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関係人口とは?成功例の紹介やメリット・デメリットも

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現在日本では、地方都市の人口減少や高齢化により、地域づくりの担い手不足が深刻化しています。この問題を解決し、地域に新しい風を吹き込むために注目されているのが、「関係人口」の存在です。

本記事では、関係人口について詳しく知りたい人に向けて、メリットやデメリット、成功事例などをお伝えします。

関係人口とは

関係人口とは、簡単にいうと、居住地は別の地域にあるものの、その地域や地域住民たちに魅力を感じ、多様な関わりをもつようになった人を指す言葉です。例えば、「生活している家は〇〇町にあるけれど、△△村に魅力を感じたから定期的に通い、住民たちと地域づくりを行っている」や「ふるさと納税を活用して支援している」などが当てはまります。

そして関係人口は、主に下記の4つに分類されます。

  • 活動人口:特定の地域に誇りや自負心をもち、地域づくりを行う人
  • 関心人口:特定の地域に関心があり、知りたい気持ちが強い人(ふるさと納税の寄付者やSNSフォロワーなど)
  • 問題人口:特定の地域に、困った要素を発生させる人
  • 弊害人口:特定の地域との関係性が弱いうえに、実害を与える人

「問題人口」と「弊害人口」は、地域にデメリットを与える可能性が高いため、地域に良い影響を与え活性化につながる「活動人口」と「関心人口」を増やすことが重要です。

また、似た言葉として、「定住人口」や「交流人口」が挙げられますが、この2つは関係人口とは異なります。続いては、「定住人口」と「交流人口」について簡単に説明しつつ、「関係人口」との違いを見ていきましょう。

定住人口との違い

定住人口とは、その地に暮らす人々や居住人口のことであり、その中には移住者も含まれます。関係人口は、その地域に暮らしていない「地域外の人」を対象とする言葉です。そのためこの2つは、関わる地域に暮らしているか、そうでないかが大きな違いと言えます。

交流人口との違い

交流人口とは、その地域に観光やレジャー、文化鑑賞、通勤・通学などを目的に訪れる人のことです。関係人口のように「地域づくりに参加したい」ではなく、「ただ観光したい」「何があるか知らないけれど訪れた」という、地域との関係性を継続的に高めることに重きを置いていない人を指します。

関係人口が求められている背景

関係人口とは何かを理解したところで、続いては何故求められているのか、その背景に焦点を当てていきます。

関係人口の現状

株式会社ブランド総合研究所が行った「第3回 関係人口の意識調査 2023」によると、

  • 居住地と異なる出身地がある人(出身人口)は、4,230万人
  • 居住地や出身地ではないが「応援したい」と思う都道府県がある人(応援人口)は、7,497万人

という結果となり、約1億1,728人の関係人口が全国に存在することがわかりました。

なかでも、「応援したい」と思っている人は前年より1,088万人増加し、そのうち、「地域に貢献したい」と思っている人が68%を占めています。人口減少や高齢化によって、地域を盛り上げていく人が不足している地方にとって、地域外の人間にもかかわらず「貢献したい」と言ってくれる人々は貴重な存在でしょう。ちなみに、47都道府県の中で最も関係人口が多いのは沖縄県であり、出身人口より応援人口の割合が大部分を占めています。

沖縄県の応援人口が多い理由としては、

  • 何度か観光した又は定期的に観光している
  • その地域に家族や親戚、友人、知人が暮らしている
  • 過去に居住経験がある

など、地域と何らかの接点がある人が多く見られます。もちろん、「接点が全くないが応援したい」という人もいます。

ライフスタイルの多様化も影響

2020年から、日本で猛威を振るい始めた新型コロナウイルスの影響により、リモートワークの導入やワ―ケーションが可能な企業を求める若者が増えました。このような変化もあり、人々の価値観や生き方の多様化が急速に進み、地方への興味関心も高まっています。

地方側も、訪れてもらうために滞在場所やコワーキングスペースなどの環境を整備・提供するなどの取り組みを進めています。また、それに伴い、地方と都市部の人をつなぐ仕組みも作られるようになりました。このような努力が、ライフスタイルの多様化につながり、関係人口の増加に貢献しているのです。

関係人口が増えることのメリット

続いては、関係人口が増えるとどのようなメリットがあるか紹介します。

移住者の増加が期待できる

先ほど挙げた「第3回 関係人口の意識調査 2023」でも、関係人口の約20%は「移住意欲がある」と答えています。また、当初は移住するつもりはなかったものの、関わっていくうちに地域を気に入り、移住するケースも考えられるでしょう。その他にも、関係人口の人々がSNSを活用して、地域の様子や魅力を発信したことにより知名度が上がり、「移住したい」と思う人が増える可能性もあります。

経済活動の活性化

応援したい地域を行き来し、地域づくりに参加するため、その度に宿泊費や食事代、娯楽費などが発生することが考えられます。また、その地に来れなくても、「ふるさと納税」という形で地域を応援することも可能です。このように、「関係人口=応援してくれる人」が増えるほど、地域経済が潤い、活性化していくのです。

新しい技術や考え方を得られる

関係人口は、全国各地に暮らす人々によって構成されています。そのため、地域住民にはない考え方や新しい技術を持っている人も中にはいるでしょう。例えば、建築学を専攻し設計士事務所でもアルバイトをしている大学生が、その経験や知識を生かし、村の空き家改修事業に携わるケースも実際にあります。このように関係人口は、今までになかったものや考え方を得ることができ、新しい風を起こすきっかけになるのです。

関係人口創出・拡大のための補助金を受け取れる

日本政府は令和3年度より、関係人口の創出や拡大を進める地方公共団体に、様々な地方財政措置を行っています。例えば、「新たな森林空間利用創出対策」。

この対策は、地方活性化に向けた関係人口の創出・拡大を基盤に、

  • 全国規模の緑化運動の推進
  • 「森林サービス産業」創出・推進に向けた活動支援事業 (モデル事業や研修会の実施、情報発信など)
  • 森林景観を活かした観光資源の整備事業(木道やワ―ケーション環境の整備、動画を活用したPR活動など)

を実施するために、民間団体や地域協議会などは各事業ごとに補助金を受け取れます

つまり関係人口が増えることによって、これまで資金面で実行できなかった事業の実現が可能となるのです。様々な分野の人が集まりできることも増えるため、より地域に合った取り組みを推進でき、地域や住民に良い影響を与えてくれるでしょう。

また補助金による支援は、各都道府県でも増えています。気になる地域や応援したい地域がある方は、調べてみてください。

関係人口のデメリット・課題

多様なメリットを生み出す関係人口ですが、デメリットや課題も存在します。

「関係人口の増加」が最終目標になってしまうケースも

関係人口の創出・拡大は、地方が抱える問題を解決へ導く方法の1つであり、最終目標ではありません。しかし、なかには「関係人口を増やすこと」が目的になってしまい、それに合わせた取り組みを実施しているところもあるようです。何も考えずに、ただ関係人口を増やすだけでは、新たな問題や弊害が生まれてしまうかもしれません。

事業や取り組みを考える際は、「この取り組みを進めて、地域が抱えている問題は解決できるのか?」や「地域に良い影響を与えられるのか?」などを、頭に入れて進めましょう。

地域住民とのトラブル

関係人口を受け入れる地域側の体制が不十分であったり、自治体や事業者は取り組み内容を理解しているのに対し、住民たちが把握しておらず、訪れた人々とトラブルになることも考えられます。また関係人口側の人々による、騒音やゴミ問題の発生もないとは言い切れません。

受け入れる側は、しっかりと体制を整え事業内容を地域住民にも説明するなど、トラブルを未然に防ぐ努力が必要です。訪れる側も、地域の決まりを守り、住民たちに配慮することを忘れないようにしましょう。

【成功例】関係人口に関する地方自治体の取組事例

続いては関係人口に関する自治体の取組事例を見ていきましょう。

【広島県竹原市・三原市・尾道市】せとうちファンづくりプロジェクト

広島県にある竹原市、三原市、尾道市の3市は、豊かな自然と歴史的景観、豊富な農産物と海産物など、様々な地域資源を持つ魅力ある都市です。

しかし近年は、人口減少や少子高齢化の影響を受け、

  • 農業従事者の高齢化と担い手不足
  • 地域企業のノウハウや担い手不足
  • 地域コミュニティの活力低下

などに頭を悩ませていました。

そこで、これらの課題を解決するために3市が立ち上げたものが、「せとうちファンづくりプロジェクト」であり、3市とパートナー企業の協働で行われています。

例えば、農業従事者の高齢化と担い手不足の解消には、パートナー企業である「株式会社おてつたび」の、地域の農家と農業に関心のある若者(以下:参加者)をつなぐマッチング機能を活用しています。参加者が農業を手伝うことにより、農家の労働力不足が解消され、地域住民と交流によって農業や地域の魅力を知ってもらう機会づくりにつながっています。

実際におてつたびに参加したみかん農家の方も、人手不足で収穫が遅れていましたが、「県外からやる気のある方が来てくれて、テキパキと作業をしてくれるのでとても助かっている」と話していました。県外からの参加者には、負担を減らすための滞在費や移動費の補助金制度もあり、受け入れ態勢も整っているところも魅力です。

せとうちファンづくりプロジェクトでは、その他にも、「地域企業と都市圏在住のスキルのある副業人材」や「都市圏のファミリー層と地域コミュニティ」のマッチングを行っています。

【鹿児島県日置市】ひおきとプロジェクトWEB戦略実証事業「ネオ日置計画」

新型コロナウイルスの影響で、日置市以外に暮らす人々から「なかなか帰れない」「行ってみたいけれど行けない」という声を多数受け立ち上げた「関係人口創出事業 ひおきとプロジェクト」。その事業内容の1つが、令和4年8月8日からスタートした、仮想空間メタバース上にもう1つの日置市を作る「ネオ日置計画」です。

立ち上げ資金はクラウドファンディングやふるさと納税で調達し、メタバース上に再現する名所は「建設名所決定戦」という投票により決定しました。また日置市では、町を応援したい人「ひおきカメカメ団関わり隊」と、移住に興味がある人「ひおきカメカメ団住んでみ隊」も設立し募集しており、入隊すると空間づくりに参加できます。空間づくりは、「ネオ日置建設費用」を寄付した方も参加可能です。

もちろん、関係人口創出・拡大には地域住民の事業への理解も大切なため、地域住民を対象とした説明会も実施されました。

アプリのインストールも不要で、スマホやPC、VRゴーグルに対応し、無料で利用できるため、場所や時間関係なく、自分の好きなタイミングで日置市を感じられるところが魅力です。

関係人口とSDGs

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最後に、関係人口とSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の関係性について、確認していきましょう。

目標11「住み続けられるまちづくりを」

目標11は、都市や人間の居住地を、誰も排除せずに安全かつレジリエントで持続可能なものにするための目標です。誰もが安心して暮らせる持続可能な町をつくるために、災害リスク管理や森林整備、輸送システムなど様々な分野のターゲットが設定されました。

とくに日本では、

  • 東京一極集中による地方都市の人口減少
  • 地域づくりの担い手不足
  • 少子高齢化による税収の減少
  • 医療費の支出増加

などが起きているため、地方創生の面から注目されています。

そのなかでも【11.a】は、

各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

引用元:JAPAN SDGs Platform|外務省

であり、その地に暮らす人々と外部の人の繋がりを促し、強化するターゲットです。

そのため、【11.a】に力を入れることによって関係人口の増加が期待でき、目標11の達成に貢献する可能性もあるのです。

【関連記事】SDGs11「住み続けられるまちづくりを」|日本の現状と取り組み事例と私たちにできること

まとめ

居住地は別の地域にあるが、その地域や地域住民たちに魅力を感じたため、多様な関わりをもつようになった人を意味する「関係人口」。2023年2月時点で、全国に存在する関係人口は、1億1,728万人にものぼります。このまま増加すると、現在日本が抱えている、地方都市の人口減少や高齢化による様々な課題を解決へと導くことも期待できるでしょう。そして、SDGs目標11の達成にもつながります。

近年日本全国では、関係人口を増やすために、その地の特性を生かした多様な取り組みが行われています。「あの地域が好きだから力になりたいけれど、移住はできない」「いきなり移住するのはハードルが高い」などを理由に1歩を踏み出せない人は、このような選択肢があることも覚えておくと良いかもしれません。自治体や事業者側も、紹介した成功事例を参考にしてみてください。

〈参考文献〉
SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江憲史 著|中央公論新社
メタバースを活用したまちづくり ネオ日置計画|日置市
ひおきとプロジェクトWEB戦略実証事業「ネオ日置計画」|全国の取組|総務省
せとうちファンづくりプロジェクト|地域の取組事例|総務省
関係人口創出・拡大のための対流促進事業|内閣府地方創生推進室
地方の機能確保に向けた関係人口との連携 参考資料|国土交通省
第3回 関係人口の意識調査 2023 関係人口が 1088 万人増に。2 割超が移住意欲あり|株式会社ブランド総合研究所
交流人口|JTB総合研究所
定住人口とは|JTB総合研究所
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関係人口とは|『関係人口』ポータルサイト|総務省