#インタビュー

環境スペース株式会社|防音・遮音の施工がもたらす「音」のトラブル防止と快適な音場空間

環境スペース株式会社 川名賢さん 小金井巧さんインタビュー

環境スペース株式会社
防音からスタートした「環境スペース」ですが、心地よさや快適さといった感覚的な部分を数値化し、設計に反映することができるからこそ、音だけにとどまることなく、建築デザイン・照明などの空間デザインといった生活環境すべてを改善することができると思っております。
また、生活の場として、心地よくその場にいるだけで幸せを感じていただけるようお客様のご要望に応じた夢のあるデザインを提供いたしております。
「私たちは、環境とスペースのプロとして、夢見る力をあわせて、笑顔・感動・感謝・幸せ・豊かさの輪を広げている」を弊社のビジョンとして掲げ、弊社のご提供する豊かさが、お客様はもとより、施設を利用されるエンドユーザー様にも広く伝わりますように、これからも全力で取り組んでまいります。

introduction

環境スペース株式会社は、2003年の設立以来、防音・音響工事のパイオニアとして「快適な音場(音が広がる場所や空間)づくり」を提供してきました。楽器の音・工場の騒音など、「音」が外部に漏れることに悩む個人・企業に貢献してきた同社は、コロナ禍でのステイホームや仕事形態の変化でますますその存在意義を高めています。

今回、同社の川名賢さんと小金井さんに、業務内容やSDGsとの関連性について伺いました。

個人宅からプロユースまで「音」にまつわることを手がける

–はじめに「環境スペース」の業務内容について教えてください。

川名さん:

創業以来20年間、防音工事、音響内装工事をやっている会社です。個人であれば、主に楽器演奏などのための防音室、プロユースであれば、各種スタジオや施設・工場の防音に至るまで、「音」にまつわることならほとんど手がけています。

目に見えない音・臭い・明るさなどを測定して数値化し、設計に反映して、お客様にご満足頂けるような空間を提供しています。

–防音・音響工事のパイオニアである貴社ですが、設立のきっかけは何だったのでしょうか?

小金井さん:

社長である嶺島の大学時代は建築学部に属し、音を専門的に研究して反映する設計を学んでいました。1970年代に起こったビデオ戦争を機会に、「音の数値化」などの理論に基づく防音・遮音ができる会社が少ないことと社会のニーズに着目し、当社を設立するに至りました。

もう一点、設立につながったのは、ドイツで立ち寄った築数百年の教会での体験です。その教会の天井と壁が特殊な構造で、スピーカーがないにも拘わらず音がきれいに拡がることに感銘を受けました。ドイツでは、飲食店などでさえそのような場所が多く、日本でも洗練された音の空間を作りたいと、この道を志したとのことです。

音を数値化しつつ、顧客ニーズに合わせた防音・遮音を提供

–SDGsの観点からは、外部への騒音を防止することは「住み続けられるまちづくりを」につながり、遮音によって快適な空間を提供することは、個人の心身の健康への貢献にもなりますね。まずは「防音」について、もう少し詳しくお話をお聞かせください

川名さん:

騒音は外部とのトラブルを引き起こす原因にもなり、音の問題で苦しむ方々はとても多いんです。かつての「ピアノ騒音殺人事件」と称されるような痛ましいケースなど、いろいろな問題が起こっています。とりわけ都市部は過密な住環境ですから、「防音」は有効な手段です。

個人の顧客のほとんどが、楽器演奏を趣味や仕事とする方です。ピアノ、ドラムなど楽器ごとに音の周波数は異なりますし、同じピアノであっても、どのメーカーのどのモデルか、演奏者の音量はどれほどか、というレベルまで、音を数値化して細かく調整していきます。

業務レベルでは、様々な公演が行われるホールや大きな騒音を出す工場などは、大がかりな防護工事を施工します。

–「遮音」への需要も多いとのこと。防音・遮音による「快適な音場環境づくり」の意味を教えてください。

川名さん:

音楽家を例にとれば、スタジオの防音と遮音はセットです。外部の音が録音に入り込んだら仕事になりません。同様に、セミナーなどを部屋から配信する場合も、遮音は必須です。

小金井さん:

「快適な音場環境」の「音場(おんば)」は、音が拡がる場所や空間を意味する言葉です。防音・遮音を施した空間は、その中で聞こえる音がまったく異なってくるんです。「残響音」というんですが、音が響きすぎないように、あるいは響かずつまらない音にならないように、これも顧客のニーズに合わせます。特に音楽家にとっては、どんな「音」が生まれるかは最も大切なことですので。

–防音・遮音がそこまで繊細なレベルで施工されるとは驚きました。どのように防音・遮音が施されるのか、簡単に教えて頂けますか?また、そのコストはどれくらいかかるのでしょうか。

川名さん:

ごくシンプルに言えば、部屋の中にもうひとつの部屋を作るイメージです。その二つの部屋の間に資材を入れて、音が漏れないようにすることが基本です。資材は断熱材や石膏ボードのようなものですが、その密度が濃いほど防音の精度が上がります。窓硝子の厚みも関係しますから、二重、三重にする場合もあります。

小金井さん:

コストは、防音・遮音のレベルやオプションによっても変化しますが、基本的に6畳の部屋を防音室にリフォームする場合、300万円~400万円ほどの見積りとなります。

環境や顧客の健康に優しい資材への切り替えを目指し、端材の使用で廃棄物も削減へ

–貴社のサイトのSDGs宣言の中に、設計や建材、パートナーの選定により、大気の質や廃棄物の管理に注意を払い、環境への悪影響を削減する、という主旨のものがありました。用いる資材には環境を汚すものがあるのでしょうか?

川名さん:

はい。ここは努力の部分とご理解ください。焼却する際に排出されるCO₂や化学物質が少ない資材に切り替えていく予定です。すでに発注においては、環境に優しい製品を扱う業者を選ぶように心がけています。

また、端材を用いて廃棄物を減らす努力もしています。最近内装を手がけたある飲食店では、オーナー自身も環境への配慮を望まれ、杉の木の端財をテーブルに用いたりしました。断熱材は化学物質が含まれ産業廃棄物扱いになりますので、余ったものを処分せず、集めて新たな施工に用いることも心掛けています。

資材に含まれるホルムアルデヒドの基準値などは、すべてJIS規格で管理されているんですが、コストカットしようと海外の物を使うと、場合によっては日本の基準を満たしません。弊社は、ほぼ国産の資材を用いますが、このあたりは建築業界、建築資材業界全体で取り組むべき部分ですね。

加えて、防音・遮音を施した部屋は密閉度が高いため、そこで長時間過ごす顧客の健康にも配慮せねばなりません。建材、接着剤も少しでも悪い影響のないものに切り替えていますし、換気システムの充実や臭気の除去なども、専門業者とタイアップして高品質のオプションを揃えています。

–快適な音場空間を手に入れた顧客からは、どのような声が届きますか?

川名さん:

特に音楽愛好家、音楽家の方々は、どんな時間でも思い切り演奏ができる喜びを伝えて下さいます。外部を気にせずに済むことは、大いにストレスの軽減になるようです。

このコロナ禍においては、外でたくさんの人と会うことをやめて、家の防音室をサロンとして親しい人だけを招き、ミニコンサートを開催される方も増えてきました。在宅ワークのために防音・遮音の部屋を作った結果、音を気にせず趣味を楽しめる空間まで得られたと、満足してくださる方も多いですね。

男社会だった建築業界で男女平等の職場を提供

–職場環境でのSDGsの取り組みもご紹介頂けますか?

川名さん:

当社のSDGs宣言の一つに「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行います」とあるのを不思議に思われるかもしれません。もちろん、労働環境は男女同じに改善を目指しますが、建築業界はやはり男社会のイメージが強いんです。

弊社では、女性が現場監督を務めることもありますし、平等の労働環境を提供します。女性に特化した宣言というのではなく、男社会から男女平等の環境に移行しているとご理解下さい。社内研修やセミナーなどもたびたび行っています。

他の面でも、建築業界の古い体質がまだ残っている部分はあります。そこは、若手の社員が新しい風を入れる意識で、社内設備などのごく小さなところであれ、少しずつ変化をもたらしています。僅かなことでも意識やモチベーションが変わることを実感しています。

–確かに、現場監督はヘルメットを被った男性というイメージしかありませんでした。社内の様々な固定観念を外していくことも、SDGsを進めていく起動力になりますね。最後に、貴社の今後のご展望をお聞かせください。

川名さん:

ごく簡潔に言えば、まずは大きなことよりも、お客様を第一に考え、かつ社員を守っていく、ということが基本です。働きやすい環境をつくりながら、何よりもお客様の喜ぶ笑顔がみたい、という原点を大切にし続けます。これが十二分にできたなら、それだけで大きなソリューションが提供できるのではないかと感じます。

コロナ禍によって生活や仕事の形態が大きく変わりました。今後、コロナが収束したとしても、在宅での仕事のシステムなど、よい面は残ってゆくかもしれません。自宅でくつろぎ遊ぶ時間や習慣も残るとすれば、弊社が提供できる分野も益々増えてゆくと思われます。アフターコロナの新しい文化も担えるように、貢献していきたいと思います。

–たとえ2畳ほどでも自分だけの防音・遮音室があったら…と夢見てしまいました!今日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

環境スペース株式会社 https://www.kankyospace.com/
サービスサイト:https://www.soundzone.jp/news/13700/