日本と同様に、オーストラリアでもスマートフォンや携帯電話サービスを提供するキャリア会社が複数あります。
中でも特に有名なのが、国内シェア第1位のTelstraです。
電気通信プロバイダーとして成功しているTelstraですが、実は環境への負荷を減らすための活動にも力を入れています。
この記事では、Telstraがどのようなエコ活動を行っているのか詳しく解説していくので、「日本のキャリア会社の取り組みと比較検討したい」「エコ大国のキャリア会社が行う保全活動に興味がある」という方はぜひ参考にしてくださいね。
目次
オーストラリアのキャリア会社・Telstraとは?
Telstra(テルストラ)は、オーストラリアの3大キャリアのひとつとして知られています。
1901年に創設され、1993年に現在の社名であるTelstra Corporation Limitedに変更されました。
本社はメルボルンにあり、オーストラリア最大の市場シェアを誇る通信会社です。
2023年時点で3万人以上のスタッフを雇用し、スマートフォン、モバイルプラン、Wi-Fi、モバイルブロードバンド、SIMカード、エンターテインメントサービス、ゲームといった幅広い商品及びサービスを提供しています。
尚、カスタマーサポートの質が高い企業としても認知されており、2021年には顧客満足度74%を記録しました。
Telstraが行う環境保全活動
単にスマートフォンやモバイルプランなどを販売しているイメージがあるキャリア会社ですが、Telstraでは環境保全を意識した以下のような取り組みを実施しています。
①Climate Activeの認定
Climate Activeは、オーストラリア政府が運営する気候変動に関するプログラムです。
カーボンニュートラルを達成した組織や企業のみ認定されており、気候変動への対策を強化するための取り組みとして役立てられています。
Telstra は2020年のうちにClimate Activeを受けることを目標に掲げ、カーボンオフセット投資などの活用によって2020年7月に認定されました。
②100%再生可能エネルギー導入への取り組み
Telstraの電力消費量は、約30万世帯分の電力消費量に匹敵します。
膨大な電力消費に繋がるため、自社のエネルギー発電を使って30%相当の電力を再生可能エネルギーで生産しています。
段階的な目標として、太陽光発電システムによる70%分の電力カバーを挙げており、2025年までには再生可能エネルギーへの完全移行も検討中です。
③2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減
カーボンオフセット投資以外にも、自社が保有する車両、発電機、燃料、輸送手段などを見直すことで温室効果ガスの排出量削減に繋がります。
Telstraは過去15年分の排出量報告書に基づき、特に環境への負荷が大きい要因を特定しました。
空調、換気システム、電力変換、照明が主な原因とされたため、蛍光灯をLEDに切り替えたり、不要なときに消灯できるように人感センサーを追加したり、店舗や事務所内でできる取り組みに努めています。
また、自社内での排出量対策を強化し、2030年までに50%の温室効果ガス削減を目指しています。
④カーボンオフセットへの投資
Telstraでは、オーストラリアの先住民族・サバンナが行う焼き討ちプロジェクトや森林再生プロジェクトからクレジットを購入しています。
焼き討ち=森林火災に繋がる恐れがある一方で、アボリジニにとっては伝統的な行為でもあります。
森の見晴らしを良くすることで狩猟しやすくなるのはもちろん、火の影響で種が蒔かれる植物も存在しており、適切な焼き討ちはオーストラリアの自然環境を保護する上で非常に重要です。
しかし、燃えやすい外来植物などの影響により、近年では不必要に火が広がってしまうケースも多くなっています。
焼き討ちプロジェクトや森林再生プロジェクトでは、正しくマネジメントされた焼き討ちの方法に則って作業を行います。
森林の維持に繋がるほか、山火事へのリスク軽減にもなるため、自然や野生動物を守ることでエコシステムの保護に貢献できる取り組みです。
⑤オーストラリア全体への脱炭素化の貢献
Telstraは、ニューサウスウェールズ州ゴールバーン近郊のグローバル・パワー・ジェネレーション(GPG)風力発電所と長期電力購入の契約を結んでいます。
生産される電力の大部分に対してTelstraが固定価格を支払うという契約内容で、Telstraが使い切れなかった分の電力は風力発電所が市場に販売可能です。
風力発電所は毎年58メガワットの脱炭素エネルギーを提供できる計算になっており、実に8万世帯分に1年間電力を供給できる量に匹敵します。
Telstraが保有する風力発電所と合わせると毎年15万世帯以上に電力供給できるため、Telstraだけでなくオーストラリア全体の脱炭素化にも繋がると考えられています。
⑥eCycleプログラムの実施
オーストラリアでは、電子廃棄物の問題が懸念されています。
2019年には51万トン以上もの電子廃棄物が出ており、世界的な平均廃棄量が7 kg であるのに対してオーストラリアは20 kgです。
対策を取らなければ2030 年までに30% 増の65万7,000トンになると予測されていることから、Telstraの店舗では携帯電話やモデムなどの回収とリサイクルを行っています。
廃棄物の削減と正しいリサイクルを促進するために、2025 年まで毎年50万台のデバイスのリサイクルを実施する予定です。
eCycleの対象となっているのは、携帯電話、家庭用電話、タブレット端末、モデム、ルーター、スマートウォッチなど多岐に渡ります。
⑦プリペイド製品のプラスチック削減
Telstraでは、自社製品であるプリペイドタイプの携帯電話なども販売しています。
従来は軟質プラスチックが多く使用されていましたが、脱プラスチックを意識したデザインによって深刻化するプラスチック問題への解決を試みています。
⑧梱包材の改善
スマートフォンなどの精密機器を多く取り扱っているTelstraでは、梱包の際に紙を有効利用しています。
従来はプラスチック素材のエアバッグが入っていましたが、現在では丸めた紙を詰めることで不必要なプラスチック製品の廃棄を減らしています。
また、包装資材の重量を1個あたり平均70gから30gに軽量化するなど、梱包材の見直しを行うことで環境への負荷に配慮しているのも特徴です。
➈エコに関するネット記事の掲載
Telstraの公式ホームページでは、顧客が自宅で手軽に実践できる以下のようなエコ活動について発信しています。
家電製品の使い方を見直す
オーストラリアは南半球に位置するため、北部では夏の暑さが厳しく、南部では冬の寒さが厳しいと言われています。
快適な生活を送る上で必要不可欠な冷暖房ですが、家庭のエネルギー使用量の実に40%近くを占めています。
各家庭のエネルギー使用量を削減すべくTelstraが推進しているのが、窓やドアの密閉による温度調節です。
ゴム製のシール材であるウェザーストリップなどを窓やドアに貼ると、冬は室内に熱がこもりやすく、夏は外からの熱が入りにくくなります。
冷暖房の利用頻度を下げることに繋がるため、光熱費と電力消費の削減が実現可能です。
また、星の数が多いほどエネルギー効率が高くなるエネルギースター評価を参考に家電製品を選ぶなど、買い替えのタイミングで手軽に取り入れられるアイデアも紹介されています。
「光熱費の削減」というワードを大きくアピールするという手法を取っており、環境保全への関心が高くない層でも関心を持ちやすい記載方法を実践しています。
LED照明への変更
LEDは、蛍光灯などと比べるとエネルギー消費が約80%少ない照明です。
寿命も4~10倍増えるという特徴があるため、環境にも家計にも優しい照明として導入を促しています。
消費電力の削減による地球温暖化防止に繋がるのはもちろん、蛍光灯の廃棄物を減らすことにも貢献します。
まとめ
Telstraは、環境保全に関する目標設定と達成を実現している企業です。
特に温室効果ガスの削減に力を入れていますが、そのほかにもプラスチック問題や電子廃棄物の解決を促進しています。
また、自社だけでなく、オーストラリア全体の環境保全を目指すために、国民一人ひとりが手軽に行えるエコ活動も啓発しています。
多方面から段階的に取り組んでいくことで、着実に地球の未来を守っているのです。