SDGs16「平和と公正をすべての人に」の現状と取り組み事例“私たちにできること”

SDGsの目標16である「平和と公正をすべての人に」は、文字通り、世界の平和と公正を実現することを目標としています。一方で現在の世界には、紛争や内戦、子供への虐待や人身売買、汚職などが蔓延しています。紛争や人身売買などは発展途上国に多いイメージで、日本にいると現実としてイメージしづらいかもしれませんが、2019年度には19万件以上の虐待を児童相談所は受けており、SDGs16は発展途上国のためだけに生み出されたものではありません。

決して他人事ではないSDGs16への理解を深めるために、SDGs16が目指す世界の実現に向けて解決すべき課題、そして私たちにできることを紹介します。

目次

目標16 「平和と公正をすべての人に」とは?

“平和”というと、真っ先にその逆の紛争やテロをイメージする人も多いと思います。しかしSDGs16は、紛争だけでなく、暴力や差別の根絶、そして国民を守るための公平な裁判が行われる社会を目指すために掲げられています。

具体的には、“持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する“と定められており、法、教育、制度など多角的な視点から考えていく必要があります。

目標16を達成するために設定されている、具体的な12つのターゲットの概要を見ていきましょう。

目標16を構成する12個のターゲット

16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力や暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる

”未だに世界で6人にひとり(3億5,700万人以上)の子どもが、災害や紛争などの緊急事態下で暮らしています”

16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引およびあらゆる形態の暴力や拷問を撲滅する

”世界の国で、子どもへの暴力を法で禁止している国は、たったの60か国ほどしかないそうです”

16.3 国家あるいは国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する

”国民を守るためには、裁判が正しく平等に行われる必要があります”

16.4 2030年までに、違法な資金および武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復・返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する

”組織犯罪が広がるということは、紛争や人身売買に繋がり罪のない人々が被害に合います”

16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる

 ”汚職や賄賂が大幅に減少すれば、世界の税収がぐっと増えると考えられています”

 16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる

”公共機関の腐敗により国が低所得に陥ると、教育や医療などに充てるお金が減ってしまいます”

16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型および代表的な意思決定を確保する

 ”選挙は、政治に対して意思を示すことができる重要な機会のひとつです!”

16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する

 “『グローバル・ガバナンス機関』とは、世界の問題を解決するためにある組織や総会のことです”

16.9 2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する

”まだ世界には戸籍登録されていない子どもたちが存在し、身分証明がないとワクチンなどの医療を受けられません”

16.10 国内法規や国際協定に従い、だれもが情報を利用できるようにし、基本的自由を保護する

”図書館やインターネット環境を整え、全ての人が読み書きをできるようになり、情報格差をなくすことが必要です”

16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。

”人材や資金が不足している開発途上国が変わるためには、その欠けている部分を補ってくれる国際機関に力を借りるなど、国際協力が不可欠です”

16.b 持続可能な開発のために、差別のない法律や政策をすすめ、実施する

”差別のある法律や政策は、積極的に変えていく必要があります”

世界平和と公平を目指すSDGsの目標16では、12個のターゲットによって貧困や紛争による被害を減らし、正しい政治が行われるよう設定されました。紛争の回避や暴力の低減などは、大きな課題で個人や特定の企業だけでの解決は難しく、途上国にはグローバル・ガバナンス機関への参加を促し、先進国には、自国の法や政策の整備を呼びかけています。

なぜ、目標16が必要なのか?

目標16「平和と公正をすべての人に」は、誰もが暴力や差別を受けることなく、学校で勉強をしたり、予防接種をうけることができる社会制度構築のために掲げられています。この章では、なぜ目標16が必要なのか、そして世界の現状と課題は何なのかを見ていきましょう。

目標16が必要な理由

平和で公正な社会を維持するためには、地球上の誰もが、紛争やテロによって被害を受けることがなく、暴力を受けずに育ち学校へ通い、裁判では公正な判断が下される環境が必須です。

しかし、未だあらゆる場所で紛争や暴力によって命を失う子ども身分証明がなく学校に通えない子ども性差別人種差別によって仕事に就けない人々が存在するのが現実です。

このような現状を解決に導くために、目標16が必要です。

世界が抱える平和の現状と課題

平和の実現を目指すべき今の世界には、紛争が続いていたりと目をそらしたくなるような事実もまだ多く存在します。しかし、現実としっかり向き合い、課題解決に向けて行動することが平和への第一歩です。

まずは世界の現状について知っておきましょう。

紛争と災害

 

2018年に国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」が発表した報告書によると、未だ世界で6人にひとり(3億5,700万人以上)の子どもが、災害や紛争などの緊急事態下で暮らしています。

2011年の平和的なデモに端を発したシリア紛争も、終わりが見えないまま10年が経過してしまいました。徴兵される子どもも後を絶たず、日本ユニセフ協会の報告によると、シリア紛争だけでも4,600人を超える子どもが兵士として加わっています

引用元:ユニセフ

武装勢力に拉致・誘拐されたり、あるいは脅されたり洗脳されたりして「子ども兵士」となるだけでなく、紛争下で性暴力の被害にあう子どもも多いのです。無事紛争を生き抜いても、紛争時の記憶がトラウマになってしまうこともあります。

子どもが教育の機会を奪われるだけでなく心身ともに想像を絶する苦痛を受けるこのような現状は、すぐにでも終わらせなくてはなりません。

紛争はさまざまな理由で起こりますが、不公正な法律や選挙の実施などが、紛争を解決できない大きな要因のひとつです。SDGsの目標16.3「国家および国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する」も、未だ多くの国や地域で達成されていません。

難民

引用元:UNHCR

紛争や内戦が起きれば、故郷を追われて難民となる人々も出てきます。シリア紛争によりその数が増えているということも、今の世界が抱える大きな問題です。

2019年、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)本部は、2018年には世界の全難民の数が7,000万人を超えたと発表しました。世界では7,000万人もの人が、安心して住める場所がなく、故郷を追われているということです。

こうした難民の約40%が18歳未満の子どもで、生まれた土地からの移動を強いられる中、家族と生き別れになったり、充分な教育を受けられなくなったりしています。教育を受けられなければ報酬の高い仕事に就けず、貧困から抜け出すことができません。

子どもへの暴力・搾取

子どもに対する家庭内暴力性的搾取も世界中で起きています。しかしその事実は隠されてしまうことが多く、助けを求めることができずに命を落としてしまう子どもが世界中にたくさんいます。

国連事務総長による2006年の「子どもに対する暴力に関する調査」の統計だけでも、年間約5億人から15億人の子どもが暴力を経験し、毎年100万人の子どもたちが売春やポルノグラフィーによって性的に搾取されていると報告されています。また、子どもへの暴力や性的虐待は隠されてしまう部分も多いため、氷山の一角だと予想されます。

信頼できるはずの大人から暴力を受けた子供たちは、大人になっても人を信用できないなど、深いトラウマを抱えることになります。また、児童売春などにより性的に搾取された子どもは、望まない妊娠やHIVへの感染の危険にさらされてしまいます。

法的な身分証明

【出生登録のされていない5歳未満の子どもの地域分布】

引用元:ユニセフ

世界には、「存在を証明されていない」子どもも数多く存在します。

2019年12月11日、ユニセフは世界の1億6,600万人もの子どもが出生登録をされていないと明らかにしました。グラフから読み取れるように、エチオピアなどのアフリカや、インドやパキスタンなど、アジアの低所得国を中心にで起こっている現状があります。

知識不足や出生証明書の申請料金の高さなどが原因で出生登録されなかった子どもたちは、法的な身分証明がないため、教育やワクチンなどの医療を受けられない状態に陥ります。また、出生登録がないと学校に通うことができず家にいる時間が長くなり、虐待や搾取の対象になりやすいので、「子どもへの暴力・搾取」問題を解決するための最初の段階として考えていく必要があります。

汚職と贈賄

世界には、汚職や贈収賄といった不正もはびこっています。

腐敗、特に汚職に対して取り組む国際非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」の2020年の調査によると、世界の汚職ランキングでには以下の国が上位に並んでいます。

  • 南スーダン
  • ソマリア
  • シリア
  • イエメン

いずれも、長く続く内戦で国の社会・経済がストップしている開発途上国ばかりです。

汚職ランキングとは具体的に、政治や警察で汚職や贈収賄が行われているかなどを元に発表されます。ランキング結果で上位に並んでいる国ほど、人々の生活を守る司法や経済活動が正しく機能していないことを意味します。一方でトランスペアレンシー・インターナショナルは、デンマークやニュージーランドは、公務員や政治家の腐敗がなく清潔であることを示す腐敗認識指数が高いと発表しています。

拘留者への措置

国家や軍事組織などに逮捕・拘留され、公正な裁判を受けられず自由を奪われている人が数多くいることも、公正な社会の実現を妨げる大きな問題です。

国際協力分野の開発コンサルタントである(財)国際開発センターの発表によると、2018年における世界の拘留者のうち、約30%は裁判を受けずに拘留されています。主に南アジアや中南米で多くの人が拘留され続けており、中には暴力や拷問を受け続ける人々がいます。

軍事政権や独裁政権などでは、自由や権利を求めた結果「国の秩序を乱した」などといわゆる政治犯として拘留される例も少なくありません。

組織犯罪・麻薬

組織的な薬物や武器の取引、また人身売買などの犯罪は、法律がきちんと整っていない発展途上国で起こりやすいです。ユニセフは2012年から2014年の間に、世界106か国で6万3,000人以上の人身売買被害を確認しました。人身売買被害者の大部分が女性で、70%以上を占めているといいます。

また、麻薬など、違法な薬物問題は地球的規模の深刻な問題です。薬物による死亡例は後を絶たず、2018年の世界薬物報告によれば、薬物による死亡例の23%は15歳から29歳の若者たちだと報告されています。国際的薬物犯罪組織による密輸は巧妙化しており、国際的に協力して課題解決に取り組む必要があります。

さらに、自国を守るための合法な武器の取引ではなく、違法取引によって犯罪集団やテロリストの手に渡った武器は、紛争地で使われます。治安維持能力の低い違法な武器の取引は、武器が民間人の手に渡る原因となり、家庭内暴力や子ども兵を増やす要因となります。

日本が抱える平和の現状と課題~差別は身近なところにある~

現代の日本は平和で、前述のような人権の問題はないと思っている人もいるかもしれません。しかし日本にも確実に、公正な権利が守られていない現状があります。

日本が抱える平和と公正さについての現状と課題を見ていきましょう。

子どもへの暴力・搾取

子どもへの暴力や虐待は、発展途上国だけの問題ではありません。児童虐待防止に取り組む「オレンジリボン運動」によると、日本国内で週に1人の子どもが虐待によって死亡しているというデータがあります。その数は、年間約50人にものぼります。

また、性的虐待児童買春に巻き込まれた子ども、商業目的で性的な写真や動画を撮られた青少年少女は、性病になったり、一生どこかで自分の写真や動画が見られているかもしれないという恐怖を抱え続けることになります。

暴力や性的虐待の残酷な被害から子どもたちを守るために、児童相談所ダイヤルの周知啓発、学校等における相談体制の強化が求められます。また、子育てに苦悩し、手を挙げてしまう親へのケアも重要になってきます。

ドメスティック・バイオレンス

内閣府男女共同参画局は、年間10万人以上もの被害者が、配偶者からの暴力について支援センターに相談していると報告しています。被害者の多くは女性で、男女格差社会や経済的な問題子どもの教育環境の維持などを理由に、関係を断ち切れずに解決されないケースが多いです。

2001年に被害者の保護を図るための「DV防止法=配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」が制定されましたが、相談までたどり着けない被害者への対策や、暴力を断ち切った後の精神的ケアなどの課題があります。被害者は長期間の身近な相手から暴力を受けることで、身体への影響だけでなく、うつ病などの精神疾患に罹患することもあり、一刻も早く暴力から抜け出しケアを受ける必要があります。

政治の腐敗

汚職や腐敗の防止を目指す国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」による「公務員の腐敗度ランキング」で、日本は20位にランクインしています。各国の公務員や政治家が、賄賂などに応じるかどうかなどを数値化した調査です。

2020年には、日本の政治家による、事実確認に必要な公文書の破棄や、書類改ざんを迫られ自殺した財務省職員に対する調査不足などが問題視されました。そのような収賄疑惑から、日本の政治はデンマークやニュージーランドなどと比べて腐敗度が高いと認定されました。

政治の腐敗は、公正な社会の妨げになるほか、多額の税金が無駄づかいされ、国民の信頼感も損います。IMF(国際通貨基金)によれば、政治の腐敗度が高い国ほど脱税によって税収が少なく、さらに子どもの学力テストの結果も悪いというのですから、やはり見逃すことのできない問題です。

選挙の投票率

下の数字をご覧ください。

1 オーストラリア・・・91.9%

2 ルクセンブルク・・・89.7%.

3 ベルギー・・・88.4%

4 スウェーデン・・・87.2%

30 日本・・・52.7%

これは、世界の投票率とランキングです。上位の国々の投票率が80%を超える中、日本の投票率は52.7%にとどまっています。

2016年7月10日、日本の選挙権が18歳に引き下げられて初めておこなわれた参議院議員通常選挙も、「投票率54.70%」という結果でした。若者の選挙・政治への無関心が問題視されています。

目標16を達成するためには、腐敗や汚職のない透明度の高い政治のありかたが求められます。その政治を作る第1歩とも言える選挙率が低いのは、先進国として危機感を覚えるべき現実です。

男女不平等・LGBTへの差別

いまだ根強く残る男女不平等の問題。近年ではさらに「LBGT」や「LGBTs」と呼ばれる性的少数者(マイノリティ)への偏見や差別も問題となっています。

世界経済フォーラムによって2019年に発表された「世界ジェンダー・ギャップ報告書」によると、日本のジェンダーギャップ指数は153か国中121位で、男女の格差が他国に比べても大きいことがわかりました。同報告書では、日本では政治やキャリアなどあらゆる場面で女性の立場が弱い、と指摘されています。

そもそも「ジェンダー」とは、生物学的な性の違いから定義された社会的な在り方を示す概念です。「男性らしさ」や「女性らしさ」、「男なら」「女だから」という決めつけが、男女間だけでなく性的マイノリティへの偏見や差別を生んでいます。

LGBTについては、次の章でもう少し詳しく解説します。

SDGs16のポイント 性的少数者「LGBT」

人と地球と繁栄のためのSDGsを達成していく上で、誰一人取り残される人がいてはなりません。平和と公正を目指すSDGs16達成に取り組んでいく上で、性的少数者「LGBT」に対する差別や偏見をなくしていく必要があります。

「LGBT」とは

L=Lesbian(レズビアン/女性同性愛者)

G=Gay(ゲイ/男性同性愛者)

B=By sexual(バイセクシャル/両性愛者)

T=Transgender(トランスジェンダー/心の性別と体の性別の不一致)

の略で、生物学的な「男」「女」では区別できない自己意識や指向を持つ人を指します。

さらに「LGBT」のどれにも当てはまらない人がいることから、「LGBTs」と呼ばれることもあります。「LGBTs」の「s」は「SDGs」と同じ複数形のsであり、アセクシャル(無性愛者=性的思考のない人)やクエスチョニング(性的指向が定まっていない、定めない人)などが含まれ、性の多様性が明らかになってきています。

「LGBT」の問題は最も身近で、誰もが経験?

男なのに女っぽい」「女のくせに男みたい」などと誰かに言ってしまったことはありませんか?悪気がなく冗談で言ったつもりでも、相手を傷つけている可能性があります。

LGBTかどうかは見た目ではわからないことも多いです。「男」か「女」かではくくれない人がいることを理解し、男女で決めつけずその人のありのままを認めることが重要です。

2019年に行われた「LGBT意識行動調査2019」(株式会社LGBT総合研究所)では、全国の20代~60代の約10%がLGBTやそれ以外の性的少数者だという結果が出ています。「私の周りにはいないから」と思うかもしれませんが、同調査では約8割の人がカミングアウトしていないということもわかっています。

私たちの周りにある「差別」

10人に1人の割合でLGBTその他マイノリティの人がいるとすれば、学校や職場など身近にいても全くおかしくはありません。やっと日本でもLGBTへの理解が深まりつつありますが、まだまだ性的少数者への差別やいじめはなくなりません。

性的マイノリティを理由に、就職の内定を取り消されたケースもあります。LGBT関連の教育事業などに取り組むNPO法人「ReBit」の2019年の調査によると、同性愛者や両性愛者の40%以上トランスジェンダーの87%以上が、新卒就活時に何かしらの困難に直面したという結果が出ています。

また、日本では同性婚を認める法律は存在していません。同性カップルのパートナーシップ制度は全国で100以上の自治体に導入されていますが、法的な効力はありません

法的な効力がなければ、配偶者控除や健康保険の被扶養者としての負担軽減が受けられず、遺産相続もできません。親族として認められなければ、重大な病気になったときに面会ができない可能性もあるのです。

対策はあるの?

SDGs16の目標達成のためにできる対策はさまざまですが、平和で公平な世界への鍵を握る3つの対策について解説します。

  • 発達途上国と先進国の協力
  • 誰もが納得する法律と制度の策定
  • 子どもへの教育環境の確立

発達途上国と先進国の協力

人材や資金が限られている発展途上国での紛争や暴力で命を落とす人をなくすためには、世界の組織レベルで力を貸しあう必要があります。積極的に発達途上国のグローバル・ガバナンスへの参加拡大を行っていくことが、紛争のない平和な世界へ繋がっていきます。

誰もが納得する法律や制度をつくる

「世界が抱える平和の現状と課題」で紹介したように、発展途上国には生後、出生登録されることなく、教育や医療など必要なサービスが受けられない子どもがいます。政府レベルで誰もが必要なサービスを受けられる環境を作ることで、出生登録のない子どもや教育を受けられない子どもを減らすことができます。

すべての人が納得する法律や制度を整えてはじめて、誰もが平等に安心して暮らせる社会が実現するのです。

子どもたちが安心して教育を受けられる環境をつくる

紛争地域では食べ物や水など、生きていく上で最低限のものが必要とされているのはもちろんですが、平和で公正な社会を確立するためには、未来を受け継ぐ子どもたちへの教育環境を整えることが重要です。

目標16に対する取り組みと対策

課題の多い目標16ですが、近年は多くの企業や団体が取り組みを開始しています。

世界の企業/団体の取り組み事例

まずは世界の企業の取り組みを紹介します。

『セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル』

セーブ・ザ・チルドレンは、2016年から「子どもを誰ひとり取り残さない(Every Last Child)」というキャンペーンを行っています。

キャンペーン内容

ワクチン接種などで防げた子どもの死をなくすこと

すべての子どもに平等な教育の機会を与えること

そして子どもに対する暴力をなくすこと

などへの取り組みです。目標16-2(子どもへの暴力の撲滅)や16-9(法的な身分証明の提供)を達成するためのキャンペーンです。

世界の政府の取り組み事例

続いては世界の政府の取り組みです。

フィンランドの『ネウボラ』

フィンランドでは、妊娠期から就学前まで、政府が設置した“ネウボラ(=アドバイスの場)“で、無料の検診や健康サポートを受けることができます。誰もが平等に必要なサポートを受けられるようにすることで、出生登録のない子どもを生み出すことを阻止し、子どもが健やかに成長することを目指しています。

日本の企業/団体の取り組み事例

次に日本の取り組みを見ていきましょう。

『ヤマハ株式会社』

ヤマハ株式会社は、2015年から楽器を使った「スクールプロジェクト」を展開しています。楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちに平等な機会を与え、豊かな成長を促す支援を行っています。2018年3月末時点で、ロシアなど4カ国、のべ12万4千人の子どもたちが受講しました。

『ソフトバンク』

ソフトバンクでは、2015年11月より、携帯電話などへの同性パートナーによる家族割引などの申し込み受付を開始しました。性的少数派の人々への差別や困難を取り除く第一歩です。

また、社員に対しても社内規定上の配偶者として同性パートナーを認め、結婚休暇や慶弔見舞金などの福利厚生を受けられるようにしているほか、LGBT関連の相談窓口も設置しています。

『マーケットエンタープライズ』

ネット型リユース事業を手掛けるマーケットエンタープライズは、警察など公的機関と連携し、違法な取引を無くすことに努めています。犯罪を減らし、平和な社会を実現するために、2016年度から2020年度までの4年間で、310件以上もの捜査協力をしました。

『福井銀行』

福井銀行では、マネーローンダリング対策実務検定試験の合格者数を公表し、特殊詐欺防止に取り組んでいます。目標16.4に掲げられている組織犯罪を阻止するための対策です。

そのほか、開発途上国への支援を行うJICA(国際協力機構)債への投資なども行っています。

『薬樹株式会社』

薬樹株式会社は、古着を回収してリユース業者に売却し、その収益をアフリカの地雷除去や少年兵の社会復帰支援に取り組むNPO法人に寄付しています。寄付された収益は、主にラオスやカンボジア、ウガンダの子どもたちのために使われています。

紹介した企業の他にも、SDGs16の目標達成に取り組む企業は増えています。平和と公正を、1つの企業だけで達成することは難しいですが、少しでも多くの団体が取り組むことで、大きな変化に繋げることができます。特に「公正」の部分では日本が抱えている課題も多く、日本企業が貢献できることは多いでしょう。

現状を知った上で、私たちにもできること

世界や日本の現状を知った上で、私たちにできること、すべきことは何でしょうか。紛争や難民問題などはとても大きな課題ですが、私たちにも目標16の達成のために今すぐ始められることがあります。

難民支援・子どもの保護活動を応援する

紛争によって被害を受ける人々や、教育を受けられない子どもたちを救う1番身近なアクションが、NGOやNPOの活動、SDGsに取り組む企業を応援することです。教育支援から食糧支援まで、さまざまな支援を行っている団体がいくつも存在します。

それらの団体に寄付をしたり、イベントに参加したりすることが、遠く離れた国々に住む子どもたちを救う第一歩になります。また、消費者としてSDGs16に取り組む企業のサービスを利用するということは、その企業を支援することになり、SDGsへの取り組みを応援することに繋がります。

世界の戦争や暴力について知る、そして伝える

世界の紛争や難民問題、そして日本の社会問題は、自分とは違う世界の話のようですが決してそうではありません。まずは知ろうとする意識を持ち、正しい知識を身に付けることが大切です。

そしてもう1つ大切なのは、周りの人に伝えること

例えば募金1つとっても、自分ひとりで寄付できる額は限られていますが、戦争や暴力の現状を知り、何ができるかを考え周りの人に伝えることで、協力してくれる人を増やすことができます。そして伝えた相手がまた他の人に伝えることで、大きな力になっていきます。

まずは知る、そして伝える。そして相手がさらに他の人に伝えることで、社会全体の意識をも変えていける可能性があるのです。

選挙に参加するなど、積極的に政治に関わる

選挙は、国民が自分の意見を政治に届けることができる、重要な場です。政治に関わることは、すべての人に公平な社会を作ることに繋がります。

現代の日本では選挙に行かない人も多く、政治参加への意識の低さが課題となっています。しかし「選挙権」はその名の通り私たちに与えられた権利です。かつては一部の人のみ、男性のみが与えられており、戦争が終わって初めて20歳以上の男女すべてに選挙権が与えられました。世界には、この権利さえ未だ与えられていない国や地域も数多く存在するのです。

選挙には必ず行く、1人ひとりがそう決めれば、社会も大きく動く可能性があります。

まとめ

SDGs16達成のためには、紛争を撲滅させること、暴力や虐待を受ける子どもをなくすことなど、大きな課題を解決する必要があります。政治への不信感や、性的少数派の人々への差別など、日本においても公正の保たれた中でも生活は難しい内容です。

国際レベルで解決していかなくてはならない大きな課題がたくさんありますが、SDGs16達成のためには、情報を友人と共有したり、SDGs16に取り組む企業を支援したり、私たち1人ひとりも行動することができます。

ぜひ今から、できることを始めましょう!

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)