港では定期的にソーラーパネルの増設を行っており、2023年には約5,500枚の太陽光発電パネルを関連施設や設備に設置したことで1.4MWの再生可能エネルギーを追加構築しました。

2024年内には周辺施設の屋上にさらに2.4MW分のソーラーパネルが加えられる予定で、標準的な家庭用システムの約450倍もの電力が再生可能エネルギーからまかなわれる計算です。

また、クイーンズランド州中央部に位置するクラーククリーク風力発電所と再生可能エネルギーに関連した電力契約を結んでおり、年間最大185 GWhの電力を再生可能エネルギーで供給しています。

ブリスベン空港では、滑走路の照明、ターミナル、空港保有の電気バス、電気自動車、電気航空機給油トラック、電気芝刈り機といった幅広い用途に膨大な電力を消費します。

電力契約による再生可能エネルギーは通常の電力供給よりもやや高額であるものの、環境への負荷を低減する上で有効な取り組みです。

②駐車場料金によるカーボンオフセット

ブリスベン空港の国内線及び国際線ターミナルには、大型の有料駐車場が併設されています。

2023年9月より駐車場料金をカーボンオフセットに充てるプログラムを開始しており、顧客はオンライン予約時に66セントをカーボンオフセットとして追加できます。

29の国際線路線が就航しているブリスベン空港は、フレーザー島やゴンドワナ多雨林のほか、ケアンズのグレートバリアリーフやデインツリー熱帯雨林へ向かう外国人観光客も多く利用している空港です。

いずれもオーストラリアを象徴する美しい大自然が魅力ですが、同時に生態学的な脆弱性も兼ね備えている観光地です。

そこで、ブリスベン空港は国内で行われている原生林再生プロジェクトを支援すべく、駐車場の利用時にカーボンオフセットに参加できるシステムを構築しました。

低価格で手軽に環境保全に貢献できるという点が高く評価されており、2024年4月時点で予想の2倍の顧客がカーボンオフセットを選択しています。

尚、66セントという中途半端な金額は、駐車場を利用する顧客の平均往復旅行距離をベースにしています。

顧客は駐車場の予約時に自身の居住地の郵便番号を入力する仕組みで、空港までの距離は平均70 kmという集計結果が出ました。

オーストラリア国家運輸委員会は70 kmの移動で15kgの二酸化炭素が排出されると測定しており、15kg分の二酸化炭素量を相殺する上で66セントが必要であることが判明しました。

もちろん、70 kmの距離はあくまで平均ではあるものの、顧客は自身が排出するおおよその二酸化炭素量を66セントのカーボンオフセットでまかなえるシステムになっています。

③生物多様性保護ゾーン

空港周辺の生物多様性を保護するため、ブリスベン空港では空港敷地の10%以上に相当する285ヘクタール(東京ドーム約61個分)を生物多様性保護ゾーンとしています。

ブリスベン川デルタ地帯からモートン湾の海岸線まで広がっており、以下のような多種多様な環境を含んでいます。

  • 53ヘクタールのフラグマイツ湿地と草原
  • 55ヘクタールのマングローブ湿地
  • 18ヘクタールの塩沼/塩田湿地
  • 115ヘクタールのカジュアリーナ農園
  • 44ヘクタールの水生生息地

全域の環境モニタリングなどを行い、異変や環境への悪影響などが起きていないかを常に確認しています。

また、他の多くの州で絶滅しているルーウィンクイナの生息地保全、渡り鳥の観察(毎年9月から4月)、マングローブの監視と再生活動なども行っており、特にヨーロッパミツバチの巣の管理に力を入れています。

④ミツバチの生物多様性

ブリスベン空港の生物多様性ゾーンに設置されているのが、30にも及ぶヨーロッパミツバチの巣箱です。

ミツバチ=蜂蜜のイメージが強いものの、オーストラリアにとってミツバチは在来植物の受粉を手助けする大切な存在です。

オーストラリアのミツバチは巣から最大5 kmまでの距離を飛ぶとされており、マングローブや開花中の在来種から蜜や花粉を集めます。

もしミツバチがいなければ、近距離間での受粉が頻発することで生物多様性の損失や劣性遺伝子の出現に繋がる恐れがあります。

ミツバチは植物の多様性を維持する上で必要不可欠な生物となっており、ブリスベン空港ではブリスベン北部の生態系を守るためにミツバチの管理に力を入れているのです。

⑤廃棄物の削減

オーストラリアは、世界でも検疫が厳しい国のひとつです。

特に食品に関する制限が多く定められており、ブリスベン空港の国際線では持ち込もうとした食品を没収される旅行者もたくさん見られます。

日々膨大な量の食品が没収されているブリスベン空港ですが、実は集められた食品の一部はクイーンズランド州民の寄付に活用されています。

寄付はチャリティー団体を通して行われており、未開封の生鮮食品や飲料はVinnies、教会や慈善団体に食料品を届けるHands & Feetなどに引き渡される仕組みです。

また、歯磨き粉、シャンプー、コンディショナーなどが没収されるケースにおいては、パーソナルケア製品を回収するチャリティー団体・GIVITに届けられています。

これまでにブリスベン空港は14.5トンの食料とパーソナルケア製品の寄付を行っており、スーパーの大型カート88台分にも匹敵します。

没収品を必要な人々に配布することによって、廃棄物の削減に努めているのです。

⑥水の有効活用

限りある資源を大切にするため、ブリスベン空港では雨水を湖に溜めて有効利用しています。

空港や周辺関連施設の芝生広場への水まきや清掃に使われており、2023年では15万キロリットル以上の水がリサイクルされました。

まとめ

ブリスベン空港では、再生可能エネルギー、カーボンオフセット、生物多様性、廃棄物の削減、水の有効活用といった多方面におけるエコ活動を行っています。

環境負荷が大きな業界ではありますが、実践的な取り組みを行っていくことで着実にサスティナブルな未来への道を歩んでいるのです。