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「ジェンダーレス制服」から生まれる新しい選択肢|株式会社トンボ

株式会社トンボ 岡山本社 森下さんインタビュー

森下 あゆみ

2012年にトンボに入社し、スクール企画部へ配属。学校制服のデザイン提案やプレゼンテーションを担う。2015年にスクール商品開発へ異動、新商品の開発などを担当し、ジェンダーレス制服の取り組みをスタート。2020年に現配属部署のデザイナー室へ異動。

Introduction 

近年、ジェンダーレスファッションに注目が集まっていますが、ファッション以外にも導入されていることをご存知でしょうか。ブレザースタイルの制服を業界で先駆けて企画・製造したことで有名な株式会社トンボでは、従来の制服の固定概念を取り払い”自分らしさ”を表せる「ジェンダーレス制服」を製造しています。今回は岡山本社の森下さんに「ジェンダーレス制服」の開発のきっかけとそのポイント、さらに今後の展望について伺います。

「決まった制服」のイメージを覆し、「自由に選べる制服」へ

-株式会社トンボでは、SDGsに関連した取り組みとしてどのような取り組みを行っているのでしょうか?

森下さん:

現在、株式会社トンボでは、「ジェンダーレス制服」という考え方の提案をしています。

時期としては2015年ごろから、ジェンダーレスをテーマとして商品を手掛けるようになりました。

-「ジェンダーレス制服」の開発に取り組まれたきっかけは何だったのでしょうか?

森下さん:

2015年に文科省から、性同一性障害に関わる児童生徒への対応についてパンフレットが公表されました。これを機に、関西地区の中学校や高等学校から制服のモデルチェンジの相談を受けるようになったんです。

多様性に配慮したモデルチェンジを検討する学校が徐々に増えてきたことから、トンボでも「ジェンダーレス制服」の開発に本格的に取り組むことになりました。

-「ジェンダーレス制服」とは、具体的にはどんなものなのでしょうか?

森下さん:

従来の制服は、「男子はこれ、女子はこれを着なければいけない」と決まったものを着るという考え方でした。それに対してトンボでは、アイテム数を増やすという手法で、「誰がどの制服を選んで着ても良い」という考え方を提案しています。

この考えもあって、制服の導入後も「ジェンダーレスである」ということをはっきり謳っているわけではないんですよ。

-ホームページでも、「ジェンダーレスのために制服を変えた」ということを強調するのではなく、「数あるアイテムから自由に組み合わせてくださいね」と提案しているのが印象的でした。学生の反応はいかがでしたか?

森下さん:

制服やアイテムを選べるという点では、学生だけでなく保護者や先生からも良いねと好評いただいています。

ジェンダーについて知る機会を提供

-現在の「ジェンダーレス制服」の活動について、他にも取り組まれていることがあれば教えてください。

森下さん:

「ジェンダーレス制服」は3つのポイントに基づいて開発・運用しています。

1つめは先ほどご紹介した、「選択肢を増やすこと」です。

2つめは「性差を感じさせないデザインにすること」、そして3つめは「多様な性を受け入れるための環境づくり」です。

「性差を感じさせないデザイン」については、男女でデザインの違いがあまり出ないようにしたり、女性らしさが強調されないようなシルエットにこだわったりしています。

-3つめの、「多様な性を受け入れるための環境づくり」についても教えてください。

トンボのLGBTQアドバイザー<一般社団法人ELLY>による講演会
トンボのLGBTQアドバイザー<一般社団法人ELLY>による講演会

森下さん:

そもそもジェンダーに対する理解がなければ、これらの制服の選択肢も広がっていかないと思うので、まずはLGBTQについて知ってもらうための勉強会・講演会を実施しています。「知る」ことで「ジェンダーレス制服」をすんなり受け入れてもらえるように、活動を行っています。

LGBTとは、Lがレズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)、Gがゲイ(Gay:男性の 同性愛者)、Bがバイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)、Tがトランスジェンダー (Transgender:こころの性とからだの性との不一致)の頭文字から作られた言葉であり、性的少数者の総称として用いられている。

(出典元:「LGBTの現状と課題 ― 性的指向又は性自認に関する差別とその解消への動き」

SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」にもつながっているんですね。

森下さんご自身は、自分の学生時代と比べてこの制服の選択肢の広がりをどう捉えていらっしゃいますか?

森下さん:

私の学生時代は、女子はスカート・男子は詰襟の印象で、制服に対して「こんなに幅広く選択肢が持てるんだ」という知識もありませんでした。制服の選択肢が増えることは、トランスジェンダーの方だけでなく、学生の皆さんにとっても快適にすごせるのではないかと思っています。

環境配慮だけでなく、学生のニーズをふまえた商品開発を続ける

-今後の事業の展望を教えてください

森下さん:

トンボではコーポレートスローガンに「人と自然を大切にした価値ある製品づくりを」と掲げています。それに基づいて、環境に配慮した商品の開発も進めているところです。

また、制服は学生が毎日着るものなので、環境に配慮することも大事ですが、「今、学生にとって何が悩みなのか」「もっとこうしたほうが良い」というニーズをくみとって新商品に取り入れていくことが、私たちの役割だと考えています。

-本日はありがとうございました!

関連リンク

株式会社トンボ:https://www.tombow.gr.jp/

ジェンダーレス制服:https://www.tombow.gr.jp/school/original/genderless/