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リトリートとは?意味や目的・メリットやおすすめ施設を紹介

現代に生きる私たちは、仕事や対人関係・町の喧騒など、毎日さまざまな場面で無意識にストレスを抱えています。

ストレス自体は必ずしも害ではないものの、根本の原因がわからないまま放置すると、不調や病気のように心身へ悪影響を与える場合があると言われています。

そこで今、注目を浴びているのが「リトリート」です。海外ではすでに人気を博しており、近年は日本でもよく聞くようになりました。

今回は、リトリートとは何か?にはじまり、リトリートを行うメリットや、やり方、どのようなリトリートが開催されているのかについて見ていきましょう。

リトリートとは

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リトリートとは数日の間、日常から離れた環境に身を置き、いつもと違った体験を楽しむことを指します。心身の回復を図るため、旅先の観光地を楽しむというよりは、自分自身に意識を向け、ゆったりとした時間を過ごすのが一般的です。

私たちは日頃、仕事や家族、友人などさまざまな関係の中で、少なからずストレスを感じています。その限度があるレベルまで達すると、心身の不調が出てしまい、日常に支障をきたすこともあるほどです。

リトリートは、自然や落ち着く環境の中で過ごし、毎日のルーティーンからあえて一旦離れることで、心と身体の状態をリセットするために有効な手段だと言われています。

リトリートの本来の意味

リトリートは、海外でも同じように「Retreat」と言われています。

Retreatの意味は「避難」「引きこもり」などです。響きはすこしネガティブに聞こえるかもしれませんが、いつもの生活環境から一旦離れる、という意味では、リトリート本来の手段に沿っていると言えますね。

なお、もうひとつリトリートの起源とされる単語として「Retreatment(リトリートメント)」という言葉があります。

こちらは「再治療」という意味になりますが、次でご紹介するように、リラクゼーションの意味合いでは「転換治療」として用いられます。

目的に応じたリラクセーション方法4R

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ストレスが溜まったとき、人間は目的に応じたリラクセーション方法「4R」を行うとよいと言われています。

これまでは最初の3つだけを取り上げた「3R」として親しまれてきましたが、近年、リトリートが4つ目として加わるようになりました。

  • Rest(レスト)
    英語で「休息」を指す言葉。時間の長さにかかわらず、身体を休めること。睡眠やマッサージ・ベッドでくつろぐ、といった行為が含まれます。
  • Recreation(レクリエーション)
    余暇時間を使った娯楽や創造活動を指し、スポーツや遊び・散歩などで身体を動かすことによって気分転換をする行為。「Re(再び)create(創造する)」を繋げた言葉の語源から分かるように、気晴らしを通じて心の休養・回復を図ります。
  • Relaxation (リラクセーション)
    ストレスによる心身の緊張を緩和するための活動のこと。ヨガや瞑想・マッサージだけでなく、目を閉じて深呼吸するだけでも効果があります。
  • Retreatment(リトリートメント)
    いつもと違う環境に身を置き、心と身体の疲れを癒す活動。転換療法ともいわれ、特に森林のような周囲を自然に囲まれた静かな場所でゆっくりと過ごすのが効果的です。

リトリートは決して新しい概念ではありませんが、近年は疲れを癒す方法として特に注目を浴びているのです。

リトリートのメリット・目的

ではここで、リトリートのメリットについてご紹介します。

気持ちをリセットできる

リトリートの大きな特徴ともいえる「いつもと違う環境に身を置くこと」は、心身によいリフレッシュ効果をもたらします。

普段の暮らしの中で抱えていた些細なストレスを一旦忘れ、別の場所でゆったりと過ごせば、新たな気持ちで日常生活を迎えることができるでしょう。

新たな出会い・発見の場にも

リトリートのプログラムによっては、複数人のグループで行うものもあります。

参加者や現地のスタッフなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと話をすることで、思いがけない出会いや発見があるかもしれません。

初めて会う人たちでも、仕事や家庭とは関係ない空間を共に過ごすことによって、自然と心の緊張が解きほぐれるものですよ。

リトリートのアイディア7選

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次に、具体的にどのようなリトリートを行えばよいのかについてご紹介します。

旅先でひとりで簡単に実践できるものから、誰かのサポートが必要なものまで、実際に行われているリトリートのアイディアを7つ挙げてみました。

ヨガ(ヨーガ)

リトリートの定番としてまずはじめに挙がるのが「ヨガ」です。

ヨガが誕生したのは4,500年前のインダス文明といわれ、紀元後400年ごろに経典「ヨガ・スートラ」が記されました。呼吸を含む身体の動きはもちろん、普段の生活で心がけるべき習慣や思想について書かれています。

ヨガの種類にもよりますが、リトリートで行うには激しい運動を避け、ゆったりとした動きを中心に行う方がよいでしょう。

自分の呼吸に意識を集中しながら身体を動かすことで、リラックス効果が高まります。

自宅や町中のスタジオでも良いですが、たまには自然あふれる場所へ行ってヨガをやってみるのもよいのではないでしょうか。

瞑想

次にご紹介するのは「瞑想」です。

瞑想とは、呼吸やろうそくの火など、ひとつの事象に意識を集中させる行為を指します。ヨガの中にも取り入れられ、近年はスポーツ選手やビジネスマンの間でも広まってきました。

ハーバード大学医学大学院の研究では、瞑想を続けることで脳の変化が現れ、ストレス・不安が軽減されるほか、ほかにも痛みや不眠に効果があると認められています。

瞑想にはさまざまな種類がありますが、この数年で特に注目を浴びている「マインドフルネス瞑想」をはじめ、初心者でも取り入れやすい瞑想法を実践してみてはいかがでしょうか。

温泉

あたたかいお湯につかる習慣は、古くから日本で広く行われていますが、中でもリトリートにおすすめなのが「温泉」です。

特に、湧き出たままの水を利用している「源泉かけ流し」なら、より効果的でしょう。

温泉の中に含まれている成分・景色など、目的や好みに合わせてお気に入りの温泉を探してみましょう。日々の疲れを癒し、身体も心も解きほぐされてリラックスできます。

断食

次におすすめしたいのが「断食」です。

断食というと、一般的に厳しいダイエットや僧侶の修行のようなイメージがあるかもしれません。ですが実際は、身体のリズムを取り戻すのに有効な手段でもあります。

現代人はほとんどの人が「食べすぎ」状態だと言われています。普段、お腹がいっぱいになるまで食べていませんか?もしくは「好きだから」「食べたいから」という理由で、動物性食品や甘いものを心ゆくままに食べている人もいるかもしれません。

しかし食べ物は、口に入ってから身体の中で吸収されるまでに、実はかなりの時間がかかっています。

上の図からは、植物性・柔らかいものは比較的吸収時間が短く、動物性や脂肪分の多い食品だと長い傾向が分かります。

よく「寝る前の2時間前までに食事を摂りましょう」と聞く機会があるかもしれませんが、それは食べた後の身体が膨大なエネルギーを消費して吸収作業をしているからなのです。

また人間の体の中で最も健康にかかわる消化器官は大腸であり、免疫細胞のほとんどが腸に集中しているとされています。

つまり、私たちが日々健康かつストレスに強い心身を保つには、腸を含む消化器系のメンテナンスが大切です。

そこで計画的に断食を行うことで、胃腸の過剰な働きを一度ストップし、適切な状態へ戻すプロセスを作り出します。

筆者も何度か断食を経験したことがありますが、何も食べない状態が続くとかえって思考が明晰になり、身体も心もリセットされた気がします。

ただし、いきなり1人で始めるのは危険ですので、断食指導の実績を持つトレーナーにサポートしてもらいましょう。完全な断食はハードルが高い、と感じる場合は、スムージーや葛湯などはOKな「半断食」もおすすめです。

食事療法・食養生

もうひとつ、食事面でぜひリトリートに取り入れたいのが「食事療法・食養生」です。

食事療法(食養生)とは、日々口にする食べものを変えることで心身の不調を回復する試みを指します。

プラントベースダイエットやマクロビオティックといった食事法が、その代表のひとつです。

日本でも古くから伝わる言葉「医食同源」から分かるように、私たちの身体は食べたものによって作られています。

よって、食べるものの質によって身体の細胞は変化し、健康にも病気にもなりうるのです。

こうした考え方から、食事の改善によって心身の不調を治し、快適な毎日を過ごすためにも、食事療法(食養生)によるリトリートがおすすめです。

特に、全粒穀物と植物性食材を中心にし、海藻や発酵食品を積極的に取り入れるやり方は、複数の食事療法で紹介されています。

本来は効果が表れるまでに時間のかかる食事療法ですが、リトリートの数日間ではその道のプロに教えてもらいながら、出来る範囲で実践してみるとよいでしょう。

森林浴

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最後にご紹介するのは「森林浴」です。

1982年、日本ではじめて森林浴という言葉が登場して以来、科学的なアプローチからさまざまな研究が数多く行われてきました。

特に近年は、たとえば以下のようなことが分かっています。

  • ストレスレベルの低下
  • 集中力の向上
  • 免疫システムの強化
  • 血圧の緩和
  • 不眠の改善

また1か月に数時間だけでも森林浴をすることで、仕事への対処力がアップするという報告もあるほど、私たちの心身にうれしい効果をもたらします。

鳥さえずりの声や木々の香りに五感を集中させれば、森が身体を包み込んでくれるのが分かるはずです。

リトリートで自然あふれる場所へ行き、森の中でゆっくりと時間を過ごすだけでも十分です。

国内外のおすすめリトリート施設3選

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最後に、国内外でリトリートを開催している場所を3つご紹介します。

穂高養生園(長野県安曇野)

自然豊かな安曇野市に佇む穂高養生園は、30年以上前からあるリトリート施設です。

「体にやさしい食事・ヨーガや散歩などの適度な運動・心身の深いリラックス」を掲げ、2泊以上のプログラムを用意しています。

毎朝、森林浴やヨガなどの軽い運動からはじまり、1日2回のマクロビオティック食を楽しめます。

余暇の時間は観光地へ出かけるのではなく、施設内のハーブガーデンやカフェ、周囲の原生林で過ごすことで、自分を内側から見つめ直すと同時に、自然治癒力を高めることが可能です。

Brown’sField(千葉県いすみ市)

東京からも比較的アクセスしやすい千葉県いすみ市にあるのが、Brown’sField(ブラウンズフィールド)です。

農を軸に、畑やカフェ・宿泊施設を備えており、マクロビオティック料理研究家・中島デコ氏が住まう家でもあります。

そのため、基本の食事は玄米菜食で、敷地内の畑や周辺の農家さんが作った野菜・穀物が中心。たった数日間だけで、身体に大きな変化が現れる人もいるはずです。

ブラウンズフィールドはエコヴィレッジのようなコミュニティでありながら、週末を中心にさまざまなリトリートを開催しています。たとえば野草採取・ヨガ・半断食など、時期によってテーマが異なりますので、ぜひウェブサイトをチェックしてみて下さい。

Five Elements Adventures(クロアチア)

ヨーロッパ中部に位置し、中世の趣を感じさせられる街並みがうつくしいクロアチア。すこし郊外へ足を延ばせば豊かな自然を楽しめるこの国で、7日間のリトリートプログラムが開催されています。

日によって違ったアクティビティを楽しめるほか、より身体を動かすSUN Program(太陽のプログラム)と、講義やリラクゼーションの多いMOON Program(月のプログラム)の2種類から選択できるのが特徴です。

海外へ旅行に出かける際は、観光だけでなくこうしたユニークなリトリートへ酸化するのも面白いかもしれませんね。

まとめ

今回は「リトリート」について、基礎知識から実際のリトリートで行われているプログラムまで、幅広くご紹介しました。

毎日さまざまなストレスに晒されている現代人だからこそ、あえて日常から離れて自然あふれる環境で休むことは、長く健康に生きるために不可欠です。

心と身体を落ち着けて自分自身を見つめる時間を作り、リセットするタイミングを意識的に作りましょう。

<参考リスト>
What Is A Retreat And Different Types | The Retreat Company Blog
retreatの意味・使い方・読み方|英辞郎 on the WEB
retreatmentの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
「戦略的お世辞」が関係改善に役立つ | 人間関係のストレスを軽くする「4つのR」とは? | THE21オンライン
Retreats – Original Frequency
ヨガの発祥と歴史|一般社団法人 全日本ヨガ協会(AJYA)
Mindfulness meditation may ease anxiety, mental stress – Harvard Health
Harvard neuroscientist: Meditation not only reduces stress, here’s how it changes your brain – The Washington Post
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