#17の目標

SDGs16「平和と公正をすべての人に」の現状と日本の取り組み事例、私たちにできること

sdgs16

SDGsの目標16である「平和と公正をすべての人に」は、文字通り、世界の平和と公正を実現することを目標としています。一方で現在の世界には、紛争や内戦、子供への虐待や人身売買、汚職などが蔓延しています。紛争や人身売買などは発展途上国に多いイメージで、日本にいると現実としてイメージしづらいかもしれませんが、2019年度には19万件以上の虐待を児童相談所は受けており、SDGs16は発展途上国のためだけに生み出されたものではありません。

決して他人事ではないSDGs16への理解を深めるために、SDGs16が目指す世界の実現に向けて解決すべき課題、そして私たちにできることを紹介していきます。

目次

SDGs目標16 「平和と公正をすべての人に」とは?

“平和”というと、真っ先にその逆の紛争やテロをイメージする人も多いと思います。しかしSDGs16は、紛争だけでなく、暴力や差別の根絶、そして国民を守るための公平な裁判が行われる社会を目指すために掲げられています。

SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」は「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」と定められており、法、教育、制度など多角的な視点から考えていく必要があります。

と言っても難しく感じる人も多いと思います。そこで次に、SDGs16「平和と公正をすべての人に」の理解を深めるためのポイントをまとめました。

この記事はボリュームが大きいので、まずは気になるポイントだけ詳しく抑えてみても良いかもしれません。

SDGs16「平和と公正をすべての人に」を簡単に

SDGs16「平和と公正をすべての人に」の現状と日本の取り組み事例、私たちにできることのポイント
SDGs16「平和と公正をすべての人に」の現状
SDGs16「平和と公正をすべての人に」の世界と日本の現状

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SDGs16「平和と公正をすべての人に」の解決策と取り組み、私たちにできること

③問題の解決策を詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。

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⑤私たちにできることを詳しく知りたい方はこちらをクリックしてください。

SDGs16「平和と公正をすべての人に」のターゲット

ポイントを抑えたところで、目標16を達成するために設定されている、具体的な12つのターゲットの概要を見ていきましょう。

 ターゲット
16.1あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.42030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.92030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。

世界平和と公平を目指すSDGsの目標16では、12個のターゲットによって貧困や紛争による被害を減らし、正しい政治が行われるよう設定されました。

紛争の回避や暴力の低減などは、大きな課題で個人や特定の企業だけでの解決は難しく、途上国にはグローバル・ガバナンス機関への参加を促し、先進国には、自国の法や政策の整備を呼びかけています

なぜ、SDGs16の目標が必要なのか?

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」は、誰もが暴力や差別を受けることなく、学校で勉強をしたり、予防接種をうけることができる社会制度構築のために掲げられています。この章では、なぜSDGs目標16が必要なのか、そして世界の現状と課題は何なのかを見ていきましょう!

SDGs目標16が必要な理由

平和で公正な社会を維持するためには、地球上の誰もが、紛争やテロによって被害を受けることがなく、暴力を受けずに育ち学校へ通い、裁判では公正な判断が下される環境が必須です。

しかし、未だあらゆる場所で紛争や暴力によって命を失う子ども身分証明がなく学校に通えない子ども性差別人種差別によって仕事に就けない人々が存在するのが現実です。

このような現状を解決に導くために、目標16が必要です。

世界が抱える平和の現状と課題

平和の実現を目指すべき今の世界には、紛争が続いていたりと目をそらしたくなるような事実もまだ多く存在します。しかし、現実としっかり向き合い、課題解決に向けて行動することが平和への第一歩です。

まずは世界の現状について知っておきましょう。

紛争と災害

2018年に国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」が発表した報告書によると、未だ世界で6人にひとり(3億5,700万人以上)の子どもが、災害や紛争などの緊急事態下で暮らしています。

2011年の平和的なデモに端を発したシリア紛争も、終わりが見えないまま10年が経過してしまいました。徴兵される子どもも後を絶たず、日本ユニセフ協会の報告によると、シリア紛争だけでも4,600人を超える子どもが兵士として加わっています

シリアでの子どもに対する重大な権利侵害のグラフ
引用元:ユニセフ

武装勢力に拉致・誘拐されたり、あるいは脅されたり洗脳されたりして「子ども兵士」となるだけでなく、紛争下で性暴力の被害にあう子どもも多いのです。無事紛争を生き抜いても、紛争時の記憶がトラウマになってしまうこともあります。

子どもが教育の機会を奪われるだけでなく心身ともに想像を絶する苦痛を受けるこのような現状は、すぐにでも終わらせなくてはなりません。

紛争はさまざまな理由で起こりますが、不公正な法律や選挙の実施などが、紛争を解決できない大きな要因のひとつです。SDGsの目標16.3「国家および国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する」も、未だ多くの国や地域で達成されていません。

難民

UNHCRが発表した難民の数
引用元:UNHCR

紛争や内戦が起きれば、故郷を追われて難民となる人々も出てきます。シリア紛争によりその数が増えているということも、今の世界が抱える大きな問題になります。

2019年、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)本部は、2018年には世界の全難民の数が7,000万人を超えたと発表しました。世界では7,000万人もの人が、安心して住める場所がなく、故郷を追われているということです。

こうした難民の約40%が18歳未満の子どもで、生まれた土地からの移動を強いられる中、家族と生き別れになったり、充分な教育を受けられなくなったりしています。教育を受けられなければ報酬の高い仕事に就けず、貧困から抜け出すことができません。

子どもへの暴力・搾取

子どもへの暴力・搾取のイメージ画像

子どもに対する家庭内暴力性的搾取も世界中で起きています。しかしその事実は隠されてしまうことが多く、助けを求めることができずに命を落としてしまう子どもが世界中にたくさんいます。

国連事務総長による2006年の「子どもに対する暴力に関する調査」の統計だけでも、年間約5億人から15億人の子どもが暴力を経験し、毎年100万人の子どもたちが売春やポルノグラフィーによって性的に搾取されていると報告されています。また、子どもへの暴力や性的虐待は隠されてしまう部分も多いため、氷山の一角だと予想されます。

信頼できるはずの大人から暴力を受けた子供たちは、大人になっても人を信用できないなど、深いトラウマを抱えることになります。また、児童売春などにより性的に搾取された子どもは、望まない妊娠やHIVへの感染の危険にさらされてしまいます!

人身売買・人身取引とは?目的と原因、世界と日本の現状、問題点、SDGsとの関係を解説人身売買(人身取引)が多い国はどこ?日本・世界の現状や事例、その後どうなるのかを解説

法的な身分証明

【出生登録のされていない5歳未満の子どもの地域分布】

ユニセフが発表した出生登録をされていない子どものグラフ
引用元:ユニセフ

世界には、「存在を証明されていない」子どもも数多く存在します。

2019年12月11日、ユニセフは世界の1億6,600万人もの子どもが出生登録をされていないと明らかにしました。グラフから読み取れるように、エチオピアなどのアフリカや、インドやパキスタンなど、アジアの低所得国を中心にで起こっている現状があります。

知識不足や出生証明書の申請料金の高さなどが原因で出生登録されなかった子どもたちは、法的な身分証明がないため、教育やワクチンなどの医療を受けられない状態に陥ります。また、出生登録がないと学校に通うことができず家にいる時間が長くなり、虐待や搾取の対象になりやすいので、「子どもへの暴力・搾取」問題を解決するための最初の段階として考えていく必要があります。

汚職と贈賄

汚職と贈賄を表すイメージ画像

世界には、汚職や贈収賄といった不正もはびこっています。

腐敗、特に汚職に対して取り組む国際非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」の2020年の調査によると、世界の汚職ランキングでには以下の国が上位に並んでいます。

  • 南スーダン
  • ソマリア
  • シリア
  • イエメン

いずれも、長く続く内戦で国の社会・経済がストップしている開発途上国ばかりです。

汚職ランキングとは具体的に、政治や警察で汚職や贈収賄が行われているかなどを元に発表されます。ランキング結果で上位に並んでいる国ほど、人々の生活を守る司法や経済活動が正しく機能していないことを意味します。一方でトランスペアレンシー・インターナショナルは、デンマークやニュージーランドは、公務員や政治家の腐敗がなく清潔であることを示す腐敗認識指数が高いと発表しています。

拘留者への措置

国家や軍事組織などに逮捕・拘留され、公正な裁判を受けられず自由を奪われている人が数多くいることも、公正な社会の実現を妨げる大きな問題です。

国際協力分野の開発コンサルタントである(財)国際開発センターの発表によると、2018年における世界の拘留者のうち、約30%は裁判を受けずに拘留されています。主に南アジアや中南米で多くの人が拘留され続けており、中には暴力や拷問を受け続ける人々がいます。

軍事政権や独裁政権などでは、自由や権利を求めた結果「国の秩序を乱した」などといわゆる政治犯として拘留される例も少なくありません。

組織犯罪・麻薬

組織的な薬物や武器の取引、また人身売買などの犯罪は、法律がきちんと整っていない発展途上国で起こりやすいです。ユニセフは2012年から2014年の間に、世界106か国で6万3,000人以上の人身売買被害を確認しました。人身売買被害者の大部分が女性で、70%以上を占めているといいます。

また、麻薬など、違法な薬物問題は地球的規模の深刻な問題です。薬物による死亡例は後を絶たず、2018年の世界薬物報告によれば、薬物による死亡例の23%は15歳から29歳の若者たちだと報告されています。国際的薬物犯罪組織による密輸は巧妙化しており、国際的に協力して課題解決に取り組む必要があります。

さらに、自国を守るための合法な武器の取引ではなく、違法取引によって犯罪集団やテロリストの手に渡った武器は、紛争地で使われます。治安維持能力の低い違法な武器の取引は、武器が民間人の手に渡る原因となり、家庭内暴力や子ども兵を増やす要因となります。

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日本が抱える平和の現状と課題~差別は身近なところにある~

現代の日本は平和で、前述のような人権の問題はないと思っている人もいるかもしれません。しかし日本にも確実に、公正な権利が守られていない現状があります。

日本が抱える平和と公正さについての現状と課題を見ていきましょう。

子どもへの暴力・搾取

子どもへの暴力や虐待は、発展途上国だけの問題ではありません。児童虐待防止に取り組む「オレンジリボン運動」によると、日本国内で週に1人の子どもが虐待によって死亡しているというデータがあります。その数は、年間約50人にものぼります。

また、性的虐待児童買春に巻き込まれた子ども、商業目的で性的な写真や動画を撮られた青少年少女は、性病になったり、一生どこかで自分の写真や動画が見られているかもしれないという恐怖を抱え続けることになります。

暴力や性的虐待の残酷な被害から子どもたちを守るために、児童相談所ダイヤルの周知啓発、学校等における相談体制の強化が求められます。また、子育てに苦悩し、手を挙げてしまう親へのケアも重要になってきます。

ドメスティック・バイオレンス

ドメスティック・バイオレンスに関するイメージ画像

内閣府男女共同参画局は、年間10万人以上もの被害者が、配偶者からの暴力について支援センターに相談していると報告しています。被害者の多くは女性で、男女格差社会や経済的な問題子どもの教育環境の維持などを理由に、関係を断ち切れずに解決されないケースが多いです。

2001年に被害者の保護を図るための「DV防止法=配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」が制定されましたが、相談までたどり着けない被害者への対策や、暴力を断ち切った後の精神的ケアなどの課題があります。被害者は長期間の身近な相手から暴力を受けることで、身体への影響だけでなく、うつ病などの精神疾患に罹患することもあり、一刻も早く暴力から抜け出しケアを受ける必要があります。

政治の腐敗

汚職や腐敗の防止を目指す国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」による「公務員の腐敗度ランキング」で、日本は20位にランクインしています。各国の公務員や政治家が、賄賂などに応じるかどうかなどを数値化した調査です。

2020年には、日本の政治家による、事実確認に必要な公文書の破棄や、書類改ざんを迫られ自殺した財務省職員に対する調査不足などが問題視されました。そのような収賄疑惑から、日本の政治はデンマークやニュージーランドなどと比べて腐敗度が高いと認定されました。

政治の腐敗は、公正な社会の妨げになるほか、多額の税金が無駄づかいされ、国民の信頼感も損います。IMF(国際通貨基金)によれば、政治の腐敗度が高い国ほど脱税によって税収が少なく、さらに子どもの学力テストの結果も悪いというのですから、やはり見逃すことのできない問題です。

選挙の投票率

下の数字をご覧ください。

1 オーストラリア・・・91.9%

2 ルクセンブルク・・・89.7%.

3 ベルギー・・・88.4%

4 スウェーデン・・・87.2%

30 日本・・・52.7%

これは、世界の投票率とランキングです。上位の国々の投票率が80%を超える中、日本の投票率は52.7%にとどまっています。

2016年7月10日、日本の選挙権が18歳に引き下げられて初めておこなわれた参議院議員通常選挙も、「投票率54.70%」という結果でした。若者の選挙・政治への無関心が問題視されています。

目標16を達成するためには、腐敗や汚職のない透明度の高い政治のありかたが求められます。その政治を作る第1歩とも言える選挙率が低いのは、先進国として危機感を覚えるべき現実です。

男女不平等・LGBTへの差別

いまだ根強く残る男女不平等の問題。近年ではさらに「LGBTQ」や「LGBTs」と呼ばれる性的少数者(マイノリティ)への偏見や差別も問題となっています。

世界経済フォーラムによって2019年に発表された「世界ジェンダー・ギャップ報告書」によると、日本のジェンダーギャップ指数は153か国中121位で、男女の格差が他国に比べても大きいことがわかりました。同報告書では、日本では政治やキャリアなどあらゆる場面で女性の立場が弱い、と指摘されています。

そもそも「ジェンダー」とは、生物学的な性の違いから定義された社会的な在り方を示す概念です。「男性らしさ」や「女性らしさ」、「男なら」「女だから」という決めつけが、男女間だけでなく性的マイノリティへの偏見や差別を生んでいます。

LGBTについては、次の章でもう少し詳しく解説します。

SDGs16のポイント 性的少数者「LGBT」

人と地球と繁栄のためのSDGsを達成していく上で、誰一人取り残される人がいてはなりません。平和と公正を目指すSDGs16達成に取り組んでいく上で、性的少数者「LGBT」に対する差別や偏見をなくしていく必要があります。

「LGBT」とは

L=Lesbian(レズビアン/女性同性愛者)

G=Gay(ゲイ/男性同性愛者)

B=By sexual(バイセクシャル/両性愛者)

T=Transgender(トランスジェンダー/心の性別と体の性別の不一致)

の略で、生物学的な「男」「女」では区別できない自己意識や指向を持つ人を指します。

さらに「LGBT」のどれにも当てはまらない人がいることから、「LGBTs」と呼ばれることもあります。「LGBTs」の「s」は「SDGs」と同じ複数形のsであり、アセクシャル(無性愛者=性的思考のない人)やクエスチョニング(性的指向が定まっていない、定めない人)などが含まれ、性の多様性が明らかになってきています。

「LGBT」の問題は最も身近で、誰もが経験?

男なのに女っぽい」「女のくせに男みたい」などと誰かに言ってしまったことはありませんか?悪気がなく冗談で言ったつもりでも、相手を傷つけている可能性があります。

LGBTかどうかは見た目ではわからないことも多いです。「男」か「女」かではくくれない人がいることを理解し、男女で決めつけずその人のありのままを認めることが重要です。

2019年に行われた「LGBT意識行動調査2019」(株式会社LGBT総合研究所)では、全国の20代~60代の約10%がLGBTやそれ以外の性的少数者だという結果が出ています。「私の周りにはいないから」と思うかもしれませんが、同調査では約8割の人がカミングアウトしていないということもわかっています。

私たちの周りにある「差別」

10人に1人の割合でLGBTその他マイノリティの人がいるとすれば、学校や職場など身近にいても全くおかしくはありません。やっと日本でもLGBTへの理解が深まりつつありますが、まだまだ性的少数者への差別やいじめはなくなりません。

性的マイノリティを理由に、就職の内定を取り消されたケースもあります。LGBT関連の教育事業などに取り組むNPO法人「ReBit」の2019年の調査によると、同性愛者や両性愛者の40%以上トランスジェンダーの87%以上が、新卒就活時に何かしらの困難に直面したという結果が出ています。

また、日本では同性婚を認める法律は存在していません。同性カップルのパートナーシップ制度は全国で100以上の自治体に導入されていますが、法的な効力はありません

法的な効力がなければ、配偶者控除や健康保険の被扶養者としての負担軽減が受けられず、遺産相続もできません。親族として認められなければ、重大な病気になったときに面会ができない可能性もあるのです。

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SDGs16の目標達成のためにできる対策はあるの?

SDGs16の目標達成のためにできる対策はさまざまですが、平和で公平な世界への鍵を握る3つの対策について解説します。

  • 発達途上国と先進国の協力
  • 誰もが納得する法律と制度の策定
  • 子どもへの教育環境の確立

発達途上国と先進国の協力

人材や資金が限られている発展途上国での紛争や暴力で命を落とす人をなくすためには、世界の組織レベルで力を貸しあう必要があります。積極的に発達途上国のグローバル・ガバナンスへの参加拡大を行っていくことが、紛争のない平和な世界へ繋がっていきます。

②誰もが納得する法律や制度をつくる

「世界が抱える平和の現状と課題」で紹介したように、発展途上国には生後、出生登録されることなく、教育や医療など必要なサービスが受けられない子どもがいます。政府レベルで誰もが必要なサービスを受けられる環境を作ることで、出生登録のない子どもや教育を受けられない子どもを減らすことができます。

すべての人が納得する法律や制度を整えてはじめて、誰もが平等に安心して暮らせる社会が実現するのです。

子どもたちが安心して教育を受けられる環境をつくる

紛争地域では食べ物や水など、生きていく上で最低限のものが必要とされているのはもちろんですが、平和で公正な社会を確立するためには、未来を受け継ぐ子どもたちへの教育環境を整えることが重要です。

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SDGs16「平和と公正をすべての人に」に対して個人でできること・私たちにできること

ここまで読むとSDGs16は壮大なテーマであるため、達成に向けて個人ができることは少ないように感じる人もいると思います。そこで、次からは私たち個人ができるアクションについて理解を深めていきましょう。

虐待を見て見ぬふりをしない

目標16のターゲットには、虐待や暴力による死をなくすことが掲げられていますが、特に「子どもに対する虐待」は、日本でも大きな問題となっています。

厚生労働省によると、令和2年の児童相談所での児相虐待相談対応件数は、過去最多の205,029件と報告されました。

<児童相談所での児童虐待相談対応件数とその推移>

報告されているもの以外にも、誰にも相談できずに苦しんでいる子どもはまだまだたくさんいます。

そんな辛い思いをしている子どもたちのために、あなたの周りに虐待を受けているような子どもがいたら、様子をみて声をかけたり、児童相談所の虐待対応ダイアルに通報・相談したりしてあげましょう。

通報したら子どもの親に報復されるかもしれないなど、不安に思う人もいると思います。しかし、児童相談所の虐待対応ダイアルでは、通報者、相談者の情報は守られているため相手に漏れることはありません。

では、どのようなポイントを意識すれば、児童虐待だと判断できるのでしょうか。

児童虐待の定義と、日本の現状

児童虐待は、厚生労働省によって定義されています。

以下の4種類に分類されるので、覚えておくとより虐待を見つけやすくなるはずです。

  • 身体的虐待
    殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
  • 性的虐待
    子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
  • ネグレクト
    家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
  • 心理的虐待
    言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など

この他にも、近年では、子どもを長時間自動車の中に放置し、死亡させてしまうニュースも報じられることがありますが、これも一種の虐待にあたります。本人は軽い気持ちで行っていても、それが虐待として時には死に至らせてしまう場合もあるのです。

児童虐待を防ぎ、未来ある子どもを守るためにもチェックポイントを意識し、勇気を出して行動してみてはいかがでしょうか。

特殊詐欺に遭わない対策を

目標16のターゲットのひとつに

16.4 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。

といった項目がありますが、このなかの犯罪には、「特殊詐欺」も含まれています。

特殊詐欺とは

オレオレ詐欺をはじめとしたお金を騙しとる犯罪行為のこと。架空料金請求詐欺や還付金詐欺、融資保証金詐欺など、全部で10種類の手口に分類されています。(2021年4月1日現在)

警視庁の特殊詐欺認知・検挙状況等についての資料によると、令和2年の認知件数は、13,550件で被害額は285.2億円と多くの人が被害にあっていることがわかります。

認知件数、被害額ともに減少傾向ではあるものの、いまだ高齢者を中心に被害が後を絶ちません。

そこで私たち個人ができることとしては、被害に遭わないための対策を徹底し、このような犯罪に加担する人を撲滅することです。

具体的な対策として、まずは、どのような特殊詐欺の手口があるか知ることです。

知識があれば自身が詐欺に合う可能性が低くなることはもちろん、他の人が悩んでいる際にも相談に乗れたり、声をかけられるようになります。

また、警察庁では、「特殊詐欺根絶アクションプログラム・東京」というサイトで、実際の被害件数や、手口、現段階で自身が特殊詐欺についての知識がどれぐらいあるかなど、さまざまな情報が共有できるようになっています。

そして知識を得たあとは、大切な家族や知人、とくに高齢の方に説明してあげるようにしましょう。

離れて暮らしている家族にも、お金のことに関しては必ず相談することなどのルールを設け、「きっと自分たちは引っかからないだろう」と過信させないことが大切です。

児童労働による商品を買わない

みなさんは、普段食べているものや、着ているものがもしかしたら児童労働によって作られているかもしれないと想像したことはあるでしょうか?

児童労働とは、いわゆる搾取と言われるものであり、無賃金または不当な低い賃金で子どもを働かせることです。

発展途上国を中心に、幼い頃から労働を強いられている子どもたちがたくさんいます。「かわいそう」と感じる方も多いと思いますが、実は日本で食べられているチョコレートや、嗜好品のタバコ、洋服なども、児童労働によって作られている可能性があり、知らず知らずのうちに購入している場合もあるのです。

そこで、児童労働によって作られていないことを前提とした「リビングウェイジ」であり「フェアトレード」である商品を購入するようにしましょう。

リビングウェイジ

生活に最低限必要な給料金額

フェアトレード

途上国で作られる原料や製品を適正な価格で購入し、途上国に住む人の生活改善や自立を目指す公平・公正な貿易

このような取り組みをしている商品があると知った上で、リビングウェイジとフェアトレードで作られている商品を積極的にチョイスし購入すると、途上国の子どもたちの支援になっているんだと嬉しい気持ちにもなりますよね。

では、どんな商品や企業がリビングウェイジやフェアトレードの商品開発に取り組んでいるのかを見てきましょう。

リビングウェイジ/フェアトレードに取り組んでいる企業・支援

「しあわせへのチョコレート」プロジェクト

チョコレートは、児童労働で作られている代表的な商品と言っても過言ではありません。

そこで、ACE(Action against Child Exploitation)が行っている「しあわせへのチョコレート」プロジェクトを紹介します。

「しあわせへのチョコレート」プロジェクトは、カカオ生産地での児童労働をなくし、チョコレートを作る人も食べる人も笑顔になれることを目指すため2009年に発足されました。

このプロジェクトでは、スタッフが現地へ行き、児童労働が行われていないか見回りをしたり、住民に対して啓発活動を行ったりと、これまでさまざまな支援を展開。

さらには、2017年まで「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」を販売し「スマイル・ガーナ プロジェクト」へ、売り上げの一部を寄付していました。

2011年以降は、いくつかの日本のお菓子メーカーと協力し、ガーナの子どもたちの支援につながるキャンペーンを開催しています。

日本のチョコレート消費量は、年間約28万トンと世界第3位。これだけの消費国であるからこそ、積極的に取り組む必要があるのではないでしょうか。

そこで今日の買い物から意識できるよう、ACEと共に取り組んでいる主なメーカーと商品をご紹介していきます。

◆森永製菓「1チョコ for 1スマイル」

森永製菓では、「1チョコ for 1スマイル」というキャンペーンを展開し、対象商品の売り上げの一部をACEの「チョコ募金」として寄付しています。

2020年から対象商品が増え、私たちの選択の幅も広がっています。

<主な対象商品>

◆有楽製菓「スマイルカカオプロジェクト」

<ブラックサンダープリティスタイル カカオ72% パウチ>

ココアホライズン認証のチョコレート
"ブラックサンダー"
出典:有楽製菓

有楽製菓では、ブラックサンダーをはじめとする商品に、ココアホライズン認証のサステナブルなチョコレートを使用しています。

こちらも同様に対象商品を購入すると「チョコ募金」へ売り上げの一部が寄付されます。

◆フェリシモ「幸福のチョコレート」

フェリシモが発売する「幸福のチョコレート」は、全商品が「LOVE&THANKS基金」の対象となっており、商品価格の約1%が寄付されます。

世界中を駆け巡るチョコレートのバイヤーが集めた商品たちは、カタログ注文などで取り寄せることができ、レアなチョコレートも販売されているのだそう。バイヤーの、チョコレートと児童労働をなくすための支援への想いが伝わってくるので、公式サイトもぜひ覗いてみてください。

食品以外でもリビングウェイジを意識した商品があります。次では毎日使うシャンプー・コンディショナーから「エティーク」を紹介します。

◆Ethique(エティーク)

ニュージーランドで創業されたエティークは、シャンプーやコンディショナーのプラスチックボトルを排除するために、液体製品をすべて固形にし、環境に優しい製品を生み出しました。

さらに原料へのこだわりを追求し基準を設け、それらをクリアするものだけを使用。

目標16の項目だと「フェアトレード(公正取引)、リビングウェイジ(生活に最低限必要な給料金額)であること」が、エティークの製品では前提とされています。

原料からパッケージまで、すべてをサステナブルな製品として生産している世界初のブランドです。

エティークを取り扱うエシカミーにインタビューしています。

「ethicame(エシカミー)」|届いたその日からサステナブルな生活が実現

政治や多様性に目を向ける

平和や公正をすべての人が享受できるようにするためには、法律や政策に関心をもつことが大切です。

そして時には、異議を唱えたり、反対運動に参加したりすることも必要になってくるかもしれません。しかし実際には、日本ではまだそのような行動に移す段階ではないように感じるのも事実です。

まずは、これからの未来を担う若い世代が、政治や世界で起きている差別などの社会情勢に興味を持ち、声をあげていくことで平和へと導かれるはずです。

次では、具体的に政治や多様性に目を向けるための方法を紹介します。

目に入る情報をプラスする

現代はSNSやあらゆるメディアが発達し、いつでもどこでもいろいろな情報が見られる時代です。

その中で、普段から見るSNSの中に日本や世界の情勢についての課題を発信しているアカウントをフォローするだけでも、世界の出来事に関心を持つきっかけにできます。

例えば「NO YOUTH NO JAPAN」は、主にU30向けに政治参加を促すための情報をInstagramやnoteで発信しています。

とくにこのメディアが運営するInstagram(@noyouth_japan)では、画像でわかりやすく説明されているので、まずは大枠を知りたいという方には特におすすめです。

もちろん、30歳以上の方でも改めて理解する機会になるので、目を通してみてはいかがでしょうか。

そして、得た知識を周りの人に拡散できることも、SNSならではの強みと言えます。

ここでひとつ注意したいのが、自身の意見を人に強要しすぎないことです。さまざまな考え方があるので、考えを押し付けてしまうと争いが生まれてしまうかもしれません。これでは目標16の掲げる平和と反する内容となってしまうため、発信する際は十分に気をつけたいですね。

支援団体へ寄付しよう

最後に、「寄付」について紹介します。

支援団体は、世界で苦しんでいる人たちを助けるために、物資の輸送や人件費などのさまざまなコストが発生しています。利益を求めているわけではないため、どの団体も資金繰りに苦労しているといった話も耳にします。

そのため、たとえ少額でも多くの人が寄付すれば大きな金額となり、支援団体はさらに活動の幅を広げ、困っている人たちを救えるのです。

とはいえ、寄付を募っている支援団体が多すぎてどこにすればいいか分からないという方もいると思います。

そこで次では、筆者が特におすすめしたい支援団体をご紹介します。

NGO ACE(エース)の「チョコ募金」

NGO ACE(エース)では、先ほど紹介した「しあわせへのチョコレート」プロジェクトのように売り上げの一部からの寄付だけではなく、個人で金額を決めて直接募金もできます。(手数料の関係で1,000円以上から可能

チョコレートが大好き!という方は、ガーナの子どもたちへの感謝も込めて募金してみてはいかがでしょうか。

国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン

「国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン」では途上国でのさまざまな問題において募金を募り、支援しています。

支援する対象の分野は、貧困、教育、水衛生、難民、保健、災害の6つに分類。

それぞれの募金金額と、支援内容について明記されているため、具体的に想像しながら途上国の子どもたちへの支援ができます。

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SDGs16の達成に向けた日本の企業・団体の取り組み事例

ここからは、SDGs16の達成に向けて取り組みを進める日本の企業・団体の事例を見ていきましょう。

株式会社ゲットイット

はじめに、世界中で絶えない「鉱物紛争」の問題に取り組む企業をご紹介します。

鉱物紛争とは

アフリカ・コンゴ共和国とその周辺で採掘される稀少な鉱物を巡り、1990年代から続いている争いのこと。

不法に採掘された鉱物の資金で、武器購入・戦闘態勢の維持に繋がっている場合もあり、紛争の長期化を招いています。

詳しい状況を知りたい方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。

ハードウェアサービスの販売やサーバーのレンタル・中古品の買い取りと、幅広い事業を行う株式会社ゲットイットは、NPO法人と協同し、身近な電子機器製品の原料である鉱物の調達先の情勢改善に着目している企業です。

鉱物の原料調達ルールを厳格化している企業はすでにありますが、NPOと一緒に問題の根本解決に取り組む、貴重な例のひとつといえます。

ゲットイットは、SDGsの目標に関連する取り組みとして、多くの電子機器に使われる原料の発掘元・コンゴ共和国の情勢に注目しています。

コンゴ共和国では、レアメタルを巡って1998年に紛争が発生。以降、さまざまな問題が続いているのです。

  • 540万人以上もの死者
  • 18歳未満の子どもたちを徴兵
  • 女性への性暴力が多発、被害後は家族に見放される
  • 医療支援が行き届かず、子どもの死亡が増加
  • 教育の機会を与えられない子どもたちが、徴兵のリスクに晒される

こうした問題は、すべてレアメタルの利益をめぐって発生する現実です。

私たちが何気なく電子機器製品を購入することは、知らず知らずのうちに一連の問題に加担している可能性もあると言えるでしょう。

そこで株式会社ゲットイットは、長年コンゴ共和国の支援を続ける認定NPO法人テラ・ルネッサンスと連携し、継続的に資金提供を行うことで、現地に暮らす人々の生活向上に貢献しています。

たとえば、被害を受けた女性・元子ども兵の人々に職業訓練の機会を与え、洋裁や溶接といった新しいビジネスを確立する支援を実施。これによって、経済的に安定した暮らしを実現しています。

紛争鉱物に取り組むテラ・ルネッサンスのインタビュー記事も合わせてご覧ください。

【紛争鉱物問題】認定NPO法人テラ・ルネッサンス|誰一人紛争の犠牲とならない社会を目指して

特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン

世界の誰もが平和で公正な生き方を実現するために、国を超えた協力は必須です。

特に、SDGsの3本柱のひとつ「経済」の面で、公平性がこれからますます重視されていくでしょう。

そこで、たびたび当メディアでも取り上げている「フェアトレード」に焦点を当てて、その取り組みに注目してみましょう。

フェアトレード・ラベル・ジャパンは、国際フェアトレード機構として1997年に設立。2004年、フェアトレード新ラベルの導入と共に、現在の形になりました。

世界のさまざまな場所で生産される商品について、特に貧困に悩まされている発展途上国を中心に、

  • 自由
  • 公平・公正
  • 多様性

を掲げたフェアトレードを推進し、誰もが安心して生きられる社会づくりをサポートしています。

フェアトレードは、グローバル規模で盛んな「貿易」の面から、すべての人々が正当な取引を行ない、貧しさや不平等から脱却するための仕組みです。

今も途上国を中心に、以下のような問題が絶えません。

  • 不当な賃金による労働力の搾取
  • 女性の賃金不平等
  • 児童労働

フェアトレードは、特に大企業の圧力によって、弱い立場に立たされやすい小規模生産者が、正当な取引によって経済的に独立できるよう定められています。

生産者が自ら経済的に独立できるように支援することで、子どもを学校に行かせることができ、女性や若者が対等に働ける環境づくりにつながるのです。

また、対等な立場で取引を行なえるため、生産者・動労者が50%の意思決定権をにぎっています。

公平性を求めて、取引相手の企業だけでなく、大きな組織・政府に対しても声を上げられる体制づくりを構築しているのです。

フェアトレード認証ラベルを受けた商品には、オーガニックコットン素材のアイテムやチョコレート・サッカーボールが挙げられます。

消費者がフェアトレード商品を選択することで、生産者の暮らしを支援できるシステムでもあります。

公益社団法人ガールスカウト日本連盟

平和で公正な未来を築くうえで欠かせない要素のひとつは、将来を担う子どもたちへの教育です。

1世紀以上もの間、自立心を備える少女たちを育ててきたガールズスカウト日本連盟では、暴力、とりわけ当事者でも気が付きにくい「DV」についての教育を行なっています。

その取り組みについて、詳しく見ていきましょう。

ガールズスカウト日本連盟は、1920年に発足した団体です。ガールズスカウト自体は、イギリスで約100年前にはじまりました。

今では国内47都道府県すべてに拠点があり、

  • 自己開発
  • 人とのまじわり
  • 自然とともに

の3点を軸に、さまざまな活動を展開しています。

ガールズスカウトは、就学1年前の少女から成人女性まで参加でき、屋外アクティビティや世界じゅうのガールズスカウトとの交流を行なっています。

自然の中で過ごす知恵を身につけたり、文化や宗教の異なる人とコミュニケーションを取ったり。広い視点と柔軟な思考を育て上げ、どんな環境でも公正に判断し、自分だけでなくまわりのために行動できる女性へ成長するのです。

中でも注目すべき取り組みは、2012年から続く「Stop the Violence(STV)キャンペーン」です。

たとえばその一環として、「デートDV」を知るための活動があります。

実は多くの女性にとって身近な問題であるにもかかわらず、学校での教育が不十分なことから、知らず知らずのうちにDVの被害者になってしまうこともあるのです。

ガールズスカウトでは、7つのストーリーに分けてデートDVの実態を紹介し、相手が誰であれ暴力は絶対に許されないというメッセージを伝えています。

  1. 言葉の暴力
  2. 身体的暴力
  3. 精神的暴力
  4. 精神的・社会的暴力
  5. 性的暴力
  6. カレ、束縛と暴力
  7. 女友達

ほかにも、テーマに沿ったメッセージを写真に撮り、SNSなどに投稿することで、周囲の人へ気軽にデートDVについて知ってもらうきっかけづくりを行なっています。

ガールズスカウト日本連盟の取り組みは、以下の点でSDGs目標とつながります。

  • SDGs目標16への貢献
    キャンペーンを通してDVの実態を周知し、暴力をしてはいけない社会の風潮を高める
  • SDGs目標7への貢献
    年齢や性別・国籍といった要素にとらわれず、誰とでも対等に接する人間性の育成

そのほか、主体的な行動力や世界各国のガールズスカウトとの交流ができる点は、SDGs目標5「質の高い教育をみんなに」にも通じますね。

OKシード・プロジェクト

次に取り上げるのは、誰にとっても大切な「食」に関する取り組みを行う団体です。

農業界ではさまざまな要素から、健康への安全性が十分に証明されていない「遺伝子組み換え食品」が流通しているケースも見られるのが現状。さらには今後、遺伝子を意図的に操作したトマトのような「ゲノム編集生物」の流通も懸念されます。

ここで、農林水産省が2019年に発表した資料を見てみましょう。

以下の図は、2018年時点の「遺伝子組み換え農作物の栽培面積の推移(左)」と、「栽培面積の割合(右)」です。

※GM農作物=遺伝⼦組換え農作物

なお現時点では、日本国内での遺伝子組み換え作物の商用栽培は、基本的に禁止されていますが、上記の円グラフに示されている農作物の輸入は認められています。

家畜の飼料をはじめ、私たちが普段の暮らしで口にしている食品・お菓子などにも使われているのが現状です。

遺伝子組み換え作物を使用した場合の表示義務はありますが、基準や検出方法には疑問が残り、まだまだ議論を深める必要がありそうです。

これらの対策として、すでに欧米では「Non-GMO・GM(遺伝子組み換え、あるいはゲノム編集された食品でない)ラベル」をはじめ、民間によるさまざまなアクションが行われてきましたが、日本ではそれほど大きな動きが見られませんでした!

しかし、ついに「安全な食への平等なアクセス」を助けるプロジェクトが動き出したのです。

2021年8月に立ち上がったOKシード・プロジェクト

OKシード・プロジェクトは、市民によって2021年8月に立ち上がった、非営利ネットワークです。

遺伝子組み換えを行なっていない種・作物を使用した商品に付けられる「OKシードマーク」配布のほか、国内外の食の安全にかかわる情報の発信を行なっています。

当プロジェクトでは、ゲノム編集を行なっていない種で作られた作物、あるいはその作物を使用した食品に対し、Non-GMO・GMであることを示す「OKシードマーク」を作りました。

日本の食品表示法では、遺伝子組み換えでない食品を見分ける表示はあるものの、新たな技術となるゲノム編集による食品の表示義務はありません。

つまり、ほとんどの人にとって「安全な食べ物へアクセスする権利が失われている」ことを意味します。もう少し踏み込んでゲノム編集について見ていきましょう。

ゲノム編集の仕組み

これまでの農業では、長い時間をかけて品種改良がおこなわれ、病気や特定の気候に強い作物が生み出されてきました。

それが技術の進歩により、ある遺伝子を取り除いたり入れ替えたり、自由に「編集」することで、スピーディーに品種改良を行なえるように。

2019年時点で環境省は、「ゲノム編集技術は、遺伝子組換えとは異なる」とし、規制の対象にならないルールになっています。

ただし、この技術に関する人体・自然界への影響は不明瞭で、まだ実証されていません。

特定の遺伝子のみを組み込む「遺伝子組み換え食品」は、すでに世界中で「健康・環境面において避けるべき食べ物」という認識が広がっていますが、ゲノム編集を経た食品に関しては、完全に未知の世界なのです。

このような状況であるため、消費者は選択する権利が必要です。

日本初!ゲノム編集を見分けるマークの登場

そこで、OKシード・プロジェクトは、商品ラベルに「これはNon-GMO・GMです」と示すことで、消費者が安全な食品を選択できるようなマークを作りました。

申請のために、農家は以下の根拠を示す書類を持って申請します。

  • 栽培する作物の種が遺伝子組み換えの対象でないこと
  • 栽培~流通の過程で、対象の作物がほかの遺伝子組み換え作物と混合しないこと

マークの表示は生産側の自己責任となりますが、事前に書類のチェックが入るため、消費者は安心して商品を手にとることができます。

また、こうした書類を揃えることを機に、作物の種の記録をつけ、「誰が」「いつ」「どこで」手に入れた種なのかを明確にしておく大切さを呼び掛けています。

遺伝子組換えやゲノム編集ではないのはもちろん、昔から地域で栽培されてきた在来種を守る取り組みにもつながるからです。

日本の食と自然豊かな未来は、種を守ることからはじまります。

Choose Life Project

日本では、全体的に政治への関心がまだまだ低く、日常会話の中で話題にのぼる機会はあまりないように思います。

しかし、政治は私たちの暮らしに最も身近な存在で、ひとりひとりが真摯に向き合うべき問題です。同時に、政治・社会問題を報道するメディアのあり方にも目を向け、情報の質も問わなければなりません。

そこで、まずは日本の政治・社会問題に鋭く切り込む市民メディア「Choose Life Project(チューズ・ライフ・プロジェクト)」についてご紹介します。

Choose Life Projectは、テレビ報道や映画・ドキュメンタリー制作の現場にいる有志で立ち上げたプロジェクトです。

私たちのメディア」を掲げ、市民のために、市民と一緒につくるメディアを目指しています。

扱う話題は幅広く、日本の政治問題を中心に、有識者・学者など数々のゲストを呼んで番組を制作しています。

多くのメディアが企業スポンサーに頼る中、Choose Life Projectは市民からのサポートで運営しています。

そうすることで、社会に大きな影響を与える組織からの弾圧や制約を受けることなく、自由な発信を実現しているのです。

これまでにさまざまな番組を制作していますが、SNSを中心に話題となった「入管法改正案」や「選択的夫婦別姓」のような問題から、政治を巡る不祥事・発言に対する説明責任を問う討論まで、トピックは多岐にわたります。

ゲストスピーカーには専門家・学者だけでなく、該当問題を取り扱う政治家や市民団体のメンバー、SNSで発信を続ける一般市民が出演。

それぞれの知識と視点から議論を繰り広げ、視聴者への理解を深めて再考させることで、私たち市民が社会システムを変える主役であることを喚起しています。

また、サポーターに向けた勉強会のほか、国会での政府や議員の動向を発信する「国会ウォッチング」、政治的トピックを扱う学者による講義「Choose Life大学」といった企画も行っています。

あらゆる視点で社会のあり方を見つめ、公正な報道を丁寧に続ける、貴重なメディアのひとつです。

日本企業の取り組みは他にも多数

ここまで紹介したもの以外にも、日本企業は様々な取り組みを進めています。

ヤマハ株式会社

ヤマハ株式会社は、2015年から楽器を使った「スクールプロジェクト」を展開しています。楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちに平等な機会を与え、豊かな成長を促す支援を行っています。2018年3月末時点で、ロシアなど4カ国、のべ12万4千人の子どもたちが受講しました。

ソフトバンク

ソフトバンクでは、2015年11月より、携帯電話などへの同性パートナーによる家族割引などの申し込み受付を開始しました。性的少数派の人々への差別や困難を取り除く第一歩です。

また、社員に対しても社内規定上の配偶者として同性パートナーを認め、結婚休暇や慶弔見舞金などの福利厚生を受けられるようにしているほか、LGBT関連の相談窓口も設置しています。

マーケットエンタープライズ

ネット型リユース事業を手掛けるマーケットエンタープライズは、警察など公的機関と連携し、違法な取引を無くすことに努めています。犯罪を減らし、平和な社会を実現するために、2016年度から2020年度までの4年間で、310件以上もの捜査協力をしました。

福井銀行

福井銀行では、マネーローンダリング対策実務検定試験の合格者数を公表し、特殊詐欺防止に取り組んでいます。目標16.4に掲げられている組織犯罪を阻止するための対策です。

そのほか、開発途上国への支援を行うJICA(国際協力機構)債への投資なども行っています。

薬樹株式会社

薬樹株式会社は、古着を回収してリユース業者に売却し、その収益をアフリカの地雷除去や少年兵の社会復帰支援に取り組むNPO法人に寄付しています。寄付された収益は、主にラオスやカンボジア、ウガンダの子どもたちのために使われています。

紹介した企業の他にも、SDGs16の目標達成に取り組む企業は増えています。平和と公正を、1つの企業だけで達成することは難しいですが、少しでも多くの団体が取り組むことで、大きな変化に繋げることができます。特に「公正」の部分では日本が抱えている課題も多く、日本企業が貢献できることは多いでしょう。

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SDGs16の達成に向けた世界の企業・団体の取り組み事例

続いては、世界の企業や団体の取り組みを紹介します。

TRIWA(スウェーデン)

はじめに紹介するのは、北欧スウェーデンの時計メーカー・TRIWA(トリワ)の取り組みです。

TRIWAは、2007年スウェーデンの首都・ストックホルムで立ち上がった小さな時計ブランドです。

ブランド名は「Transforming the Industry of Watches(時計業界に変革をもたらす)」の頭文字から来ています。

精巧なつくりと、遊び心を忘れないデザイン性の高さで、年代・性別を問わず誰にでも使いやすい点が特徴です。

TRIWAでは、「Time For Peace」というプロジェクトを行なっています。

銃器から作られた金属「Humanium Metal」を用いた商品開発・販売を通し、平和を願う活動を展開中です。

Humanium(ヒューマニウム)とは

内部紛争で使用される銃のような、生物の命を奪う目的で扱われるアイテム、とりわけ違法銃器を溶かし、不純物を取り除いてできた金属のこと。

コラボレーションを行なっているスウェーデンのNPO法人・Humanium Metalのサイトによると、プロジェクト開始時の2016年から2020年までの間、エルサルバドルとザンビアで見つかった違法銃器だけで、なんと12,000個を超えました。

人を傷つけるために使用された金属を、平和を願うアイテムへつくり変えることで、手にとった人々に平和のメッセージを伝えたい、という思いが込められています。

また、売り上げの一部は、紛争によって引き裂かれた地域の復興支援・武器によって負傷した被害者への医療サポートに充てられます。

時計のデザインはカジュアルで使いやすいため、毎日の暮らしで気軽に身に着けられる点はうれしいポイントです。

Accountability Lab(リベリア・スリランカなど)

政治の腐敗は、犯罪や不平等を引き起こし、社会の崩壊につながる、とても深刻な問題です。

それを防ぐために重要なのは、行動を起こせる市民と、信頼できる組織の存在ではないでしょうか。

未来ある社会に向けて行動できる市民が集まる団体は、世界中で増えています。

ここでは、アジア・アフリカ地域を中心に活動する「Accountability Lab(アカウンタビリティー・ラボ)」を取り上げます。

Accountability Labは、2012年に設立したNPO団体です。

政治や社会の仕組みを成り立たせるために、責任ある市民や組織の育成・発信などを行なっています。

リベリアやネパール・パキスタンでの活動からはじまり、現在はアフリカやメキシコ・アフリカ諸国と、海を越えて広まっている組織です。

Accountability Labでは、社会の中で個人・または組織の一員としてどのように声をあげたらいいのか?について、オンライン・オフラインで取り組んでいます。

たとえば「INTEGRITY ICON」というプロジェクトでは、その国の政府関連機関に従事する人々の活動にフォーカスし、ドキュメンタリー映像にまとめて市民へ紹介。視聴者が投票で優秀賞を決めるというものです。

アフリカの道路整備を進める職員や、国立病院で働く医療従事者が、どのようにして社会に貢献しているか?を知る機会となり、視聴者である市民ひとりひとりが社会への参加者であることを呼び掛けています。

例として、2019年度に優秀賞を受賞した、ネパールの看護師施設で働く人の動画を載せておきます。

また、別プロジェクト「SDG 16 INNOVATION CHALLENGE」では、ワークショップを通して参加者同士が、

  • すべての人が公平に生きられる社会システムを作るには?
  • 女性の声を法律に反映するには?

のようなトピックについて議論しあう機会づくりを提供。

最後にそれぞれのプラン発表を行い、今後の活動につなげる取り組みを続けています。

社会は大きなものに見えますが、行動で変えることができるのは、市民ひとりひとりである、というメッセージを伝え、平和で公正な社会づくりのために輪を広げているのです。

市民への行動の呼びかけと、政府機関で働く人の取り組みをオープンにする取り組みは、どちらも公正な社会システムの構築に欠かせません。

世界の政府の取り組みと対策|フィンランド

世界の政府の取り組みも1つ紹介します。

フィンランドの『ネウボラ』

フィンランドでは、妊娠期から就学前まで、政府が設置した“ネウボラ(=アドバイスの場)“で、無料の検診や健康サポートを受けることができます。誰もが平等に必要なサポートを受けられるようにすることで、出生登録のない子どもを生み出すことを阻止し、子どもが健やかに成長することを目指しています。

ここまで国や企業、団体の取り組みを見てきました。世界や日本の現状を知った上で、私たちにできること、すべきことは何でしょうか。紛争や難民問題などはとても大きな課題ですが、私たちにも目標16の達成のために今すぐ始められることがあります!

【関連記事】【2023年最新】SDGsランキング1位フィンランドの取り組み

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まとめ

SDGs16達成のためには、紛争を撲滅させること、暴力や虐待を受ける子どもをなくすことなど、大きな課題を解決する必要があります。政治への不信感や、性的少数派の人々への差別など、日本においても公正の保たれた中でも生活は難しい内容です。

国際レベルで解決していかなくてはならない大きな課題がたくさんありますが、SDGs16達成のためには、情報を友人と共有したり、SDGs16に取り組む企業を支援したり、私たち1人ひとりも行動することができます。

ぜひ今から、できることを始めましょう!

この記事の監修者
阪口 竜也 監修者:フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)