#インタビュー

銘建工業株式会社|木質建材CLTを通して「木の可能性」を伝える

銘建工業株式会社 瀬﨑景己様 インタビュー

瀬﨑景己

1996年2月1日生まれ。岡山大学文学部哲学倫理学コース卒業。大学在学中に大学のインターンシッププログラムにて岡山の林産業を知る。その後、森林ボランティアを経験し、2018年岡山県真庭市でバイオマスと木質建材で業界をリードする銘建工業株式会社に入社。総務人事部にて広報を担当。2020年竣工の本社事務所は日経ニューオフィス賞全国ニューオフィス推進賞(2020)、日本建築学会作品推奨(2022)を受賞。真庭観光局が主催する真庭市内のバイオマス・SDGsの取り組みが見学できるスタディツアー「バイオマスツアー真庭」に参画しており、視察地の一つとして小中学生からお年寄りまで、木造建築・バイオマスの取り組みを普及している。趣味は山登りで、自然豊かな真庭を満喫中。

introduction

岡山県真庭市で木質建材の製造などを行う銘建工業株式会社。建築業界で話題の新建材CLTの製造や真庭SDGsパートナーになるなど、SDGsへの取り組みに注目が集まり外部からの視察も増えています。今回は、総務人事部で視察対応も担当されている瀬﨑さんに、CLTの魅力やSDGsへの取り組みについてお伺いしました。

大切な資源を100%使い切る

最初に、銘建工業様の事業概要を教えてください。

瀬崎さん:

主な事業は、集成材やCLTといった木質建材の製造です。どちらも仕入れてきた木の板を組み合わせ、柱や梁などへ加工しています。

また、加工の際に出る木くずも大切な資源であると考えているため、木くずを原料としたバイオマス事業にも取り組んでいます。

木を100%使い切る循環型の事業を行うことで、「木の可能性」を広げていくこと。これが私たちの使命だと考えています。

CLTという言葉はあまり聞き慣れないのですが、どういった建材なのでしょうか?

瀬崎さん:

CLTは、木の板をクロスさせて何層にも重ねた大きな木のパネルです。今まで木材の使用が難しいとされていた中・高層の建物の床や壁にも使用可能な建材です。もともと海外で開発された製品ですが、社長が海外視察を行った際に目に留まり、いち早く国内での製造、販売に着手したことで、現在は国内シェアNO.1を誇っています。

参考:CLTとは|銘建工業株式会社

注目が集まる新建材CLTとは

シェアNO.1とは素晴らしいですね!CLTの魅力を教えてください。

瀬崎さん:

優れた断熱性で省エネ効果が期待できる点、高い強度で耐震性に優れていることなど多くのメリットがあります。

また、CLTはパネル状の建材なので、多くの木材を使うことができます。CLTを使うことで木材の需要が増加し、国内の森林資源の循環に貢献することができます。

広い視野で言うと、日本の林業や木造建築、日本全体の景観さえも変えていく、大きな可能性がある製品だと感じています。

CLTを使用した建てられた兵庫県のタクマビル新館(研修センター)
銘建工業の本社事務所

CLT単体の魅力だけでなく、建設現場でもさらに多くのメリットが期待できるということなんですね。

瀬崎さん:

そうですね。CLTは、建設する際にも多くのメリットを実感していただけるものだと考えています。

例えば、CLTを使えばコンクリートと同じ強度がたった5分の1の重さで叶う点。そして、コンクリートと違い乾かして固める時間が必要なく、工場であらかじめ加工して現場に搬入する点。これらが、輸送コストの削減や工期の短縮に繋がるということを、私たちがもっと伝えていかないといけないなと感じています。

日本CLT協会を立ち上げて、CLTの普及活動にも力を入れられているそうですね!

瀬崎さん:

はい、2012年に当時CLTに関心のあった3社で一緒に協会を立ち上げました。CLTの普及に向けたセミナーなどが開催されています。

当社では建材を作るだけではなくて、市役所や図書館など住宅以外の大きな建物にCLTを使っていただく際のサポートも一つの事業として取り組んでいます。

人口減少に伴って木造住宅の戸数は減っていくでしょうが、まだ木造化が進んでいない非住宅分野においてCLTは大きな可能性を秘めていると感じています。

一人でも多くの方にCLTの魅力を感じていただけるよう、発信にも力を入れて行きたいです。

参考:一般社団法人日本CLT協会

参考:CLTとは|銘建工業株式会社

木くずが燃料に!捨てられるはずのものに新たな役目を

バイオマス事業についても詳しく教えてください。

瀬崎さん:

大きく2つありまして、1つ目が木くずを利用した木質バイオマス発電です。本社工場内にある専用の発電設備で木くずなどを燃やして電気を作り、本社工場、事務所の電気をまかなっています。

もう一つが、木質ペレットの製造です。木質ペレットは、木くずに熱と圧力を加えて圧縮成形した固形状の木質燃料のことを言います。真庭市役所の冷暖房設備でも当社の木質ペレットを使っていただいています。

木質ペレット
本社工場内にある発電用ボイラ(エコ発電所)

廃棄されるはずの木くずを燃料に変え、新たな価値を生み出すのですね。SDGsの達成に貢献する取り組みですね。

瀬崎さん:


そうですね。またCLTの製造・販売やそれに関わる木質構造事業もSDGsと関わりが深いと思います。

CLTの原料として、国内の木材を使用していること、CLTを使用することで輸送コストや建築コストが削減できること。私たちがCLTの普及に力を入れることでもたらされる2次的、3次的なメリットも含め、SDGs達成に向けた取り組みとして位置付けられるのではないかと思います。

真庭観光局とともにSDGsの観点から地元を盛り上げる

外部からの視察も多いそうですね。皆さんどういった目的で視察に来られているのでしょうか?

瀬崎さん:

木造建築に興味がある方だけでなく、SDGsの取り組みをしている企業への見学という形でお越しいただくことが増えています。

真庭観光局が主催する「バイオマスツアー真庭」や、小・中・高校生向けの教育旅行や企業研修として展開されている「真庭SDGs・バイオマス学習コース」の中に当社への視察を組み込んでいただいているため、そこを通じた視察が多いですね。

視察で案内をする瀬﨑さん

教育旅行として学生さんが来られることもあるんですね!

瀬崎さん:

学生さんが増えた背景としては、真庭市が「SDGs未来都市」に選定されたことが挙げられます。

集成材やCLTで建てられた本社事務所を見て、「木造でこんなに格好良い建物ができるなんてびっくりしました」とか「木に囲まれてすごく気持ち良い事務所なのでここで働きたいと思いました」など、学生さんらしい視点のありがたい言葉をいただき、私たちの励みになっています。

いきなり「SDGsについて考えよう」では少しハードルが高いかもしれませんが、まずは「木」に触れていただくことで、SDGsについて考えるきっかけになれたら嬉しいです。

地域の小学生が事務所見学に来てくれたときの様子

参考:バイオマスツアー真庭

※現在銘建工業様では工場見学の直接受入れは行っておりませんのでご注意ください。

CLTを通して木の可能性を広げていきたい

最後に今後の展望を教えてください。

瀬崎さん:

まずはやはり、CLTなどの木質建材を使ってこんなことができるんだ、ということをたくさんの方に知っていただきたいです。

CLTの認知度は少しずつ上がってきていますが、もっとたくさんの方にCLTの魅力を知ってもらうことで、「CLTを使ってみたい」と思っていただけるようなきっかけを作っていきたいと思います。

そのためにも、CLT協会や一緒にお取り組みさせていただいている企業さんなどと意見を出し合いながら、新しい使い方や広げ方などを模索していきたいです。

製品単体の魅力だけでなく、使用することでどんなメリットがあるかを多くの方に届けていけたら良いですね。

瀬崎さん:

そうですね。2次的、3次的なそういったメリットもしっかり伝えることができれば、より多くの方にCLTを使いたいと言っていただけると感じています。

そして、CLTを使用することが結果的に環境負荷を減らすことに繋がっていくこと、SDGs達成に向けた取り組みに繋がっていくことも伝えていきたいですね!

関連リンク

銘建工業株式会社HP: https://www.meikenkogyo.com/