#インタビュー

ヒラソル・エナジー株式会社|100年続く太陽光発電を実現するための取り組み

ヒラソル・エナジー株式会社 千保さん インタビュー

千保 理

東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学経済学部経済学科を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業にCFOとして参画し、2022年に独立。2023年よりヒラソル・エナジー株式会社にジョイン。未上場企業の融資による資金調達を得意としており、会計ソフトウェア会社やベンチャーキャピタルが主催する起業家向けの財務経理セミナーの講師を務めている。著書(共著)に千保理・滝琢磨・辻岡将基『~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務』(第一法規、2019)がある。

◆会社概要

ヒラソル・エナジー株式会社は、東京大学発の電力×デジタル技術や、管理の省人化に主眼をおいたビジネスモデルを用いて、太陽光発電の持続可能な運用を支援しています。特に中小規模の太陽光発電所に携わるオーナー・開発者・投資家などに向けて、 太陽光発電所の評価・再生・買取など、事業者の課題に合わせたサービスを展開しています。同時に太陽光発電所の設計から運営まで一貫して担うことも可能。「100年続く太陽光発電を実現する」ことを目指し、地域に根ざした事業展開が特徴の企業です。

introduction

太陽光発電はクリーンなエネルギー源のひとつとして、今後もその重要性は高まり続けるでしょう。ただ、地域住民との軋轢や高齢化による人手不足など、事業者を取り巻く現状は厳しくなることが見込まれています。

その中で、ヒラソル・エナジーは中小規模の事業者をサポートすることで持続可能な社会に貢献しています。同社の理念は、「100年続く太陽光発電を実現する」こと。この大胆かつ革新的な目標に向けて取り組む3つの主要事業について、千保さんに話を伺いました。

課題があるからこそ「100年続く太陽光発電の実現」を目指す

–はじめに、御社の紹介をお願いいたします。

千保さん:

当社は、もともと東京大学発のベンチャー企業で、特許化された技術のライセンスを受けて設立されました。現在、太陽光発電所向けの技術開発と支援を行っており、特に中小規模の事業者にフォーカスして事業を展開しています。

我々の会社が目指しているものは、「100年続く太陽光発電を実現する」ことです。今、社会が求めている電源の多様化や、CO2削減には政策的な目標があるなかで、私たちは環境問題を考慮するとやはり太陽光発電が有効だと考えています。

ただし、地域住民との軋轢や森林伐採、パネルの廃棄方法など、太陽光発電にも課題があるのは事実です。

だからこそ今ある設備を有効に活かす・使い続けることが価値になるのではないかと思っています。メンテナンスによって100年以上使える太陽光発電が実現できたら、それは社会貢献につながると考えて日々業務を行っている状況です。

–太陽光発電所が長く続くことで、社会にとってどのようなメリットがあるのでしょうか

千保さん:

どんな言葉を選べば我々が納得できる仕事をできるか。

我々が取り組んでいることを突き詰めて、専門家の方を交えてディスカッションをしたなかで、皆が納得した言葉が「100年続く太陽光発電所を作る」でした。

当然ですが100年使えた方が良いですよね。長く使えば捨てるものも減ります。今の太陽光発電はそうなっていないので、今後我々が100年続く太陽光発電所を作りたいという思いで仕事をしています。

–ここからは、太陽光発電が抱える課題について詳しく教えてください。

千保さん:

今、太陽光発電の業界で進行している課題はオーナーの高齢化です。発電設備は定期的な保守・メンテナンスが必要ですが、高齢化もしくは何かしらの事情でそれらができず、発電所が放棄される事例も相次いでいます。特に地方は人手不足で、管理の担い手がいないのです。

我々は発電所の修理を得意としていますが、それだけだと業界が抱えるこれらの課題に対して解決力が弱いと捉えております。だからこそ、「百年ソーラー事業」「ぷらマネ®リンクなどDXソリューション提供」「地域電力支援」の3つの主軸事業とともに、太陽光発電所を所有し、運用しています。

3つの事業で中小規模の発電事業者をバックアップ

–主力事業について伺います。まずは百年ソーラー事業について教えてください。

千保さん:

先ほども述べた課題に加えて、今、業界で進行している課題が、中小規模発電所の転売です。これは、オーナーがころころ変わってしまうということです。そのような状況が続くと、地域の方々に不安を与えてしまいます。この課題に対しては、発電所運営のプロがきちんと買い取って運営することが解決策の1つとなります。

百年ソーラー事業は、こういった課題に対する取り組み全般を指します。事例の1つとして「100年ソーラー山梨」という会社を作り、山梨県の中小の発電所を買い取って、我々が運営しています。もちろん、そこで生まれた電気は山梨県のお客様に使っていただきます。

発電所を買い取るだけではなく、我々が得意とする発電所の修理・メンテナンスの仕事も同時に行います。つまり、太陽光発電が抱える課題に対してトータルソリューションを提供しているんです。

–2つ目のぷらマネ®リンクなどDXソリューション提供についてお伺いします。具体的にどのような製品を提供していて、どのような効果があるのでしょうか。

千保さん:

ぷらマネはパワープラントとマネジメント用のソフトウェアの2つの総称です。

売り出してる製品群としては2つです。

1つは「ぷらマネウェブ」という太陽光発電所の状況を一括監視できる製品、もう1つは「ぷらマネリンク」という発電から蓄電、EV充放電、需給計画の管理、給電まであらゆる機能を統合制御できる次世代エネルギー制御システムのソフト面と、計画、設計、設備機器の調達などのハード面の両方を提供する、太陽光発電施設のワンストップ導入サービスです。


これらの製品によって、太陽光発電所を遠隔で監視・制御することが可能になります。発電所の機器は古いほど、現場に行ってスイッチで制御するものが多いんです。

例えば、ブレーカーが落ちたらブレーカーをあげに現場に行かなければなりません。その一方で、遠隔操作に対応している機器と弊社の製品を使えばソフトウェア越しに制御できるので、電源を落としたいときに落とせますし、電源を入れたいときに入れられるなど、きめ細かく操作できるようになります。

この技術の実現の裏には、スマートメーターのデータ活用があります。

具体的には、故障を検知するために、スマートメーターのデータを使って、シミュレーションを行います。正常ならどのくらい発電できるか理論値を算出し、スマートメーターのデータと照らし合わせ、理論値とのずれから故障の有無を判断できます。

仮に故障があった場合、弊社の製品を使っていると、どこに故障があるかまで遠隔でわかります。この技術は弊社の大きな強みです。

プラまねを導入していただくメリットとしては、労働コストの削減、いわゆる「省人化」を実現できることです。

–3つ目の地域電力支援に関して、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

千保さん:

この事業は地域の金融機関がお客様です。最近、銀行法改正があり、社会課題解決の文脈で地域の銀行が電力会社を子会社として設立しても良いということになりました。そのため、現在、各地の銀行は電気電力の子会社を設立しています。

しかし、その子会社の中で電力事業を運営できる人材が足りないという問題もあります。そこでも我々が銀行と協力して、再生可能エネルギーを作って販売する会社としての運営をサポートしています。

立ち上げ時の太陽光発電所設計や、設備を調達して販売するところまで、一気通貫でお手伝いをするような形をとっています。

–これまで中小規模の太陽光発電所の支援をするなかで、解決が難しかった問題はありますか。

千保さん:

やはり自然には勝てないですね。パネルが斜面に並んでいると影の影響があります。それが遠くの山の影なのか、伐採できない隣の家の植木なのか、動かしづらい電柱なのかなど、外的要因に影響を受けます。大規模な発電所であればそのようなものを排除しやすいのですが、外的要因による影響は中小規模ならではの課題といえますね。

他には、農地の中にある太陽光発電所にも制約があります。例えば、そこにいたる道が細すぎるなどです。このような問題は予算に絡んできて、 作業に1日かかるのか2日かかるのかで金額が全然違います。お客様からしてみれば、なるべく工事費用を抑えたいはずですから、我々はこれまでの事業で培ってきたノウハウを活かして、なるべく負担をかけないように展開しています。

太陽光発電所の再生で30%の発電量回復も可能

–御社のサービスに対して、お客様の満足度が高いポイントやサービスを導入してよかったという声を教えてください。

千保さん:

現段階では満足度調査を実施していないので、なんとも言えませんが、リピートしていただいている事業者様がいます。これは弊社のサービスに満足いただいているからこそだと思っています。我々が手がけているサービスは他社ではなかなかできないことですから、そういった点もリピートの要因になっていると思います。

実は、国内の2割弱の太陽光発電所は​本来発揮すべき性能の8割以下で運転していることがヒラソルの調査でわかっています。

和歌山県の発電所では、当社のシミュレーション技術や発電所の再生サービスによって、後に30%の発電量回復を実現した事例もあるんです。

お客さんの声も含めて書かせていただいてるので、こちらの記事もあわせてご覧いただければと思います。

ヒラソル・エナジーとSDGsの取り組み

–ここまでお話を伺い、事業そのものがSDGsの達成に貢献するものだと感じました。ここからは、社内制度関連におけるSDGsの取り組みについて教えてください。

千保さん:

現在、制度化されているようなものはありません。ただ、ゴミの分別に熱を上げている社員はいますね。オフィスのゴミをきっちり分別していたら、隣の会社の人もちゃんと分別するようになったということはあります。

事業内容自体がSDGsに関わることもあり、社員の意識はとても高いと思っています。

–多様性を重視してさまざまな国籍や年齢の垣根を超えたメンバーの視点を結集しているとのことですが、これが太陽光発電所の永続可動にどのようにつながるのか教えてください。

千保さん:

例えば日本人のエンジニアだけで構成されている会社の場合は、何か困ったことや知りたいことがあっても、アクセスできるコミュニティーは日本人のエンジニアコミュニティだけです。

多国籍であるだけで、困った時にそれぞれのコミュニティが使えます。日本では事例の少ない事業なので、さまざまな国籍のメンバーがいることが、事業を推進するうえでの基盤となっています。

–今後の展望をお聞かせください。

千保さん:

もちろん長期的には、全国展開したいですし、日本と同じような環境の国々にも展開したいと思っています。ただし、現在当社はブランドを作ってる最中です。いただいたお仕事をきちんとこなさなければいけない時期です。

また、我々のことを知っていただくために、さまざまなメディアで発信するようにしています。いろいろな商材を持っており、同業他社とも取引することができますので、発電所だけではなく同業他社にも知ってもらうことが大事だと思っています。

–本日は興味深いお話をありがとうございました。

関連リンク

ヒラソル・エナジー株式会社公式ホームページ:https://pplc.co/

百年ソーラー山梨株式会社公式ホームページ:https://100solar.co.jp/