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【SDGs未来都市】相模原市役所 SDGs推進室|相模原市に住み続けたいと思えるまちづくりを目指して

相模原市役所 SDGs推進室 榎本さん SDGsインタビュー

2020年度、SDGs未来都市に選定された神奈川県相模原市。SDGsの理解を深めるサイト「SDGs one by one」を運営したり、小中学校向けにカードゲーム授業を行ったりと、精力的な活動が特徴的です。

今回、相模原市役所SDGs推進室の榎本さんに、どのような取り組みを行っているのかお話を伺ってきました。

榎本 幸二

1976年11月1日、神奈川県相模原市生まれ。大学卒業後、民間企業での勤務を経て2003年4月に相模原市役所に入庁。税務、福祉、総務等の部署を経て、2018年より企画政策課においてSDGsに関連する業務に携わる。2020年4月SDGs推進室の立ち上げとともに同室に勤務。企業・団体との連携体制の構築に努めるともに、SDGs特設サイトの立ち上げやオリジナルカードゲームの制作など、SDGsを分かりやすく伝えるために奮闘中。

市民のSDGs認知度アップのために、「SDGs one by one」などを展開

–まず、SDGsに力を入れるようになった背景について教えてください。

榎本さん:

相模原市に関わらず、自治体は元々持続可能なまちづくりを目指しています。そのためには、「環境」「社会」「経済」のバランスがとれた施策が必要です。その中で2015年に採択されたSDGsの「環境」「社会」「経済」の三側面の調和や「誰一人取り残さない」という理念は、私たちの目指す方向と同じものでした。

また、SDGsのカラーホイールやアイコンのポップさが相まって、市がやろうとしていることを市民の皆様に伝えやすいのではないかといった側面もありました。

つまりSDGsをうまく活用することで、より良い行政サービスを展開できると考え、力を入れ始めました。

–いつ頃からスタートしたのでしょうか?

榎本さん:

2020年度からスタートした市の総合計画の策定にあたって、SDGsを盛り込むことを決めた2018年度頃から本格的に取り組み始めました。

知ることから始まる

–具体的な活動を教えてください。

榎本さん:

最初は「知っていただく」ことから始めました。今でこそSDGsの認知度は高まっていますが、当時は2割前後の人しか知らなかった。そんな状況で市が「SDGsをやろう!」と言っても、市民・企業の皆様に浸透せず効果も期待できません。SDGsを活用して全員が主役となる社会を実現するためには、まず多くの人が知る必要があると考えたんです。

–「SDGs one by one」もその一環なんですね。

榎本さん:

そうですね。SDGsを知るためには、最初のハードルを低くする必要がありますよね。SDGsは横文字ですし、目標を見ると「貧困」とか「飢餓」といった難しい言葉が並ぶので、それだけでハードルが上がってしまう。

そこで、独自のキャラクターと一緒に学んでいくスタイルにして、まずはSDGsに触れて「そんなに難しくないかも」という印象を持っていただければ良いなと考えました。

–「SDGs one by one」の記事は、SDGs推進室で書かれているとのことですが、非常にわかりやすい内容ですよね。

榎本さん:

おかげさまで「わかりやすかったよ」「SDGsがどんなものかなんとなくイメージできたよ」といった声を多数いただいています。

SDGsの最初の一歩としての役割を果たせているのかなと思うとうれしいですね。

市の調査では小中学生の約8割・一般の方の約7割がSDGsを知っている

–サイトの運営に力を入れた結果、認知度は高まっていますか?

榎本さん:

高まっていますね。実際に2021年度に行った調査では、相模原市の小中学生の約8割、一般の方で約7割がSDGsを知っていると回答しています。同時期に民間が行った全国の認知度調査と比較しても高い結果でした。

もちろんサイトの力だけではなく、SDGsに取り組む企業やメディアで取り上げられる機会の増加もありますが、少しでも役に立てているのかなと思います。

–認知度の高まりにつれて市民の方に変化はありましたか?

榎本さん:

そうですね。SDGsをもっともっと広めようと活動してくれる方も増えました。企業の方も積極的に取り組んでいて、市役所に「何か一緒にできないか」というお問い合わせもあったりして、連携も進んでいますね。

–実際に連携して進めている取り組みはありますか?

榎本さん:

わかりやすい例でいうと、小中学校向けの「SDGsカードゲーム」があります。

SDGsカードゲーム「Get The Point(ゲットザポイント)」を相模原市版にアレンジ

–詳しく教えていただけますか?

榎本さん:

「Get The Point(ゲットザポイント)」という民間の企業さんが作っているカードゲームがあります。

【Get The Point(ゲットザポイント)】

出典:「Get The Point(ゲットザポイント)」

これに相模原市の名産や名所といったエッセンスを取り入れられないかと考え、企業の方と連携して「相模原市版Get The Point(ゲットザポイント)」が実現しました。

【相模原市版Get The Point(ゲットザポイント)】

–なるほど!ではなぜ「相模原市版Get The Point(ゲットザポイント)」を制作しようと考えたのでしょうか?

榎本さん:

小中学生にSDGsを身近に感じてもらいたいなという所がスタートです。SDGsの目標は当たり前ですが世界規模のものになっていて、小中学生にはどうしても「自分ごと化」しにくいんですよね。

自分の慣れ親しんだ土地の特産品だったり場所が登場することで、身近なものとして捉えられるようになるんじゃないかなと。

–確かに身近な題材であればSDGsの入り口のハードルが下がりそうですね。既に小中学校では、このゲームが行われているのでしょうか?

榎本さん:

私たちや学校の先生がファシリテーター(ゲームの説明・進行役)となり、市内40校近くの小中学校で既に活用していただいています。

–反応はいかがでしょう?

榎本さん:

カードゲーム自体はかなり楽しんでもらっていて、最後にSDGsについて理解を深める時間を設けていますが、「私たちにもできることがありそう!」と積極的な発言もあったりします。

それもあってか、手前味噌で恐縮ですが、かなり評判が良いですね。

–カードゲームをきっかけに授業のプログラムにもSDGsがどんどん取り入れられていきそうな予感がしますね。

榎本さん:

実際に中学校では古着を持ち寄ってエコバッグを作成する授業を行ったり、小学校では環境学習の中にSDGsを取り入れたりしています。最近では、SDGsに取り組む地域の企業を招いて講義してもらう動きも見られるようになりましたね。

–これが小中学生の認知度が高い理由なんですね。

榎本さん:

そしてもう一つ期待していることがありまして。これまでの市の調査では、30〜40代の女性のSDGs認知度が低い結果が出ていました。どうすれば良いのかと悩んでいたんですが、今回のカードゲームを通して、親御さんにSDGsのことを話すようになるんじゃないかなと。

間接的にその年代の方々にアプローチできたらうれしいですね。

森林保全・共生社会の推進を軸にした計画

–ありがとうございます。続いてSDGs未来都市について伺えればと思います。相模原市は2020年度のSDGs未来都市に選ばれていますが、これまでの普及啓発活動に加えて、どのような提案をしたのでしょうか。

榎本さん:

相模原市は小田急線・京王線・JR中央線に加えて、高速道路もあるので、都心へのアクセスの良さや、商業施設の充実に目が向きがちですが、実は市域の約6割を森林が占めているんです。つまり、都市部と中山間地域が共存している市と言えます。

その中で、令和元年東日本台風によって、中山間地域において大規模な土砂崩れが発生しました。

整備が行き届いていない森林が多くあることが原因の一つと考え、積極的に森林整備を進めることを提案書に盛り込みました。

–森林はさまざまな役割を果たしますよね。

榎本さん:

そうですね。CO2を吸収して酸素を供給するので温暖化対策になるのはもちろんですが、きれいな水を生み出したり生物多様性を守る機能もあります。また、根っこがしっかりと張っていれば土砂災害の抑止にもなる。

今ある森林を整備し有効活用することが、SDGsの様々なゴールの達成につながると考えています。

また、2016年に本市に所在する「津久井やまゆり園」という施設で、障がいのある人への一方的かつ身勝手な偏見により大変痛ましい事件が発生しました。このような事件を2度と発生させないという決意のもと、障がい者理解の推進などを含む共生社会の実現に向けた取組も提案の柱となっています。

官民が連携を取るために「さがみはらSDGsパートナー」制度を開始

–SDGsの推進には行政・民間・教育機関・市民のすべてのステークホルダーが連携を取る必要があると思います。先程のカードゲームのように、連携を生み出すための取り組みは何かされているのでしょうか?

榎本さん:

現在、「さがみはらSDGsパートナー」制度を設置していて、SDGsに関心のある企業や団体に登録をしていただいています。登録された企業や団体には、相模原市の課題を理解していただき、「うちの会社はこんなところに貢献できそう」とご提案いただいたり、自治体側からも協力を依頼するなどの関係構築に努めています。

この制度により、さまざまな取り組みが生まれ始めています。今後はプラットフォームのような仕組みを作って、行政と民間・民間と民間のようにパートナーシップを構築しやすい環境を整えていきたいと考えています。

2021年からは「さがみはらSDGsアワード」もスタート

–2021年から始まった「さがみはらSDGsアワード」もその一環ですか?

榎本さん:

そうですね。市内でSDGsを頑張っている企業さんのモチベーションアップや、良い取り組みを他の方が参考にできるようにと2021年7月に募集を開始しました。3ヶ月の募集期間で30を超える団体から応募があって10月に表彰を行いましたが、盛り上がりを感じてうれしかったですね。

行政の縦割りを解消したい

–ここまでお話を伺って、啓発や連携を取るための取り組みを積極的に進めていることが分かりました。

一方で、個人的にですが、行政はそれぞれの部署が縦割りになっている印象を持っています。SDGsで挙げられている課題は部署の横断的な連携が必要になってくると思うのですが、その辺りはいかがでしょうか?

榎本さん:

まさしくその通りで、環境、社会、経済の広範な課題を統合的に解決するためには、部署間の連携が何より重要になります。そのためにSDGsを上手く活用していくことが必要と考え、本市では市長をトップとする庁内横断的な組織である「SDGs推進本部会議」を立ち上げています。しかしながら、職員への浸透はまだまだの部分もありますので、全職員へSDGsの理解を促すことで、部署間の連携体制の構築につなげていければと考えています。

相模原市を「住み続けられるまち」に

–SDGsの達成期限である2030年まで残り10年を切っています。今後の相模原市の展望をお聞かせください。

榎本さん:

一職員なので、SDGs推進室の考えとして話しますね(笑)

SDGsが掲げる持続可能な社会というのは、環境や社会、経済の問題の解決はもちろんですが、その土地に住む人たちが幸せに暮らし続けることだと思っています。

そのためにも、相模原市が抱えている課題に向き合っていく必要があります。2030年までにどれだけ解決できるかは分かりません。でも、相模原市に住んでいる方々が、「ここに住んでよかった。これからも住み続けたい」と思えるような市にしていきたいですね。

–本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビュー動画

関連リンク

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