#インタビュー

株式会社Mellow(メロウ)|規格外野菜の活用広がるキッチンカー、「会いたい」を実現する仕組み作りで支えたい

のり飯スタンド

株式会社Mellow 城後幸代さん のり飯スタンド 田村則久さん インタビュー

株式会社Mellow 城後幸代
1981年、福岡県の農家生まれ。現在は移動販売のプラットフォームSHOP STOPの広報に従事。キッチンカーに関する取材実績は200を超え、キッチンカー業界全体のイメージアップにも貢献。自身の幼少期、両親が深夜まで労働しているにも関わらず「少しだけ形が違うから」と一般流通にあがらない野菜や果物があることを疑問視していたという背景から、廃棄ロス問題にも関心が高い。SHOP STOPに出店中の店舗に、「規格外の野菜」を活用し取り組んでいる事業者がいると聞き、キッチンカーでの規格外野菜を使った取り組みの認知拡大を開始。「生産者」と「キッチンカー事業者」の双方に貢献でき、より良いキッチンカー文化の発展につながるよう、今後もキッチンカーの魅力やSDGsに関する取り組みなどについても発信予定。

のり飯スタンド 田村則久
1979年、東京都八王子生まれ。飲食店を数店舗渡り歩き修行をする。2021年8月コロナ禍を機にキッチンカー店舗「のり飯Stand」を開業。現在は営業場所によって、3時間で平均100食を販売する人気店となる。
「のり飯Stand」は、減農薬や無農薬など、こだわりを持った農家の野菜を使用し「野菜が主役の弁当」を提供している。生産者が営む直販の野菜販売所での野菜購入をきっかけに、安心できる野菜の大切さに感銘を受け、生産者から直接食材を仕入れるようになった。現在もその生産者から「規格外の野菜」などを購入しSDGsに貢献しているキッチンカー店舗。
規格外の野菜は、市場に流通できないものだが、味や形は正規の野菜と同じ。今後もこだわりを持って作られた野菜を大切にし、健康的で美味しい料理を顧客に提供し続けたい。
「のり飯Stand」出店状況はスマホでSHOP STOPアプリから確認可能。https://shopstopjp.page.link/HByb

introduction

キッチンカーには、「ここでしか食べられない」「ここでしか体験できない」という魅力があります。そんなキッチンカーと出店場所や利用者を結びつけるのが、日本最大級のモビリティビジネス・プラットフォーム「SHOP STOP」を運営する株式会社Mellow(メロウ)です。

今、その「SHOP STOP」に登録するキッチンカー事業者の中で、規格外の野菜を積極的に活用するSDGsにつながる取り組みが増えています。

今回は、株式会社Mellow(メロウ)でSHOP STOPの広報を務める城後さんと、実際に規格外野菜を活用したSDGsキッチンカー「のり飯スタンド」を運営している田村さんに、お話を伺いました。

「ここでしか会えない」魅力あるキッチンカーを継続経営させるために

―まずは御社の事業内容を教えてください。

(Mellow)城後さん:

私たちは、「会いたいお店がやってくる」をビジョンに掲げ、日本最大級のモビリティプビジネス・プラットフォーム「SHOP STOP」を運営しています。

SHOP STOPは、キッチンカーを開業したい方の相談にのったり、出店場所を探すキッチンカーと駐車場などの空きスペースを有効活用させたいオーナーさんを結びつけたりするサービスです。また、SHOP STOPアプリでは、キッチンカーを利用したいお客様が、出店の状況を確認できるようになっています。

SHOP STOP

創業のきっかけは、約20年前に代表の石澤が自分の作ったコーヒーを提供する「カフェカー」を経営していたころに遡ります。

当時、キッチンカーは安心して出店できる場所がありませんでした。

例えば、何千人を収容しているようなビルのオーナーさんは大手のデベロッパーなので、キッチンカーのような個人事業主が、「この場所を貸してほしい」と交渉しても断られてしまうことが多いんです。そのため当時の移動販売車は、道端で警察と追っかけごっこをするしかなかったといいます。

キッチンカーを開業している人には、「旅行で知った美味しい料理をどうしても日本の人に伝えたい!」など、強い想いをもっている人が多いのが特徴です。ですから、アジアン料理やエジプト料理のお店など、「日本では、ここでしか食べられない」ような魅力的な店舗がたくさんあります。

キッチンカーを運営する中でそんな魅力に気づいた石澤は、継続的に経営できる仕組みを作りたいと考えました。そこで立ち上げたのが、現在のビジネスモデルです。

―創業以来「安心して出店できる仕組み」作りに尽力されてきたとのことですが、現在のキッチンカーの状況はいかがでしょうか?

(Mellow)城後さん:

STOP STOPへの登録キッチンカーの台数は増加傾向にあり、2023年2月末時点で2,333台です。

これまで首都圏のキッチンカーは、オフィスのランチタイムにおける需要のミスマッチに強みを見出してきました。つまり、「ランチ難民を救う」存在としてビジネスを展開してきたんです。

しかし2、3年ほど前にコロナ禍の中で緊急事態宣言が出たのを機に、「お店の方からお客様のところへ行ける」「3密を回避できる」キッチンカーの需要が、オフィス街だけにとどまらなくなりました。ほかにも住宅地エリア、区役所の前など、利用してもらえるシーンが広がったことで、キッチンカー登録台数が増えていると考えられます。

実際に、コロナの緊急事態宣言の前後の、2020年6月時点と2022年6月時点で比較すると1.9倍になっています。いかにコロナ禍でキッチンカーの需要が高まったかがわかりますよね。

一方、利用者側のお話をしますと、移動販売車は「移動」というだけあって出店している場所がわかりにくく、「会いたいときに会えない」というのが大きな課題でした。

そこで2017年に、利用者がSHOP STOPに登録している移動販売車の出店場所や休み、営業時間などの出店状況がわかるように、SHOP STOPアプリをスタートしたんです。好きなお店を追いかけたい人は、お気に入り登録をしておくと、1週間分の出店スケジュールや急なお休みまで確認できます。

SHOP STOP

そのSHOP STOPアプリも、ここ2年で利用者数が急増しました。特にコロナ禍前後、2020年6月時点と2022年6月時点のダウンロード数を比べてみると、3.1倍も増えている状況です。

また、SHOP STOPアプリには、利用者側だけでなく出店側にも「手間をかけずに顧客との接点を強化できる」というメリットがあります。3月20日には、SHOP STOPのキッチンカーを利用すると、ポイントがたまる新機能をリリースしました。キッチンカーと利用者さんを、ますます広く深く結びつけられたらと考えています。

SDGsの取り組みは、「値段を変えずに提供したい」という想いから

―キッチンカーは、SDGsに関する取り組みも進んでいると伺いました。どのようなことをされているのでしょうか?

(Mellow)城後さん:

まず、SHOP STOPに出店するキッチンカーはたった一台の駐車スペースで、日本や海外の食文化を伝えてくれます。このビジネスモデルは、すでに1つの「サステナブル」な取り組みだと感じています。

加えて、ここ数ヶ月から1年の間に、規格外の野菜や廃棄野菜を活用する取り組みも増えてきました。その背景には、原価高や円安、ガソリン代の高騰などで、事業者さんが事業の利益を圧迫せざるを得ない状況があります。

そのような状況でも、「お客様には価格をなるべく上げずに提供したい」事業者さんが試行錯誤した結果、「低価格な規格外野菜を、農家さんから直接仕入れる」という案が出てきたんです。

農家さんにとっても、規格外の野菜は一般流通に出すほどの量はありません。そのため、これまでは低農薬・無農薬で手間暇をかけて作ったものであっても「自分で食べるか、親戚や近所に分けるしかないもの」でした。

今回同席されているのり飯スタンドさんをはじめとして、キッチンカー事業者が直接農家の方から仕入れるという「流通の変化」も、こういった取り組みが進んでいる背景にありますね。

Mellowでは、このようなSDGsの取り組みをしている事業者さんを、SHOP STOPのアプリを介してたくさんの方々に知ってもらい、応援したいと考えています。そして、これをきっかけに規格外野菜を使う事業者さんが増えていってほしいという想いもあります。

Mellow

「この野菜を使わせてほしい」開業前に農家さんへ頼み込んだ

―続いては、実際に規格外野菜を活用しているキッチンカー「のり飯スタンド」さんに話を伺います。まずは、キッチンカーをスタートされた経緯をお聞かせください。

(のり飯スタンド)田村さん:

 キッチンカーを選んだ大きな理由は「コロナ禍だったから」です。

それまで私は24年間、和食洋食とさまざまな飲食店に勤めてきたのですが、2021年のタイミングで独立することだけは決めていました。その時期がたまたまコロナ禍に重なってしまったんです。

勤めていた飲食店の大変な状況を見ていましたし、同時にキッチンカーの需要が高まっていることも知りました。このような状況を鑑みて、キッチンカーの開業を決意し、2021年8月に「のり飯スタンド」をスタートしました。

のり飯スタンド

ただ、困ったのがキッチンカーを出す場所です。スタートするまでは「どこか借りることができるだろう」という軽い気持ちでいたのですが、商業施設や大きなビルの付近などは、どこを当たっても断られてしまいました。個人事業主が法人と交渉することの難しさを感じましたね。

そこでキッチンカーの先輩に相談したところ、教えてもらったのがSHOP STOPです。キッチンカーをスタートした翌月には登録して、今は安心して出店できるようになりました。

―廃棄野菜や規格外の野菜を活用されるようになったきっかけを教えてください。

(のり飯スタンド)田村さん:

近所に減農薬・無農薬の野菜販売所があるのですが、そこの野菜が本当に新鮮で美味しくて。しかも「安心して食べられる」ということに感動したんです。ぜひ、この野菜を使って「自分の子どもにも安心して食べさせられる」ご飯を出すお店にしたいと考えました。

その販売所に野菜を出している農家さんは「直販していない」と言っていましたが、「どうしても仕入れをさせてほしい」と頼み込み、承諾してもらいました。

そこから規格外の野菜を使うようになったのは、開業してから半年くらい経ち、ある程度まとまった数を仕入れられるようになってきた頃です。農家の方から「規格外の野菜があるので、よかったら使ってくださいませんか。通常の野菜の約1/10で提供します。」と、お声がけいただいたのがきっかけでした。

規格外野菜といっても、少し表面に傷がついていたり、形が曲がっていたりするだけです。もちろん農家さんが丹精込めて作った野菜ですから味は変わりません。

そのような野菜の仕入れを通して、「価格を上げずにお客様にたくさんの野菜を提供できるうえ、農家さんの助けにもなれること」を嬉しく感じ、ありがたく申し出をお受けました。

規格外野菜で実現した、野菜15種類のランチボックス

―規格外の野菜を使うメリットは、コスト以外にもありますか?

(のり飯スタンド)田村さん:

コスト以外にも「こんな種類の大根があったんだ!」というような、自分では買わない野菜・初めて食べる野菜と出会えるメリットがあります。

のり飯スタンドでは、「やさいが主役!お肉が副菜」の看板を置いていて、それまで使ったことがなかったものも含めて、15種類から20種類の野菜を使っています。それらをサラダ、揚げびたし、炒め物、ピクルス、漬物、煮物など、それぞれに合う調理をして1つのランチボックスにのせています。

これだけの種類の野菜とお肉も入れて、850円という値段で提供できているのは、規格外の野菜も活用しているからなんですよね。

ありがたいことに、今は3時間で平均100食を販売させていただくようになり、野菜の仕入れも昨年の2月に比べて今年の2月は、約2.5倍にまで伸びました。今後も少しでも、農家さんの力になれたらと思っています。

そしてもう1つのメリット。個人的な話になりますが、私の子どもが面白い形の規格外野菜に興味を持ってくれることです。

私は祖父母が畑をやっていましたので、小さいころから農業体験をしながら、自然に野菜を作る大変さを学んでいました。そして、畑でできた「ちょっと曲がった」キュウリや「ちょっと形が崩れた」かぼちゃなども、よく食べていました。

ですから、自分の子どもにも「形がちょっと変わってても、味は変わらず美味しいんだよ」ということを伝えたい。その機会をもらえて感謝しています。

それぞれの豊かさを目指して、できることから

―今後の展望を教えてください。

(Mellow)城後さん:

Mellowは、「それぞれの豊かさをそれぞれの想いで」というパーパスで活動しています。今はいろいろなものを比べられる時代になっていますが、大切なのは誰かと比べた幸せや豊かさではなくて、「自分らしい豊かさ」だと思うんです。

ですから、様々な個性や多様性を実現できるプラットフォーム作りを通して、サステナブルな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

Mellow

(のり飯スタンド)田村さん:

キッチンカーは、現場現場で他のキッチンカー事業者さんと一緒になります。そんな事業者さんと情報交換したり、教えてもらったりしたことで、これまでたくさん助けられてきました。

これからは私が、規格外の野菜についてはもちろん、今使用している「コーヒーバイオカトラリー」というエコなスプーンについてなど、皆さんに情報を伝えてお手伝いできたらと思っています。私1人にできることは少なくても、このような活動をキッチンカー業界に広げていければとも考えています。

のり飯スタンド

ー規格外のお野菜を使った「野菜が主役」のランチ、ぜひ食べにお伺いしたいです!本日は貴重なお話をありがとうございました。