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Jクレジットとは?仕組みや価格制度、メリット・デメリットをわかりやすく解説!普及しない理由は?

J-クレジットとは?目的や仕組み、メリット・デメリットをわかりやすく!

J-クレジット制度とは、企業や自治体が省エネ・再エネ設備の導入や植林などで削減・吸収した温室効果ガスを、クレジットとして国が認証する制度です。

J-クレジットを購入することで、排出してしまった温室効果ガスを相殺する「カーボンオフセット」ができるのに加え、カーボンプライシングの手段としても注目を集めています。

ただし、取引方法が分かりにくいなどのデメリットがあるのも事実です。

この記事では、J-クレジットについてや、普及しない理由なども含めて分かりやすく解説します。

J-クレジット制度とは

J-クレジット制度とは、「省エネ設備の導入」「再エネ(再生可能エネルギー)の導入」「適切な森林管理・植林・森林再生(再造林)」などによる、温室効果ガス排出量削減やCO2吸収量を、「クレジット」として国が認証する制度です。

J-クレジット制度は環境省・経済産業省・農林水産省が連携して運営しています。

近年では、先ほどの3つの他に、

  • バイオ液体燃料・バイオ潤滑油・バイオ炭などの使用
  • 水素・アンモニア利用
  • 電気分解による水素の生産
  • 再エネ熱の活用
  • 副産物としての発生した熱の再利用
  • バイオガス・天然ガスの改質

など、さまざまな温室効果ガス削減につながる取り組みでJ-クレジットが創出できるようになりました。

J-クレジットとカーボンプライシング

J-クレジットはいま世界で注目されている「カーボンプライシング」※の手法の1つ、「カーボン・クレジット」に当たるものです。

カーボン・クレジットとは、各事業・活動ごとに設定された、「温室効果ガス削減がされなかった場合に予想される排出量(ベースライン)」から、「実際に温室効果ガス削減の努力をした上での排出量との差分」や、「適切な森林経営や植林により増加した CO2吸収量を測定・報告・検証」を経て、国や企業などの間で取引できるように認証したものです。

カーボンプライシング

炭素(CO2)に価格をつけ、排出者に自主的な行動の変容を起こさせる経済的手法。

【関連記事】カーボンプライシングをわかりやすく解説!世界・日本の現状、課題、今後の展望も

【関連記事】カーボンクレジットとは?仕組みや種類、ビジネスの活用事例、個人で取引可能?

日本国内の主なカーボン・クレジットは

  • J-クレジット制度
  • Jブルークレジット

などがあります。他にも国際的なカーボンクレジットとして

  • Clean Development Mechanism(CDM)
  • 二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism (JCM)
  • Verified Carbon Standard (VCS)
  • Gold Standard(GS) 

などがあります。世界ではカーボンニュートラル実現に向けて、カーボン・クレジットの活用は増加傾向にあります。

これは温室効果ガス排出削減の努力をしても、排出を避けられない部分を、カーボン・クレジットを使って相殺する(=カーボン・オフセット※)という手段が注目されていることも大きな要因になっています。

【国際的なカーボン・クレジットの発行量・無効化量の推移】

上のグラフの青い棒グラフは発行量、赤い棒グラフは無効化量・償却量(カーボンオフセットや各種税制対策や目標達成に使った量)を表しています。世界的にもカーボン・クレジットの発行量・無効化・償却量ともに増加傾向にあることがわかります。

カーボン・オフセット

CO2をはじめとする温室効果ガスの削減の努力をした上でも、やむを得ず排出してしまう温室効果ガスを埋め合わせるため、他の場所で排出削減や吸収の取り組みをしたり、そのような事業に出資したりすること

【関連記事】カーボンオフセットとは?仕組みや目的、問題点、個人にできることまで

J-クレジット取引が推進される理由

どうして日本政府はJ-クレジットの取引の推進に力を入れているのでしょうか?

J-クレジット取り引きが活性化することで、効果的に社会全体のCO2排出量削減につながる3つの理由があります。

  1. 効率性
    社会全体で、CO2が削減できる取り組みや植林といったCO2吸収量を増やす取り組みなどに、市場から資金が流れる仕組みができ、より良い取り組みが選択されるようになります。これにより、CO2削減・吸収の手段の効率化・最適化が期待できます。
  2. 網羅性
    J-クレジットの取引は全ての産業の企業から個人まで幅広く参加できます。
  3. 価格性
    J-クレジットの取引市場が確立すると、企業は事業計画や投資計画で期待収益に加えることができるようになります。また、CO2排出量削減事業に民間の資金が流入するようになります。

【J-クレジットの特徴】

J-クレジットの概要とカーボンプライシングなどについての基本的なことは理解できましたか?カーボンプライシングについては、現代の社会人として必要な知識です!

次の章ではJ-クレジットの仕組みを解説します。*1)

J-クレジットの仕組みをわかりやすく解説

J-クレジットは「CO2などの温室効果ガスが排出削減できた量を認証して、取り引きできるようにしたもの」です。

企業や自治体が、省エネ・再エネ設備の導入や、森林管理などで削減・吸収できた温室効果ガスを、クレジットとして政府が認証し、市場で取引できるようにしています。

企業や自治体が購入でき、やむを得ず排出してしまった温室効果ガスと相殺する「カーボンオフセット」に活用可能です。

それだけでは「まだよくわからない」と思う人も多いでしょう。J-クレジットの仕組みをもう少し詳しく解説します。

そもそもクレジット(credit)とは?

「クレジット(credit)」とは、本来は「信用・信頼」を意味する言葉です。これはクレジットという言葉の基本イメージです。

金融分野でのクレジットの意味は、

  • 政府や金融機関から短期・中期の資金を借り入れること
  • 一定の金額の融資を受ける予約をすること

つまりはお金を借りることです。お金の貸し借り(借款・貸付)には信用・信頼が必要ですから、なんとなく理解できますね。

近年はクレジットという言葉はさらに多様な意味で使われるようになり、金融での「借款・貸付」の意味のほかに

  • 評判・人気・名声
  • 「クレジットカード」の略称
  • 「クレジットタイトル」の略称(制作者や著作権所有者の明記)
  • アーケードゲームで入金した額に応じて得られるゲームをプレイできる権利
  • メダルゲームなどでのコインの貯留

などさまざまな分野で使われ、複数の違った意味があります。J-クレジットの場合は「CO2削減・吸収をしたという事実を国が保証」した「信用=価値」と考えましょう。

J-クレジット制度の管理者(運営制度)

J-クレジットは国が運営する制度で、経済産業省・環境省・農林水産省が共同で制度の管理をしています。定期的に運営委員会・認証委員会の2つの有識者委員会が審議を行って、J-クレジット普及に努めています。

【J-クレジットの運営制度】

【t-CO2】J-クレジットの取引単位

J-クレジットの取引などで使われる単位は「t-CO2」(二酸化炭素トン)です。これはJ-クレジット制度以外でも、温室効果ガスの

  • 排出
  • 吸収
  • 回収
  • 貯蔵

などの量を表すときに使われる単位で、温室効果ガスの量を、同じだけ温室効果をもたらすCO2の重量に換算したものです。

J-クレジットの入札販売では、入札書に記入できる最低入札量が1,000t-CO2で、購入希望量が1,000t-CO2以上であれば、1トン単位で購入希望量を記載できます。

つまり1,000t-CO2から購入することができ、1,001t-CO2と記載することができる、ということです。

【J-クレジット入札書の例】

【創出者】森林による吸収量などをクレジット化

下の図のように、J-クレジットでは、

  • ベースライン:CO2排出削減に取り組まなかった場合に予測されるCO2排出量
  • 実際の排出量:CO2排出量削減に取り組んだ結果、実際に排出したCO2の量

この2つの値の差を「クレジット」として認定します。

【クレジットとは】

上のグラフでは産業の場面での例が挙げられていますが、森林によるCO2吸収量では、ベースラインが何もしなかった場合の森林による吸収量となり、実際の吸収量との差がクレジットとして認定されます。

【購入者】J-クレジットの使い方

【Jークレジットの活用方法】

購入したJ-クレジットは、主に

  • カーボンオフセット
  • 温室効果ガス排出量や排出係数の調整
  • 再エネ由来のJ-クレジットを再エネ調整量として報告

という形で使うことができます。具体的な活用方法を下の表にまとめました。

対象内容・方法
温対法・省エネ法排出量・排出係数の調整
CDP※・SBT※・RE100※再エネ調整量として報告可能
どんぐり制度カーボンオフセットで「どんぐりマーク」取得
海外活動分の排出量オフセット自主的なオフセットを行う場合のみ利用可能
SHIFT・ASSET事業※補助金獲得のための削減目標達成に利用可能
経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成削減目標達成に利用可能
環境配慮契約法上の活用(小売電気事業者)※規定条件を満たすために利用可能
出典:J-クレジット制度『クレジット活用』より筆者作成

【J-クレジットの活用状況】

※CDP

投資家向けに企業の環境情報の提供を行うことを目的とした国際的なNGO。質問形式で調査し評価・公表を行う。

参考:CDP

※SBT

Science Based Targetsの略称で、パリ協定が求める水準と整合した、5年〜15年先を目標として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと。

参考:SBT(Science Based Targets)について 環境省

※RE100

事業活動で使用する電力を、全て再生可能エネルギーによる電力でまかなうことを目指す企業が参加する国際的なイニシアチブ。

参考:RE100

※SHIFT・ASSET事業

SHIFT事業はSupport for High-efficiency Installations for Facilities with Targetsの略称で、意欲的なCO2排出削減目標を盛り込んだ脱炭素化促進計画を策定する事業とCO2の排出量を削減し、排出量の算定及び排出枠の償却を行う事業に対して補助金を交付する事業。ASSET事業はAdvanced technologies promotion Subsidy Scheme with Emission reduction Targetsの略称で先進対策の効率的実施によるCO₂排出量大幅削減事業設備補助事業。

参考:SHIFT事業ウェブサイト 環境省

※環境配慮契約法

小売電気事業者が、入札に参加して官公庁施設向けに電力を供給しようとする場合に対応しなければならない二酸化炭素排出係数と環境負荷低減に関する取組状況などの基準が定められた法律。

参考:環境配慮契約法に基づく基本方針 環境省

【カーボンオフセット事例】Do Your Part!キャンペーン

【日本の国立公園・世界自然遺産】

「Do Your Part!キャンペーン」とは、

  • 国立公園内にあるビジターセンター※で使用されるエネルギー
  • 国立公園内の観光船
  • マイカー規制区域を通行する自動車などのエネルギー

などを由来とする温室効果ガスを、国立公園内や周辺でJ-クレジットを創出し、カーボンオフセットするキャンペーンです。

Do Your Part!キャンペーンに賛同する地方公共団体・企業・民間団体・個人の協力で、国立公園の豊かな自然に触れ合いながら、

  • 環境に負担をかけない
  • 自然との共生

の実現に向けた行動を喚起します。同時に、まだまだよく知られていない「J-クレジット」や「カーボンオフセット」などの認知度を上げることにもつながります。

※ビジターセンター

国立公園や国定公園などで、その公園を地形・地質・動物・植物を利用者がわかりやすく理解できるように解説したり、資料を展示したりするための施設。

環境省『ビジターセンターとは』

【Do Your Part!キャンペーン】

J-クレジットの全体像がなんとなくわかりましたか?次の章からは、J-クレジットのメリットを創出者・購入者に分けて見ていきましょう!*2)

J-クレジット創出者のメリット

J-クレジットを創出するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

クレジットの売却益

【J-クレジットを売却して利益を得る】

創出したクレジットは、売却することで利益を得ることができます。この売却益で、設備投資などの費用回収に充てたり、さらなる温室効果ガス排出削減や吸収量増加のために投資したりできます。

CO2削減への取り組みを社会へアピール

J-クレジットを創出することで、気候変動への対策に積極的な取り組みを行なっていることがアピールできます。近年、環境関連の金融が成長し、J-クレジット創出のための温室効果ガス削減事業の資金調達が

  • サステナブルファイナンス※
  • グリーンファイナンス※

などからできるようになりました。

※サステナブルファイナンス

持続可能な社会を構築するための金融。持続可能な社会のために貢献する事業が資金を調達するためのシステム。

【関連記事】サステナブルファイナンスとは?ESGとの違い、メリット・デメリット、事例を解説

※グリーンファイナンス

グリーンプロジェクト(環境問題の解決に取り組む事業)に特化した資金調達システム。

ランニングコストの削減

省エネ設備の導入や再エネ導入によって、温室効果ガス排出量削減ができるだけでなく、事業にかかるエネルギーコストも削減できます。今後の化石燃料をはじめとするエネルギー価格の高騰リスクを考えると、社会面(温室効果ガス削減)にも経営面(エネルギーコスト削減)にも同時に貢献すると言えます。

企業内の温室効果ガス削減への意識改革

J-クレジット制度に参加することで、企業の温室効果ガス削減の取り組みが数値として可視化されます。自社の温室効果ガス削減の取り組み情報が社内で共有されることによって、環境問題への意識向上や経営への意識改革に繋がります。

J-クレジット購入者のメリット

創出者のメリットの次は購入者のメリットです。J-クレジットは購入者にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか?

企業の環境への貢献をアピール

J-クレジット創出側だけでなく、購入者側も企業の環境問題へ積極的に取り組んでいることをアピールできます。J-クレジットの購入を通して森林保全活動や中小企業の省エネ活動を支援することによって、企業のESG※やSDGs※への貢献として、投資家・金融機関・消費者・地域などからの評価向上が期待できます。

※ESG

環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略称で、近年企業の評価において重要視されるようになっている。

※SDGs

Sustainable Development Goalsの略称で、2015年の国連サミットで採択された。17の目標からなり、2030年までに、誰一人取り残さずより良い世界を目指すための持続可能な開発目標。

自社製品・サービスに付加価値

近年、日本では「エシカル消費」※の意識が高まっています。商品やサービスによって排出される温室効果ガスをカーボンオフセットすることにより、「環境に配慮した商品・サービス」として、同業他社との差別化を図ったり、付加価値としてブランディング※を狙うことができます。

※エシカル消費

消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行うこと。

※ブランディング

ブランドマネジメントとも呼ばれ、ブランドに対する共感や信頼を得ることにより、購入者にとっての価値を高めていく企業と組織のマーケティング戦略。

環境問題解決に積極的な企業・団体とのつながり

J-クレジット購入によって、温室効果ガス排出削減や森林経営などに積極的な企業や地方公共団体とのつながりが生まれ、新たなビジネスの機会や環境問題解決にも貢献するビジネスモデルの創出などが期待できます。また、このようなネットワークを広げることで、地域や他企業との協力関係を築くこともできます。*3)

J-クレジットのデメリットと課題

J-クレジットには創出者・購入者ともにいくつものメリットがあることがわかりました。しかし、「カーボンプライシング」が注目される中で、J-クレジットが社会に浸透していないのはなぜでしょうか。

J-クレジットの推進にあたって問題となっているデメリットや課題に迫ります。

クレジット創出に手間とコストがかかる

現状、J-クレジットを創出するには、まず取り組みを始める前に

  1. CO2排出削減の計画を立てる
  2. 具体的な計画を報告書にして提出
  3. 計画の妥当性が認められたらプロジェクト登録を申請する
  4. さらに審議が行われ、認められればプロジェクト登録完了

という手順を経て、やっとJ-クレジット創出に向けて取り組みを開始できます。続いて取り組みを始めてからは、

  1. データの解析・収集をして、報告書を作成
  2. 報告書の検証(審査機関が確認)
  3. クレジット認証の申請
  4. 認証委員会が審議
  5. 審査が通ればクレジットが認証され、J-クレジット創出完了

と、J-クレジット創出までにはかなり手間・コスト・時間がかかります。コスト面では中小企業に対しては政府から登録・認証にかかる費用への支援がありますが、それでも約10万〜20万円は自己負担となります。

J-クレジット自体の認知度が低い

J-クレジットの登録・認証数は着実に増加していますが、社会全体で見るとまだ認知度は低いと言えるでしょう。温室効果ガスの削減や森林によるCO2吸収量を「価値」と認識することは、「温室効果ガスの排出に社会が対応するためのコスト」の認識と対になるものです。

J-クレジットが認知されると同時に、このような新しい価値観も一般的に理解される必要があります。

【J-クレジットの入札状況の推移(平均落札価格)】

しかし、年々J-クレジットへの需要は高まっているので、市場での平均落札価格も上昇傾向です。J-クレジットの市場価格が上がれば、創出者にも利益が増えるので、今後は需要の高まりとともに創出量も増加することが予想されます。

まだ市場規模が小さい

J-クレジットは、

  • 取引市場としては始まったばかり
  • 創出・認証に時間がかかる
  • クレジット創出量が少ない

などの理由から、まだ市場規模が小さいと言えます。市場規模が大きくなり、取引が活発になれば前出の「認知度が低い」問題も同時に解決されるでしょう。

このようなJ-クレジットの抱えるデメリット・課題の解決に向けて、

  • 制度利用者のインセンティブ※拡大
  • クレジットの取引環境の整備
  • クレジット創出者の負担軽減

などが解決策として検討されています。

※インセンティブ

動機づけや報酬、優遇措置など、行動を起こさせるために刺激となるものを意図的に与えること。

【プロジェクト登録及びクレジット認証の状況】

J-クレジットは株式取引などに比べれば、非常に新しい市場です。スタートを切ったばかりで、これから成長していく市場と言えます。上のグラフでも順調にJ-クレジットの認証回数・量ともに伸びていることがわかります。

J-クレジットの取引活性化は、2050年カーボンニュートラルに大きく貢献すると期待されているので、関係省庁は早期のJ-クレジット市場拡大のために積極的に検討を重ねています。

J-クレジットのメリット・デメリット・課題が把握できたので、次の章ではJ-クレジットの創出方法と購入方法をもう少し詳しく紹介します。*4)

J-クレジットの創出方法・購入方法

イメージ画像

J-クレジットは先ほど「J-クレジットの取引は全ての産業の企業から個人まで幅広く参加できます。」とあったように、誰でもJ-クレジットに創出側・購入側のどちらからでも参加することができます。ここではJ-クレジットの創出・購入のための手順を簡単に確認しておきましょう。

J-クレジットの創出方法

J-クレジットが何から創出できるかは先ほど簡単に触れましたが、下の円グラフで再度確認しましょう。2つの円グラフはそれぞれ、

  • 通常型:基本的には1つの工場・事業所等における削減活動を1 つのプロジェクトとして登録する創出方法
  • プログラム型:家庭の屋根に太陽光発電設備を導入など、複数の削減・吸収活動を取りまとめ、1つのプロジェクトとして登録する創出方法

ごとにまとめられています。

【J-クレジット創出方法の内訳】

次に、J-クレジットを晶出するための手順です。

【J-クレジット制度への登録・認証の大まかな流れ】

  1. 温室効果ガスの排出量削減または森林管理などの事業を実施しているか、計画する
  2. J-クレジット制度事務局に相談する
  3. 審査・検証の際に必要な費用の支援の内容や対象を確認する
  4. どのような事業でJ-クレジットを創出するか「プロジェクト計画書」を作成する
  5. 「プロジェクト計画書」を提出し、審査を受ける
  6. J-クレジット制度認定委員会が審議の後、承認されればJ-クレジット創出プログラムとして登録される
  7. プロジェクト計画に基づき、温室効果ガスの排出量削減・吸収量算定のためのモニタリング(計測)を行う
  8. モニタリング報告書を作成し、クレジットの認証を受ける
  9. 認証されたクレジットを活用する

このように、大まかな手順を見ても、手間のかかる作業だとわかります。しかし、「国に認められた価値」を創出することは、信頼できる物である必要があります。

その上、目に見えない温室効果ガス削減量や吸収量を計測するにあたっては、公平で正確な計測をするための方法や技術が必要です。

このような理由から、J-クレジットの創出から売却までには現状約4年という長い時間がかかります。

【J-クレジット創出のためにかかる時間】

J-クレジットの購入方法

J-クレジットの購入方法は主に3つあります。

【J-クレジットの購入方法】

  1. J-クレジット・プロバイダー※による仲介
  2. 「売り出しクレジット一覧」に掲載されているJ-クレジットを購入
  3. J-クレジット制度事務局が実施する入札販売※での購入

これらの購入方法ごとに、J-クレジット制度ホームページで情報が掲載されています。また、J-クレジットの活性化のために創出者と購入者のマッチングコーナーもあります。

※入札販売

購入希望者や事業の受注希望企業などが、金額などを記した文書(札)を提出し、売却希望者や発注機関にとって最も優れた条件を出した希望者を落札者として決める仕組み。

【J-クレジットの売買の方法】

J-クレジットの創出に時間がかかるのは、J-クレジットの創出にあたって、すぐにコストが回収できてしまう取り組みは対象とならないことにも起因しています。J-クレジットはそのコストの回収に3年以上かかる取り組みが対象なのです。

しかし、これまで大量生産・大量消費・大量廃棄で短期的な利益ばかり追求してきた経済は、いち早く見直さなくてはなりません。

2050年カーボンニュートラル達成のために拡大を急ぎたいJ-クレジット取引ですが、持続可能な社会に生まれ変わるために「常に長期的な視点に立つ」という基本を大切にしているとも言えます。

J-クレジットはOFFSELで取引可能!

OFFSEL(オフセル)は、J-クレジットを始めとする環境価値の調達代行サービスです。

J-クレジットを安い単価で1t-CO2という少量から調達できます。J-クレジットの他にも、トラッキング付非化石証書・I-REC・J-VER・TIGRといった環境価値の調達も可能です。

相談料や手数料は無料なので、「コストや手間を抑えて環境価値を調達したい」「カーボンオフセットについてよくわからないからまずは相談したい」という方は、ぜひ一度連絡してみてください。

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J-クレジットのよくある疑問

ここまで解説してきたJ-クレジットですが、なんとなくわかってくると「そもそもJ-クレジットって儲かるの?」などの疑問が湧いてくる人もいるでしょう。実際はどうなのでしょうか?

J-クレジットって儲かるの?

J-クレジットの平均落札価格を下の表にまとめました。

年月再エネ発電J-クレジット省エネJ-クレジット
2017年4月908円/t-CO2908円/t-CO2
2018年4月1,724円/t-CO21,395円/t-CO2
2019年4月1,801円/t-CO21,504円/t-CO2
2020年6月1,887円/t-CO2
2021年4月2,536円/t-CO21,518円/t-CO2
2022年4月3,278円/t-CO21,607円/t-CO2
出典:J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.15(2023年1月)より筆者作成

特に再エネ由来のJ-クレジットの取引価格が上昇していることがわかります。「儲かるか?儲からないか?」や利益の大きさはいつ買って、いつ売るかにもよりますし、株式取引と同様に価格が下がるなどのリスクはゼロではありませんが、J-クレジットの創出・取引で利益を出すことは可能です。

【クレジット種別 認証量VS無効化・償却量】

上のグラフは「J-クレジットの仕組み」の章の「【購入者】J-クレジットの使い方」からの再掲ですが、認証量と無効化・償却量(カーボンオフセットや各種税制対策や目標達成に使った量)とにはかなり差があることがわかります。この差は、「購入者が保有している量」と考えることができます。

J-クレジットの取引市場拡大が推進されるのは政府の方針ですから、信頼できる情報と言えるでしょう。その中でJ-クレジット購入者の多くの割合が「保有」を選択している、ということは…想像に難くないですね。(記事の性質上、はっきりとは言いません)

なぜ普及しない?

J-クレジットがまだ社会に浸透していない理由として、「J-クレジットのデメリットと課題」の章、「まだ市場規模が小さい」の見出しで紹介した、

  • 取引市場としては始まったばかり
  • 創出・認証に時間がかかる
  • クレジット創出量が少ない

と、「J-クレジット自体の認知度が低い」などが主な理由と考えられます。

個人でも売買できる?

基本的に個人でも売買できます。買う場合は購入希望量が1,000t-CO2以上から可能です。2022年4月の省エネJ-クレジットの平均取引価格が1,607円/t-CO2ですから、

1,607円/t-CO2×1,000t-CO2=1,607,000円

くらいから購入可能、ということです。J-クレジットは現状は市場に出される量(供給)より買いたい人(需要)が多い状況ですし、価格も上昇中ですから、売り手を見つけることは難しくないと考えてもいいでしょう。

次の章ではJ-クレジットとSDGsの関係を考えてみましょう!

J-クレジットとSDGs

「J-クレジットとSDGs」は、人によっては全くつながりが思いつかないかもしれません。しかし、J-クレジットの創出方法が

  1. 省エネ設備の導入
  2. 再エネ(再生可能エネルギー)の導入
  3. 適切な森林管理・植林・森林再生(再造林)

ということを思い出せば、J-クレジットとSDGsの関係がわかりますね。つまり、J-クレジットは直接的にSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献するのです。

しかし、もうひとつ知っておきたいポイントがあります。それは「どうして現在のような地球温暖化を招いてしまったか」ということです。

これは「人間の活動によるCO2をはじめとする温室効果ガスの大量排出」が最も大きな要因と考えられますが、その行為がどれほど地球に深刻なダメージを与えるかについて、過去の人間社会は全体として認識が甘かったとも解釈できます。

これまでの物やサービスの流通価格には「温室効果ガスの排出に社会が対応するためのコスト」が含まれていませんでした。しかし、今後の社会が環境面において過去の失敗を繰り返さないためには、この「温室効果ガスの排出に社会が対応するためのコスト」が常識として社会に浸透する必要があります。

「温室効果ガスの排出に社会が対応するためのコスト」を経済に組み込むための政治的手法に「カーボンプライシング」があり、J-クレジットはカーボンプライシングの1つです。つまり、カーボンニュートラルな社会の実現に向けて、

  • 温室効果ガス削減・吸収などの活動を促進
  • 温室効果ガス排出削減・吸収に価値づけする
  • 産業や私たち個人の生活のために排出される温室効果ガスには対応のためにコストがかかることへの認知
  • 自由競争による温室効果ガス削減価値取引の活性化

などが期待できることから、J-クレジットはSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」だけでなく、

  • SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
  • SDGs目標8「働きがいも経済成長も」
  • SDGs目標12「つくる責任つかう責任」

にも貢献できる可能性があります。*6)

まとめ:J-クレジットは成長中!

【江戸時代の大阪・堂島米会所】

日本の株式取引所の起源は江戸時代の1652年から1673年、大阪に設けられた米穀取引にさかのぼると言われています。米などの穀物でしたら誰でもその価値がわかる物ですから、取引は盛んに行われ、やがて米と交換できる証券(米切手)が使われるようになったのが日本の証券取引の始まりでした。

現在はというと、J-クレジットの取引市場で売買されるのは「温室効果ガス排出削減・吸収量」です。きっと江戸時代の人々には想像もつかないことでしょう。

これを読んでいるあなたは現代に生きています。これからの時代を生き抜くための知識として、J-クレジットは新しい価値の創造と、新しい経済のあり方を象徴するもののうちの1つです。

取引市場の長い歴史と比較すると、まだまだ始まったばかりの「J-クレジット」ですが、「必要とされるもの」が売れる市場において、今後しばらくは成長を続けるだろうと予測されています。

日本政府はJ-クレジットの市場拡大を推進しています。J-クレジットが私たち個人にも投資の対象として身近になる未来はそう遠くないかもしれません。

SDGsの目標達成には、このような経済の仕組みの変革も欠かせないことを忘れないでください。これからのあなたの生活の中での正しい選択のために、きっとJ-クレジットの知識はいつか役に立つでしょう。

OFFSEL

〈参考・引用文献〉
*1)J-クレジット制度とは
J-クレジット制度『J-クレジット制度について』
カーボンクレジットとは?仕組みや種類、ビジネスの活用事例、個人で取引可能?
経済産業省『カーボン・クレジット・レポート』p.11(2022年6月)
カーボンプライシングをわかりやすく解説!世界・日本の現状、課題、今後の展望も
カーボンオフセットとは?仕組みや目的、問題点、個人にできることまで
経済産業省『成長に資するカーボンプライシングについて②~クレジット取引等~』p.7(2021年3月)
*2)J-クレジットの仕組み
J-クレジット制度『制度運営体制』
J-クレジット制度『第5回J-クレジットの入札販売について 2.9 申請書類の提出 入札書』
農林水産省『森林吸収源対策に関連する単位量について』
経済産業省『カーボン・クレジット・レポート』p.5(2022年6月)
J-クレジット制度『J-クレジットの活用方法』
J-クレジット制度『クレジット活用』
J-クレジット制度『CDP・SBT・RE100での活用』
環境省『SHIFT事業とは』
環境省『ASSET制度の概要』
J-クレジット制度『環境配慮契約法上の活用(小売電気事業者)』
J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.16(2023年1月)
J-クレジット制度『Do Your Part!~国立公園・世界自然遺産カーボン・オフセットキャンペーン~』
J-クレジット制度『J-クレジット制度について』(2023年3月)
*3)J-クレジット創出者のメリット・J-クレジット購入者のメリット
J-クレジット制度『J-クレジット制度について』
サステナブルファイナンスとは?ESGとの違い、メリット・デメリット、事例を解説
金融庁『今後のサステナブルファイナンスの 取組みについて』p.3(2022年9月)
消費者庁『エシカル消費とは』
*4)J-クレジットのデメリットと課題
経済産業省『中小企業のカーボンニュートラルへの投資促進に向けたJ-クレジット制度の活性化』p.2,p.3(2022年4月)
J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.15(2023年1月)
J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.9(2023年1月)
経済産業省『J-クレジット制度の現状について』p.10
*5)J-クレジットの創出方法・購入方法
J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.10(2023年1月)
J-クレジット制度『J-クレジト制度について』p.6(2023年3月)
経済産業省『J-クレジット制度の現状について』
J-クレジット制度『購入方法(買いたい方)』
J-クレジット制度『J-クレジト制度について』p.46(2023年3月)
J-クレジット制度『よくあるご質問 Q1-2 どのようなプロジェクトなら申請できますか?』
*6)J-クレジットのよくある疑問・J-クレジットとSDG
J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.15(2023年1月)
J-クレジット制度『J-クレジット制度について(データ集)』p.16(2023年1月)
J-クレジット制度『J-クレジット制度について』
*7)まとめ:J-クレジットは成長中!
WIKIMEDIA COMMONS『Dojima-Rice-Exchange-Osaka-by-Yoshimitsu-Sasaki』
日本取引所グループ『株式取引所開設140周年』