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一般市民も野生動物を積極的に救助する!オーストラリアがエコ活動の一環として行う動物保護

オーストラリアの大自然は、野生動物がいることで成り立っています。
野生動物を守ることがエコシステムの維持に繋がるため、一般市民たちも野生動物のレスキューに積極的です。
この記事では、野生動物と環境保全の関係性、一般市民に対する野生動物保護の促進活動、野生動物保護への一般市民の考え方、レスキュー活動のリスクについて解説しています。

環境保護への理解を深めるためにも、エコ大国・オーストラリアで実際に行われている取り組みを把握しておきましょう。

野生動物はエコシステムの維持に必要不可欠

オーストラリアの野生動物は、山々や熱帯雨林の維持に大きく貢献しています。
野生動物が体に花粉を付着させることで広範囲にわたって花が受粉できたり、糞が木々の肥料になったりと、自然環境が正常に機能するための重要な役割を担っています

また、野生動物のお腹の中で消化されることによって発芽する植物も生息しており、野生動物はオーストラリアのエコシステムを維持する上でなくてはならない存在なのです。
オーストラリアから野生動物がいなくなると、環境バランスが大きく狂います。

エコシステムの崩壊によって国内の山々や熱帯雨林が消滅する可能性も高く、オーストラリアの環境保全と野生動物保護は密接な関係にあるのです。

一般市民も野生動物保護に参加

オーストラリアでは、一般市民も野生動物のレスキューを行っています。

野生動物がケガをした状態で家に迷い込んできたり、道端で車に轢かれていたりした場合、人々は自ら動物を病院に連れて行くかレスキューの専門家に連絡を取ります。

「野生動物の命を救いたい」「自分にできるレスキュー活動をやりたい」という意識を持つ人が多く、病院に持ち込まれる野生動物の半数以上は一般市民によって救助されているというから驚きです。

ではなぜ、オーストラリアでは一般市民による野生動物の保護が盛んなのか。
その理由については、次で詳しくお話ししていきます。

オーストラリアが取り組む動物保護の促進活動

オーストラリアで野生動物保護が積極的に行われている理由は、国が実施する促進活動にあります。

以下は、国民に野生動物レスキューをより身近に感じてもらうための3つの取り組みです。

①野生動物専門病院の運営

出典:Spaceship Earth

特殊な動物が多く生息するオーストラリアですが、野生動物を専門で診る病院があることはご存知でしょうか?
野生動物専門病院では、コアラ、カンガルー、ポッサム、ウォンバット、コウモリを含む哺乳類のほか、爬虫類や鳥類といった幅広い野生動物の治療を行っています。
中には、野生動物専用の救急車を保有する動物病院もあり、いかにオーストラリアが野生動物の保護に力を入れているかが分かります。

なお、野生動物に対する治療は全て無償で、病院の主な運営資金は税金と一般市民からの寄付金です。

「これからも病院に野生動物の保護を続けてほしい」「募金することで自分も野生動物のレスキューに携わりたい」と考える一般市民も多く、病院主催のチャリティーイベントなどでは多額の募金が寄せられます。

国内のあらゆるエリアに野生動物病院が設置されていることから、一般市民にとって野生動物の保護は身近なものとなっているのです。

②一般の動物病院でも無償で野生動物をレスキュー

オーストラリアでは、犬猫などのペットを診る一般動物病院でも野生動物を治療しています
人々が持ち込んだ野生動物を無償で引き取り、自身の病院で治療を行うこともあれば、野生動物のケガの具合に応じて専門病院へ引き渡すこともあります。

一般動物病院は数が多く、街中の至る場所にあるのが特徴です。
気軽に野生動物を持ち込めるため、保護活動のハードルを下げることに繋がっています。

また、ペットを飼っている家庭も多く、かかりつけ獣医師の元に野生動物を届けるというパターンも頻繁に見られます。

③一般市民へのレスキュー要請の呼びかけ

出典:Spaceship Earth

野生動物の生息地と道路が密接しているオーストラリアでは、道を渡ろうとした野生動物を車が轢いてしまう事故が多発しています。
そのため、交通事故に遭った野生動物を保護すべく、傷ついた野生動物のレスキュー要請を市民に呼びかける看板が立てられています。


看板は、野生動物の生息地の近くに設置されているのが一般的です。
運転中に交通事故に遭った野生動物を見つけた場合、看板に記載されている電話番号に連絡するとレスキューの専門家が駆けつけます


迅速な救護に繋がるのはもちろん、市民が野生動物のレスキューに関心を持つきっかけ作りになるため、野生動物保護に対する意識を国全体で高めることができます。

野生動物保護と自然の摂理

出典:Spaceship Earth

野生動物を助けることについて、「自然の摂理に反する」という考え方を耳にしたことがある方もいるかもしれません。

確かに、自然界で傷ついた野生動物に手を差し伸べることは、自然の道理に合わない行為です。

しかし、オーストラリアの人々は、車に轢かれたり金網に絡まったりしている動物に対して、「そもそも自然の中で起きた事故ではない」という概念を持っています

車も金網も、元は人間が持ち込んだ人工物です。
自然界に本来ないものを人間が生み出し、それらによって野生動物がケガをした場合、事故の責任は人工物を持ち込んだ人間にあります。
そのため、オーストラリアの人々は、人工物によって傷ついた野生動物を救うことを「自然の摂理に反する」とは思っていません

人間が便利な社会を追求した結果によって起きた事故という意識を持っており、自分にできる限りの保護活動をしようと考えているのです。

動物保護団体も実施する啓発活動

オーストラリアでは、動物保護団体による啓発活動も盛んです。

国内最大規模の動物保護団体・RSPCA(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)では、幅広い分野における動物福祉活動を行っています、


犬猫の保護・譲渡、一般動物病院や野生動物専門病院の運営のほか、学校教育プログラムなども実施しており、学校現場で野生動物保護の必要性を啓発しています。


エコシステムと野生動物の関係性はもちろん、野生動物に対する福祉の精神やレスキューの注意点などについても教育し、野生動物保護の意識を次世代へ繋げる活動に貢献しているのです。

レスキューにはリスクも伴う

一般市民による野生動物保護が盛んなオーストラリアですが、レスキューにはリスクも伴います

例えば、南オーストラリア州とクイーンズランド州に多く生息するコウモリは、リッサウイルスを媒介する動物です。
コウモリから人に感染する人獣共通感染症として知られるウイルスで、コウモリに噛まれたり引っかかれたりするだけでリッサウイルスに感染します
リッサウイルスの致死率は非常に高く、オーストラリアでは実際に道に落ちているコウモリに触れたことで亡くなった一般市民もいるのです。


また、可愛らしい見た目のカモノハシも、オスは後ろ足に毒腺を持っています。

コウモリほど危険ではないものの、犬くらいの大きな動物であれば死に至ることもあります。人間でも体の痺れなどを感じる可能性が高く、むやみに触るのは非常に危険です。

そのため、野生動物の保護を積極的に行うオーストラリア市民も、コウモリやカモノハシのような害のある動物が傷ついているときは専門家に救助を要請するのが一般的です。
もしオーストラリア旅行中にケガをしている野生動物を見つけても、触らずに地域のレスキュー団体や野生動物病院に連絡しましょう。

コウモリやカモノハシはもちろん、カンガルーやエミューを含む大きな動物や、ポッサムのような鋭い爪を持つ動物も、専門知識のない素人が接触するのはハイリスクです。

自分自身の安全を確保しながら野生動物を守るためにも、傷ついた野生動物には触れないように気を付けてくださいね。

まとめ

オーストラリアは、一般市民も積極的に野生動物を保護している国です。
野生動物専門病院やレスキュー要請の看板の設置など、オーストラリアでは国全体で野生動物保護の意識を高める工夫が凝らされています。

エコ活動としての意味合いも強い野生動物保護ですが、人間と野生動物が共存する上でも必要な取り組みであるという考え方も根付いています。
ただし、野生動物のレスキューには、リスクを伴うということを忘れてはいけません。
ウイルスへの感染や毒の危険性から身を守るためにも、自分で保護するのではなくプロにレスキュー要請を行うのが賢明です。