#インタビュー

株式会社コングレ|コミュニケーションの場を通して日本の魅力を伝える

株式会社コングレ 西村 郁子さん インタビュー

西村 郁子 にしむら いくこ

株式会社コングレ

東京MICEビジネス事業部長

入社以来、大阪、九州、東京の各拠点で、主に政府系会議や国際機関主催の大規模会議を担当。2021年10月、世界最大のMICE産業団体 Events Industry Councilが認証するミーティングプランナーの国際資格「CMP(Certified Meeting Professional)」取得。

introduction

首脳会議や学会など、国内外の大規模コンベンションの企画運営を主要事業とするコングレ。華々しい世界を成功に導く立役者として、数々のコミュニケーションの場を創造しています。そのスケールの大きさはコンベンションそのものだけではなく、その先に描くビジョンも同様です。

コングレの創る「場」を通して世界中に届けたいものとは?普段の生活で触れる機会がほとんどない、大舞台の裏側の世界を覗かせていただきました。

そして、その一環としてのSDGsの取り組みや、日本と世界のSDGsに対する意識の違いについても詳しく伺いました。

新たな「知」が生まれるコミュニケーションの場を創造する

–はじめに、事業内容を教えてください。

西村さん:

当社は、MICE※の総合企業として、コンベンションの企画運営、施設運営、展示会・イベントの主催などを行っています。分野は多岐にわたり、首脳会議から、医学・医療、エネルギー、環境、科学技術、金融、男女協働参画、文化・スポーツなどで、それぞれの新しい「知」が生まれるコミュニケーションの場を様々な形で創造しています。

MICEとは

企業のミーティング・セミナー、研修旅行、国際会議・学会、展示会・イベントなどのビジネスイベントの総称

–具体的にはどういったコンベンションを担当されているのでしょうか?

西村さん:

政府・国際機関主催のものですと、2016年の伊勢志摩サミット、2017年のアジア開発銀行年次総会、2019年のG20関係会合など、歴史に残る会議を数多くサポートいたしました。

他にも、国内外問わず大規模な学会などにも多数携わらせていただいています。2万人規模の学会運営などもありますよ。

<G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合>

–2万人!すごい規模ですね。

首脳会議なども多数手掛けておられるということで、事業スケールの大きさを感じます。

西村さん:

注目が集まる場には私たちが関わっていることが多いかもしれませんね。

国際会議だけでなく、企業が主催するミーティングも数多く担当し、IT企業の新サービス発表会など、幅広く手がけています。

コンベンションの成功だけでなく、その先のミッションを見据えて

–さらに施設の運営や展示会・イベントの主催事業などもされている…

様々な場面において影響力のある事業を展開されているのですね。

西村さん:

そうですね、国際会議に関しては特に感じます。

コンベンション当日の成功だけでなく、「日本」そのものの魅力を伝えることも私たちの役割だと考えています。

–どういうことでしょうか?

西村さん:

コンベンションの企画・運営の内容にご満足いただくことはもちろんですが、参加者が滞在中に感じたことを自国に持ち帰って振り返ったときに、「日本は素敵だった」「また日本で開催したい」「プライベートでも日本に来たい」、そんな風に思っていただけるよう努めています。

–国際会議の誘致やインバウンドにも繋がるんですね!

西村さん:

はい、その認識で一つ一つのコンベンションに向き合っています。

そういう意味でも、近年はSDGsへの取り組みは強化を図っています。SDGsへの関心はやはり海外の方が進んでいるので、その点も含めてハイレベルなおもてなしができればと考えています。

おもてなしの一環として、SDGsをあたりまえに

–具体的にはどういった取り組みをされていますか?

西村さん:

はじめは配布資料のペーパーレス化やゴミの削減、参加者のマイタンブラー持参の呼びかけ、宿泊ホテルのアメニティーの見直し、お弁当の廃棄削減、食事は開催地の食材にこだわるなど、環境配慮や地産地消の面から取り組みました。また、プログラム内容についても登壇者のジェンダーバランスやアクセシビリティなど、様々な観点で考慮しています。

また、会議のテーマに沿った取り組みにチャレンジすることもあります。

例えばエネルギー転換に関する会議の場合は、運営にかかる電力を100%再生可能エネルギーを利用するという取り組みを行いました。開催会場のホテルとの折衝は簡単ではありませんでしたが、開催地の水力発電を利用して運営することができました。

<G20 財務大臣・中央銀行総裁会議 ©︎財務省、日本銀行>

–主催者側、会場、関連会社、それぞれのSDGsに対する認識は同じとは限らない中で、それを推進しながら運営するのは一筋縄ではいかないことも多いのではないかと思います。

日本と世界のSDGsに対する意識の差を実感

–実際に苦労されていることはありますか?

西村さん:

日本はまだSDGsに対する意識に差があるので、それぞれに合わせて対応することは大変です。特にSDGsへの意識が高い海外の方が主催する国際会議は苦労しますね。SDGsに関するご要望が多岐に渡り、目標数値も高く設定されています。前例がない中で形にしていくことが多いので、難しいです。

–どういった要望があるのですか?

西村さん:

例えば2017年に開催されたある国際会議では、印刷物に関しては再生紙を利用するだけでなく、看板の印刷素材に関しても分解処理が適切に行える成分であること、移動車は全てハイブリッドカー、食事も地産地消やフェアトレードは当たり前で、絶滅危惧種を使用しないなど、想像を超える項目がたくさんありました。

しかも、それをやっておしまいではなく、設定目標に対して結果検証を行うところまでが重要と考えておられましたので、当時はまだ私たちも十分に取り組みができていないこともあり、とても印象に残っています。

–すごいですね。まだ日本で浸透していない時期にここまで実施されていたとは驚きました。そして日本と世界の意識の差を改めて感じました。

西村さん:

はい。一つ一つが私たちにとっても学びになりますので、それを活かして主催者や会場側に「こんな取り組みをしてみるのはどうか」とSDGsの観点でご提案をし、啓蒙・推進することも私たちの大切な役割だと考えています。

一歩先から視点を合わせ、波及を生むために

–それが「コングレを通して感じる日本の魅力」に繋がるのですね。

西村さん:

私たちはPCO(Professional Congress Organizers)として、主催者と共にコンベンションを成功に導くことを仕事にしています。

人が集まる「場」のプロデュースをする私たちにしかできないことは何か、ということを常に考えています。会議だけを開いて終わりではなく、波及効果や可能性をどう広げていくかは私たち次第です。

世界中を巻き込む大規模なコンベンションを通して、私たちが伝えられることはたくさんあると考えています。そういった意味でもとても影響力のある役割を担っていますので、意識を高く持ち、あらゆる点にアンテナを貼ることで、新たな「知」を生む場の創造だけでなく、日本の魅力を世界中に届けるというミッションを遂行していきたいです。

–描いておられる壮大なビジョンが浮かびます。

西村さん:

ありがとうございます。

ただ、SDGsに関してはまだまだ課題がたくさんあります。会社としての意識も高い状態に持っていけるよう社内啓発をし続けることも必要です。また、今後はただ取り組むだけでなく、外部関係者にも認めていただけるよう、一つ一つの取り組みを積み上げながら、きちんと振り返り結果検証をして発信することも徹底していかなければならないと感じています。

–コツコツと目の前のことを大切にしながらも、コングレの大きな使命を果たす。

そんな熱い想いが伝わりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!

関連リンク

株式会社コングレ:https://www.congre.com/