児童労働とは|世界と日本の現状、原因、解決策、私たちにできること

2000年以降、減少傾向にあった児童労働が、2020年に入り増加に転じました。最新データを紐解いていくと、児童労働は決して遠い国の問題ではないことが浮かび上がってきます。本記事では、児童労働がなくならない原因や現状をはじめ、日本にも存在する児童労働について解説していきます。

目次

児童労働とは

児童労働(child labor)とは、子どもの健全な成長を妨げるような労働のことです。子どもが心身ともに発達する大切な時期に、教育の機会を奪われたり危険な環境下で働かされたりすることを指します。

児童労働の定義

国際労働機関(ILO) ※は、児童労働者を以下のように定義しています。

1.労働に従事する11歳以下の子ども

2.週14時間以上の労働に従事する12~14歳の子ども

3.週43時間以上の長時間労働含む危険有害労働に従事する15~17歳の子ども

引用:わたし8歳、職業、家事使用人。世界の児童労働者1億5200万人の1人 日下部 尚徳

ひと言でいうと、義務教育を受けるべき年齢の子どもが、教育を受けずに大人と同じように働くこと、また18歳未満の危険で有害な労働を児童労働と呼びます。

たとえば、子どもが家事使用人として働くのは、11歳以下であれば労働時間に関わらずすべて児童労働に該当します。

国際労働機関(ILO)

1919年に誕生。労働に関わる国際的な基準を決め、それを守るため監視するほか、労働に関する制度作りや職業訓練などの支援をする。児童労働においても中心的な役割を果たしている。

危険有害労働とは

児童労働の定義のなかに記載されている危険有害労働とは、「最悪の形態の児童労働」といわれ、子どもにとって最も有害で搾取的な労働を指します。

具体的には、

  • 奴隷的な労働や強制労働
  • 人身取引
  • 子ども兵士
  • 児童売春や児童ポルノ
  • 麻薬の売買

といった、犯罪行為に子どもを使用することなどにより心身に著しく悪影響を及ぼすものを指し、18歳未満が従事している場合は無条件で引き離し、保護しなければならないと決められています。

世界の児童労働者のうち、約半数が危険有害労働に従事しているといわれています。

次からは、データをもとに世界の児童労働の現状を見ていきましょう。

世界の児童労働の現状

2020年時点で、5~17歳の子ども1億6,000万人が児童労働に従事しています。これは世界の子ども10人に1人に相当する数字です。また、全体の約半数を占める7,900万人が危険有害労働に従事しています。

児童労働は開発途上国に集中

【世界の各地域における児童労働者数と子ども全体に占める児童労働者の割合】

画像引用:JICA

図からも分かるように、児童労働は開発途上国の貧しいとされる国に集中しています。

世界の児童労働者数はアフリカが7,200万人と一番多く、子どもの5人に1人が児童労働に従事している最も深刻な地域です。次いでアジア太平洋地域が6,200万人で、この二つの地域が児童労働の90%を占めています。

また、アジア太平洋地域の中では南アジアが特に多く、児童労働者数の人口に占める割合は、ネパールとバングラデシュが際立っています。

南北アメリカの児童労働者数は1,100万人となっており、その多くがメキシコやブラジルなどのラテンアメリカに集中しています。

地域差が大きい児童労働ですが、具体的にはどのような仕事をしているのでしょうか。

児童労働の7割が農業分野

児童労働を産業別に見てみると、農林水産業が70%(1億1,200万人)と圧倒的多数を占めます。大規模なプランテーションでコーヒーやカカオ、バナナ、パーム油、コットン、タバコなど先進国向けの換金作物※を栽培しています。

換金作物とは…現金収入を得ることを目的に栽培、生産する作物のこと。

次いで20%(3,140万人)を占めるサービス業とは、飲食店や路上での物売りや家事使用人、性産業を指します。

10%(1,650万人)の工業は、金やレアメタルなどを採掘する鉱山労働をはじめ、縫製工場、レンガづくりなどの製造工場、サッカーボール縫いの仕事も含みます。同じ職場でも、少年は機械操作や肉体労働、少女は長時間の単純作業に従事するという傾向があるとされています。

次は、児童労働の性別と年齢別のデータを確認していきましょう。

児童労働の性別・年齢別の割合

引用:UNICEF

すべての年齢において少女より少年の方が児童労働の割合が多い傾向があることが分かります。

この理由の一つとしては、家事使用人などの家事労働をしている少女は、ILOが掲げている児童労働の定義にあてはまらずカウントされません。これにより、数字には出てこない児童労働というものがあるためです。ILOは、児童労働の解釈を広げて「週21時間以上の家事労働」をしている少女を含めると、上記の表の男女差は縮まると分析しています。

現在、5~14歳で週21時間以上の家事労働をする子どもが世界に5,400万人おり、そのうち3分の2を少女が占めるといわれています。

家事労働という見えない児童労働

もう少し家事労働について理解を深めるために、言葉の意味を改めて確認しましょう。

児童労働(child labor)に対して、子どもの仕事(child work)と呼ばれる、勉強や遊びのかたわらで、休日にアルバイトをしたり家の手伝いをしたりすることを指す言葉があります。これは、社会性を身に着けるために良い学びの機会だと捉えられ、日本では高校生のアルバイトなどがこれに当たります。

つまり、「児童労働」と「子どもにとってプラスになる労働」は区別されています。

そのため開発途上国において、労働力として数えられている少女が家事を行っている場合でも、児童労働の統計に含みにくい側面があるのです。しかし、週21時間以上家事労働を行っている場合、子どもの勉強や将来性に悪影響を及ぼす状態と考えられています。

働く親を助けるために家事を手伝う、教育費や生活費を稼ぐために長時間アルバイトをするなど、本来は大人が担うような役割を日常的にしなければいけないというのは、近年日本でも問題になっているヤングケアラーと通じる点があります。

児童労働は2016年まで減少傾向にあった

引用:UNICEF

このように様々な形態がある児童労働ですが、2000年時点の児童労働者数2億4,550万人と比較し、2016年時点では1億5,160万人と、16年間で約9,300万人も減少しています。これは児童労働撤廃の意識拡大と取り組みの成果ともいえます。

しかし注目すべきは、減少傾向であった児童労働者数が、2020年時点で増加に転じていることです。

コロナ禍の影響で増加に転じた児童労働

2020年の児童労働者数は1億6,000万人で、2016年と比べると4年間で840万人増えたことになります。

ユニセフ(国連児童基金)と国際労働機関(ILO)が発表した報告書「児童労働:2020年の世界推計、傾向と今後の課題(原題:Child Labour: Global estimates 2020, trends and the road forward)」によると、新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界的なロックダウンをはじめとした経済の混乱や国家予算の収縮、学級閉鎖など、家庭を取り巻く状況の悪化が児童労働の増加につながっていると報告しています。

加えて貧困の増加により、家族の児童労働への依存度が高まっているリスクにも警鐘を鳴らしています。すでに児童労働に従事している子どもたちの労働時間が長くなったり労働条件が悪化したりと、危険有害労働に従事する子どもも600万人増えています

緊急に対策をしなければ、2022年末までに児童労働者数は2億人を突破する恐れがあると報告書で警告しています。

ここまで様々なデータを見てきましたが、そもそもなぜ子どもが働かなければいけないのでしょうか。

児童労働の原因

児童労働は「古くて新しい労働問題」ともいわれ、社会的に弱い立場である人ほど搾取されるという構造は産業革命以前から変わりません。ここからは、児童労働がなぜなくならないのか、その根本的な原因を解説していきます。

児童労働の原因①:家族の貧困

先述したように、児童労働の最大の原因は圧倒的な貧困にあり、アフリカやアジアという児童労働者数が多い地域に共通しているのは開発途上国ということです。

  • 親が農業などの季節労働に従事しており収入が安定しない
  • その収入自体も家族全員をまかなえるものではない
  • 親が病気で働けない、もしくは失業している

と、家族が子どもの収入をあてにして生活しているという実態があります。

児童労働の原因②:社会的な貧困

国自体が貧しく、社会基盤が整っていないことにより保健医療や教育などの社会サービスを受けられず、ますます生活が貧しくなってしまう場合もあります。

水道が通っていないため、身近にある不衛生な水を使って感染病にかかったり、病気になっても高額な治療費を払えなかったりと、悪循環に陥ってしまうのです。また、紛争などで政治が安定せず、政府が機能していないことで社会保障制度が成り立たないのは、個人の家庭で解決できることではありません。

児童労働の原因③:親世代の教育意識が希薄

親も教育を受けてこなかった場合、「学校に行く意味がない」「教育を受けてもいい仕事につけるかわからない」と、子ども=働き手という考え方が強いことも途上国の家庭の特徴です。

児童労働の原因④:根強く残る差別文化

児童労働の割合が高いインドやバングラデシュでは、ダウリと呼ばれる結婚持参金の習慣があります。これは、結婚するときに女性の家から男性の家にお金や物品、家畜などを贈るものです。

  • 女性の年齢が高いと相場が上がる
  • 十分な額が払えないことを理由に離婚を言い渡される

などに加え、悲惨なケースでは、ダウリを受け取った後に女性が殺害されるという事件も起きています。現在、ダウリは禁止されてはいるものの、贈り物に対して強制的か自発的かという明確な区別は難しく、法律では取り締まることがしにくいのが現状です。

児童労働の原因⑤:企業の利益優先主義

先進国の企業が消費者へ安い商品を提供することを理由として、生産コストを下げるためにサプライチェーンの中で直接的・間接的に児童労働を助長していることもあります。

具体的な事例をご紹介します。

スポーツメーカーの児童労働問題

とあるスポーツメーカーは、製品製造を委託しているアジアの工場で、児童労働や劣悪な環境下で長時間労働を容認していたことが1990年代後半に発覚しました。これによって企業が途上国を「搾取」している構造が浮かび上がりましたが、そのスポーツメーカーの製品を購入する消費者も、知らず知らずのうちに児童労働を助長してしまっていることにもなるのです。

バングラデシュで起きた「ラナプラザ崩壊事件」

2013年、バングラデシュにある商業ビルのラナプラザが倒壊し、従業員など若い女性を中心に1,133人が死亡する事故が発生しました。原因は、多くの縫製工場をビルに入居させるために違法な増築を繰り返していたことです。その背景には、世界中の衣料品メーカーが安い人件費を求めてバングラデシュでの生産を進めていたことに起因しています。

豊かな生活の裏にある児童労働

【手作業で鉱石を選別する鉱山労働者】

私たちが普段手にしているスマホやPCに使われている原料(コバルトや金など)にも、児童労働が関わっている可能性があります。コバルトや金などは紛争鉱物と呼ばれ、

  • 鉱物の売却による資金を元手に紛争が助長
  • 児童労働や強制労働などの人権侵害を引き起こす

などの影響を及ぼすため、国際的に問題視されています。

つまり、私たちの生活の豊かさと引き換えに、その裏では多くの犠牲が生まれているかもしれないのです。

日本の児童労働の現状

ここまで世界の児童労働の現状や原因を確認してきました。では、日本にも児童労働はあるのでしょうか。

現代日本にも児童労働は存在する

現代の日本にも児童労働は存在します。

日本における児童労働として、労働基準法違反があったのは2015年時点で297件と報告されています。(これは対象の子どもの数ではなく法令違反の事業者数であるため、正確な人数は明らかになっていません。)

※参考:日本にも存在する児童労働〜その形態と事例〜(PDF)

例えば2017年2月、茨城県でアルバイト中の少女(当時15歳)が高所での作業中に転落死した事故があり、これは危険有害労働に該当すると児童労働の認定がされました。

実は日本では、児童労働の原因である子どもの貧困が深刻化しています。そのため私たちの周りにも、気づかないだけで児童労働が潜んでいる可能性があるのです。

日本における児童労働の実態

日本における児童労働を考える際、児童福祉法をはじめ児童買春・児童ポルノ禁止法や風俗営業適正化法などが適用された事案を考慮する必要があります。

児童労働に関連する法令違反

この表からも分かる通り、日本で早急に対応しなければならない児童労働問題は、商業的性的搾取についてです。児童買春や児童ポルノ、JK ビジネス、援助交際など、子どもが性的対象や売買の対象として扱われている商業的性搾取が横行しています。さらには、特殊詐欺などの犯罪に子どもを使う案件も増加しているのです。

日本人による子どもの性的搾取が世界から非難

1996年にストックホルムで開催された「第1回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」において、日本人によるアジアでの児童買春や日本製児童ポルノの世界的な流通が厳しく取り沙汰され、批判されました。これをきっかけに、日本では「児童買春・ポルノ禁止法」が1999年に制定されました。

これにより、

  • 児童買春をした人
  • 斡旋または勧誘した人
  • 児童ポルノを販売、配布、展示した人

が法律で罰することができるようになりました。それでも、前述のデータのように日本には性的搾取という児童労働が今なお横行しているのです。

児童労働の解決に向けた世界の取り組み

児童労働については、SDGs目標8のターゲット7において、2025 年までにあらゆる形態の児童労働を撤廃することが掲げられています。各国の具体的な取り組みをご紹介します。

世界の取り組み①:アメリカ

アメリカは、先進国の中でも最も積極的に児童労働撤廃への取り組みを進めています。児童労働と関わっている製品を輸入禁止にするほか、開発途上国からの輸出品にかかる関税をなくす、または低く設定するなどしています。

開発途上国は、この貿易優遇策を受けるためには児童労働を徹底的に禁止しなければなりません。また、貿易を通じて児童労働をなくしていこうという取り組みは、企業が社会の発展に貢献し、環境や人権問題などの社会的責任(CSR)を果たすことにもつながります。

世界の取り組み②:イギリス

イギリスは、企業における事業活動が奴隷労働と人身取引に関与していないということを証明・報告することを義務付ける「現代奴隷法」を2016年より実施しています。国内外の多くの企業を対象として、サプライチェーンを管理する法律を定めることにより、児童労働の撤廃を目指しています。

児童労働の解決に向けた日本の取り組み

この表は、各国政府の児童労働に対する取り組み状況を比較したものです。ご覧の通り、日本は児童労働への対応がかなり遅れていることがわかります。企業の人権への取り組みを格付けする「企業人権ベンチマーク(Corporate Human Rights Benchmark:CHRB)」でも、日本企業の評価は低いものになっています。

この理由として、日本における外国人技能実習生の搾取的な労働実態や、児童買春の存在が挙げられています。しかし、日本でも児童労働への対応は少しずつ進められています。

日本の取り組み:サステナブル・カカオ・プラットフォームの設立

JICA(独立行政法人国際協力機構)の開発協力を通じて、ガーナのカカオ産業における児童労働撤廃を進めています。2020年に社会・経済・環境分野で持続可能なカカオ産業を構築することを目的に「サステナブル・カカオ・プラットフォーム」を設立しました。さらにJICAは、ガーナ政府が主導している児童労働のない地域の認証制度への支援も始めています。

2025年までに児童労働撤廃の目標達成は厳しいと予測

児童労働撤廃の取り組みが世界中で進められているものの、2025年までの撤廃は極めて困難と予測されています。

新型コロナウイルスの影響により児童労働者数が増加に転じたことに加え、児童労働への積極的な取り組みは欧米の一部大手企業に留まり、企業や消費者の理解が進んでいるとはいえないのが現状です。

しかしながら、児童労働の対応強化の流れは確実なものになっています。サプライチェーン管理のグローバルな取り組みやエシカル商品のマーケティング強化が今後も一層重要なものになるとユニセフは展望しています。

児童労働の解決のために私たちにできること

私たち一人ひとりにも、児童労働解決に向けたアクションが必要です。国としての児童労働対策が遅れている日本に住んでいるならなおさら、個人で意識して少しずつ実践してみましょう。

私たちができること①:寄付してみよう

児童労働撤廃に取り組む団体に寄付したり会員になるのも手です。

NGO団体のACE(エース)は、活動や地域によってさまざまな種類の寄付を準備しています。インドのコットン生産地域で働く子どもたちの教育や生活を支援する「ピース・インド プロジェクト」や、ガーナのカカオ生産地域で働く子どもたちの教育や生活を支援する「スマイル・ガーナ プロジェクト」など、ご自身の興味のあるものを探してみてくださいね。

私たちができること②:フェアトレード商品を選ぼう

適正な賃金の支払いや労働環境の整備を通じて生産者の生活向上を図る「フェアトレード」という活動があります。フェアトレード商品が普及することは、生産者の暮らしを向上させ、児童労働から子どもを守ることにもつながります。

【国際フェアトレード認証ラベル (The FAIRTRADE Marks)】

私たちができること③:ボランティアに参加してみよう

日本でできる国際協力のボランティアはたくさんあります。事務作業からイベント運営、翻訳、デザイン、映像など、自分が得意なことや合っていることを軸に探してみるのもいいですね。

>>ボランティア情報はこちら

まとめ:児童労働から子どもたちを守るために

児童労働は開発途上国だけの問題ではなく、様々な形で私たちの身近なところに潜んでいます。それがどのような形であろうと、子どもたちの成長や未来を奪うことはあってはならないことです。児童労働は自分とはあまり関係ない貧しい国の問題と捉えず、あらゆる子どもが心身ともに健全な成長を遂げることができるよう、一人ひとりのアクションが求められています。

<参考資料>
児童労働 2020 年の世界推計、動向、前途
日本にも存在する児童労働~その形態と事例~
児童労働白書2020 ―ビジネスと児童労働―

<参考文献>
世界を改革した子どもたち (きみが世界を変えるなら)  石井 光太
労働と経済 目標8 (SDGsのきほん未来のための17の目標 9)  池上 彰 
チェンジの扉 ~児童労働に向き合って気づいたこと~ 認定NPO法人ACE
わたし8歳、職業、家事使用人。世界の児童労働者1億5200万人の1人 日下部 尚徳
わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。―児童労働者とよばれる2億1800万人の子どもたち 岩附 由香(著)ほか