#インタビュー

株式会社ノバレーゼ|1人でも多くの人に「サステナビリティの体験を」。子ども用ドレスアップサイクルプロジェクトで届けた思い

株式会社ノバレーゼ

株式会社ノバレーゼ 岩井 雄紀さん インタビュー

岩井 雄紀

1989年10月27日、奈良県生まれ。2012年、早稲田大学を卒業。同年、株式会社ノバレーゼに新卒入社。ウエディングプランナーとして、約3年間で200組以上の結婚式に携わる。2015年、人材開発部に異動。新卒・中途・障がい者採用において、年間採用計画の立案および運営からフロント業務までを一気通貫で経験。2019年には本社スタッフ部門MVPノミネート、マネージャー昇進。2021年、財務経理部へマネージャーとして異動し、主に子会社の会計・税務全般および決算業務を担当。2022年、社内でSDGsプロジェクト(廃棄予定のウエディングドレスを子ども用パーティドレスにアップサイクル)を立ち上げ、起案者として企画の運営全般を担う。2023年7月、広報室へマネージャーとして異動し、主にIR業務を担当。

introduction:

株式会社ノバレーゼは、結婚式のプランニングや運営を行う婚礼プロデュースだけでなく、結婚式場やレストラン、婚礼衣裳のレンタルをするドレスショップの運営など、ブライダルに関わる様々な事業を展開しています。

「世の中に元気を与え続ける会社でありたい」という理念を掲げ、サステナブルな活動にも積極的に取り組んでいます。そんなノバレーゼが2022年に立ち上げたのが、「廃棄予定のウエディングドレスを子ども用パーティドレスにアップサイクルする」というプロジェクトです。

今回は、そのプロジェクトを起案され企画や運営を担っている岩井さんに、プロジェクトの内容やノバレーゼの取り組みについてお話を伺いました。

一生に一度の瞬間のため、必要なアイテムは自社で揃えられる会社作りを実施

–まずは、会社概要と事業内容について教えてください。

岩井さん:

ノバレーゼは、2000年に婚礼プロデュースおよびドレスショップを営む会社として創業しました。

「ノバレーゼ」という社名は、NOTABLE(注目に値する)、VALUABLE(価値のある・貴重な)、RENOVATE(新しく元気にする)、SENSATIONAL(感動や驚きを与える)の頭文字を取った造語です。これらの英単語の意味を大切にしながら、ブライダルを通して世の中に元気と感動を与えたいという思いで歩んできました。

現在は結婚式場を運営し、そこで挙式をされるお客様のお手伝いをする「婚礼プロデュース部門」、ドレスのレンタルを行うドレスショップを全国に展開している「婚礼衣裳部門」、結婚式の料理をはじめ宴会飲食のほか、平日は一部の施設でランチ・ディナー営業を行なう「レストラン事業」で構成されるブライダル事業を展開しています。

2023年6月30日には東京証券取引所のスタンダード市場に上場し、これからますます事業の発展に努めていきたいフェーズにいます。

–婚礼プロデュースだけではなく、ブライダル周辺事業にも取り組まれているのですね。

岩井さん:

結婚式という「一生に一度の空間や時間」を形作るために必要なアイテムは自社内で揃えられるよう、9つのグループ会社を通して内製化にも力を入れています。

さらに、「Rock your life 世の中に元気を与え続ける会社でありたい」という企業理念のもと、様々なサステナブルな活動にも取り組んできました。2022年からスタートした「子ども用レンタルドレスのアップサイクル」も、そのなかの1つです。

1人でも多くの人が「サステナビリティの魅力」を体験できるプロジェクトにしたかった

–「子ども用レンタルドレスのアップサイクル」について、詳しく教えてください。

岩井さん:

具体的なサービス内容は、往復の送料とクリーニング代を含めて3泊4日3,300円で「子ども用ドレス」をレンタルできるというものです。子会社であるアンドユーが経営するECサイト経由で貸し出しをしています。

このプロジェクトを開始した背景には、役目を終えたウェディングドレスを「アップサイクル」したいという思いがありました。

弊社の「婚礼衣裳部門」では、ウェディングドレスやカラードレスをはじめ、和装、タキシードまで含めた結婚式の衣裳全般をレンタルできます。お貸しする衣裳は、最善の状態で着てもらえるように品質管理を徹底し、1着1着にレンタル可能な回数の制限を設けているんです。

デリケートな素材ですと、最大3回までしか着用できないものもあります。規定回数に到達した衣裳は、中古市場に流通するのを防ぐため「細かく裁断して破棄する」といった処理を行ってきました。

それに対して私は、「新婦様を悲しませないためにも適切な処理だ」と理解しながらも、「まだ何かできるのではないか」と入社当時から歯がゆい気持ちを抱えていました。そこで思いついたのがこのプロジェクトです。

個人的に、コロナ禍で特別なイベントの機会が奪われている子どもたちのニュースが印象的だったこともあり、アップサイクルの対象を「子ども用のドレス」にしました。その中でも5、6歳向け(110~120㎝)を選んだのは、発表会や卒園式入園式などの特別なイベントが多く、物心がつき始め「プロジェクトを体感できる年齢」だと考えたからです。

–子ども用ドレスの「販売」ではなく、「レンタル」にされた理由をお伺いできますか?

岩井さん:

もちろん販売も考えましたが、その場合には1回の着用で終わってしまう可能性もありますよね。テーマが「SDGs」だったので、レンタルというビジネスモデルの方がふさわしいと考えました。

レンタルにすることで1人でも多くの方に「ウェディングドレスのアップサイクルで、こんなに素敵なドレスができるんだ」と、サステナビリティの魅力を体験してもらいたいという思いもありましたね。

価格を最大限抑えたのも同じ理由です。お客様に「取り組みとしては素晴らしいけれど、借りるには高い」と感じさせてしまうと、サステナビリティを体験してもらう目的が達成できません。そのため利益はほとんど考えず、利用してもらいやすい金額を意識しました。

これを実現できたのは、廃棄資材を活用したため生地代がほとんどかからなかったことや、縫製も含めてなるべく社内で制作したことなどが挙げられますが、もうひとつ、学生さんにも協力いただいたことが大きなポイントです。

実は、「作り手側にもなるべく多くの人に関わってほしい」という思いから、約20名の社内メンバーに加えて「産学連携プロジェクト」として学生さんにも関わってもらおうと考えたんです。ただ、ノバレーゼはそれまで学校と連携した実績はなかったため、縁のある学校などもありませんでした。

そこで、「服飾関係の学部学科をお持ちの都内の学校」というくくりの中から、選んだ学校に私が直接テレアポを取らせていただきました。5、6校へお電話を差し上げたのですが、特にこのプロジェクトの主旨に共感してくださった東京モード学園様と連携に至ったという経緯があります。

東京モード学園の生徒さんには、デザインと型紙のパターン、トワルと呼ばれる試作品の部分を担当していただきました。生徒さんからご提案いただいたデザインは100以上もあり、どれも素敵なものでした。その中から子どもたちの着用感や安全性も鑑みながら、10作品を選ばせていただきました。

もちろん、デザインが選ばれなかった学生さんとも関われなかったわけではありません。学校で実施した試作品をトワルに着せてチェックする場には、このプロジェクトの対象だった2年生の全学生さん約100名が来てくれました。

今、私は広報室にいますが、経歴としては採用担当をしていた期間が一番長いんです。その際学生さんに対して、「私のように楽しんで仕事をしている社会人ともっと触れ合ってほしい」、「ブライダル業界を肌で感じてもらえる機会を作りたい」と思っていました。

ですから、今回のプロジェクトで「学生さんが社会人やブライダルという仕事と関わる機会」を創出できたことも嬉しいポイントですね。また1年後、次の学年の皆さまとコラボレーションできると面白いなと思います。

社内外から反響が!主旨に共感してリピートするお客様も

–実際に、リリースされてからの反響はいかがでしたか?

岩井さん:

反響は大きいと感じています。お客様の中にはこのプロジェクトの主旨に共感して、4回もリピートで借りてくださっている方もいるほどです。

サステナビリティについて日頃から意識している方も少なからずいらっしゃるとは思っていたのですが、実際に「アップサイクル」という考えに共感してサービスを利用してくださる方が多かったことを非常に嬉しく感じましたね。

5、6歳向けのドレスの中でも特に人気があるのは、ピンク色でノースリーブの丈の長いデザインのものと、水色で肩にリボンのモチーフがついている膝丈のデザインのものです。選んだ理由はお子さまそれぞれにあると思いますが、お姫様のドレスのようなビジュアルが、お子さまの心を射止めているのかもしれません。 

一方で、お子さまではなく親御さんに非常に人気があるのは、スタイリッシュなシルエットのマーブル模様のドレスですね。「これを娘に着せたい!」と、親御さんから選んでいただくことの多いデザインです。

そして予想外だったのは社内の反響です。実は、何人ものスタッフから「素敵なプロジェクトにしてくれてありがとう」という感謝の言葉をかけてもらいました。年に1回の社員総会の場で初めて会うスタッフが、わざわざお礼を言いに駆け寄ってきてくれたこともあります。

実は私以外にも「廃棄されていくドレスを寂しい気持ちで見ていたけれども、どうすればいいかわからなかった」というスタッフが多かったこと、このプロジェクトがそのようなスタッフの心を軽くしたことに、やった甲斐があったと心から感じました。

2023年4月からは第2弾として、社内外からの「もっと小さいサイズも作ってほしい」という要望にお応えして3歳以下のサイズも増やしました。今後は、「レディースでは大人ぽくなりすぎるが、子ども用では幼すぎる」というお悩みを聞く小学校3、4年生ごろのお子さまのサイズ展開を考えています。

さらに、新郎様の衣裳衣装もウエディングドレスと同じようにアップサイクルが可能ですので、ベスト、蝶ネクタイ、ズボンなどの男の子向けのラインアップを揃えるというアイディアもでていますね。

SDGsはいろんな境界線を越える「共通言語」

–今後の展望を教えてください。

岩井さん:

今回、この「ドレスのアップサイクル」のプロジェクトに取り組んで感じたのが、SDGsやサステナビリティは、いろんな境界線を越えることができる「共通言語」だということです。

例えば、今回のドレスのアップサイクル自体が、企業と学校、企業と学生を繋ぐ一つのネタになりました。 ノバレーゼという会社と、まだ結婚式とは縁のないはずの子どもたちを繋ぐきっかけにもなっています。

このように、サステナビリティの取り組みは、「企業と地域」「スタッフとお客様」といった、枠組みを越えた繋がりを作ることができるんです。ですから、携わる全ての人たちが「楽しみながら継続的に活動し続けたいと思えること」こそが、SDGsもしくはサステナビリティだ、という認知が広がっていくと、とても豊かな社会になるのではないでしょうか。

個人的な意見にはなりますが、そういった思いを大切にしながら、具体的には特に「地域社会の創生」と「ダイバーシティ」に力を入れたいですね。

首都圏や大都市圏への出店を強化している競合他社も多い中、ノバレーゼは地方都市圏を中心に、全国各地60店舗展開しています。そんな私たちだからこそ、その土地の方々に愛される店舗作りを通して、コミュニティの形成を助けることができるのではと考えているためです。

また、ノバレーゼは創業当時から「人が命の会社」と言い続けており、様々な境遇、ライフスタイルのスタッフが在籍しています。ですから、どんな境遇やライフスタイルを形成しているスタッフにとっても「生き生きと活躍できる企業のパイオニア」として走り続けたいという思いもあります。

それらも含めて、ノバレーゼは今後もSDGsやサステナビリティに関して、いろんな取り組みにチャレンジしていきたいなと考えています。

 ―本日は貴重なお話をありがとうございました。