#インタビュー

株式会社斗々屋|買うのは、必要な分量だけ。量り売りで叶えたいのは「ゼロ・ウェイスト」な暮らし

株式会社斗々屋

株式会社斗々屋 ノイハウス萌菜さん インタビュー

株式会社斗々屋

日本初のゼロ・ウェイストなスーパーマーケットの展開で注目されているコンサル・卸・小売事業。オーガニック食材やワインの輸入業から始まり、2019年から小売事業の立ち上げ、そして2021年には日本初のゼロ・ウェイストなスーパーマーケットを京都にオープン。モデルショップとしてゴミを出さないビジネスを実践するとともに、全国に量り売りを広めるため、個人や企業向けにオンライン講座、現場研修、コンサル事業も開催している。

ノイハウス萌菜

1992年生まれ。イギリスから日本に越してきてから周囲の「使い捨て」の量に敏感になり、プラスチックストローの代替品となるステンレスストローブランド「のーぷら No Plastic Japan」を設立。『使い捨てを考え直すこと』を軸に、企業との連携プロジェクト、コンサルティング、広報などを務め、より循環型なビジネスやライフスタイルを提案している。ラジオ局J-WAVEの朝番組のパーソナリティ。
株式会社斗々屋には2019年から参加し、一号店の立ち上げから関わる。2021年にはIoTを活用した日本初の「ゼロウェイスト」なスーパーマーケットをオープン。

introduction

世界には、3食満足に食べられず、飢餓に苦しむ子どもたちが後を絶たない一方、24時間空いているコンビ二やファミレスで、いつでも食品を買ったり食べたりできる日本。

その分食べ残しや売れ残りも多く、食品ロスが環境に与える負荷が社会問題にもなっています。

京都にある株式会社斗々屋は、食品ロスの問題を解決するため、量り売りやグローサラント(食料品+レストラン)などの新たな販売手法・営業形態に取り組んでいます。

株式会社斗々屋の広報担当のノイハウス萌菜さんに、お店の特徴や、目指す姿についてお話を伺いました。

「ゼロ・ウェイスト」を実現するために始めた量り売り専門店

ー斗々屋とは、どのようなお店なのでしょうか?

ノイハウス萌菜さん:

私たち斗々屋は、2021年7月31日に京都御所の近くにオープンした「ゼロ・ウェイストなスーパーマーケット」です。取り扱っている品物は、オーガニックやフェアトレードの野菜や乾物、果物、豆腐、お肉、ワインなど、多岐に渡ります。また、洗剤やシャンプーなども販売しています。取り扱い品目は700種類に上ります。

「ゼロ・ウェイスト」とは、聞きなれない言葉だと思いますが、要するに「ゴミを出さないこと」です。斗々屋が目指すのは、ゴミの出ない販売方式です。

具体的には、例えば、お客様にご自分の欲しい量だけ購入していただく「量り売り」のシステムを導入しています。

そのため、一般のスーパーのように、商品がトレイや袋に個包装された状態で陳列されているのではなく、欲しい商品を必要な分だけ計量して、購入するという形になっています。そのため、お店の見た目も、普通のスーパーとはずいぶん違うと思います。

斗々屋

斗々屋の面白いところは、売っている商品だけでなく、お店自体がサステナブルなところです。店舗の建築材料には古材を利用しているので、将来店を閉めた際には、壁や床など、すべて分解、再利用できるのです。

ー斗々屋が掲げる「新・グローサラントモデル」とは、どのような販売方式ですか?

ノイハウス萌菜さん:

斗々屋は昼はスーパーとして開店していますが、ランチとディナーを召し上がっていただけるレストランも併設しているんです。スーパーで売れ残った商品を、新鮮なうちにお惣菜に加工したり、レストランで提供することで、食品ロスの削減につなげています。

通常、スーパーなどの小売り業では売れ残りが多く、食品ロスを出すことを前提にしたビジネスモデルというところが課題です。今、食品ロスは日本社会の大きな問題です。なんとかしないといけないという思いから始めたのがこの斗々屋でした。

このようなスーパーとレストランの両方の顔を持つお店を、アメリカでは「グローサラント(grocerant)」と言います。食料品店の「グローサリー(grocery)」と飲食店の「レストラン(restaurant)」を合わせた造語です。

私たち斗々屋は、このアメリカのグローサラントのさらに上を目指していて、「新・グローサラントモデル」を掲げているんです。

アメリカのグローサラントでは、食品販売とレストランを同時に開店しているのですが、斗々屋の場合、まずスーパーで販売した後、賞味期限の近い食品が出た場合、新鮮なうちにキッチンで調理してお客様に提供します。または、食材によっては、はじめから瓶詰めの保存食に加工して別の形で販売するというモデルを用いています。当たり前に聞こえるかもしれませんが、食品のロスを出さないことがビジネスの経済的なメリットにつながることを証明したいと思っています。

ー瓶詰めは、あまり馴染みのない保存方法ですね。

ノイハウス萌菜さん:

そうですよね。日本の家庭では、保存食品といえば冷凍が主流です。缶詰もありますが、食品の種類もツナや果物など、家庭にある缶詰は限られているのではないでしょうか。それにまず缶詰は既製品を買うもので、一般の家庭で手作りすることはありませんよね。

しかしドイツやフランスでは、昔から一般の家庭でもガラス瓶を使用した食品の保存が行われています。食品を瓶に詰め、真空にして煮沸することで、1年か2年は持つのです。

この方法だと、なんと野菜スープや肉のパテなども常温で長期間保存できるのですよ。

冷凍保存ではどうしても電力が必要ですが、瓶詰めだと常温で保存できるので、その点でもエコだと言えますよね。

斗々屋では、真空瓶詰めの加工技術も活用しながら、リターナブルなガラス瓶で提供するレトルト食品を開発したりなど、トータルで食品ロスゼロを目指していけるよう取り組んでいるんです。

斗々屋

食品ロスが与える環境問題の解決に、一専門店として挑む

ー食品ロスを始めとするゴミの廃棄によって、環境にはどのような影響が及んでいるのでしょうか?

ノイハウス萌菜さん:

食品ロスには、私たちが食卓から食べ残しを捨てるような「家庭からの廃棄物」と、スーパーやレストランなどの事業者から出た「食品廃棄物」の2種類があります。

「飽食」といわれて久しい日本では、毎日大量の食品ロスが出ていて、令和2年にはおよそ522万トンの食品ロスが出ました。ものすごい量ですよね。

またこれらの廃棄された食品を焼却処分する際には、CO2が排出されます。みなさんもご存じのとおり、CO2は温室効果ガスとなって、地球温暖化の直接的な原因になっています。

さらに、食品を個装しているトレイや袋はプラスチックゴミになり、海洋環境に悪影響を及ぼしています。プラスチックゴミの削減のため、資源のリサイクルからレジ袋の有料化まで、日本だけで見ても今さまざまな取り組みが進んでいますよね。

しかし、食品ロスを始め、梱包材などのゴミが環境に与える影響は非常に大きいものがあります。この影響を少しでも減らすため、とにかく斗々屋では、再利用できるものはとことん再利用し、そもそもゴミを出さないことを徹底的に追求しています。

ー実際に、量り売りで本当にゴミの削減ができるのですか?

ノイハウス萌菜さん:

一般的なスーパーの販売方法でゴミになるものは、斗々屋では徹底的に排除する努力をしています。実は、日本のプラスチックゴミの約半分は、食品トレイや個包装の袋だと言われているのです。スーパーで個包装のプラスチックゴミを出さないことは、脱プラスチックのために非常に重要なのです。例えば量り売りする商品を入れる袋や容器も、生産者さんと相談を重ね、できる限りくり返し使用できるものにしています。

量り売り

それでもなお、廃棄させざるを得ないものについては、リサイクルや堆肥化するなどして、とにかく試行錯誤してゴミを出さないように取り組んでいるんです。リサイクルすればそれで良いのか… 再利用すればゴミではないのか… 一体「ゴミ」とはなんなのか、その定義について考えるきっかけにもつながる店舗だと思います。

ー斗々屋で採用している量り売りのシステムについて、具体的に教えてください。

ノイハウス萌菜さん:

まずは入店したお客様に、持参した容器を専用の電子計量器に乗せてもらいます。そうすると、容器の重さがシステムに登録され、シール式のタグが発行されるので、それを容器の底に貼っていただきます。このタグは、防水シールを上に貼ってもらえばくり返し使用できますので、入店時の登録は次回からしなくてもいい仕組みになっています。

または、すでに準備されている斗々屋の容器をレンタルして使っていただくことも可能です。

次にお客様に品物を選んでもらい、ディスペンサーや容器から自分で必要な分量を容器に取ってもらいます。商品を選び終え、容器を計量器に乗せてもらうと、先に登録された容器の重量が自動的に差し引かれ、計量される仕組みになっています。

品物を入れているディスペンサーや容器には、レバーや蓋にすべてモーションセンサーがついています。このセンサーでお客さんが商品を取り分けたのを感知し、電子計量器に商品の情報が伝わる仕組みです。スクリーンから商品名を確定すると、電子計量器から値段や購入日を記したラベルが発行されるので、それをレジに持って行って会計する流れです。

量り売りのデメリットも想定内!十分な対策で消費者に安心を

ー私たちは普段個装された食品を買い慣れているので、量り売りの場合、衛生面は大丈夫なのか、心配してしまいます。

ノイハウス萌菜さん:

斗々屋では、量り売りに使用するトングやレードル(おたま)などをスタッフがこまめに洗うようにしています。商品を測るメジャーカップは、一回使用するたびに洗浄しているので安心して使用していただけます。

一般のスーパーでは、個包装された商品を店員さんが並べ、その後お客様が手に取って、また棚に返すことが多くありますよね。陳列された商品は、誰が触れたものかわかりませんし、人が触れた商品が消毒されることもありません。斗々屋ではそれがありませんから、一般のスーパーよりも衛生的な面もあると思いますよ。

鮮度については、店内の温度管理を厳格に行い、こまめなテイスティングで品質をチェックしています。

販売方法も工夫していて、ほうれん草や小松菜、ハーブなどの葉物野菜は、痛みやすいのですが、蓋つきのケースに保管して、鮮度を保てるようにしています。

ーオーガニックの品物の量り売りと聞くと、値段が高く、購入も面倒なのではないかと思ってしまいます。個装されたものをまとめ買いする方が、簡単で安いのではないでしょうか?

ノイハウス萌菜さん:

一般的に日本で買うオーガニックの商品は、今はまだ値段が高いことが多いです。しかし、量り売りで自分の必要な分だけ買うスタイルだと、パッケージされたものよりも、安く購入できることもあります。パッケージそのもののコスト、そして包装するための人件費などが不要であることも理由の一つです。「高品質なものを、必要な分だけ」が叶うのが斗々屋なのです。

また、量り売りだと、購入する際に手間や時間がかかるのではないかと心配するお客様もいると思いますが、利便性を追及し、国内最先端の量り売り機械を導入していますので、お客様に負担をかけることなく、スムーズに買い物していただけます。

また、ものは考えようだと思います。パッケージに入っている食材を購入し、レジ袋に入れる場合、家に帰ってからパッケージから出して、冷蔵庫に入れる。そのパッケージを洗って、分別して、ゴミの日に外に出すという作業は、量り売りの場合はないのです。量り売りの際は購入時の時間は追加でかかるとしても、その後の時間まで考えると、どちらが早かったり便利なのかというのは、人それぞれの感じ方にもよると思います

ー今後の斗々屋として、どのような夢や目標がありますか?

ノイハウス萌菜さん:

京都の斗々屋本店を軌道に乗せたら、フランチャイズ化も考えています。今は全国各地に、ゼロウェイストな量り売りを導入している斗々屋フレンズと呼んでいる店舗が90店舗ほどあります(2023年4月現在)。ノウハウをシェアして仲間を増やし、ムーブメントをこれからも盛り上げていきたいです。

今後さらにSDGsの流れは加速するはずですし、食品ロスゼロの取り組みはもっと推進されるでしょう。斗々屋の販売方式は、その流れの最先端です。斗々屋の思いに共感してくれるお客様を増やし、地域も巻き込んで、ゴミの出ないエコな暮らしを追求していきたいですね。

ー「ゼロ・ウェイストなスーパー」が全国で利用できる日を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

参考サイト

https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20210824-00254263

https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1204051_1534.html