#インタビュー

株式会社クラス|家具のレンタルサービスで「捨てない、持たない」循環型社会を実現

株式会社クラス 代表取締役社長 久保さん インタビュー

株式会社クラス 代表取締役社長 久保さん

久保 裕丈 

2005年3月東京大学工学部卒業。2007年3月東京大学新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年4月米系のコンサルティング会社A.T.Kearneyに入社。商社・メーカー・金融機関等への全社戦略策定や企業買収を手がける。2012年、ミューズコー株式会社を設立し、2015年に売却。その後、個人で数十社の企業顧問を務める。2017年、Amazonプライム・ビデオの人気恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン シーズン1』にて初代バチェラーに抜擢。2018年、より自由で心地よい暮らしを提供することを目指し、家具・家電のサブスクリプションサービス「CLAS(クラス)」を展開する株式会社クラスを設立と同時に代表取締役社長就任。

introduction

家具家電のレンタル・サブスクリプションサービス「CLAS(クラス)」を運営する株式会社クラス。廃棄に際して環境負荷の大きい家具家電のレンタルを通し、「捨てない・持たない」という新しい形のエシカル消費に貢献しています。

本日は、代表取締役社長・久保さんにCLASの取り組みや、サービスが目指す姿についてお伺いしました。

ソファ、ベッド、空気清浄機からベビー用品まで。幅広いラインナップ

–はじめに事業内容をお聞かせください。

久保さん:

弊社は家具や家電、インテリアのサブスクリプションサービスを個人・法人向けに提供しています。自宅やオフィス、モデルルームやマンスリーマンション向けにもレンタルを行っています。

–モデルルームやマンションにも!個人宅ばかりではないんですね。

久保さん:

実は、これまでモデルルームの家具はレンタルではなく買っていたんです。ですから展示が終わる度に、家具を捨てるケースが多々ありました。今は、そうしたところに我々のサービスを使ってもらい、効率的かつゴミも出ない形でモデルルームを作っていただいています。

–展示だけして捨ててしまうのはもったいないですものね。CLASが取り扱っている商品にはどんなものがありますか?

久保さん:

ソファ、テーブル、ベッドなど通常の家具はもちろん、家電は冷蔵庫、洗濯機のようないわゆる白物家電からテレビといった黒物家電、あとは空気清浄機まで扱っています。ジャンルでいうと、ベビー・キッズ向けの商品もあります。

<取扱商品例>
<取扱商品例>

–かなり幅広いですね。最近はリモートワークをする方も増えていますが、その辺りの需要もやはり多いのでしょうか。

久保さん:

はい。自宅のワークスペースに加え、コワーキングスペース向けのご注文もすごく増えています。ずっと自宅にいて仕事をし続けるのが厳しかったり、ご家族がいて家で仕事をしづらい方が、いわゆる避難所としてコワーキングスペースを使うケースが多いようです。

家具・家電の使い捨て文化を変えたい

–SDGsに関する具体的な取り組みの内容をお聞かせください。

久保さん:

徹底して意識しているのは、粗大ゴミの廃棄を減らすことです。家具や家電はどんどん低価格化が進んでいますから、引っ越しのたびに全部捨てては新しく買い換えたりということもありますよね。

そして、もし使ってみて「合わない」と思ったら、我慢して使い続けるか、捨ててまた買い換えるかしかできませんでした。

–たしかに、家具が合わないとなったら、その2択になってしまいますね。

久保さん:

弊社はこの家具・家電の使い捨て文化を変えたいと思っています。僕自身も以前は、引っ越すたびに家具を全部捨てては買い換えるということをしていました。でも、粗大ゴミとして家具が運ばれていく、その光景を見るのはすごく心苦しいと感じていました。

–そのときの気持ちが、現在のCLASの事業に繋がっているのですね。

久保さん:

はい。弊社には修理やクリーニングのできる職人がいます。その職人の手によってリファービッシュして生まれ変わった家具を次の方に回していく。この循環を強く意識しています。事業内容としては、サーキュラーエコノミー(循環型経済)のど真ん中です。

<家具のリペア(実際の画像)>
<家具のリペア(実際の画像)>
<家電のクリーニング(実際の画像)>
<家電のクリーニング(実際の画像)>
<リファービッシュのイメージ写真>
<リファービッシュのイメージ写真>

–CLASで扱っている家具・家電は自社で製造しているのですか?

久保さん:

自社のPB家具は全体の2割ぐらいです。残り8割はメーカーさんから仕入れています。ただ、売り上げに占める比率でいうと、実はPB家具の方が大きかったりします。

–PB家具にはどんな特徴がありますか?

久保さん:

組み立てやすさ、修理のしやすさにこだわって企画や商品の設計をしています。ソファやベッドといった大物家具は組み立て・解体がすごく簡単で、使っているうちに傷や汚れがついたときは修繕も容易です。

–ユーザー目線で見ると、借りているものですから傷つけたり汚したらどうしようという不安は常にあります。そこのフォローが厚いというのは嬉しいですね。

<リファービッシュのイメージ写真>
<簡単に組み立て・解体できるソファー>

久保さん:

はい。特に汚れが気になるベッドマットやソファーカバーなども、弊社のPB品は丸洗いができますし、クッションの中が汚れたらそこだけ交換することもできます。

–手入れしやすさ、取り替えやすさもあるのですね。

久保さん:

家具はそれぞれ細かいパーツで分けられるようになっています。傷や汚れがあったらその箇所だけを取り替えて、できるだけ完璧な状態で次のお客様にお送りすることを心掛けています。

他社メーカーの商品も扱うことで知見が増え、より循環に適したPB家具の開発ができました。例えば家具に使うボルトは全て共通化しているので廃棄も減らせます。

–同じパーツを使っているから、壊れたり古くなったりしても家具ごとに異なるパーツを用意する必要がないのですね。

CLASで人気の商品はなんでしょうか?

久保さん:

大物家具・家電です。これらは他の家具・家電に比べて引っ越しの際の運搬や組み立てが大変で、捨てるときもかなりの労力がかかります。こうした負担を解消したいというユーザーのニーズがあって、我々のサービスが利用されているのかなと思います。

家具・家電のシェアリングエコノミーの担い手に

–事業を始められたきっかけは何でしょうか?

久保さん:

もともと引っ越しの多かった私自身が、こういうサービスを欲しかったというのがあります。

それに、家具というのはとても環境負荷が大きいものです。使用している木材の量も多いですし、ベッドのスプリングは廃棄のときに相当処分が大変だったりするんですよ。

–大きい家具であればあるほど環境負荷が大きそうです。

久保さん:

メルカリさんをはじめとして、シェアリングエコノミーが少しずつ普及してきています。けれど、取引されるのは洋服など小さいものが圧倒的に多い。

家具・家電といった大物の取引はまだまだ少ないんです。最低2人1組でないと運べなかったり、かなり綿密に搬入経路のヒアリングが必要だったりと取引の難易度が高いためです。

個人間のシェアリングエコノミーで家具・家電はなかなか扱いきれません。ですから我々のような業者が入って、ちゃんと責任を持って循環させていくことが必要です。

–家具・家電のシェアリングエコノミーの担い手になるということですね。

久保さん:

それから個人的な意識の変化として、サービス立ち上げ後に犬を飼い始めたのですが、以前よりも環境が気になるようになりました。街のそこかしこにゴミが捨てられているのを見ると、「もっと人々の意識が変わればいいのにな」と感じます。

弊社の直接的な目的は粗大ゴミの廃棄量を減らしていくことですが、間接的には、サービスを通じて皆さん一人ひとりの意識改革が少しでも進むきっかけになればいいなと考えています。

料金や商品ではない。お客様がCLASに期待することは

–事業に対する反応はいかがでしょうか?

久保さん:

先日、お客様に「CLASに期待することは何か?」とアンケートをとりました。そうしたら、約4割の方が「ものを捨てない社会づくり」に期待していることがわかりました。

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–料金や商品ではなかったというのが、ちょっと意外ですね。

久保さん:

弊社にとっても予想外の結果でした。ですから、お客様は我々のサービスを利用することでSDGsや環境問題に貢献できていると実感していただいてるのかなと思っています。

–お客様自身もSDGsの意識が高い方が多いのでしょうか。

久保さん:

どうなんでしょうか。ただ、我々が扱っている家具・家電はできるだけ値段を抑えつつ、デザインや機能にはこだわっているので、その時々で最適な暮らしを実現したいというお客様は多いです。

<イメージ>
<イメージ>

–ライフステージや生活スタイルの変化に合わせた家具をレンタルして、いつでも快適に暮らしたいということですね。

久保さん:

はい。合わない家具を使い続けることって、実はすごく大きな損失なんです。寝心地の悪いベッドでは体は休まらないですし、それが仕事の生産性にも影響するかもしれません。自宅の仕事環境も然りです。

自分の身の回りの空間を最適に保つことが、よりよい自分の生活に繋がる、それを求めている方が圧倒的に多いと思っています。

レンタルで我慢しない、楽しいエシカル消費を

–お客様からの反応をどう感じていらっしゃいますか?

久保さん:

CLASをお使いいただいている方からは、やはり「交換できるのはすごい」と言われますね。弊社メンバーも、実際にデスクを借りてみたら思っていたよりも小さくて交換したり、デスクチェアを交換したメンバーもいます。

–レンタルすることで合わなかったら交換できるという選択肢が生まれたのですね。

久保さん:

そうなんです。家具は、「想像してたのと色が違う」「置いてみたらバランスが合わなかった」と、実際部屋に置いてみないとわからないところがあります。だから交換してみて初めて「CLASってすごく便利だね」と言ってくださるお客様は多いです。

–家具・家電を実際に使ってみて、「次はこっちのメーカーにしよう」と、比較検討もできますよね。

久保さん:

できます。ですから、自分が使いたいものを使えるという便利さに加えて、交換できるので廃棄も減らせるということなんです。

–家具にまつわる面倒ごとや問題すべてが解決できてしまうというわけですね。

久保さん:

その通りです。エコとかサステナブルって何か我慢しなくてはいけないというイメージがありますよね。

でもそうではなくて、「CLASだったら我慢せずおしゃれにエシカル消費に貢献できる」という形にしていきたい。使いたいものを使うことが、エシカル消費に繋がって、SDGsにも貢献できるということです。

–「我慢、努力しなきゃ」という意識ではなく、ちゃんとメリットを得つつSDGsも叶うんだということですね。

『借りる』が当たり前の選択肢になる社会を目指す

–御社の今後の展望をお聞かせください。

久保さん:

我々の目指すところは、『家具・家電を持たない、捨てない』。この文化が当たり前のものとして定着してほしいと思っています。

<CLASの提案する循環型社会のイメージ>
<CLASの提案する循環型社会のイメージ>

–家具・家電を揃えるときに、「買う」一択ではなくて、「買うのと借りるのはどっちがいいかな?」と皆が考えるようになってほしいということですね。

久保さん:

はい。逆にそこまでにならないと、家具・家電の循環を文化として定着させるのは難しいでしょう。

SDGsの取り組みは一部の意識の高い人だけが気にしているものではいけないと思います。目指すのは、「家具を持たない、捨てない」という意識が皆の中で当たり前になるぐらい、我々のサービスを大きく成長させることです。

–ゆくゆくは「借りる」が第一の選択肢になる社会にできたら、SDGsも今まで以上に飛躍しそうです。本日は貴重なお話ありがとうございました。

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