ここ数年、地方の活性化を目指した「地方創生」という言葉をよく耳にするようになりました。また同時に、カラフルでポップなロゴが印象的なSDGsも、テレビやインターネットなど、いろいろな場面で目にするようになりました。
地方創生とSDGsは相性が良く、持続可能な社会を築き上げるためにはどちらも理解しておきたい言葉です。そこでこの記事では、「地方創生」や「SDGsとの関連」について整理し、読み進めるにしたがって、「ごちゃごちゃしてたものがスッキリ」するようにまとめました。
早速地方創生について詳しく見ていきましょう!
目次
地方創生とは
地方創生とは、人口減などにより急激に衰退する地方の活性化を目指し、2014年に第2次安倍内閣が発表した政策のことです。ローカル・アベノミクスとも呼ばれ、推進組織として「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、具体的な基本方針も発表されました。
では、地方創生の理解を深めるために、
の順で確認していきましょう。
①日本の現状:人口の東京一極集中
まず、下の2つのグラフをご覧ください。
こちらは2009年から2022年までの日本の総人口を表したグラフです。年々減少を続け、2023年の6月の概算では総人口は1億2452万人と言われています。
続いては東京都の総人口のグラフを確認しましょう。
日本の総人口は減っているのに対して、東京の人口が増えているのがわかります。つまり、東京に移り住む人が増える一方で、地方の人口は急激な減少傾向にあるのです。これを一極集中と呼びますが、どのような問題が発生するのでしょうか。
②地方の現状:深刻な人口減少
東京都の人口は、かつてのドーナツ化現象(※a)から一転し、1990年代の都心回帰(※b)を引き金に、再び増加の一途をたどり、住宅やごみ処理など、キャパシティを超えた過密化が問題視されるようになりました。
対して人口が減少した地方では、税収減による地域サービスの低下、産業の担い手不足など、様々な問題がすでに深刻な状況になってきています。
【関連記事】ドーナツ化現象とは?問対と対策をわかりやすく簡単に解説
③東京圏への若者の転入が顕著
これは、東京圏の転入者を年齢別に表したグラフです。
15~29歳、特に20~24歳までの人が、地方から東京に多く転入していることが分かります。地方から若者がいなくなれば、その下の世代も増えにくいという将来的な人口減にも影響してくるのです。政府は、こうした人口の偏りから生まれる問題に取り組み、日本全体の活力を維持しようと、地方創生を立ち上げました。
では、地方創生とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。次で詳しく見ていきましょう。
地方創生の4つの基本方針と2つの横断的目標
地方創生を推進するにあたり、基本方針として、4つの基本目標と2つの横断的な目標で構成されています。1つずつ簡単に見ていきます。
地方創生の4つの基本目標
①稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
- 東京では高収入を得られやすいが、物価も高い
- 地方は、収入は高くはないが物価が安い
高収入で物価が安いことが理想的ではありますが、せめてバランスのとれる「稼ぎ」がほしいものです。また、賃金面だけでなく、安全・福利厚生などの魅力的な就業環境が求められます。
②地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくるUIJターンの促進を図ります。
首都圏の学校を卒業後に地方に戻ったり、大都市での就業経験を経て、新たなやりがいや自分の適性から地方への移住を希望する人々に、地方圏の企業も就職先の有力な選択肢にしてもらうことで、UIJターンの促進を図ります。
- Uターン:故郷から進学や就職で首都圏や大都市に移り住み、その後故郷に戻り住むこと
- Iターン:故郷から別の地域に移り住むこと
- Jターン:故郷から別の都市に移住し、その後故郷にほど近い都市に移住すること
また、UIJターン以外にも、関係人口を増やすことも求められています。
関係人口とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。つまり、その地域に関心を持ち、地域づくりに参加する人たちです。頻繁に訪問したり、特産品を購入したり、ボランティア活動に協力してくれたりする人も、関係人口と言えます。
独自イベントの開催、故郷納税など、地域づくりに参加する意思を持つ人に、その地域に関心を持ってもらえるような取り組みが必要です。
③結婚・出産・子育ての希望をかなえる
仕事と子育ての両立ができるよう、地域の実情に応じたサポートが必要です。少子化対策に直結する目標です。
④ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
住居や買い物、医療に福祉、公共交通など、誰もが安心して住める環境の整備が求められます。
2つの横断的な目標
続いては、2つの横断的な目標について確認します。
⑴多様な人材の活躍を推進する
年齢・性別・国籍・障がいの有無に関わらず、誰でも活躍できる社会です。
⑵新しい時代の流れを力にする
コロナ禍でのテレワーク、遠く離れた高齢の両親をモニターで見守りするなど、すでに新しい流れが始まっています。目標達成のために、未来技術をどんどん取り入れて、Society 5.0 (※c) を推進していこうとしています。
地方の活性化を実現するためには、どれも欠かせない目標です。しかし問題は<どのようにすれば達成できるのか>です。そこで大きく関わってくるのが、SDGsです。「どう関わってくるのか」をとらえていただくために、SDGsの内容をおさらいしたいと思います。
なぜ地方創生にSDGsが必要なのか
SDGsとは、Sustainable(持続可能な) Development(開発) Goals (目標)の略で、読み方はエスディージーズ です。
SDGsは、2015年9月の国連総会で、193の加盟国の全会一致で採択されました。「地球上のだれひとり取り残されない」という理念のもと、世界が抱える「環境」「社会」「経済」の課題を17の目標としてまとめ、それぞれ2030年までの達成を目指しています。
では、目標一覧を見てみましょう。
SDGs17の目標
全部をいっぺんに理解するのは大変ですが、なんとなく17の目標が少しずつ構造的につながっていることがわかると思います。「17もある」ではなく、大きな目標にせまるための「入口が17ある」と考えていただければ、少なくともSDGsの目的をぼんやりととらえられそうです。
そして今回取り上げている地方創生と特に関連の深いのが、目標11「住み続けられるまちづくりを」になります。では、次の章で詳しく見ていきましょう。
地方創生は特に目標11「住み続けられるまちづくりを」に関係
目標11は、「都市や人間の居住地をだれも排除せず安全かつレジリエント( ※d) で持続可能にする」といったった内容です。
SDGsには、目標に加えてより具体的な到達点が書かれたターゲットが設定されています。目標11であれば、以下の10個のターゲットが掲げられています。
※難しい内容となるため、ここでは流し読み程度で構いません。
ターゲット | |
---|---|
11.1 | 2030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 |
11.2 | 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 |
11.3 | 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。 |
11.4 | 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。 |
11.5 | 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。 |
11.6 | 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 |
11.7 | 2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 |
11.a | 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。 |
11.b | 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。 |
11.c | 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。 |
世界的に見ると、「スラムの改善」や「都市人口増による影響の改善」が求められていますが、はじめにお話ししたような、人口の偏りからくる日本の課題とも直結していることを感じていただけると思います。
また、目標11だけでなく、地方創生の目標にある「医療や福祉の充実」はSDGs目標3の「すべの人に健康と福祉を」、「稼ぐ地域づくり」はSDGs目標8の「働きがいも経済成長も」になど、ほぼすべてのSDGs目標が、地方創生の目標とオーバーラップしたり、リンクしたりしているのです。
では、具体的にどのように地方創生とSDGsを関連づけているのかを次で見ていきましょう。
具体的には、SDGsの自治体への取り入れ方、その成功例を発信することです。また、優れた取り組みを計画したり、進めたりしている自治体を「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」として選定する制度もつくりました。
地方創生と関係が深いSDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業・環境モデル都市・環境未来都市
ここでは、地方創生を理解する上で重要な4つのキーワードについて説明します。
SDGs未来都市とは
「SDGs未来都市」とは、「環境モデル都市」「環境未来都市」の後継プログラムです。
このように日本は、以前から持続可能で、3領域(環境・社会・経済)に立脚した取り組みを、模索しながらもコツコツと進めてきましたが、そこにSDGsのエッセンスを加え、2018年から「SDGs未来都市」の選定が開始されました。
SDGs未来都市のメリット
SDGs未来都市に選定されることで、自治体は、SDGs未来都市に選ばれると、多くの専門家のアドバイスや、進捗評価のサポートを受けることができるため、様々な関係者とのネットワークが広がり、より洗練した取り組みを進められるようになるでしょう。
また、他の自治体は、それらの取り組みを有効利用することができます。多くの自治体が取り組むほど、課題解決事例が増えるため、大いに参考になるはずです。
自治体SDGsモデル事業とは
自治体SDGsモデル事業とは、各年度に選定されたSDGs未来都市の内、より先導的な取り組みを進める10都市のことです。補助金が交付され、独立した事業に成長していくことを目指しています。
環境モデル都市とは
環境モデル都市とは、2008年にスタートした、低炭素社会の実現に向けて先駆的チャレンジを選定したものです。
環境未来都市とは
環境未来都市とは、それらの都市を中心に、さらに厳選された都市が、環境・社会・経済の3側面に優れた持続可能な都市を目指すものです。
なぜ地方創生が失敗したと言われているのか
ここまで見てきた地方創生ですが、うまくいっていない、または失敗したなどと言われてきました。その理由はどこにあるのでしょうか
短期的な視点からの取り組みが多かった
理由の1つには、短期的な視点からの取り組みであったことが挙げられます。
例えば補助金を使い、地域外の企業のコンサルティングなどが入り、一時的な地域活性化プロジェクトは遂行されるものの、将来的に地域が自走できる仕組みまで手が回らなかったこともあるといいます。
地方創生を成功させるためには中長期的な視点から、将来どのような地域にしたいのかを考えることが大切です。つまり、外部の企業から伴奏型の支援を受けているなかでノウハウを吸収し、地域内の事業者だけで回せるようになる仕組みづくりが必要と言えるでしょう。
地方創生×SDGsでESG投資を呼び込む
そのなかで、地方創生とSDGsの関係で注目すべき点は「金融」です。内閣府は、地方の自立的好循環の具体化に向けたSDGs金融デザインとして、「地方創生SDGs金融フレームワーク」をまとめました。
これはSDGsに取り組む企業に対して、機関投資家などからのESG投資を呼び込み、地域の経済活性化を狙った内容です。
今後、ESG投資が定着することで、SDGsに取り組む自治体により資金が集まりやすくなると考えられているのです。
ここまで地方創生とSDGsの関係を見てきましたが、具体的にどのような取り組みが行われているのか紹介します。
地方創生に関する自治体の取組事例|新潟県妙高市
では、2021年度に「自治体SDGsモデル事業」び選定された10都市の1つ、新潟県妙高市の取り組みを見てみましょう。まずは妙高市の抱える課題の確認です。
妙高市の抱える課題
第1は人口減です(2021年8月31日現在 30,937人)。特に若者の減少が深刻でした。そしてそれは、利用者減による公共交通事業の運行難と、市民生活と観光両面での移動の困難をもたらしました。
その上、これも多くの観光地が抱える、近年のコロナ禍の問題ですが、インバウンド、国内の観光客の激減に悩まされていました。
以上の3点だけでも、他の多くの地方が抱えている課題と同じです。つまり、妙高市の取り組みをたどることは、SDGsの手法を使った地方創生の典型的なモデルとなるはずです。
そんな妙高市は、どのような取り組みで「自治体SDGsモデル事業」と認められたのか、見ていきましょう。
プロジェクトの概要
人口減を軽減させるために、ワーケーション(※e)
等の推奨によって首都圏からの人の流れを創出したり、拡大したりすること目指します。
また、DX化(※f) によって、交通の利便性と脱炭素化(※g) の両方をねらっています。
また、
- 観光客減に対しては、アフターコロナを見据え、先駆的にSDGsに取り組む国際的な観光リゾート拠点としての発信
- 「北陸新幹線を利用すれば都心から110分」という利便性を活用
なども検討しています。
これらをSDGsの3領域(環境・社会・経済)と17の目標で整理すると、以下のようになります。
- 環境:国立公園の保全と活用・脱炭素
→目標7,11,12,13 - 社会:DX化・ワーケーション・公共交通確保
→目標3,11 - 経済:ツーリズムプログラム
→目標8,9,11
すべてが11「住み続けられるまちづくりを」に関わりを持ち、そのほかにも幅広い目標と合致していることから、あらためて、SDGsと地方創生の関連の深さが感じられます。
③取り組み事例
では、現時点での取り組みを見てみましょう。
笹ヶ峰高原に新たなエコモビリティを導入
エコモビリティとは、エコロジーとモビリティを合わせた言葉で、公共交通機関、車、徒歩などを使い分け、環境にやさしい交通手段を利用することです。
これにより、移動時に発生するCO2の削減を目指しています。
高齢者や身体の不自由な方、子供まで、だれでも自然を満喫できる観光サービス<SDGs ツーリズム>を企画
「旅を諦めない!」をキャッチフレーズに、電動車いすWHILLを利用したタクシープラン体験を行いました。
テレワークできる施設を整備した妙高型ワーケーション
テレワーク研修交流施設が、2022年4月にオープンの予定です。
シェア型(相乗り)、デマンド型(利用者の要求に対応して運行)交通サービスの導入
このように、妙高市は地域の課題に即した取り組みを進めており、他の自治体も参考にできる事例を多く発信しています。
>>他にも自治体の取り組みを知りたい方は、こちらからインタビュー記事をご覧ください。
とはいえ、首都圏との交流、企業の誘致など、実際の取り組みには、未知であったり経験の少ないであったりする領域についても知識や技術が必要です。今後、効果的に取り組みを進めるためには、自治体だけでなく、様々な関係者との連携が必要になってきます。
そこで2018年8月に登場したのが、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」です。
【関連記事】デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?SDGsとの関係・事例をわかりやすく解説
地方創生SDGs官民連携プラッフォームでパートナーシップを促進
地方創生SDGs官民連携プラットフォームとは、
- SDGsで地方創生に取り組む自治体
- SDGsに関心のある企業
をマッチングさせるサイトです。
これに登録し会員となることで、A普及活動・Bマッチング支援・C分科会開催の3つのメリットを受けられることができます。
A普及活動
会員が主催するイベント等の情報を、発信・受信することができます。また、開催するセミナー等に関する後援名簿等を使用でき、情報交換の輪が大きく広がります。
Bマッチング支援
会員の要望・課題・ノウハウを閲覧・利用することができ、さらには関連がある企業や団体とのマッチング支援を受けられ、イベントに参加できます。
C分科会開催
会員の提案に基づいて分科会を開催できます。異分野ともつながることができ、地方創生につながる新事業を生み出すことが期待されています。
このように様々な関連領域に視野を広げ、具体的な連携と発展に結びつくパートナーを見つけ出す機会が提供されており、より一層地方創生への取り組みを加速させることができるでしょう。
北海道名寄市もち米農家が6次産業化に成功
では、そのなかでプラットフォームを利用して、もち米農家が6次産業化(※h)に成功した事例をご紹介します。
これは、「特産物を活かした加工食品作りのサポート」ができるレオン自動機株式会社と、北海道のもち米生産農家の事業です。
実施主体は、地元の米農家が起ち上げた「株式会社もち米の里」(第1次産業)です。特産のもち米製品の加工に、レオン自動機株式会社のサポートを受け、難しい包み作業を機械化し(第2次産業)、急速冷凍したものを道の駅で販売して(第3次産業)収益をあげました。
平成6年に法人化された組織は、平成13年には工場・店舗・レストランを併設する「ふうれん特産館」をオープン。平成20年には隣接する道の駅「もち米の里☆なよろ」も完成し、人気を得ています。
全国的に農村が衰退していく中、第6次産業化で新たな雇用を生み出し、名産品で来客も増え、地域活性化につなげることができたモデルです。もち米農家さんが、生き生きと生産・加工・販売をする姿が見えるようです。
地方創生にSDGsを取り入れるためには|発信することで取り組みを「見える化」
地方創生にSDGsの手法がとても有効で、課題の解決や希望の実現に深く関わってくることを見てきましたが、その有効性の1つとして、発信することも見逃せません。取り組みの深化と発信力がセットであることをみていきましょう。
「見える化」するための発信のステップ
ステップは大きく分けると4つになります。
ステップ1:課題を明確にする
まずは課題を明確にしなければなりません。現時点の状況を整理するよい機会になります。
ステップ2:指標を使って評価する
自己評価だけでなく、他者による評価も有効です。課題の発信をすることは、勇気がいると感じてしまうかもしれませんが、前述のように、国にもプラットホーム、自治体にも相談窓口があります。
ステップ3:形成評価でより上の段階を目指す
形成評価とは、学習の過程で、学習者が正しくゴールに向かって進めるようフィードバックを与え、その後の取り組みのガイドとする評価です。
評価してくれる他者を増やして視野を広げ取り組みを修正できれば、よりよい条件でのサポートや融資を受けるチャンスも増えていきます。
ステップ4:自立から他のモデルへ
取り組みの「先輩」が実践を発信し、「こうすればここまで可能」を見える化すれば、それは「後輩」を助けることになるでしょう。
筆者の元教員の経験をもとに例えると、学力の1つ「話す力」をつける学校教育課程では、話すことを相手とのやりとりのチャットから公的なスピーチへとスキルアップさせていきます。社会の取り組みも、始めは関係者同士のやりとりから、地域全体、世界へ、と広げて発信していくこと自体、自身のスキルアップの過程なのです。
では、具体的な取り組みを、「発信」という視点から見てみましょう。
先進的なSDGsの取り組みとして数々の方面から取り上げられている、北海道下川町の取り組みです。
地方創生×SDGsの取組事例|下川町の実践と発信力
下川町は、2008年に「環境モデル都市」、2011年には「環境未来都市」に選ばれています。さらに2018年には「第1回SDGs未来都市」に選定されました。そして、その年に行われた、SDGsの達成に向け優れた取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」では、「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」を受賞しています。
下川町が抱える最大の課題は、急激な過疎化でした。それは、基幹産業の衰退や公共交通機関の廃止に直結していきました。そこで、2001年、行政・企業・町民が一体となり、課題解決への取り組みをスタートさせたのです。
前に述べたステップに当てはめていきます。
ステップ1:課題を明確にする
下川町は、町の面積の9割が森林です。まずこの現実しっかりを受け止め、森林を基軸に街づくりを計画・推進していきました。
具体的な取り組みの1つに「循環型森林経営」が挙げられます。これは、伐採→植林→育林→伐採というループ型の事業です。育林という過程を強く位置づけたことで、森林本来の保水力を保つだけでなく、環境教育の実践の場や健康増進の場も生み出し、就労や雇用の場も広がりました。
ステップ2:指標を使って評価する
SDGsモデル都市に名乗りを上げ、選定されたことが、ステップ2に該当します。
さらに、FSC認証(※j) という国際的にみても最も厳しいと言われる森林認証も受け、取り組みをさらに加速することができました。
ステップ3:形成評価でより上の段階を目指す
SDGsモデル都市となり、フィードバックを受けながら取り組みを進めた結果、木材加工業は家具製作などの雇用も生み、余った木材を森林バイオマス資源(※h) として活用することで、再生可能エネルギーの拡大も見込めるようになりました。
この結果、移住者の増加という「成果」が見えた反面、移住者の住まい不足という「課題」も明確になりました。下川町は、その課題を解決するために、高齢化で増えていた空き家を「しもかわ空き家バンク」に登録、専用サイトも開設することで、対応していきました。
ステップ4:自立から他のモデルへ
多くの地方が抱える「人口減少と高齢化」というマイナスの立ち位置を受け止め、SDGsの手法で地域創生を目指した試みは、国内だけでなく、世界的に有力なモデルになる可能性を持っています。
【関連記事】
FSCとは?メリット・デメリット、FSC認証ラベルがついた商品の紹介も
木質バイオマスとは?特徴やデメリット、活用事例など徹底紹介!
地方創生を目指した様々な発信方法・形態事例
その他にも、多くの地方自治体が「発信」を「見える化」する工夫をしています。一部ですがご紹介します。
福井県鯖江市
特産品の眼鏡のバッジ作成しました。SNSも活用して販売しています。
静岡県静岡市
第1回SDGs未来都市に選定された静岡市は、TGC(東京ガールズコレクションとのファッションイベント「TGC for SDGs in 静岡」を実施しました。チケットやポスターは多くの人の目を引いたことでしょう。
福岡県北九州市
公害という大きな課題を克服するため、JICA(日本国際協力事業団)との連携をしています。国際機関を通しての発信は、日本の自治体が世界とつながることができるモデルになっています。
まとめ 今立っているところからゴールを目指して- SDGsで地方創生を促進しよう –
この記事では、地方創生とSDGsの関係を見てきました。
一極集中による地方の人口減は、私たちが想像するよりも深刻な事態であることがわかります。
これらを解決するために地方創生がスタートし、さらにはSDGsの登場でさらなる加速が望めるようになりました。
これから先、持続可能な社会を築き上げていくためにも、まずは、今立っている足元から確かなものにしていくことが大切です。
自分が、地域が、しっかり暮らしていければ、よいモデルとなり、他を助けることもできるのではないでしょうか。
〈参考文献〉
地方創生|内閣府
SDGs de 地方創生|特定非営利活動法人イシュープラスデザイン
妙高市ホームページ
地方創生SDGs官民連携プラットホーム|内閣府
食品製造機械のパイオニアレオン自動機機|レオン自動機株式会社
ふうれん特産館|株式会社もち粉の里
北海道下川町ホームページ