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フィリピンのスラム街の現状は?スラムができる原因・具体的な場所や私たちにできること

観光地や留学でも人気なフィリピン。人口は約1億900万人と多く、活気が溢れた国として知られていますが、一方でスラム街が多い国としても有名です。

スラム街について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】【スラム街とは?】原因や世界の現状と問題点、対策、SDGsとの関係を簡単に解説

フィリピンのスラム街はどこにある?

まずは、簡単にフィリピンという国についておさらいしておきましょう。フィリピンは7,641の島からなる、東南アジアに位置する国です。

首都はマニラで、公用語としてフィリピン語と英語が定められています。フィリピンはスペイン統治やアメリカ植民地、日本による首都マニラの制圧など苦難が続きました。1945年に太平洋戦争で日本が敗北したことによって、フィリピンの独立が実現しました。

フィリピンに形成されたスラム街として、

  • マニラ市・トンド地区
  • ケソン市
  • セブ島

が挙げられます。それぞれのスラム街について説明します。

マニラ市・トンド地区

マニラは、美術館やスペイン統治時代の雰囲気が漂うマニラ大聖堂、サンチャゴ要塞などがあり、沢山の観光客が訪れる場所です。

このマニラの北西部・トンド地区に有名なスラム街が存在します。トンド地区のスラム街は「スモーキーマウンテン」とも呼ばれており、一度は耳にした方も多いのではないでしょうか。

スモーキーマウンテンは、もともとは漁村でしたが、フィリピンはゴミの集積場が少ないこともあり、1954年にゴミ投棄場所となりました。以降、大量のゴミが捨てられることで、貧しい人々が収入になりそうな廃品を回収するようになりました。

「スモーキーマウンテン」という言葉は、大量のゴミが山のように積み上がり、そこから自然発火し、煙が出たことが由来となっています。スモーキーマウンテンで廃棄されたゴミを拾って、生計を立てている人々はスカベンジャー(腐った肉を食べる動物)と呼ばれていた時期もありました。

1995年にスモーキーマウンテンは、フィリピン政府によって強制撤去されることとなります。大量のゴミは他の場所に移動させられ、スモーキーマウンテンがあった土地には現在、団地が建てられています。強制撤去によって住む人は減ったものの、まだ多くの人々が狭い団地やバラック(粗末な古屋)で暮らしています。

ケソン市・パヤタスダンプサイト

フィリピンのケソン市にある、パヤタスダンプサイトという廃棄処分場にもスラム街が存在します。別名でスモーキーバレー(煙の谷)とも呼ばれています。

というのも、1995年にスモーキーマウンテンが強制撤去された影響で、そこで生活を送っていた人々がスモーキーバレーに移り住んだためです。

セブ島・ロレガ地区

観光地でも人気なセブのロレガ地区にもスラム街が存在します。ロレガ地区はもともと墓地でしたが、不法侵入をした者達が集まりスラム街が形成されました。

麻薬の取引や窃盗などの犯罪が起こる地域としても知られている場所です。ロレガ地区に住む人々は定職についている者は少ないため、子どもたちは学校に行けず働きに出ているケースもあります。

フィリピンにスラム街が形成される理由

フィリピンにスラム街が形成される理由としては、

  • 経済格差
  • 貧困層が収入を得るために都市部に移住する

などが挙げられます。それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。

経済格差

フィリピンでスラム街が形成される大きな理由として、経済格差が関係しています。

フィリピン統計機構によると、フィリピンが定めている貧困ライン(平均12,082ペソ)を下回る中で生活している人は2,614万人、貧困率で計算すると23.7%に上ります。

2000年時点の38.8%に比べれば下がってはいるものの、2018年の21.1%よりも上昇しているため油断はできない状況です。

貧困家庭で育った子どもは、学校に通える余裕がなく、生活のために労働を強いられます。そしてスラム街のゴミ拾いや、自分たちで制作したアクセサリー、お菓子を売り、その収入を生活費に充てるのです。

また、フィリピンで安定した職に就くためには学校教育を受けている必要があります。例えば、フィリピンに多いベビーシッターは小学校を卒業していないと働くことができません。コンビニ店員になるためには、高校卒業に加えて公用語である英語が話せないと就職は難しい状況です。

多くのフィリピン人は学校で英語を学びます。しかし、貧困層は学校に行けないため、英語の読み書きができません。結果的に経済格差が生まれてしまい、貧困層の割合が減らずにスラム街が形成されるのです。

貧困層が収入を得るために都市部に移住する

フィリピンにあるスラム街は、マニラやセブ島などの都市部に存在します。もともとスラム街に住む貧困層は地方で暮らしていましたが、そこでは安定した収入を得られるような仕事は多くありません。そのため、収入を得るために地方から都市部に稼ぎに訪れます。

しかし、教育を受けていない貧困層は安定した職に就けないため、毎日の生活費を稼ぐだけで精一杯です。もちろん、家賃を払えるほどの収入はないため、そのような人々が集まりスラム街が形成されます。

フィリピン滞在の日本人が知るスラム街の生活の現状

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ここでは、フィリピンスラム街での生活の現状を見ていきましょう。実際にフィリピンスラム街の近くに滞在していたNさんに、お話をうかがいました。

セブ島で見た経済格差

Nさんは、2016年から2017年にかけてセブ島にあるマンダウ―に語学留学していました。

セブは、語学留学のほかにリモートワークで多くの人が訪れている都市です。

また外国企業のオフィスやカフェ、飲食店などが集まるITパークがあり、その付近に住んでいる人の多くは富裕層でした。

その一方で、ストリートチルドレンが自分たちで作ったスナックを、信号待ちの車のドライバーに「買ってくれ」と直接売りに行っている様子を見かけたそうです。ドライバーは売りに来た子どもたちに対して、安易に拒否することはなく、中には購入する人もいたと言います。

他にもNさんがセブ島に暮らしている際に驚いたエピソードとして、スラム街に住む人々は雨が降りはじめると、自分の住処から各自シャンプーやボディーソープなどを持ってきて、体を洗い出すというものでした。スラム街に住む人々の現実的な生活がうかがえます。

ストリートチルドレンに関して詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

Facebookにスラム街の状況を載せる現地の人々

Nさんによれば、フィリピンの人々はTwitterやInstagramといったSNSの中でも、Facebookを使用する人が圧倒的に多い印象だったそうです。Nさんが留学していたころに出会った友人がスラム街で起きた事故の写真を投稿しました。

その写真は、スラム街で1人の少年が車にひかれた写真でした。バラックがぎっしり並んでいるスラム街は道が狭いのにもかかわらず、車はかなりのスピードで走っています。子どもが車にひかれて亡くなるのも珍しい話ではない、とフィリピンの友人は話していたそうです。

投稿した友人はホテルで働いており、ある程度収入を得ていました。「スラム街についてどうにかしたいとは考えているけれど、根本的な解決方法が見つからない。だから注意喚起のために、実際に起きている出来事をfacebookに投稿している」と話していたそうです。

フィリピンの人々はスラム街に対して何かしらしたいとは考えているものの、問題は根深く簡単に解決できることではないと言えます。

フィリピンのスラム街でできるボランティア

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ここまで、フィリピンのスラム街が形成される理由や現状を紹介してきましたが、「フィリピンのスラム街でボランティアがしたいけれど、方法がわからない」という方もいるのではないでしょうか。

ここでは、フィリピンのスラム街でできるボランティアを2つ紹介します。

炊き出し

ボランティアの一つとして、スラム街の人々に食事を提供する炊き出しがあります。スラム街の人々は、得られる収入が少なく、また一世帯の人数が多いため十分な食事を食べられていません。

例えば、スモーキーバレーに住む人々は、飲食店から出たゴミから、まだ食べられそうな残飯を見つけて調理し食べる習慣(パグパグ)があります。ゴミとして投棄されているため、食中毒や下痢などを引き起こすリスクは避けられません。

炊き出しを行うことで、安全で栄養価の高い食事を提供できます。

国際ボランティア団体・グローリアセブは、毎週炊き出しのボランティアを行っているので、興味のある方は目を通してみてください。

>>国際ボランティア団体・グローリアセブ

教育

スラム街が形成される大きな理由は、経済格差です。その経済格差を解消するために教育は欠かせません。たとえ現地で働けなくても英語が話せれば、海外に出稼ぎに行くことも可能です。

ボランティアでスラム街の人々に英語の読み書きや会話などを教える場を提供できれば、職を得られる機会も増えるでしょう。

例えばNPO法人アクションでは、教育のほかに食育、ダンス、美容師の職業訓練や児童養護施設職員の能力向上など、幅広い分野で活動を行っています。

>>NPO法人アクション(ACTION) (actionman.jp)

フィリピンのスラム街ボランティアでの注意点

フィリピンのスラム街で参加可能なボランティアを紹介しました。しかしフィリピンのスラム街は治安が悪く、身の危険を守った上で行動しなければなりません。

ボランティアに参加する際の注意点を3つ紹介します。

一人で行動しない

「ボランティアに行きたい!」と思い行動するのは素晴らしいことですが、すぐに現地に行くことは避けましょう。冒頭の通り、スラム街は治安が良い場所ではありません。

スラム街は生活に困っている人が多く住んでいるため、一人で行動していると窃盗に遭うリスクがあります。NGOやNPO団体に参加した上で、ボランティア活動を行うようにしましょう。

自己満足のボランティアは控える

ボランティアはやりがいを感じる行動です。しかし、あなたは「自分なりにボランティアができた」と思っても、必ずしも相手が喜んでいるとは限りません。

常に相手が何を求めているか、どんなことを手伝ってほしいのかなど、相手の立場に寄り添って行動するようにしましょう。

海外ボランティア保険に加入しよう

ボランティア活動に参加する際は、海外ボランティア保険に加入しましょう。フィリピンのスラム街の衛生環境は劣悪です。体調不良になってもすぐ近くに病院がない可能性もあります。

治療可能な病院が遠くにある際は、チャーター機で搬送してもらわなければなりません。その場合、数千万円といった莫大な費用が発生するリスクがあります。ボランティアの活動に専念するためにも、海外ボランティア保険に加入しましょう。

まとめ

本記事では、フィリピンのスラム街の場所などの基礎知識から、なぜ形成されるのか、現状を確認していきました。

また、ボランティアに行きたい場合どのような分野で個人が協力可能か、注意点と合わせて理解できたと思います。

1995年にスモーキーマウンテンを強制撤去され、政府が用意した仮設住宅に住んでいる人もいれば、その仮設住宅の家賃が払えず、結果的にスモーキーバレーで同様の暮らしを続けている人もいます。

現地の人々も状況を変えたいと考えているものの、実際にどうしたら良いか悩んでいる人も多いようです。

ボランティア活動に携わりたい方は、NGOやNPO団体などに所属し、スラム街の現状や滞在時の注意点を十分に学んだ上で訪れましょう。

<参考文献>
外務省|フィリピン共和国
2021年の最初の学期に23.7%で登録された貧しいフィリピン人の割合|フィリピン統計局 (psa.gov.ph)
フィリピンの貧困問題の原因は?子どもの現状と私たちにできる解決策|国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン (worldvision.jp)
セブのスラム ロレガの暮らしとデービス牧師の支援活動 (gloleacebu.com)
海外ボランティア保険の選び方を、事故事例と併せて解説 – 保険Times Magazine (hokentimes.com)