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クルエルティフリーとは?意味や目的、動物実験の現状も

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世界では、よりサステナブルで環境に配慮した生活様式へ移行する動きが加速しています。その流れの中で、動物の権利を掲げた「クルエルティーフリー」にも注目が集まっています。

みなさんの中には、食やファッションだけでなく、コスメや洗剤といった身の回り品にも気を遣いたい・より地球にやさしい選択をしたい、といった人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、クルエルティーフリーに関する基礎知識から、実際に商品を選ぶためのヒントまで、分かりやすくご紹介します。

クルエルティフリーとは?言葉の意味

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まずはじめに、クルエルティーフリーという言葉の意味について知っておきましょう。

クルエルティーフリーとは、人間が使用する商品の開発段階において、動物実験・殺傷を行わないことを掲げる運動、または動物実験をしていないことを示す商品や認証ラベルを指します。

英語で「残虐・冷酷な行為」を指すCrueltyからの解放(Free)、つまり人間の商品開発のために犠牲となる動物たちを実験から解放し、命を奪わずに作られたアイテムを選択できるように作られたのが「クルエルティーフリー認証」です。

動物実験の対象となるカテゴリーは、化粧品や洗剤類・薬など多岐にわたります。これらは皮膚や眼球だけでなく、体内に入る恐れがあるアイテムです。そのため、正式に商品化される前に本当に人体への害がないかどうかを調べる目的で、動物を使ってさまざまな実験が行われているのです。

次では、クルエルティーフリーに関する歴史を簡単にご紹介します。

歴史

クルエルティーフリーの動きが生まれたのは、1930年代にさかのぼります。

世界で最初にクルエルティーフリーに言及したのは、アメリカの「連邦食品・医薬品・化粧品法(Food, Drug & Cosmetic Act)」でした。

ただしこの法律の中では、動物実験の廃止にまでは書かれておらず、「安全性に配慮した方法での開発」を明記するにとどまっています。そのため複数の企業では、さまざまな動物実験が行われていました。

動物実験の現状についてはのちほど触れますが、どの種類をとっても人間に置き換えて考えてみれば「決して行われるべきものではない」と思われるような実験が行われているのが実情だったといいます。

その後、少しずつそうした事実が世に知られるようになり、1980年代に入るとクルエルティーフリーの動きが盛んとなりました。アメリカやカナダ・イギリスなど複数の場所で動物実験に対する反対運動が生まれたのです。

そして1991年には、アメリカ・カナダでクルエルティーフリー認証プログラムが発足し、1998年にはイギリスで化粧品における動物実験の廃止に関する法律が施行されました。

2000年からは、動物実験の段階的な廃止・禁止を決める国や地域が相次ぎ、現在では欧米だけでなくイスラエル・ブラジル・韓国・台湾などが、化粧品における一部もしくは全面的な動物実験の禁止を決めています。

クルエルティフリーとヴィーガンの違い

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読者のみなさんの中には、ヴィーガンのライフスタイルを実践している人もいるかもしれません。

しかし具体的に「クルエルティーフリー」と「ヴィーガン」の違いは、一体なんでしょうか?

ひと言で言ってしまえば、クルエルティーフリーはヴィーガンの一部に含まれています。

一般的に動物の命に配慮した生活スタイルのこと。肉や乳製品・魚介類といった食品だけでなく、中にはウールや毛皮のような動物性繊維を避ける人もいます。

そうした選択の仕方として、動物実験をしない化粧品やパーソナルケア用品を選ぶヴィーガンも多くいるということです。

クルエルティーフリーは、動物の権利の観点から動物実験阻止にフォーカスした取り組みであり、一方のヴィーガンはライフスタイルの中で、コスメやパーソナルケア商品に限らず食品・衣類など多岐に渡り動物由来のアイテムを避ける傾向にあります。

クルエルティフリーとリーピングバニーの関係

クルエルティーフリー認証を行う機関はいくつかありますが、最もメジャーなのはリーピングバニーと言われる機関です。ここでは、クルエルティーフリーとリーピングバニーの関係について見ていきましょう。

リーピングバニーとは

リーピングバニー(LEAPING BUNNY PROGRAM)とは、アメリカ・カナダを中心とした複数の動物愛護団体が立ちあげたクルエルティーフリーの認証プログラムです。

1996年に設立される頃までに、クルエルティーフリーの動きは既に高まっていました。しかし明確な基準がない状態で、各企業が独自で判断していたため、誤解を生む表現や虚偽の商品が登場していたのです。

そこで複数の動物団体は、 Coalition for Consumer Information on Cosmetics(化粧品消費者情報連合)を立ち上げ、化粧品を中心に動物実験を行わない商品に対する認証制度として、リーピングバニーを作りました。

なおロゴマークのウサギは、動物実験に使用される頻度が高いことから選ばれています。

運営組織について

リーピングバニーおよびCoalition for Consumer Information on Cosmeticsには、以下の7つが関わっています。

  1. American Anti-Vivisection Society
  2. Animal Alliance of Canada
  3. Beauty Without Cruelty
  4. Doris Day Animal League
  5. Humane Society of the United States
  6. National Anti-Vivisection Society
  7. Rise for Animals

どの団体にも共通するのは、動物愛護や権利、とりわけ動物の生体解剖・実験の廃止に関する活動をメインに行っている点です。

また、リーピングカンパニーが拠点としているアメリカ・カナダ以外の国と地域では、イギリスの団体・Cruelty Free Internationalが提携しています。

この組織は1898年に結成されています。創始者のFrances Power Cobbeは女性の権利運動に熱心だった人で、のちに動物実験の廃止運動へと広がっていきました。

認証基準

リーピングバニーによるクルエルティーフリー認証は、化粧品と日用品(食器用洗剤・洗濯用洗剤・柔軟剤など)を対象に行われ、例えば以下のような条件が求められます。

  • 商品の中に、動物実験が行われた物質を一切含まないこと(自社製造のほか、調達した原材料も対象)
  • もし製造を行わず、完成した製品のみを販売している企業の場合、製造会社から動物実験を行っていない成分のみを使用していることを証明する書類が必要

このように、動物実験の有無を軸とした透明性のある原材料の調達・製造が重視され、厳しく審査されていることが伺えます。

なぜクルエルティフリー認証が注目されているのか?

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ここまでクルエルティーフリーの基礎知識について見てきましたが、今一度なぜクルエルティーフリーが注目されているのか、その背景について知っておきましょう。

今回は「動物実験の現状」と「サスティナブルな意識の高まり」の2点を挙げてご紹介します。

動物実験の現状

クルエルティーフリーがなぜ大事なのか?を考えるためには、動物実験の現状を知る必要があります。

動物実験には、危険性のある(可能性を含む)物質や薬の投与による生体の変化を観察するもの、マウスなど生体の遺伝子を操作するものなど、さまざまな種類があります。中には、現在も物議をかもす「ドレイズ試験」も含まれており、どの種類をとっても、わたしたち人間に置き換えて考えてみれば「残酷だ」「されたくない」と思うような実験が、現在も多数行われているのです。

ドレイズ試験

人体への影響、特に皮膚や眼球への安全性を示すため、意識のあるウサギ・モルモットなどを拘束し、眼球・皮膚に試験物質を投与した後、数時間放置してその毒性を確かめる方法。現在は例外を除き禁止している国・地域もあり、残酷な実験法として認知されている。なお日本では現在も禁止されていない。

以上のような動物実験は、今でも世界で行われています。とりわけ日本は国別での動物実験実施数が世界2位となっており、年間で1,500万匹もの動物が実験によって苦痛を与えられるか、命を奪われています。

しかし現在は、技術の進歩によりさまざまな代替方法が開発されています。一部では毒性試験や神経系への影響を知るための実験は、動物を利用しなくても人体への安全性を確認できるようになりました。

今後はクルエルティーフリーを選択することで、動物の犠牲をなくすだけでなく、こうした代替方法の開発・進歩を支援することにも繋がるはずです。

サステナブルな意識の高まり

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もうひとつ、クルエルティーフリーが注目される背景には、世界全体におけるサステナブルへの意識の高まりが挙げられます。

近年、「ヴィーガンプラントベースのような、できるだけ植物性由来の素材を選ぶライフスタイルの人気や、社会における倫理的な消費の仕方を目指すエシカル消費といった言葉と共に、動物の権利・命を奪わないクルエルティーフリーも、多くの人からの支持を得ています。

クルエルティーフリー認証を得ている企業・商品には、オーガニックやヴィーガンといった選択肢を積極的に取り入れている場合が多くあります。クルエルティーフリー認証のアイテムを選ぶことで、よりサステナブルな暮らし方に一歩近づけるのではないでしょうか。

クルエルティフリー認証を取得している商品

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ではここで、実際にクルエルティーフリーのアイテムを扱っているブランドや商品について見ていきましょう。

現時点では日本での購入が難しいものも一部ありますが、まずはどのような企業・アイテムがあるのかを知り、今後の商品選択の参考にしてみて下さい。

一覧

クルエルティーフリー認証を取得した商品を知りたい人には、英語にはなりますがリーピングバニーが掲載している以下のリストが便利です。

Compassionate Shopping Guide|LEAPING BUNNY PROGRAM

ジャンル別・アルファベット順に検索できるので、はじめてクルエルティーフリー認証の商品を探す人でも分かりやすくなっています。

【メイク落とし】THE BODY SHOP|CAクレンジングオイル

THE BODY SHOP|CAクレンジングオイル
出典:THE BODY SHOP

はじめに紹介するのは、イギリスの老舗コスメブランド・THE BODY SHOP(ザ・ボディ・ショップ)のクレンジングオイルです。

THE BODY SHOPでは、30年以上前から動物実験に反対する運動を展開してきました。先ほどご紹介した団体・Cruelty Free Internationalと協力し、2018年に欧州委員会で採決された「化粧品における動物実験の廃止」へ関わった企業でもあります。

そうした背景から、ブランドが展開する商品は100%ベジタリアン&クルエルティーフリー、うち60%はヴィーガン仕様です

CAクレンジングオイルは、ヨーロッパで医療の分野でも薬としてよく用いられる身近なハーブ・カモミール精油を配合し、やさしくメイクを洗い落とすのを助けてくれます。

【シャンプー】NEKKO|ヘッドスパシャンプー

アメリカで展開するヘアケアブランド・NEKKOは、クルエルティーフリーだけでなく、添加物や化学香料を使用しないアイテムを扱っています。

肌にうるおいを補給するアルガンオイルをベースに、髪にツヤを与えるアミノ酸と、頭皮をやさしくケアする数種類の植物エキスを配合しています。詰め替え用のパッケージを用意し、髪にも地球にも配慮したシャンプーです。

【洗濯用洗剤】fill refill|ランドリーリキッド

fill refill|ランドリーリキッド
出典:fill refill

最後にご紹介するのは、イギリスのブランド・fill refillです。社会や環境に配慮し、公益性の高い企業に与えられるBコープ認証を取得し、すべてのアイテムがクルエルティーフリー&ヴィーガン仕様となっています。

ランドリー系アイテムは、液状洗剤のランドリーリキッドをはじめ、すべてのアイテムにおいてプラスチックフリーを実現しています。成分も自然由来のものがほとんどであるため、化学過敏症やアレルギーの方にもおすすめです。

クルエルティフリーとSDGsの関係

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最後に、クルエルティーフリーとSDGsの関係について知っておきましょう。

クルエルティーフリーは、動物実験の廃止の観点から、環境や社会といった項目に関係する目標と関わっているといえます。中でも今回は最も繋がりがある、SDGs12との関係についてご紹介します。

SDGs12「つくる責任、つかう責任」

sdgs12

エシカルな生産~消費~廃棄への配慮を謳うSDGs目標12「つくる責任つかう責任」には、あらゆる動物実験による犠牲や、実験を目的とした過剰な動物飼育の減少を目指すことも含まれるといえます。

クルエルティーフリーに沿ったアイテムの割合を増やすことで、実験に苦しむ動物の数を減らしたり、環境や生体を汚染する化学物質を少なくしたりと、さまざまな相乗効果が生まれます。

動物を犠牲にしてまで無理な開発を進めるのではなく、人にも動物にも地球にもやさしい選択をすれば、よりサステナブルな社会を築けるはずです。

まとめ

今回は「クルエルティーフリー」について、基本的な知識・歴史から実際に認証を取得している企業やアイテムについて、幅広くご紹介しました。

食や衣類の分野で、すでに植物由来の素材を積極的に選択している人は多いかもしれません。そこから化粧品や洗剤といったジャンルにもすそ野を広げ、さらにサステナブルで動物・地球にやさしいライフスタイルを目指してみてはいかがでしょうか。

この記事を通して、少しでも動物実験の現状に目を向けクルエルティーフリーへの理解を深めれば、個人・企業単位でできるアクションへのヒントが見つかるかもしれません。

参考リスト
Cruelty free international homepage | Cruelty Free International
“Cruelty Free”/”Not Tested on Animals” | FDA
Timeline: Cosmetics testing on animals | The Humane Society of the United States
Homepage | Leaping Bunny
Draize Test – an overview | ScienceDirect Topics
毒物劇物の判定基準の改正について|厚生労働省
Mūsų veganiškų odos priežiūros priemonių gidas | The Body Shop Lietuva
12.つくる責任、つかう責任 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)