櫻沢 美樹
1992/9/10、神奈川県生まれ。学生の頃は、親の事情で高校までで3度の転校を経て、色々な人と触れ合う中で、人の多様性に関心を持つようになり、大学は心理学科を専攻することを決意。大学在学中は心理学研究に力を入れ、「社会心理学」の研究レポートで最優秀賞を受賞。その後、2015年にディップ株式会社に入社。2020年、同期最速で管理職昇格し、優秀マネジャー賞を受賞。その年、社長に「私たちが解決していた労働課題はSDGsそのもの、その中で全社員が持っているdream idea passionでボトムアップのSDGsを推進していきたい」と直談判し、SDGs推進課を設立。営業課長と兼務して「フードバンクプロジェクト」を開始。2021年からは、人材・組織開発室と次世代事業統括部という2部署でSDGs推進を行っている。
SDGs1「貧困をなくそう」は労働課題そのもの
–今日は主に求人情報サービス「バイトル」や「はたらこねっと」を手掛けるディップ株式会社のSDGs推進活動を通して活躍されていらっしゃる櫻沢美樹さんをお招きしています。
櫻沢さん、自己紹介をお願いします。
櫻沢さん:
ディップ株式会社の櫻沢美樹と申します。2015年入社なので、今年で社会人7年目です。
入社当時の配属は営業でした。でも実は、営業がすごく嫌いで、とにかくやりたくなくて、入社してすぐの研修では、本当に何もしゃべらない状態でした。
そんな感じだったので1年目はかなり苦戦しました。ただ、「お客さんを幸せにしたい」という思いは人一倍あって、「このままじゃダメだ。変わらなきゃ」と考え、勉強して、考え方と行動を変えました。
すると、次の年から賞を数々頂けるようになって、最速で営業課長を任せて頂けるようにまでなりました。
–SDGs推進課に配属されたのは、営業課長に就任してからですか?
櫻沢さん:
そうですね。当社は求人情報を扱っている会社なので、日々、様々な労働課題に直面することがあります。SDGs は私たちがやってきたこと、労働課題の解決そのものだと思ったので、「全社員が持っているdream idea passion※で、ボトムアップ型のSDGsを推進していきたい」と社長にメールで直談判しました。
社長からはすぐに、「社員が自発的にそういった声を上げてくれるのを待っていた」と返事をいただきました。
「社員からアイデアを募ってSDGs活動をすることが大事だから、ぜひやってほしい」と言われて、その後すぐにSDGs推進課を設立してくださいました。
SDGs推進活動の取り組み
–SDGs推進活動の内容を教えてください。
櫻沢さん:
まずは、SDGsの有識者をお招きして、社内勉強会を実施したり、SDGsへの関心を高める機会を作りました。だんだんと何かやりたい!という声やアイデアを出す社員が増えていき、現場社員10名による有志の「フードバンクプロジェクト」という活動を開始。
その他にも、弊社の事業に関連する社会課題について仲間同士で対話し行動を起こすSDGsワークショップなどを企画し、社内推進活動を行っています。
社員発、自発的なSDGs活動
–SDGsの社内推進活動が必要だと思った理由は何ですか?
櫻沢さん:
SDGsは大事だと皆わかっていても、つい後回しになりがちだからです。
そもそも、当社には、上述の「社会を改善する存在となる」という企業理念があります。
理念に惹かれたメンバーが、熱意を持って入社してきてくれるのですが、いざ仕事が始まったら、目の前のやらないといけないことに追われて、熱い思いを発揮する機会がついつい減ってしまうと感じていました。
求職者と仕事を繋ぐ仕事をしていて、みな最前線の現場で労働課題に向き合っているのに、それはすごくもったいないことだと思ったんです。
だから、現場で起こっている労働課題に対して、社員みんなでアイデアを出し合い新たなアクションを起こすなど、社員が主役となった自発的なSDGs活動を促進する必要があると思いました。
また、アイデアを事業化できるノウハウを持った経営者の方が、社外には大勢いらっしゃるので、私はそういった方と当社を繋ぐ仲介役になりたいと思って、今色々と考えているところです。他には、フードバンクの取り組みも行っています。
フードバンクとフードパントリー
–フードバンクってなんですか?
櫻沢さん:
フードバンクとは、食べ物に困っている方々へ食品を届ける活動です。
社長が「フードバンクの活動をやってみたら?」と勧めてくれたことがきっかけで始まりました。
そもそも、食に困っている方は、職にも困っていることが多いです。SDGs1「貧困をなくそう」に直結する労働課題だと思ったので、まずは社内でフードバンクのプロジェクトを一緒にやってくれるメンバーを公募しました。
最初はツテなど何もなかったので、まずはフードバンクの活動をされていらっしゃるNPOの方にアポイントを取り付けるところから始まりました。
そこで実際、フードパントリーと呼ばれる食品を配る拠点で、生活に困っている方に食品を届けるという活動にボランティアとして参加させて頂きました。
フードバンクを持続可能な事業へ
実際に活動してみて思ったのですが、「資金繰りが難しい」と仰るフードバンク関係者の方が多いんですね。
ディップ社内では今、このフードバンクの取り組みを、どうやって持続可能な事業にするか考えているチームがあって、今後発展していくと思います。
専門メディア「SDGs CONNECT」を立ち上げ発信
–SDGsに関して、どのように情報を発信されていますか?
櫻沢さん:
「社会とSDGsをつなぐ」をコンセプトとしたSDGs専門メディア「SDGs CONNECT」を立ち上げて運営しています。
「SDGs CONNECT」を立ち上げたきっかけは、社内での意見交換です。
そこで、「SDGsに興味はあっても、SDGsに関する情報が集約されたサイトってないよね」という意見がありました。学生の方が個人でSDGsに関して発信しているサイトはあっても、この企業がこういう風にSDGsに関する活動をしている、という情報が集約された企業目線でのサイトがなかったんです。
だから、学生の方や経営者の方、投資家の方など様々な立場の方から見てわかりやすいような、SDGsに関して興味が沸くようなメディアを作りたいということで立ち上げました。
–SDGsって、特定の立場の人だけではなく、地球上に住む人全てに関係することですしね。
櫻沢さん:
本当にそうですね。様々な人にSDGsについて興味を持って頂きたいですし、「SDGs CONNECT」には様々な立場の人の視点があった方がいいと思っています。
「SDGs CONNECT」を立ち上げる時に、SDGsに関する情報を集めてブログで発信している学生の方にインタビューしたことがあるんです。その方は「SDGsを意識して行動することは当たり前だよね」という前提で話をされていて、「自分はもっと具体的に、日常的にSDGs活動に取り組んでいきたい」と仰っていました。
また、その方の通う学校では、SDGsに関するディスカッションが行われているそうです。私は、SDGsに関して話し合う場があることは、すごくいいなと思ったんです。
–現在のSDGsは2030年までに様々な課題を解決することが目標ですが、2030年以降の未来を考えた時に、学生の方や若い方の目線ってすごく大切ですよね。
SDGsマーケティング
櫻沢さん:
そうなんです。私はどちらかと言うと理想ありきの人間なんですが、「SDGsは大事だけど、売り上げを達成することの方が優先順位が高い」という意見は必ず出てきます。
そういう時に、若い方が「SDGsの考え方はマストです」、「何か商品を購入する時は、SDGsの観点で選んでいます」と発信することで、上層部の方も「今後のマーケティングにSDGsの観点が必要になってくる」ということに気づくと思うんですよね。
なので、様々な立場の人同士で意見を交わし合えると良いなと思うんです。
1人1人が楽しく仕事ができる環境を作る
–櫻沢さんの理想って何ですか?
櫻沢さん:
これは一択なんですけど、やっぱり私、日本を良くしたいんですね。
電車に乗っていて思うのですが、疲れた顔をしているビジネスパーソンが多すぎませんか?
誰でも、仕事を嫌々やっていたら疲れてしまうと思うので、正社員とかそういう立場を抜きにして、1人1人が楽しく仕事ができる環境になったらいいと思っています。
ある意味、自己研鑽のために企業を利用するように働いてもいい。仕事を「やらされてる」のではなく、働き方や企業の枠組みを超えて、楽しんで仕事をしている人が日本中に増えたらいいなと思います。
なのでまずは当社の従業員2400人に働きかけているところですね。
私がいくら本気で、「日本を楽しく仕事ができる環境にしよう!楽しんで仕事をしている人が日本中に増えたらいいよね!」と言っても、自分の会社の2400人を動かせないなら、日本の労働環境の変革なんて実現できないじゃないですか。
だから今はほんとに小さいところから、社内の中で100人にまず賛同してもらって、イノベーターを作って、それが広がっていくような世界観を描いています。
労働課題をアイデアで改善し、新しいビジネスを生み出す
–今後の展望をお聞かせください。
櫻沢さん:
社員自らが現在のマーケットに問題意識を持ち、そこから新しいビジネスを生み出すことが目標です。
例えば、当社の営業職として仕事をしていると、様々なお仕事をされている方とお話する機会があります。そこで、求人募集の提案をするだけでなく、いかに相手の立場に立って物事を考えられるか。
このお店に関して、何が課題で、どういったアプローチが最適なのかを考えてご提案する過程で、新しいビジネスが生まれていく。そういう流れを作っていくことが目標です。
人って、本当に自分のお店や会社について、深く考えて提案してくれる人から買いたいと思う生き物なんですよね。ただ求人広告の枠を売る人から、お店のコンサルタントになる。営業職の1500人がコンサルタントになったら、すごく労働問題に対して力を発揮すると思うんです。
社員1人1人が労働課題を見つけて、それを改善するアイデアを出して、新しいビジネスを生み出すアントレプレナーシップ※を持つ。そういう流れを作っていきたいと考えています。現在起こっている労働課題をアイデアで改善していくことが、SDGs1「貧困をなくそう」の目標達成に繋がると思っています。
–本日はありがとうございました。